AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR

CAMERA&LENS

今回は山岳撮影用に新たに導入したニコンFマウントの望遠ズームレンズ『AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR』を取り上げます。今まで中望遠~望遠域での撮影では開放 f/2.8のズームレンズを使ってきましたが、より軽量なこのレンズを追加導入しました。

今でも現役バリバリのニコンFマウントの現行レンズですが発売開始は2013年と少し古め。ミラーレス盛隆の昨今において、いつものように今更感満載ですが今回も私なりの主観を中心に取り上げます。

(目次)

  • f/4ズームの存在意義
  • AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VRのスペック
  • 相反する軽量さと堅牢さ
  • 最大撮影倍率0.27倍の威力
  • 画質も良好
  • 運用面でのポイント(欠点も)
  • まとめと今後の望遠ズームへの期待



f/4ズームの存在意義

いきなり結論ですが、Fマウントにおいてこの AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR (以下f/4G) は山岳撮影で望遠域を担わせるズームレンズとして最適解となり得るとてもおすすめできるレンズです。私がそう思えるいくつかの利点を順序だてて紹介します。

AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VRⅡの不満点

多くの方はやはり価格の面からf/4ズームを使っていて、その後にf/2.8ズームを入手されるパターンが多いでしょうか。私は逆に初めて望遠ズーム(70-200㎜レンズ)を購入するときに迷いなくf/2.8ズームを導入しました。f値変動の70-300㎜や今回取り上げるf/4ズームには目もくれず、高価でしたが当時現行だった AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ(以下VRⅡ) を清水の舞台から飛び降りる思いで購入しました。

AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ

初めてそのレンズで撮影したときの感動は今でも思い出しますが、本当に衝撃的な写りでまさに虜になりました。しかし長い使用歴に従い大きな不満が2点ほど出てきました。
それは、
重いところと、
寄れないところ。

重さはそれでもなんとか頑張ってきました。
これだけの描写力を得たいのなら当然、と自分に言い聞かせながら。しかしやはり体力面、年齢的な面でこれからは体に負担をかけない方針に切り替えて機材の軽量化に重点を置くことにしました。

もう一つの大きな不満点である寄れないところ。
最短撮影距離・最大撮影倍率の問題は初めてこのレンズを手にしていた時から不満に思っていました。とくに登山道に咲き誇る美しい山野草の撮影では悶々とする状態。もっと大きく写したいのに引きの画ばかり…。
以前はニコン純正の105㎜マイクロを一緒に担いでその欠点を補っていましたが、そもそもマイクロレンズ(マクロレンズ)が持つ等倍撮影という特徴的な近接撮影は個人的にあまり使いません。さらにニコンFマウントの105㎜マイクロは重量的にも登山では負担が大きくて次第に担がなくなりました。(現在は使用頻度の低下で手放しています)

そこで今回この長年の不満点に終止符を打つべくf/4ズームを導入しました。

f/4ズームは f/2.8ズームの下位互換ではない

さて世間一般では開放 f/2.8ズームを大三元ズーム、f/4ズームを小三元ズームと呼んでいます。
実はこの呼び名が大きな落とし穴。
この呼び名はご存じのとおり麻雀の役名から来ていますが、麻雀ではもちろん大三元が上位の役(役満)です。その印象があるためどうしても f/2.8が上位f/4が下位と感じてしまいます。しかし(価格の面も含めて)実のところこれは大きなミスリードで、状況に応じてレンズの存在意義が大きく変わってきます。

VRⅡの不満点を払拭してくれた f/4G

それが私が抱いていた VRⅡの不満点を払拭してくれるこの f/4Gの軽量で寄れるという最大の意義。もちろんどうしても f/2.8というハイスピードが必要な場面では f/2.8ズームしか選択肢がないのも事実です。つまり f/2.8ズームにしろ f/4ズームにしろ、求められる場面によって使い分けを要すると考えるべきだと思います。

麻雀では大三元>小三元であっても大三元ズーム>小三元ズームではないということです。

AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VRのスペック

ここでこのレンズのスペックをVRⅡと比較してみましょう。

70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ 70-200mm f/4G ED VR
発売 2009年11月 2012年11月
レンズ構成 16群21枚(EDレンズ7枚) 14群20枚(EDレンズ3枚)
手振れ補正 3.5段分 4段分
最短撮影距離 1.4m(ズーム全域) 1m(ズーム全域)
最大撮影倍率 0.11倍 0.27倍
フィルター径 77mm 67mm
質量 約1,540g 約850g
中古市場価格 約11~13万円前後 約6.5万円前後

この比較表は以前にVRⅡを取り上げたときの記事をそのまま引用していますが(中古市場価格のみ改定)、やはり軽量であるところと最大撮影倍率の大きさはf/4Gの最大の利点。

VRⅡと f/4G

この比較表で目立ったところを実際の使用感も交えて細かく見ていきます。
ちなみに細かいスペックはメーカー公式HPを参照ください。
AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR |Nikon

※フィルター径は67mmサイズが適合します

相反する軽量さと堅牢さ

軽さは正義

さてf/4Gの大きな特徴のひとつである軽量さ。
VRⅡとは実に700グラム以上の差があり、これは下手をするとカメラ本体1台分もしくはレンズ丸々1本分に相当します。これは重い荷を担いで数時間撮影地に向けて山を歩かねばならない山岳撮影やネイチャーフォトにおいてとても大きなメリットになります。

いくら写りが良い機材をザックに入れていても…、

・その重さに負けて撮りたい時間帯を逃す
・またはそもそも撮影地にたどり着かない
・たどり着いてもすでに疲弊して撮影どころではない
というのはそれこそ本末転倒。

山を登られている方なら経験があると思いますが、これは笑い事ではなく現実として無いことではないのです。生身の人間ですから体力を削られるというのは同時に写欲も削られることを意味します。後述しますがそもそもこの f/4Gは写りも決してVRⅡに引けを取らない素晴らしい光学性能を持っていますが、それ以前にレンズが重いか軽いかは撮影を成功させる大きなポイントの一つでもあります。

所有欲と堅牢性

この軽さはいったいどこから来ているだろうと手にする前は思っていましたが、実際に手にすると納得できました。もちろん口径が違うわけですからレンズ自体(光学系)の大きさや枚数が重さの違いに現れていますが、そのほかにf/4Gはレンズ筐体(いわゆる“側”)に全面に渡って強化プラスチックが多く使われています。触ってみて安っぽさは感じませんが、特段高級感は感じません。

他方 VRⅡの筐体は持ってみると金属系の重量感・質感からくるひんやりとした高級感をしっかり感じます。もちろんVRⅡも一部強化プラの部分もありますが、この上質な筐体は持っていて所有欲を満たしてくれますし、それが写欲を掻き立ててくれる部分もあります。
おそらく素材起因の堅牢さはVRⅡのほうが上であることは手にした瞬間に感じられます。さらに防塵防滴性能も可変部分にシーリングを施していたりと、このあたりもVRⅡのほうが上ではないかと思います。

f/4Gは軽量でとても気に入りましたが、マウント部にゴムのシーリングこそありますが防塵防滴性能も含めて堅牢さについては若干不安があるのも事実です。しかしこれは実際にフィールドに出て、多くの実践をこなさないことにはわからないことなので、まだまだ私には未知数な部分です。

少なくとも今まで使ってきたVRⅡはトラブルらしいトラブルはありませんでした。そこはさすがに高価な f/2.8ズームの良い点だったと思います。ただもちろん軽量化を実現できたのは筐体の大部分を強化プラにしたからという側面もありますのでこれに関してはトレードオフと考える必要があります。



最大撮影倍率0.27倍の威力

最短撮影距離での比較

もう一つのこのレンズの持つ大きな利点である最大撮影倍率の大きさ。
VRⅡが0.11倍に対してf/4Gはなんと0.27倍
0.27倍とは一般に言われるクォーターマクロの領域。

これがどれだけ大きな違いか、実際に撮影した作例でご覧ください。多少明るさを調整してはいますがトリミングはもちろん一切していません。

VRⅡ(200mm  f/5.6)

f/4G (200mm f/5.6)

VRⅡ、f/4G、ともにズームリングを200㎜にセットし、ピントが合焦する最短距離で撮影しています。私もカタログ上でその違いは分かってはいましたが、実際に撮り比べてみると驚き「えッ?」と戸惑うくらいの違いがあります。
「よくもまぁ今までこんな寄れないレンズで撮っていたものだ」とさえ思いながらテスト撮影していました。

確かにこの写真の比較において、寄れる方が良い写真と言うわけではありません。寄りで撮れていない VRⅡでも、背景の菜の花が玉ボケ状にボケていてこれはこれで綺麗な表現力を持っているレンズですが、これ以上は寄ることができないので表現の幅はやはり f/4Gよりも狭くなってしまうと言わざるを得ません。

参考程度に絞りf/4で撮影したものが下の作例です。

VRⅡ(200㎜ f/4)

f/4G(200㎜ f/4)

この作例も両レンズともに200㎜で撮影していますが、同じ焦点距離200㎜でも最短撮影距離・最大撮影倍率が違うことで全く撮れる写真が変わってきます。

さらに私が現在所有している中望遠域のレンズ3本でも比較してみました。
単焦点レンズであるZEISSの『Milvus 2/135 ZF.2』に合わせて、すべて焦点距離135㎜にて撮影したのが下の画像です。

VRⅡ(135mm f/5.6)

f/4G(135mm f/5.6)

Milvus 2/135(135mm f/5.6)

同じ135㎜という焦点距離でもっとも被写体に寄ってピントが出る最短距離でそれぞれ撮影しています。もっとも寄れて表現の自由度が高いのはMFレンズであるミルバスです。写りも他の2本のズームレンズと比較しても頭一つ抜きん出ていると感じました。

同じ焦点距離135㎜でも最短撮影距離が違うと実にこれだけの違いがあるのです。
もちろん先にも述べたとおり単純に『寄れずレンズ=良いレンズ』ではありませんが、やはりワーキングディスタンスの自由度が高いほうが使い勝手は間違いなく上がりますし、表現の幅も寄れるレンズのほうが利点が多くなります。
残念ながらミルバスは単焦点のMF、手振れ補正も無しということで利便性を犠牲・放棄しているレンズなので私は山では積極的には使っていません。

撮影地に合わせたレンズ選択
特に山岳地帯での撮影では撮影者がカメラを構えることができるポジションというのは下界での撮影地と比べて制限があることがほとんどです。寄るにしろ引くにしろ、安全面自然保護の観点から好きなように撮影ポジションをとれるとは限りません。その制限の中で多くの表現方法を選択できるかできないか、これは残せる画も大きく変わってくることになります。

トリミングと被写界深度

「寄れないのならいっそ高画素機で撮影してトリミングすれば…」
と昨今の高画素機が好まれる風潮もあり、そう思われるかもしれません。
しかし実際に被写体に寄って撮影された画と、引いて撮影したものをトリミングした画とでは画角を揃えたとしても全く異なった画となります。私は決して高画素機を否定する人間ではないのですが、このことをしっかり理解した上でトリミングすべきだと思います。

そしてボケについても寄れるメリットは表現の幅を広げてくれます。
確かに開放f値が小さいほど被写界深度は浅くなってボケやすくなります。大口径単焦点レンズの開放f/1.4と開放 f/4のレンズでは、被写界深度は全く違います。しかしf/4だとしても被写体に対してグッと寄ることで被写体と背景の距離関係が変わってくるのでボケの表現も十分可能になってきます。

開放 f/1.4クラスの大口径単焦点レンズはそれほど寄れないレンズも多く、浅い被写界深度と引き換えに意外と使い勝手の部分でもどかしさを感じるレンズが多いのも事実です。レンズ選択の際、焦点距離や明るさ、収差の無さ、重量、MTF曲線も重要なポイントですが、この最大撮影倍率や最短撮影距離についてもしっかりと考慮する必要があります。



画質も良好

必要にして十分

もっとも気になるであろう画質の面ですがこれは必要にして十分と言えると思います。解像感はもちろん、クリアでヌケの良い透明感ある写りだと思いますし、画質の面で VRⅡに大きく水をあけられているという印象はありません。

よくネットなどに開放ではピント面のシャープさに欠けるという情報もありますが、最短撮影距離での撮影では確かに柔らかめの写りですが、私には寄れるというメリットの方が大きいと感じていますし、もう少し引いた画では十分シャープな画質を得られます。ただやはり、とにかく開放からカリカリにシャープに写すレンズを望んでいる方には向かないかもしれません。

逆光耐性はさすがに最新のレンズには敵わないかもしれませんが、実はVRⅡもけっして逆光耐性が良いと思ったことがありません。強い光が直接レンズに被ってくる場面ではしっかりとハレ切りしなければいけなかったし、逆光耐性に関しては f/4Gが大きく劣るという印象はあまり持っていません。むしろ色乗りはこの f/4Gのほうが良い印象ですから、ひょっとしたら逆光耐性(迷光処理)はVRⅡより勝っているのかもしれません。

付属のフードは花形ではなく円形フード

後述しますが特に屋外での望遠域の撮影ではレンズの解像度よりも気象条件のほうがより撮像に影響を与えるので、ナノクリスタルコーティングが施されたこのレンズは必要にして十分な画質という印象です。D5のほか、4,500万画素クラスのD850においても良好な画を残してくれます。

【※レンズの清掃】
私はレンズ清掃(前玉)には手軽できれいに清掃できるハクバの『レンズペン』を使用しています。

周辺減光

周辺減光はテレ端側でもワイド端側でも明らかにVRⅡを f/4にまで絞った状態での方が良好なのは当たり前ですが、やはり開放撮影では結構気になる部分かもしれません。もちろん絞れば改善するのですが、割り切ってこの変化をうまく表現の中に取り入れるくらいの使い方が良いかもしれません。

①200㎜での周辺減光例

f/4G (200mm f/4 時の周辺減光)

VRⅡ(200mm f/2.8 時の周辺減光)

VRⅡ(200mm f/4 時の周辺減光)

②70㎜での周辺減光例

f/4G (70mm f/4 時の周辺減光)

VRⅡ(70mm f/2.8 時の周辺減光)

VRⅡ(70mm f/4 時の周辺減光)

ご覧のように開放が f/4のレンズの周辺より、1段絞って f/4にセッティングした開放 f/2.8のレンズの周辺のほうが明らかに画質が上と言ってよいでしょう。開放 f/2.8ズームのアドバンテージはもちろん f/2.8で撮影できる点ですが、f/4時は1段絞っているということも大きいと言えます。これは口径食(いわゆるレモン型の玉ボケ)の改善にも寄与します。

運用面でのポイント(欠点も)

三脚座は必要か

さて、このレンズは VRⅡのように使い勝手の良いしっかりした三脚座というものが付属していません。VRⅡの三脚座は堅牢な作りで、筐体にセットされた可動部分(回転する部分)は外れずに、足の部分だけが外せる仕様になっています。

一方、f/4Gの三脚座は回転する部分ごと外れる仕様になっています。
この三脚座(三脚座リング『RT-1』)は別売り扱いとなってますが、私は三脚座は使用せずに運用しています。というのもこの純正の三脚座自体がけっこう緩みやすいという感想を持っておられる方がネット上にて多く散見されました。自分で確かめたわけではないので何とも言えませんが、このレンズの重量なら三脚座が無くても特に問題は感じません。

むしろD5やバッテリーグリップを装着した中級機での使用ならば、重量バランスの中心点が三脚座の位置ではなくボディ側にあります。それほどこのレンズの軽量さは際立っているのです。確かに三脚座を装着していると縦横の切り替えが光軸をずらすことなく行えるのが良い点ですが、私はカメラ本体にアルカスイス互換のL型ブラケットを着けていますので、縦横の切り替えはそれほど苦になりません。

この三脚座に関しては、三脚を使用して縦横を頻繁に切り替えるような撮影が多い方には必要なアクセサリーだと思います。

テレコンの併用(欠点)

たいへん気に入っているレンズですが唯一の欠点・不満点がテレコンを併用する場面です。
VRⅡでは1.4倍テレコンは常用できるくらいのパフォーマンスを発揮してくれましたが、残念ながらこのレンズに装着するとAFのスピードが顕著に低下し、AFの迷いも出てきます。この部分に関しては圧倒的にVRⅡのほうが良い印象です。

もともと VRⅡのAFは爆速で正確、テレコン併用時もじゅうぶんな速さと精度を保っていましたし、画質低下もあまり感じられませんでした。この辺りはさすが開放 f/2.8のレンズだなと思っています。f/4Gに1.4倍テレコンを装着すると画質低下を感じますが、それは光学的な部分だけでなくAFの精度不足の要素もあるのかもしれません。ひょっとしたらマニュアルでピントを追い込めばシャープな画が得られるかもしれませんが、テレコンを使用するときはたいていAFが必要な場面のことが多いように思います。私が感じた印象としては VRⅡに1.7倍テレコンを装着したときの印象とでも言いましょうか、1段分程度の差があると感じました。

動きモノではなく遠景をグッと引き寄せて望遠で風景を狙う場面では先にも述べましたがテレコンを併用するよりいっそ高画素機で撮影してトリミングしたほうが良いかもしれません。
それは、

①遠景のみを狙うのであれば被写界深度はそもそも関係ない
②光学的に焦点距離を伸ばしても撮影対象と撮影地の距離が離れれば離れるほど大気の影響を受けてしまう
という2点があるからです。

野外での撮影となる山岳写真では遠景の山をクローズアップして撮影する場面においてのシャープさは光学系よりもその日の気象条件に大きく左右されます
その日の空の透明度、大気の揺れ、カゲロウ、最近では春の黄砂など、こればかりはどうすることもできません。いくら光学的に寄ったとしても撮影対象との間に大気が介在する以上、その大気ごと拡大しているわけなので高画素機によるトリミングのほうが有利な場面もあります。

テレコン併用を前提に考えているならば f/2.8のズームをおすすめしますし、体育館で行うような屋内スポーツなどを撮影する場面なんかは間違いなく f/2.8ズームをおすすめします。
私の場合、f/4Gでのテレコン併用は1.4倍でも緊急用、どうしても焦点距離が必要になる場面のみに限定して使用しています。

AF-S TELECONVERTER TC-14E Ⅲ/TC-17E Ⅱ

手振れ補正の恩恵

本レンズには4段分の手振れ補正機構(以下VR)が搭載されています。
VRⅡは3.5段分でしたからわずかに強力なVRが備わっています。VRはそれこそ手持ち撮影時に大きく貢献するものですから、この f/4Gには相性の良い機能です。
私の印象ですが VRⅡはファインダー像の安定程度の恩恵でしたが、このf/4Gではその軽量な筐体を活かした手持ちスナップが多いのでこのVRの恩恵は非常に大きいものがあると感じました。

手振れ補正4段分は必要十分なスペック

VRⅡではそれこそ明るさを活かしてSSを稼ぐことで手振れ防止という使い方もありましたが、f/4Gはそもそも1段分暗いレンズですし、それこそスナップでの使用が多いレンズですので積極的にVRを使っていきたいと思わせてくれるレンズです。ただやはり私はVRに頼り切るには不安な部分もあったりで、光量が落ちた始めた時間帯での撮影では素直に三脚を使用しています。

まとめと今後の望遠ズームへの期待

現在私は山岳撮影において望遠撮影ではこの f/4Gのみを使っていてVRⅡは防湿ケースの肥やしになっています。最近では下界での風景撮影というものもほとんど行っていないためVRⅡの出番はありませんし、以前は天体写真でVRⅡを使っていましたが、その座もMilvus135mmに明け渡した状態です。

おそらくVRⅡは今後の機材入れ替えの際の原資になるかと思いますが、これほどの素晴らしいレンズを引退(大げさ?)にまで追い込んだ f/4Gは本当に素晴らしいレンズだと思っています。どうしても各メーカーを代表する看板的な存在の大三元望遠ズームの陰に隠れて f/4望遠ズームは存在感が薄いですが、今回改めてその存在意義の大きさを思い知らされました。

本記事ではこのレンズの低価格というもう一つの大きな利点についてはとくに触れませんでした。それは使用用途によってはけっしてすべてがすべて低価格帯<高価格帯ではないということもあるからで、むしろ精神的なものも含めると低価格帯>高価格帯もあるからいうことです。

もちろんこのレンズを導入してからそれほどの使用歴があるわけではないので耐久性の面は私にはまだ分かりませんが、機材を現場で手荒に扱う私の使用に耐えられればこのレンズへの信頼感は揺るぎないものとなると思っています。

この記事を執筆している現在、Zマウントの70-200㎜望遠ズームは f/2.8のものしかリリースされていません。しかしこのZの f/2.8ズームはFマウントのものと大きさ・重量がほとんど変わらずでした。今後は避けることのできない個人的な体力の低下を考慮し軽量化を進めたいと思っていますので、Zマウント版の f/4望遠ズームも期待したいところですが、残念ながらレンズロードマップには掲載されていません。

私はZシステムの優位性はZレンズにこそあると思っているので、ZのボディにFマウントのレンズを装着するのはもったいないと思っていますし、それなら現状のレフ機での撮影で良いではないかと思っているので、もう少しFマウント機のお世話になりそうと思っています。