AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

CAMERA&LENS

今から12年前(2007年)に販売開始された本レンズ。写真をやっているとレンズの選択には常に悩まされるところですが、私もこのレンズを使うようになるまで様々な試行錯誤をしてきました。ですが今のところ標準域はこのレンズに任せるようになりました。

山岳写真を中心としたネイチャーフォトや星景写真、星野写真で使用していますが、本レンズの長所や短所、そして私なりの主観を中心とした評価をまとめたいと思います。

今更感がかなりあるレンズですが、レンズはデジタルカメラに比べれば長く使えるものですし、販売されてからかなりの年月が経っているので中古市場にも豊富にあるということで、中古の購入を検討されている方も多いと思いますので何かご参考になれば幸いと思います。

一時新型と併売されていましたが現在はすでに旧製品扱いになっていますので、基本的には中古で手に入れるしかありません。(2019年10月現在)

目次

  • 標準域レンズの模索の旅
  • 開放f値2.8固定の強み
  • よく考えられた鏡筒
  • 手振れ補正無しという“利点”
  • 近接撮影が得意
  • 画質と天文適正
  • 各種操作・その他
  • まとめ

標準域レンズの模索の旅

私が撮影する山岳を中心としたネイチャー系の写真ではやはりメインの焦点距離は広角から中望遠となります。いわゆる一般的な標準域のレンズがメインとなります。同じネイチャー系でも野鳥や野生動物となると最低でも400mm以上、できることなら600mm以上の焦点距離が欲しいですし、たとえば建築写真であれば広角がメインとなります。なので撮影対象によってメインの焦点距離は変わってくることになります。

メインレンズは最も使用頻度が高くなるので総合的な判断をしてレンズを選ばなくてはなりません。野鳥なら望遠レンズの、建築ならば広角レンズの、そして山岳写真ならば標準レンズの総合的な性能を判断して選びたいものです。

AF-S NIKKOR 24-85mm f/3.5-4.5G ED VR

以前、私は開放F値変動のキットレンズにもなっている24-85mmのGタイプを使っていました。このレンズはコンパクトで軽量、比較的安価で手に入るので気軽に使える標準レンズでした。

ただその分不満点も多くすぐ手放してしまいました。

  1. やはり開放F値が変わってしまうのは使い勝手が悪い
  2. 広角端および望遠端での歪曲収差が大きい
  3. そもそも広角端での周辺部が解像しない
  4. 近接撮影でのピント付近の解像度が悪い
  5. 色収差が大きい

以上のような点が特に気になりました。

せっかく美しい山岳風景を目の前にしているわけですから、どうせならもっと綺麗に残したいと思うようになりました。軽さは気に入っていたのですが、さらなる画質の向上を図るため次のステップに進むことにしました。

単焦点か?ズームか?

24-85mmGを手放し次に白羽の矢を立てたのは単焦点レンズでした。やはり画質面での品位を考えたとき、どう考えても単焦点レンズに軍配が上がるだろうと…。

幸いNikon Fマウントの単焦点レンズのラインナップには二つのラインが存在しています。f1.8の比較的安価なシリーズと全てにナノクリスタルコーティングが施された高級ラインのf1.4シリーズです。私は標準域のすべてを単焦点でカバーしようと4本のレンズを揃えるつもりでしたので、以下のf1.8シリーズの単焦点を手に入れました。(f1.4で揃えたらとてつもない金額になってしまいます)

  1. AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED
  2. AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
  3. AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G
  4. AF-S NIKKOR 85mm f/1.8G

多少の不満点はあったものの、さすがにその焦点距離に最適化された設計だけにキットズームとは次元の違う写りをしていました。ヌケの良さ、星を撮る際に大きなアドバンテージとなる明るさ、コンパクトで軽量、歪曲収差の少なさなどさすがに単焦点は良かったです。

しかし、『レンズ交換』というのが唯一にして最大の欠点でした。

山は自然保護や安全面の観点から基本的に登山道を歩かなくてはなりません。寄ることも引くことも登山道という限られたスペースの範囲内でしか出来ません。寄ることも引くこともできない場所ではレンズ交換して対処することになります。風が吹こうが埃が舞おうが、いちいちレンズ交換しなくてはいけません。これが実際やってみるとかなりの負担になります。体力的な負担ならまだ良いですが交換に時間も取られてしまいますから、撮りたい瞬間を逃すことも多くなってしまいました。

たとえば『ここからあの方角に向かって〇mmの焦点距離で撮る』というのがあらかじめ決まっているのなら単焦点レンズはその威力を如何なく発揮しますが、そうでないと交換する手間のリスクのほうが大きくなってしまいます。

フィルターワークの受難
単焦点レンズを何本も持つということは、同時にフィルター径の違うレンズを何本も持つことにもなります。これもかなりの手間でステップアップリングなどで対処しなくてはならず、フィルターワークにも影響がでてしまいます。

当時私は高画素機の部類だったNikon D810を使っていました。その高画素を活かそうとクロップ機能を使って単焦点レンズを擬似的にズームレンズとして使うこともしてみました。しかしそれではせっかくのフルサイズセンサーの強みをスポイルすることになってしまいます。

D810の場合1.2倍と1.5倍のクロップ機能を備えています。
・20mmレンズ→24mm→30mm
・35mmレンズ→42mm→52.5mm
・50mmレンズ→60mm→75mm
・85mmレンズ→102mm→127.5mm
画角のみで言えば20mmから130mmまで擬似的に隙間無く埋めることが出来ますが、そもそもクロップしてしまったらフルサイズセンサーをもつ意義もなくなってしまいます。

山岳撮影は下界でのスナップとは違います。私も下界でのスナップ撮影ならば標準域は単焦点を使うかもしれません。ある程度自由に自らのポジションを変えることが出来ますし、何と言っても単焦点であれこれ考えたり、感性の赴くままにフレーミングするのはとても楽しいものですから。しかし、こと山岳撮影においては単焦点レンズでの運用に限界を感じました。

さて、どうしよう?

それらの経験を踏まえ出てきたひとつの回答がAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED という選択でした。

開放f値2.8固定の強み

大三元レンズの最大の強み、開放f値ズーム全域2.8。これは使ってみればその恩恵の大きさを感じます。当時私は夕景や星景写真以外では『絞り優先モード』で撮っていたことが多く、開放撮影時にズームアップしてもシャッタースピードが変わらないなど、とにかく余計なことを考えずに撮影に集中できることにとても助けられました。

単焦点ほどの明るさではありませんが、ファインダーを覗いたときの明るさもどの焦点距離にしても変わりません。薄暗い時間帯での撮影も多い山岳撮影ではこの視認性はとても大切になってきます。

開放f値固定という条件ならばより安価なf4の小三元ズームも選択肢にはありますが、この1段分の明るさは体感的にはかなり大きな違いがあります。

星空の撮影も星野写真であれば単焦点レンズで撮るほうが利点が多いですが、『星景』となると画角に景色を入れる関係からズームでなければ厳しい場面が多いです。この部分をどうしても画角に入れたいとか、逆に画角から外したいとか。その時にズーム全域で開放f値が2.8と4ではまるで違ってきます。1段分とはつまりf4で30秒かけて撮ったものをf2.8ならば15秒で撮れるということです。

よく考えられた鏡筒

このレンズは他メーカーから出ている同スペックの大三元標準ズームとは鏡筒の作りが少し違います。他メーカーのものはどちらかというと太くて短めな“ずんぐりむっくり”とした作り。一方ニコンのレンズは細めで長い作りになっています。

これがニコンが狙ったものなのか、もしくはレンズの構成上のため長くなったのか分かりませんが、構えたときに抜群の安定度を誇ります。他メーカーの作りのほうが比較的コンパクトなので持ち運ぶ際は助かりそうですが、このレンズは構えてレンズに手を添えると鏡筒の太さ、長さのバランスがとても良くて、重さも分散されているように感じて疲れにくいとさえ感じます。

D5とはバランス面でベストマッチング

そしてこの大ぶりのフードが良く作られています。フード自体は肉厚でしっかりとした作りという程度なんですが、装着位置がレンズの前面のフィルター枠付近ではなくて鏡筒に作られた溝に装着する仕様になっています。なのでズームしてもフードごと動くのではなく、フードは固定した状態でレンズ部分だけがフード内で前後します。遮光性はもちろん、レンズの保護という観点でよく練られている仕様だと思います。

一般的にズームレンズは望遠側にズームするとレンズが前面に繰り出すイメージですが、このレンズは広角側(24mm)のときにもっとも繰り出す仕組みです。
フード着脱もボタン式になっていますので、不意に外れたり中途半端にはまったりせずにしっかりと着脱ができます。

手振れ補正無しという“利点”

このレンズは12年も前に販売開始になったものなので、もう今では旧製品扱いのレンズです。すでに後継機となる AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR というレンズが現行品として2015年から販売されています。

後継機は新しくGタイプではなくEタイプ(電磁絞り)となり、加えて手振れ補正機構(VR)が搭載されました。

手振れ補正機構についての個人的見解は以前に記事にしましたのでここでは割愛いたしますが、新型になったことで案の定重量も増え、鏡筒も肥大化し、それに伴いフィルター径も77mmから82mmとなりました。

手振れ補正機構の功罪

『バランスが良い』というのはあくまで撮影時であり、やはり持ち運ぶにはただでさえ長くて嵩張ると感じていますが、新型になってますます長くて嵩張る大きさになってしまいました。なんと長さでは新型のフレネルレンズを採用したサンヨンより長くなっています。

肝心の新旧の写りの比較はしていませんし、そのあたりはMTF曲線などから推測することしか出来ませんが、価格ももちろん上がったこともあり果たして買い換えるだけの価値があるのかは分かりません。私はこの焦点域ならば手振れ補正は必要ないと思っていますので、そのぶん写りや価格など他の部分の充実を図って欲しかったと思っています。

手振れ補正が無いことで故障リスクも少ないですし、鏡筒にあるボタンもAF/MFの切り替えボタンのみで掴みやすいですし、しばらくは現行品への買い替えは無いと考えています。

手振れ補正機構が無いというメリットは、後に述べる天体撮影においても『変に可動する部分が無い』という点で安心感があります。

近接撮影が得意

解像力は必要十分で、とくに近接撮影でも解像力は保たれています。キットズームの24-85mmはこのあたりが特に不満がありました。

本レンズの最短撮影距離は0.38m~0.41m(焦点距離により変動)。そして最大撮影倍率は0.26倍で、いわゆるクォーターマクロの領域です。ただ単に寄れるだけではなくピント面は開放でも芯があり十分シャープで、半段絞ればカリカリにシャープに写ります。

山では遠景の山々だけでなく足元で可憐に咲く高山植物も撮りますから、このシャープさはたいへん気に入っています。以前は105mmのマクロレンズも使っていましたが、本レンズの万能性と軽量化のため今は手放しています。

このレンズ最大のセールスポイントはその万能性

私は現在、望遠ズームは70-200mm f2.8の旧型(VRⅡ)を使っていますが、これが全然寄れないという大きな欠点抱えていますので、その欠点を補う上で本レンズの『寄れる』ところはかなり大きなポイントです。

画質と天体適正

レンズの写りに関しての評価軸はいろいろあると思います。アウトフォーカス(ボケ)の美しさや、遠景や近景それぞれでの解像力、周辺減光、逆光耐性、歪曲収差、色収差など。海外のレヴューサイトでは定量化した数値で評価していますが、そもそもレンズの評価は数値ですべて決まるものではないですし、やはり実写して自らの目で確認する必要があります。

私はひとつの方法として星を撮ってみるというのが手っ取り早いかなと思っています。もちろんアウトフォーカスの評価とかそのレンズ特有の空気感のような抽象的な部分の評価は出来ませんが、少なくともそのレンズの周辺減光の度合いやコマ収差、歪曲収差、色収差などは無限遠の点光源である星を撮れば一発でわかります。

評価にあたって基本的には赤道儀を用いて追尾撮影します。三脚固定の数秒露出での撮像で評価しても良いのですが、やはり追尾したほうがよりシビアに評価できますし、実際に天体撮影では追尾しますので。

さてこのレンズですが、広角側の24~35mmは周辺の星がかなり伸びてしまいますしサジタルコマフレアも露骨にでますが、望遠側の50~70mmは1段絞れば星景写真であればそこそこ使えるという印象です。軸上色収差は結構少なくて、以前使ったことのあるf1.8の単焦点よりも良いくらいです。f1.8の単焦点はどれもとにかくフリンジ(青ハロ?)が派手に出ていました。

世の中にはこのレンズに勝るレンズは山ほどあるとは思いますが、星に関しては追求しだすときりが無い分野なので、少なくとも50~70mmの焦点域はこのレンズでも良いかなと思っています。(もちろん最新設計の単焦点レンズ群には敵いません)

星ではない一般的な対象での画質は必要十分な画質であると言えます。比較的逆光耐性もよくフレアも良く抑えられていると思います。ナノクリスタルコーティングよるズームレンズでありながらクリアでヌケの良い画質であるところは好感が持てるところです。

各種操作・その他

フィルター径

フィルター径は77mmです。このフィルター径は各社大三元レンズで多く採用されている径ですので、各種フィルターの使い回しには適しています。

しかし先にも述べましたが後継機種のVR付きのレンズはフィルター径が82mmになりまたし、Zマウントの24-70mm f2.8も82mmになりました。昨今の高画質化・高画素化の影響もあり、キヤノンやソニーも同じような流れなので今後は82mmがスタンダードになりそうです。

ちなみにマウント側である後ろ球は、けっこうぎりぎりまでレンズが来ていますのでレンズ交換の際、とくに夜景や星を撮るような暗い場所では傷つけないように注意しながら行う必要があります。

ズームリングやフォーカスリング

ズームリングは軽くも重くも無くスムーズなズーミングが出来ます。超望遠ズームにありがちな、レンズを下に向けていると勝手にレンズが伸びてしまうようなこともありません。

フォーカスリングはAF時でもリングを回せばシームレスでMFに切り替わるところは最近のどのレンズも同じです。そうではない昔のレンズはとても面倒でした。

しかしそのためなのかは分かりませんが、高価格帯のレンズにしてはフォーカスリングはトルク感がなく軽いです。構造上無理なのかもしれませんが、ツァイスのMFレンズ並みにとまでは言いませんが、シグマのArtラインのようにもう少し滑らかなトルク感が欲しいです。

フォーカスリングは遊び無く回ってくれますが、星を撮るときのピント合わせは至難の業です。そもそもMFレンズほどの広い回転角もありませんし、動き自体が軽いので本当に細かい操作は無理があります。ジャスピンからほんの少しだけ回して赤ハロや青ハロを抑える、といったニッチな技は使えそうにありません。

PLフィルターの操作

天気の良い日中の高山は光の乱反射が強いのでPLフィルターを使っている方も多いと思いますが、フィルター枠を回転させるときにフードが深いためとても操作しづらいです。さらに回すときに結構力を加えるのでレンズを押し込んでしまい焦点距離が勝手に変わってしまいます。フィルター枠を回転させるときは、右手の指でズームリングを押さえるなど少しコツが必要です。

こちらも構造上無理なのかもしれませんが、70-200mmみたいにインナーズームなら最高なんですが。

まとめ

いろいろと回り道をして結局このレンズに行き着いたわけですが、回り道があったからこそ、このレンズの良さも分かるのかなとも思います。

フードを含めると決して小さくないですし、写りはズームレンズとしては良いほうですが単焦点レンズほどのインパクトはありません。

このレンズの強みは何と言っても『万能性』です。引いて良し、寄って良し。決して100点満点の写りをするわけではありませんが、常に80点の写りは保証してくれます。そしてその写りと同様に質実剛健な存在感にはある種の安心感さえおぼえます。

『これさえ持って行けばいかなる状況でも最低限の成果は残せる』

尖った性能こそありませんが万能性と安心感、このふたつがこのレンズの真骨頂のような気がします。新型の24-70mmでさえもう発売から4年経っていますし、2019年最新のZマウントの大三元も出ていますが、いまだ現役のレンズです。