AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

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これまで手持ちのニッコールレンズのうち、標準ズームのAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED と望遠ズームのAF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ を私なりの主観を中心に取り上げて来ました。
今回はいわゆる『大三元ズーム』の最後のひとつ、広角を担うAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED を取り上げます。

本レンズは2007年11月に販売が開始されたレンズで、もう今年で13年目を迎えます。発売当時はセンセーショナルなズームレンズと持て囃され、ニッコールの中では名実ともに『神レンズ』と言われていました。

さすがに今ではこのレンズに匹敵する、あるいは超えるような超広角ズームレンズが様々なメーカーから発売されて唯一無二の存在感は薄れてきましたが、それでも今もなお人気の高いレンズです。

過去に取り上げたレンズ同様、このレンズも “今さら感” がかなりありますが、やはり中古市場でも豊富に球数のある本レンズを導入しようか迷われている方々に向けて取り上げてみます。標準ズームや望遠ズームの記事をまだ読まれていない方がおられましたら、以下にリンクを張っておきますのでご興味がある方はどうぞそちらもご覧になってください。

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ

(目次)

  • 山岳写真における広角レンズの役割
  • 広角レンズにおけるズームと単焦点
  • 単焦点からズームレンズ AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED へ
  • 『16-35』か『14-24』か
  • 14-24の“デメリット”
  • 14-24の画質
  • あえてDX機(APS-C機)で
  • まとめ

山岳写真における広角レンズの役割

とにかく“広く”

広角レンズはご承知のとおり人間の視界を超えた広い画角が大きな魅力です。画角が広いだけにややもすると『単調』な画になってしまう嫌いがあって、うまく使いこなすには撮影者のセンスや技量が必要になると言われています。まさに『広角は撮影者の腕の見せ所』という感じです。

広角は他の画角のレンズと同様に様々なジャンルに使われますが、私はやはり山での使用がメインということで山岳写真に絞ってお話します。私がよく撮影に行く北アルプスなどの山々はとにかくスケールが大きく雄大な景色が大きな魅力です。

連なる3,000m級の山々の見事な稜線。
深い谷に流れ込む清らかでスケールの大きい沢。
抜けるような広大な空とそれを彩る雲。
尾根から見下ろす美しい雲海。
そして圧巻の星空。
どこを見渡しても『すべてが被写体、360°が撮影対象』になります。

その雄大な景色をそっくりそのまま1枚の写真として納めるには一般的な標準ズームの広角端である24mmでは全く足りません。眼下の緑が美しい深い谷と、雄大な青い空に浮かぶ夏雲を一緒に収めるには『20mm、18mm、16mm…』とどんどんと欲求が湧いてきます。雄大な風景を撮影対象とする山岳写真と広角レンズは非常に相性の良い組み合わせと言えます。

涸沢の一コマ。14mmならば天の川とテント場を一網打尽。

パースの強調

広角レンズはなにも単に広く写せるだけではありません。
『近景と遠景のパースを強調できる』というもう一つの重要な役割があります。パースを強調することによってとてもダイナミックな画作りが可能になります。

例えば山岳写真では足元に咲き誇る高山植物やゴツゴツした岩のオブジェなどを近景にして、遠景の山の稜線や尾根に向かって延々と続く登山道などを対比させる手法が良く使われます。撮影時は近景にグッとよって遠景との距離の差を強調することで立体感のあるダイナミックな写真になります。

『近いものはより近く、遠いものはより遠く』とそのパースの差は焦点距離が短くなればなるほど大きくなっていきます。

広角レンズにおけるズームと単焦点

一般的には焦点距離24mm辺りからが広角レンズと言われています。スマートフォンによく使われている28mmや、私が最もスナップで使いやすいと感じる35mmは準広角という部類のレンズになります。広角レンズを導入するにあたりズームレンズにするか単焦点レンズにするか、というのが大きな悩みどころになるかと思いますが、私は広角に関しては完全に “ズーム派” です。

以前に標準レンズを取り上げた時にも書きましたが、山岳写真においては私はズームレンズのほうが間違いなく扱いやすいと思っています。ただ、確かに標準域や望遠域ならまだ単焦点でも工夫次第で運用できると思いますし、単焦点派の方々も山で結構お見受けします。特に望遠系は『風景を切り取る』という使い方になるので、例えば135mmとか85mmなどの単焦点で気の赴くままに風景を切り取るのも面白そうです。

しかし広角となると話が違ってきます。
とくに18mmを超えるような広角は何でもかんでも画角に入ってきてしまいます。昨今の高画質・高画素のカメラならいっそ『広く撮っておいて後でトリミングする』という手法も可能ですが、私は『構図に関しては現場ですべて決めるべき』と思っていますので、どうしてもズーム一択になってしまいます。

山岳撮影にはズームレンズが使いやすい

私は広角に関してはそんなズーム派の人間ではありますが、唯一シグマが出している14mm f/1.8という単焦点は使ってみたいです。あの画角でf/1.8というハイスピードで撮れるのは現時点ではあのレンズしかありませんから、天の川を入れた星景写真では大活躍するでしょう。

星景写真は基本的にはレンズを夜空に向けて使うものですので、超広角と言えども画角の大部分は天の川を網羅するような星空なので、地上の入れたくない余計な部分をそもそもあまり気にする必要が少ないですし、それよりも14mmの超広角でしかもf1.8で撮れるメリットのほうがはるかに大きいと思います。

単焦点からズームレンズ AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED へ

AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G ED

以前に書いた標準ズームAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED の記事でも取り上げましたが、私は以前AF-S NIKKOR 20mm f/1.8G EDという広角単焦点レンズを使っていました。その頃はまだシグマの14mmの明るい単焦点レンズは出ていませんでしたから、ニコンの純正でしかも明るい広角単焦点ということで発売開始当初に予約して購入しました。

スペック的にまさに『これで天の川を撮れ』と言われているような気がしてしばらく使っていましたが、やはり “単焦点” というところと “20mm” という圧倒的な超広角でもない中途半端な画角が風景ではとても使いづらくてしばらく使った後に手放してしまいました。星景用に持っていても良かったんですがそうそう天の川を撮影するチャンス自体も多くありませんから、やはり使い勝手の良いズームレンズを探し始めました。

寄り道せずに AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED 導入

ニコンFマウントの現行のフルサイズ用広角ズームレンズですと以下の4機種が候補に挙がると思います。

・AF-S NIKKOR 18-35mm f/3.5-4.5G ED
・AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR
・AI AF-S NIKKOR 17-35mm f/2.8D IF-ED
・AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
このうち17-35mmはすこし古い設計のDタイプの大三元広角ズームなので、他のレンズに比べ特に広角端の描写はかなり甘いと言われています。実際にMTF曲線を見てみても如実に周辺に行くに従い解像力が落ち込んでいるのが見てとれるので、敢えてこのレンズを選ぶ理由はないように思いました。

確かに中古を探せばかなり安価に手に入れられるかもしれませんが、それなら私であればf値が変動してしまいますが18-35mmを選ぶと思います。ただ18mmというのは程よい広角とは思いますが、やはりもっと広いほうが表現の幅は広がると思いますし、少なくとも16mmは欲しいところ。

ということで『16-35』『14-24』かとなりますが、これはもうそれぞれの撮影者の考え方、求めているもの、で決まってくると思います。

『16-35』か『14-24』か

この記事を読まれている方でこの2つのレンズで迷われている方は結構いらっしゃるんではないでしょうか?実際の私も単焦点からズームへ切り替えるときにこの二つのレンズで迷いましたから。私は14-24を導入しましたが、私がこちらにした3つの理由を簡単に述べたいと思います。

簡単にスペックを比較してみます。

14-24mm f/2.8G ED 16-35mm f/4G ED VR
発売 2007年11月 2010年2月
レンズ構成 11群14枚(EDレンズ2枚) 12群17枚(EDレンズ2枚)
手振れ補正 無し 2.5段分
最短撮影距離 0.28m(18~24㎜時) 0.29m(16㎜、35㎜時)
最大撮影倍率 0.14倍 0.24倍
フィルター径 装着不可 77mm
質量 約970g 約680g
中古市場価格 約12~15万円前後 約6.8~7.2万円前後

血の1mm

レンズの焦点距離の差は広角になればなるほど大きな違いになります。例えば同じ1mmの差でも200mmと199mm、16mmと15mmでは写る画の差が全く違ってきます。望遠で1mm違っても人の目ではほとんどわかりませんが、広角の1mmの差はとてつもなく大きな1mmとなります。

投影法の関係からそうなるのですが、それが『血の1mm』と言われている所以です。14mmで写る世界はとてもユニークな画で、こればかりは広角端16mmのレンズでは絶対に表現不可能な世界となります。『14-24』にした最も大きくてシンプルな理由、それがこの『14mmで撮れる』ということです。

手振れ補正なし

そしてもう一つの大きな理由が『手振れ補正がない』ということ。
手振れ補正については私の “独断と偏見” にも似た思想があり過去にも記事にしました。

手振れ補正機構の功罪

望遠ならまだしも広角レンズには私は絶対に手振れ補正は必要ないと思っています。標準ズームにすら必要ないと思っているわけですから、広角レンズに手振れ補正機構を組み込む意味が私には理解できません。私にはただただ故障やトラブルを引き起こすだけの “頭痛の種” のように思えてしまいます。

たしかに広角レンズはほんの少しのブレが画像の中心は良くても周辺に行けば行くほど大きく影響します。しかしそもそも広角レンズは設計上どんなものでも中心に比べ周辺部はどうしても甘くなります。シャッタースピードを適切にしていれば、手振れ補正に頼らずともじゅうぶんにレンズ自体が持つ性能を発揮させることができるはずです。

f/2.8の強み

そして最後の決め手が『開放f/2.8で撮影できる点』です。
これも14mmと16mmの画角の違いと同様です。
f/2.8のレンズなら絞ればf/4で撮れますが、どうひっくり返ってもf/4のレンズはf/2.8では撮れません。
私の場合、風景はもちろんのこと星空も撮影しますから、この1段分の差はとても大きいと感じています。たとえばf/2.8で30秒で撮影した星空、これとほぼ同じ明るさで撮ろうとするならf/4ならば60秒かけて撮らなければなりません。

周辺減光の影響による実行f値などはここで考慮しませんが、16mmの超広角で撮影したとしてもさすがに60秒も露出してしまっては星像は “点像” ではなくなってしまいます。そのぶんISO感度を1段分上げれば良いと思われるかもしれませんが、感度というのはただ単に受け取った光の信号を増幅させているだけに過ぎません。天体写真にとってやはり『明るさは正義』なのです。

14-24のデメリット

いわゆる『出目金』レンズ

16-35を選択する方の多くはこの点がやはり大きな理由になり得るのではないでしょうか?Fマウントの制約上14mmでf/2.8を実現するにはこのような形状にせざるを得ないのでしょう。これはニコンに限ったことではなく、キヤノンもシグマも超広角レンズのどれもが出目金レンズになっています。出目金のようにレンズが前方に繰り出しているためフィルターを装着することができません。

そもそも私はどのレンズにも『保護フィルター』の類は着けないのですが、PLフィルターや減光フィルターは使用するのでこの点は明らかにデメリットと感じています。

あのレンズが前に飛び出ているということ自体は最初こそ精神衛生上ビクビクしながらでしたが、そのあたりは使用歴が長くなれば結構慣れてくるものです。しかしフィルターワークに制限がかかるのはやはり使い勝手が悪いです。

デリケートな使い方を要するいわゆる『出目金レンズ』

超広角レンズの中には星の撮影を想定してゼラチンフィルターをリアに装着できる機種もあります。
最近のものですとキヤノンの11-24mmのレンズはそのようなリアホルダーがありますが、ニコンの14-24mmにはありません。

そのほかの手段ですと各社から出ている角形フィルターで対応することになると思いますが、結構嵩張るし、ガラス製のものですと割れる心配もしなくてはなりません。この『フィルターワーク』に関する部分はやはり16-35mmのフィルター径77mmというのは使い勝手がとても良い筈です。

望遠端が24mm

このズーム域に関する部分は『無いものねだり』になってしまいますが、個人的にはせめて28mm、欲を言えば35mmくらいまでは欲しいです。というのも、やはり『スナップ』では28mmや35mmがとても使い心地が良いです。望遠端を欲張らずに24mmに抑えたからこそ素晴らしいレンズになっているのは理解できるのですが、普段使いでは正直言って使いづらい部分もあります。

14mmという圧倒的なパースを活かした撮影では大活躍するレンズなのですが、そもそもそのようなシチュエーションはそれほど多くはないです。よって私の所有するレンズの中では最も使用頻度が低くなっています。撮影に持って行っても使わずに単なる『重り』になることもしばしばあります。

28mmや35mmまで使えるなら使い勝手が上がって使用頻度もかなり増えると思いますが、しかしこれは先ほども書きましたが個人的な『無いものねだり』のレベルで、デメリットではないかもしれませんが。

14-24の画質

私が感じるデメリットを挙げてみましたが、この2点くらいです。
そのほかはとても気に入っているレンズで、余程のことがない限り手放したくはありません。画質も一般的な風景撮影などでは必要十分な画質だと思っていますが、冒頭にも書きましたがやはり発売からかなりの年月が経っていますし、その後にリリースされた各社の超広角ズームはこのレンズを超える画質を誇っているようです。

明るさや画角的に星景写真で使用されることも多い14-24mmですが、以前はキヤノンにこのような上質な写りをする超広角ズームが無かったことから、アダプターを介してわざわざこのレンズをキヤノン機に装着して撮影していた方も多かったようです。その辺りがいわゆる “神レンズ” と言われる所以だったのだと思います。

Fマウントでよくぞこの光学性能を達成したもの、と言えるレンズ

ただどうしても星の撮影となるとどんな優秀なレンズでも色収差や歪曲収差、周辺減光が出てしまいます。星空・天体撮影というのは無限遠の点光源というもっともレンズ性能にシビアなジャンルなのでこればかりは仕方ありません。

このレンズもさすがに14mmの広角端では結構収差が出てしまいますが、周辺減光は比較的素直なほうですし、片ボケのようなものも私の個体では見られません。もちろん最新のZマウントの広角ズームにはマウントの構造上のこともあり画質は劣りますが、逆に言うとよく制限の多いFマウントでよくぞここまでの画質のレンズを作ったものだと感心してしまいます。

あえてDX機(APS-C機)で

さて、私はこのレンズをFX機(フルサイズ機)であるD5で使っていますし以前はD810で使っていました。フルサイズ対応のレンズなので当たり前と言えば当たり前なのですが、そこをあえてDX機(APS-C機)で使ってみるのも面白い使い方だと思います。

現在はもう手放してしまいましたが、以前のサブ機はD500だったのですが、このようなDX機で使うとフルサイズ換算で21-36mmという画角のレンズになります。14mmという圧倒的な超広角はとても魅力的ではありますが、実のところなかなか使いどころがそれほど多くないというのが本音です。嵌ったときは独特の画が出てきますが、標準ズームや望遠ズームに比べれば遥かに稼働率は下がります。

D500に装着。超広角ズームをあえてDX機で使うと超高画質の広角ズームとなる

しかしDX機で使った時の21-36mmという画角はなんとも使い心地がよいレンジです。望遠端にすればスナップで使いやすい画角ですし、21mmくらいあれば大抵の広角の撮影では十分な画角かと思います。

DX機はいわゆるフルサイズのクロップになるわけですから、レンズ周辺の画質が顕著に落ちる部分は使わず、レンズ性能の高い中心部分のいわゆる『おいしい部分』だけを使うことになるので、理にかなっているとも言えます。

性能が優れた光学系、例えばタカハシの高価な天体望遠鏡やツァイスのOTUSシリーズなどは実はイメージサークルが広めにとってあって周辺部分でも画質の劣化を極力抑えている構造なので、そのAPS-C版と考えれば分かりやすいかと思います。

たしかにセンサーサイズが大きいほうがそれだけ光を取り込めるわけですが、日中の撮影などでは解像度は別としてそれほどの違いはないと感じています。

まとめ

長々と書いてきましたが、このレンズはさすがに『神レンズ』と言われていただけのことはある素晴らしいレンズだと思います。稼働率はそれほど多くはないですが、広角が活躍するであろう撮影地では必ず持って行きますし、広角の星景写真では私にとって必須のレンズとなっています。

そして2020年10月、いよいよZマウントによる新14-24mmが発売開始となります。Zマウントの大口径&ショートフランジバックが最大限生かされたかのような素晴らしいMTFを引っ提げて…。とくに14mm側の驚異的なMTF曲線はワクワクさせられますし、さらにこれだけ光学性能が上がったにもかかわらずかなり軽量化され、おまけにフロントにもリアにもフィルターが装着可能となっています。まさに新時代の幕開け、『新・神レンズ』となる予感がします。