テント泊による撮影山行装備の軽量化を考えてみる

COLUMN

今回はテント泊による山岳写真撮影時の登山装備及び機材の軽量化を目指そうという記事になります。タイトルこそ大仰ですが何のことはない、単なる個人的な妄想でしかないのですが備忘録的に残しておきたいと思います。

この手の内容にご興味のある方もいらっしゃるかと思いますので私の頭の中だけではなく、記事にして共有したいと思いました。ちなみに対象となる撮影機材メーカーはニコン富士フイルム(Gマウント)となりますので、そのあたりはご了承頂ければ幸いです。

ご参考までに各項の最後に今まで使用してきた製品と導入候補となる製品の重量差比較を載せています。

(目次)

  • 目的
  • 事前調査
  • 対象①カメラ本体
  • 対象②交換レンズ
  • 対象③その他機材
  • 対象④登山ギア
  • 軽量化の実際



目的

疲労軽減

軽量化の目的はもちろん登山時の疲労の軽減のためです。
登山装備はそれほど無理の無いような装備でしたが、私の場合何より撮影機材の重量がかなり重くて負担になっていました。これは個人的に山で手荒く扱っても壊れないタフさを要求される頑丈で信頼性の高いものを使いたいということと、撮影していてモチベーションが上がるものを使いたいということが理由でして、そのようなものは大抵大きくて重いものが多い傾向です。

まだまだ若く血気盛んな頃は無理も利きましたが最近は荷を担ぎ上げるだけで疲れてしまい、テントに入ってからは撮影する意欲もしばらく削がれたような状態でした。

本来なら山に登ってからが本番ですが、これでは “本末転倒” です。

撮影機会の損失

荷が重いと当然歩くスピードも落ちてしまいます。
標準コースタイムはもはや当てにならず、例えば一般的な登山者であれば1時間で行けるところは1時間半くらいは掛かってしまいます。撮影したい場所に撮影したいと思っている時間までにたどり着かないと、それは撮影機会の損失に繋がります。

山の情景は刻一刻と変わり同じ景色は二度と現れない非常に刹那的なものであり、そしてそれこそが山岳写真の最も大きな醍醐味であり、また価値でもあると個人的に思っています。

刻一刻と変わる山の情景

より安全な登山のため

そして荷が重いと言うことは、山で何か起こったときに安全性も変わってきます。
例えば何かの拍子で躓いてしまって転倒した場合、当然荷が重い方が怪我のリスクが大きくなります。もちろん転倒しないように登山道の状況を慎重に見極めて歩くのが登山ですが、慎重になればなるほどまた時間も掛かってしまいます。

事前調査

さて以前から軽量化したい軽量化したいとずっと思っていましたが、では実際に荷が軽いとどれほど身体への負担が減るのか。実は直近の山行で試してみました。それが2022年の9月に敢行した2回の撮影山行で、あえて軽くして歩いたのは八ヶ岳(硫黄岳・横岳)山行で、通常の重い荷で歩いたのが北アルプス奥剱の池ノ平山行でした。

晩夏の八ヶ岳、深い苔森と岩稜の稜線をゆくテント泊の2日間

『劔岳讃歌』初秋の北アルプス奥剱の秘境、池ノ平 (前編)

『劔岳讃歌』初秋の北アルプス奥剱の秘境、池ノ平 (後編)

結果は歴然で、カメラとレンズを各々1つずつのみで三脚も持たないテント泊装備で合計17kgほどの荷となった八ヶ岳山行ではかなり登山の負担が減り、途中の撮影時間を差し引けば標準コースタイムより全然早く歩けました。さらに横岳の荒々しい尾根筋も苦労はしましたが思ったより時間は掛かりませんでした。

逆にいつもの装備であるカメラ2台に交換レンズ3本、三脚、さらに5日分の食料や着替え、飲料水などここ最近では最も重くなった23kg強であった奥剱山行ではかなり疲労を感じ、とくに雨後の翌日で水分を含んで重くなり、ザックが最終的に26kg弱となってしまった最終日(4日目)はもう重くて重くて大変でした。実はこれでも最盛期に比べれば少しは軽量化したのです。もちろんこれを読まれている方の中ではもっと重い荷を担がれている方もいらっしゃるかと思いますが…。

やはり疲労が大きいと撮影する意欲も削がれてしまうところがあり、個人的には21kg以内、出来れば20kg以内に納めれば現在の自分にはなんとかなる重量と判断しました。つまり目標は最低でも4kg、出来ることなら5kgは軽くしたいというところでしょうか。

対象①カメラ本体

さて、まずは撮影機材のうちのカメラですが私はレスポンスが良く、光学ファインダーによる自然な見え味で撮影できる一眼レフタイプをメインとして使っています。以前ニコンのZ6というミラーレスカメラをサブで使っていた時期もありましたし、現在も富士フイルムのデジタル中判(ラージフォーマット)であるGFXというミラーレスカメラでも撮影していますが、本質的にはやはり上記の理由で一眼レフタイプのカメラが好みです。それも以前メインで長らく使っていたニコンのD810からD5に入れ替えたときにこのD5のシャッターフィールや堅牢性の虜になってしまい、デジタル一眼レフの中でも最も重量の重いものになってしまっていました。

構造上ミラーレスカメラはミラー部が無いので軽量でコンパクトに設計できますし、何より交換レンズに関してもフランジバックが短いため一眼レフ用のレンズよりも設計上有利なため高画質且つコンパクトなレンズが多いというメリットも享受出来ます。

軽量化を進める上で今後はミラーレスカメラで撮影して行こうと思っています。ただ、あくまでも“レフ機”が好みであることには変わりませんが、背に腹は代えられないというのが現在の自らの立場でした。

Nikon Z6 & Mirrorless Camera

具体的にはここ最近ようやく交換レンズの選択肢も増えてきた、私にとっても使いなれたメーカーであるニコンのZシステムに本格的に移行しようと思っていますが、高画素機よりも画素ピッチに余裕がある設計の方が個人的に好みなのでフルサイズで2,400万画素クラスのものを導入しようと思っています。これであればセンサーサイズこそGFXよりは小さいですが、画素ピッチはGFXより広いという優位性を持たせることが出来ます。

カメラは工業製品なので絶対に壊れないとは言えませんし、特に高山での使用となると状況に応じて柔軟に対応したくてどうしてもカメラは2台は必要だと思っているので、GFXは残しつつこのGFXを補完するような、と同時にメインとしても使っていけるような機種を希望しています。

【候補】
Nikon Z6Ⅱ、Nikon Z5
【重量差】
D5(1,415g)→ Z6Ⅱ(705g)
D5(1,415g)→ Z5(675g)
※詳しい質量やスペックはNikon公式HPをご覧ください
Nikon Z6Ⅱ
Nikon Z5
Nikon D5

対象②交換レンズ

この交換レンズが実に悩ましいところで、いかに高画質に且つ、いかに軽量化するか。焦点距離や山での使い勝手、重量など多くの選択肢の中から自分にとっての最適解をいかに見つけ出すのかが課題です。

ちなみに以前の記事などでも書いていますが、山ではズームレンズのほうが撮影しやすいことから単焦点レンズは一部を除き除外して選択しています。

標準域

以前の各種Fマウントのレンズレビュー記事等でこの標準域をカバーするレンズの試行錯誤を書いてきました。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

実は今回の機材の軽量化にあたってZマウントに移行しようと決めたのは使い慣れたニコンであることもそうですが、ぜひ山で使ってみたいというある意味『標準ズームの決定版では?』と個人的に思えるレンズがニコンからリリースされたからです。
それが『NIKKOR Z 24-120mm f/4 S』というレンズです。

標準ズームの新たな決定版⁉『NIKKOR Z 24-120mm f/4 S』(出典:Nikon公式HPより)

この24mmから120mmまでの焦点域のズームはFマウント版もありましたが個人的にはあまり好きになれなくて使用していませんでした。しかしこの新たなZマウント版は比較的軽量でコンパクトなうえ高画質であり、各種コーティングも抜かりなく、最大撮影倍率の高さ(0.39倍)や元々の5倍ズームという便利さも相まって、山での使い勝手においては他メーカー含めて現在では向かうところ敵無しのレンズと言って良いのではないかと個人的に思っています。

唯一、出来ることならインナーズーム仕様であったら最高でしたが、高山という特殊な撮影環境においてはこのレンズを中心として撮影していこうと決めて『Z』にしたと言っても過言ではありません。 “f/4通し” と言うことでそれほどボケないと思われるかもしれませんが、120mmでf/4ならば十分にボケを活かした写真も撮影できますし、このレンズの真骨頂でもある対象物にグっと寄ることが出来るのは花の撮影も多い山では本当に使い勝手に優れていると思います。

このレンズよりもさらに便利な焦点域をカバーする『NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR』と言うズームレンズもありますが、最大撮影倍率や開放F値が変動することなどを考慮すると使い勝手の面ではやはり『24-120mm』のほうが私に合っているのではと思っています。

【候補】
NIKKOR Z 24-120mm f/4S
【重量差】
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED(900g)→ NIKKOR Z 24-120mm f/4S(630g)
※詳しい質量やスペックはNikon公式HPをご覧ください
NIKKOR Z 24-120mm f/4S
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED



望遠域

さて望遠域のレンズですが、以前は『AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ』を使っていましたが、やはり “1.5kg” ある重量と “寄れない” というウィークポイントがネックで数年前に『AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR』に入れ替えました。このレンズは今でもとても気に入っていて山では『VRⅡ』よりも軽量ではるかに使い勝手が良いと思いましたし、さらにZマウント版もまだリリースされていないことから、しばらくは『FTZⅡ』を介してこのレンズを使っていこうかと思っています。

AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ

AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR

ただ、今まで山で撮影したデータを振り返ってみるとこの焦点域では100~135mmくらいの焦点距離を最も頻繁に使っていたことを踏まえると、山の風景だけであれば『NIKKOR Z 24-120mm f/4S』で十分賄えるような気もします。

雷鳥やイワヒバリ、ホシガラス、その他野性動物などの撮影ではもう少し焦点距離が欲しいところですが、風景に限ってはそもそも200mmの望遠で山の稜線を狙ってもその時の大気の状態によっては陽炎等の影響であまり有益な選択ではないと感じる場面も多々あります。野生動物であれば緊急的に “クロップする” という手ももちろんあります。

残雪期の立山(雷鳥沢)で雷鳥を中心に撮影するような場面では『NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S』が欲しいところです。2021年の春の立山ではD5とサンニッパで冬毛の雷鳥を撮影しましたが、それに比べればはるかに軽くなります。

【候補(風景のみ)】
無し
【重量差】
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ(1,540g)→0g
AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR(850g)→0g
【候補(雷鳥など)】
NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S
【重量差】
AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VRⅡ(2,900g)→NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S(1,435g)
※詳しい質量やスペックはNikon公式HPをご覧ください
NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VRⅡ
AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR
AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VRⅡ

広角域

一番悩ましいのがこの広角域で、未だに自分にとってどういう選択が最も適切か判断しかねているところです。広角域は今まで “神レンズ” と言われて久しい『AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED』を使ってきました。

AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

今でも大好きなレンズですが、順当であればこのZマウント版である “新神レンズ” と言える『NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S』となるのですが、せっかくGFXのシステムを持っているなら最近リリースされたこちらも間違いなく “神レンズ” と言っていい『GF20-35mm F4 R WR』という、待望のGFマウントの広角ズームを使ってみたいところです。実はGFXを導入した決め手となったのがこのレンズがレンズロードマップに掲載されていたからです。

満を持して登場した比類なき新神レンズ『NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S』(出典: Nikon公式HPより)

Gマウント待望の広角ズーム『GF20-35mm F4 R WR』(出典:富士フイルム公式HPより)

ただ『Z14-24』にしろ『GF20-35』にしろ山岳星景に限ってはもう少し明るさが欲しいところです。特にGFXに関しては理論上ラージフォーマットのため1段分弱有利とは思いますが、現場で使用してみて極力ISO感度は下げて運用したいと思っています。(センサー自体が少し古いと言われるGFX50sⅱだからでしょうか…)

星景となるとこちらも最近リリースされたソニーEマウント用のシグマ『20mm  F1.4 DG DN|Art』がとても気になりますが、Zでの使用となるとマウントコンバーターの類いが別途必要になります。その場合、スケアリングエラーによる方ボケ等のリスクも考えなければなりません。となると純正となりますが、Zの純正ならば『NIKKOR Z 20mm f/1.8 S』が評判も良く順当な選択と言ったところでしょうか。

山岳星景ではレンズの明るさが必要。

あとは暗めのズームレンズで撮影する場合なら “ポタ赤” で恒星追尾するという手もあります。具体的には軽さと対荷重のバランスが良いビクセン『ポラリエU』が個人的には良いと思っていますが、山では明るい単焦点レンズの方が利便性は高いようにも思いますし、ポタ赤を使用するとなると粗々でも極軸を合わせる必要もあるのでフットワークは確実に悪くなるでしょう。このあたりが非常に悩ましいところです。

【候補】
NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
FUJINON GF20-35mm F4 R WR
SIGMA 20mm f/1.4 DG DN|ART
NIKKOR Z 20mm f/1.8 S
【重量差】
AF-S NIKKOR 14-24mm(970g)→ NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S(650g)
AF-S NIKKOR 14-24mm(970g)→ FUJINON GF20-35mm F4 R WR(725g)
(星景)AF-S NIKKOR 14-24mm(970g)→ SIGMA 20mm F1.4 DG DN|Art(630g)
(星景)AF-S NIKKOR 14-24mm(970g)→ NIKKOR Z 20mm f/1.8 S(505g)
ポラリエU使用なら+575g(電池別)でいずれも970gから重量増となる。
※詳しい質量やスペックはNikonおよび富士フイルム、SIGMA、Vixen公式HPをご覧ください
NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
FUJINON GF20-35mm F4 R WR
SIGMA 20mm F1.4 DG DN|Art
NIKKOR Z 20mm f/1.8 S
星空雲台ポラリエU



対象③その他機材

三脚

三脚は重ければ重いほど安定感が増すものですが、山においてはそれを担ぎ上げる必要があるので、いかにそのトレードオフの塩梅を見つけ出すのかが鍵になります。

現在はジッツオのマウンテニアという2型4段のカーボン三脚『GT2542』を使用しています。こちらの三脚もたいへん気に入っている撮影道具のひとつですが、最近は日中であれば三脚はほぼ使っていませんし、ミラーレスになってボディ内の手振れ補正機構が良く利くのでしっかりホールドすればブレない写真が撮れる時代になってきています。朝夕でも状況によっては手持ちで撮影することもあります。

それに撮影時に暴風が吹き荒れる状況であればどんな堅牢で重い三脚を使ってもブレるのが山での撮影です。ただ星の撮影やガスを流すような長秒露光撮影する場合や、固定してチャンスを待つような場面、構図を追い込む場面ではやはり三脚は必須です。

風景撮影において三脚は必須。

それを鑑みて、ジッツオで言うところの1型クラスのマウンテニア『GT1542』でも問題ないのではないかと考えています。今後搭載する機材自体も軽量化するわけなので三脚の対荷重も少ないものに出来ます。三脚を据えてじっくり構図をねったり、ガスの流れを待ったりという状況ではストーンバッグ等を使って安定させることも可能なので、1型でも問題ないのではないかと思っています。

あとはここのところ山でも使用している方が増えているレオフォトの三脚。こちらは同じカーボン三脚でもセンターポールをはじめから廃した設計で軽量でコンパクトな構成で山との相性も良さそうで、価格もジッツオの半額以下。テント泊のみでの限定的使用を考えるとこのレオフォトのもので、ジッツオの1型に相当するタイプである『LS-284C』も候補に入れても良いかと考えています。

【候補】
Gitzo GT1542
Leofoto LS-284C
【重量差】
GT2542(1,680g)→ GT1542(1,280g)
GT2542(1,680g)→ LS-284C(1,110g)
※詳しい質量やスペックはGitzoおよびLeofoto(Wide Trade)公式HPをご覧ください
GT1542|Gitzo
LS-284C|Leofoto(Wide Trade)

雲台

三脚使用時に問題となるのは三脚本体よりも雲台にあると思うことが多々あります。いくらしっかりした三脚でも雲台が柔いとそもそも構図を合わせる段階からストレスを感じます。軽量化を進める中でこの雲台だけはしっかりしたもの、機能性の優れたものを多少重量アップとなったとしても使おうと思っています。

昔は、それこそフィルムの頃は風景ではハスキーの3WAY雲台を使っていたこともありましたが、いくら使いやすくて信頼できても山に担ごうと思ったことは一度もありませんでした。

現在、山ではマセスの自由雲台『FB-2R』を使うことが多いです。
自由雲台(ボール雲台)では対荷重に直結するボール直径が重要なスペックのひとつになりますが、このマセス『FB-2R』は直径44mmと比較的大きく、水平をとった後にパンが出来るので気に入って使ってますが、やはり構図を追い込みたいときはそもそも自由雲台では難しいと感じることもあります。

と言うことでかなり大きくて重くなりますがベンロのギア雲台『GD3WH』を使ってみたいと常々思っていました。実は山ではない下界の撮影では気に入って使ってます。しかし、ただでさえ嵩張るギア雲台を登山ザックに入れるのもたいへんなのですが、もし軽量化・コンパクト化を進めてこのギア雲台を担ぐ余地が出来たら山でも使ってみたいところです。

【候補】
BENRO GD3WH
【重量差】
Marsace FB-2R(422g)→ BENRO GD3WH(740g)

カメラバッグ

私は登山の際はトップローディングタイプのカメラバッグを胸の前に提げてスナップ撮影しながら登ってもいます。朝夕の撮影適地や、じっくり撮影したい場所ではザックからもう1台のカメラを出して2台体制で方や広角、方や中望遠と言った具合に撮影しています。

そのため、長い間使用していたデジタル一眼レフ(D5またはD850)に24-70mm f/2.8を装着した機材が収まるホルスターバッグだったLowepro『トップローダープロ70 AW Ⅱ』は重量約800gと、バッグ単体だけで重量が嵩みました。これがミラーレスになればこの部分の重量も減り、肩への負担もかなり軽減できることになります。

撮影機材が軽くなることでこのような三脚やカメラバッグなど、周辺のものも軽量化できるのが大きいと思います。

Lowepro『トップローダープロ 70 AW Ⅱ』(出典:Lowepro公式HPより)

【候補】
The North Face エクスプローラーカメラバッグ
thinktankphoto デジタル ホルスター 20 V2.0
【重量差】
Loweproトップローダープロ70 AW Ⅱ(800g)→ The North Face エクスプローラーカメラバッグ(290g)
Loweproトップローダープロ70 AW Ⅱ(800g)→ thinktankphoto デジタル ホルスター 20 V2.0(500g)
※詳しい質量やスペックはLoweproおよびThe North Face(GOLDWIN)、thinktankphoto公式HPをご覧ください
トップローダープロ70 AW Ⅱ|Lowepro
エクスプローラーカメラバッグ|The North Face(GOLDWIN)
デジタル ホルスター 20 V2.0|thinktankphoto



対象④登山ギア

ここからは登山ギアについての軽量化対策です。
山行きのときはどうしても慎重にならざるを得ないので、余計なものまで担いでしまいがち。私はそもそも根本的にそこを何とかしなければならないとは思ってはいますが。

テント

テントは私自身プロモンテが初めてのテントでしたが、アライテントの『エアライズ2』にしてからは今でもこのモデルを使っています。コンパクトで比較的軽量、且つ山の激しい気象状況でもびくともしない耐久性は間違いなく国産の山岳テントでは最高点のひとつではないかと思っています。このテントで何度も暴風雨の夜を経験していますが、一度として壊れたことがありません

堅牢で信頼感あるアライテント『エアライズ2』

ただ、最近では海外メーカーが日本の山岳向けにさらに軽量化を推し進めたテントを展開するようになりました。その象徴的なメーカーがニーモ(NEMO)です。近頃ではこのニーモのテントを北アルプスのテント場でも多く目にするようになりました。まだまだ進出してからそれほど年月が経ったわけではないので、耐久性その他はまだまだ国産メーカーのテントに分があるかもしれませんが選択肢のひとつになってきました。

ニーモの中でも山岳向けと謳われた『TANI2p』がその候補と感じていますが、軽量化のため生地がかなり薄い構造なのと、かなり高価であることがネックです。

NEMO『TANI 2p』(出典:NEMO公式HPより引用)

【候補】
NEMO TANI 2p
【重量差】
アライテント エアライズ2(1,550g)→ NEMO TANI 2p(1,180g)
※詳しい質量やスペックはアライテントおよびNEMO公式HPをご覧ください
エアライズ2|アライテント
TANI 2p|NEMO

ザック

ザックは長年頑丈な作りのドイターのザックを大中小のサイズを揃えて使用してきましたが、最近はテント泊用の大型ザックはカリマーの『クーガー75-95』に入れ替えました。

karrimor cougar 75-95 (撮影山行ザック考)

個人的な考えとしてザックは軽量化するよりも多少重くても頑丈堅牢な肉厚な作りで、重い荷を入れて歩いてもザック自体がブレないものの方が良いと思っています。確かにこのクーガーよりも軽量な大型ザックはあるかもしれませんが、今のところこのザックは使い勝手も良くとても気に入っています。

ドイターのエアコンタクトとカリマーのクーガー

ドイターのエアコンタクト65Lよりもザック自体の重量は増えてしまいましたが、容量や使い勝手も含めて自分には合っていると感じるので、今のところザックの更新はしないつもりです。

テントマット

テントマットは以前からサーマレストの『Zライト』という折り畳み式のいわゆる銀マットを使ってきました。展開や収納が素早くできる利点はありますがどうしても嵩張ってしまうので、携行時はザックの下部や横にくくりつけるのが一般的です。

そこで最近は雪上テント泊時の底冷え対策として購入していたニーモの『ゾア20R』というエアマットタイプのテントマットを無雪期のテント泊でも使うようになりました。サーマレストのマットと比べて大きな軽量化とはなりませんが、コンパクトにザック内に収納出来るのは雨天時や岩場の登降時、ハイマツ帯の狭い登山道などでは大きな意味があると感じます。ザックに収納出来るか否かはかなり大きな違いです。

エアマットのデメリットとしては展開や撤収が面倒である点です。

食料

1泊2日程度のテント泊山行ならまだしも、これが3日、4日となるとその日数分の食料の重量もかなりの負担になります。飲料水は小屋や水場などで補給は可能ですが、食料は基本的にはすべて担がねばなりません。山小屋が営業しているのであれば宿泊者以外でも利用できる軽食を昼食とすればかなりの軽量化になります。

あとはレトルトをフリーズドライにすることなども軽量化に繋がりますが、アルファ米含めて総じて食欲をそそるものではありません。個人的には山に入ると軽い緊張状態になって腹が減っても何故か食欲があまりわかないという根本的な問題を抱えているのが悩ましく、本当は山でのキャンプ的な側面と山岳撮影の両立をうまく図れるようになりたいと感じています。

雨対策

直近の奥剱山行では天候不順のため雨の降らない日はありませんでした。そのため雨対策(主に防水バッグなど)を私なりに施していたのですが、全く役に立たずに多くのものが濡れてしまいました。シュラフだけは何とか濡れから守り事なきを得ましたが、自らの雨対策の不備を感じました。

着替えやタオル類はもちろん、テントやザック自体も濡れて水分を含むと重くなり、これも何気に大きな負担になります。

この時に分かったのはいくら防水を謳ったバッグでも雨天時の長時間山行では縫い目があればそこから容赦なく浸水するということです。多くの防水バッグにはシームテープ加工されてはいますが、完全ではありません。その時に感じたのはつなぎ目など無い単純な厚手のビニール袋が最も防水能力が高かったということ。それを考えると厚めの素材でできたゴミ袋がひょっとして最も使い勝手が良く、防水能力もあるのではと思っています。理想を言えば某キッチン用具のような防水ジッパー付きの巨大な袋があれば良いと思っています。

軽量化の実際

それでは最後にこれまで挙げた妄想上の軽量化のひとつを例にとって実際に数値化してみます。比較対象は今まででもっとも重かった時の重量とし、あくまでもカタログ値の重量とします。水や食料、着替え、シュラフ等は考慮外としました。

従来
カメラ Nikon D5、D850
交換レンズ FマウントGタイプの大三元3本。
三脚 ジッツオGT2542
雲台 マセスFB-2R
テント アライテントエアライズ2
ザック ドイターエアコンタクト65L
カメラバッグ Loweproトップローダープロ 70 AWⅡ
合計 12.4kg
  ↓
軽量化後
カメラ GFX50SII、Z6Ⅱ
交換レンズ Z24-120mm f/4、GF35-70mm、GF20-35mm
三脚 ジッツオ GT1542
雲台 ベンロ GD3WH
テント NEMO TANI2P
ザック カリマークーガー75-95
カメラバッグ The North Face エクスプローラーカメラバッグ
合計 9.6kg
目標の4kgの軽量化はなりませんでしたが、やはりデジタル一眼レフからミラーレスに完全移行することが大きく影響して3kg弱の軽量化になります。相対的にさらに高画質になりますし “ミラーレス様々” という印象ですが、残念ながら個人的な好みである光学ファインダーで撮影することは諦めなくてはなりません

先述しましたがこの機材ラインナップの問題は山での星景撮影で、ラージフォーマットとは言えGF20-35mmのF4はさすがに暗いということ。これを補う方法としてポタ赤(ポラリエu)を担ぐか、シグマの20mm f/1.4を担いでマウントコンバーターを使ってZで撮る、または純正Z20mmという方法を考えていますが、どちらにしてもそれでは600g前後の重量増となります。

望遠レンズはあえて入れてませんが、冬毛の雷鳥など山の野性動物を撮影するようなシチュエーションなど限定的にZ100-400mmを使ってみたいですし、GF100-200mmを使用してラージフォーマットで山の風景を切り取ってみたいとも思いますが、あれやこれやと持っていくと同じ穴のムジナになってしまいますので、ある程度の妥協は必要かと思っています。

・ ・ ・

今回は基本的には撮影機材の取捨選択が主テーマとなりましたが今後は荷の軽量化を計り、もう少し山での行動範囲を広げて撮影機会の幅を広げていきたいと考えています。

 

長々と個人的な妄想にお付き合いいただき、ありがとうございました。
今回の記事は以上となります。
何かしら皆様の参考になれば幸いです。