2023年2月 近況と主な活動のご報告 (プリント制作・写真展訪問・天体遠征ほか)

DIARY

最後の記事更新(2022年11月の燕岳登山に関する記事)から少し間が開きましたので近況と主な活動報告をここでまとめたいと思います。燕岳登山から年末年始、そして現在に至るまで多忙のため撮影になかなか出かけられていませんが、主に作品制作(プリント)を中心に天体遠征へ行ったり写真展に伺ったりしていました。

ほぼ個人的な備忘録として残すのが目的の記事なのでたいへん恐縮ですが、ご興味のある部分だけご覧頂ければ幸いです。

(目次)

  • プリント2作品の制作
  • 大西慧さん写真展『logos』
  • 3ヶ月ぶりの天体遠征
  • YouTubeの活用
  • 今後のブログ運営について



プリント2作品の制作

昨年2022年の中頃から後半にかけてプリント制作を4枚同時並行して作業していましたが、そのうちの2枚を仕上げることが出来ました。

『Howling』

2022年末にかけて何かと忙しかったのですが合間合間で作業時間を捻出して、まずは1つ仕上げました。『Howling』という表題を付けた槍ヶ岳の夕景の作品です。

『Howling』(2015年撮影 – 2022年制作)

この作品は撮影自体は2015年のものでしたがなかなか満足できる仕上がり、プリントにならなくて一度お蔵入りさせて数年に渡り放置していたものでした。良い意味で言えばいわゆる “熟成” (笑)とも言われますが、それは単なる言い訳でして当時はまだプリントや現像に関して不勉強な時期であったのかもしれません。ようやく重い腰を上げて2022年の夏ごろから再び作業に取り掛かり、年末に仕上げることが出来ました。

撮影は夏の北アルプスの樅沢岳にて行い、ニコンのデジタル一眼レフカメラ『D810』に純正の35mmの単焦点レンズを付けて撮影しました。時に北アルプスの山々は我々人間が想像も及ばないような自然現象や美しい風景で観るものを感動させてくれますが、この日、この時間、この場所で出会ったこの美しい情景は今でも鮮烈に思い出されます。

今では『D810』の約3,600万画素は高画素機と言えるほどの画素数ではありませんが、35mmの単焦点レンズの描写力と相まってこの美しくも刹那的な風景を高精細に余すところなく見事に捉え切ってくれました。

プリントに使用した紙は最近ほとんどの作品でメインとして使っているお気に入りのアート紙であるハーネミューレフォトラグ308gsmを選択し、いつものキヤノンの顔料プリンターPRO-G1(純正インク使用)で出力しました。

表題『Howling』は『咆哮』という意味で、夕焼けに染まった爆発的な夏の積乱雲をバックにまるで槍ヶ岳が自らの存在を誇示するかのように咆哮しているような印象を受けたからです。

『Rendez-Vous』

『Howling』を仕上げた後、年始にかけて少し体調を崩してしまいましたが、昨年の秋に剱沢付近で撮影していた剱岳のカットも仕上げることが出来ました。こちらは最終的にモノクロにするか否かで迷っていましたが現像およびレタッチをモノクロ用に最初から練り直し、それをカラー画像とブレンドすることで独特な雰囲気、撮影時に感じた心象風景を表現できました。

その後もプリント出力に際し何度もやり直しを余儀なくされましたが、ようやく満足できる仕上がりになりました。

『Rendez-Vous』(2022年撮影 – 2023年制作)

『Rendez-Vous』という表題を付けましたが、山を愛する登山者と剱岳の刹那的な一瞬の表情との逢い引きを表現しているようで我ながら良い表題だと思っています。私はあまり人と山が同一画角に入るものはあえて撮影していませんが、やはり人が入ることで山の大きさ、雄大な存在感の対比が強調され、同時に山の包容力も表現できると改めて思いました。

撮影は剱沢の野営場付近で行い、ニコンのデジタル一眼レフカメラ『D5』に70-200mm f/4Gを装着して撮影しました。

AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR

今ではすっかり低画素の部類と言える約2,000万画素程度の『D5』ですが、豊かな諧調性は現在においても異質な存在で(FUJIFILM『GFX50Sⅱ』よりも画素ピッチが広い!)、純正の70-200mm f/4Gの見事な描写性能と相まって素晴らしい結果を私に残してくれました。

プリントにおいては用紙選択にかなり苦しみ、私から時間予算を奪っていくばかりで投げ出したい気持ちを抑えるのに苦労しました。

ハーネミューレのマット系の中でも最も高コントラストの表現が可能なフォトラグブライトホワイトや起伏が豊かなジャーマンエッチングウィリアム・ターナーをはじめ、グロッシー系のフォトラグバライタフォトラグサテンファインアートバライタも使用してみましたが、最終的にはフォトラグブライトホワイトを使用しました。少なくとも試した中では最もこの作品にマッチした紙を選択できたと感じていますが、世の中にはこの作品をもっと引き立ててくれる紙があるようにも感じています。

今後このようなモノクロに近い作品やモノクロ作品のプリント出力をいかに自分のイメージ通りに仕上げられるか、という課題を突き付けられたように感じました。

こちらも『Howling』と同様にキヤノン顔料10色のインクジェットプリンター『imagePROGRAF PRO-G1』にて出力しました。黒の締まりには定評のあるキヤノンのハイエンドプリンターですが、本作品のようなどちらかと言うとカラフルな色彩よりも輝度の諧調重視の作品ではそのポテンシャルを如何なく発揮してくれます。

・ ・ ・

以上、この2作品をまず仕上げることが出来ましたが、年間を通じてこの程度しか仕上げられないことが非常にもどかしく感じています。残りの2作品をなるべく早々に仕上げないとどんどん題材が溜まっていくばかりですし、また頻繁に撮影に出かけるような状況になったら益々制作ペースが落ちると予想されますので、そのあたりも今後の課題と感じています。

大西慧さん写真展『logos』

2023年1月中旬には、以前に当ブログでも取り上げさせていただいた渋谷区恵比寿にあります『弘重ギャラリー』さんにて行われた大西慧さん(カメラマン・写真家)の初の個展でもある山岳写真展『logos』に伺いました。

お知らせ・イベント情報 (大西慧さん写真展『logos』)

慧さんとは以前から某SNSを通じてやり取りさせていただいてはいましたが、実際にお会いするのは今回が初めてでした。(昨年の秋の立山では残念ながらニアミス!)

大西慧山岳写真展『logos』

今回の写真展では素晴らしい山のプリント作品を拝見できたことはもちろん、慧さんのお人柄もたいへん気さくで実に楽しい方で、とても有意義な時を過ごすことが出来ました。山のお話やプリントのお話、機材に関するお話など、長居させていただきながらもアッという間の時間のように感じました。

渋谷区恵比寿『弘重ギャラリー』さん。

たまたま私が伺っていたときに慧さんの親友で慧さん曰く “山の相棒” でもある、素晴らしい山の写真を撮られていらっしゃる『まさ太郎』さんもギャラリーにお見えになって、更なる濃密で楽しい時間を過ごさせていただきました。不思議なことに私を含めて3人ともNikon使いというのもある種の “そういう縁” なのかもしれません。

慧さんが使用されている山道具や撮影機材の展示も。

本展覧会開催のご苦労や、プリント制作、写真展にリンクした写真集、山道具、実際に撮影で使用されているカメラやレンズについてなど談義は尽きませんでした。予定ではこのお二人による共同展も今後企画されていらっしゃるということで、その時は是非また伺いたいと思っています。慧さんとまさ太郎さんとでは作風がかなり異なるのでどのような展覧会になるのか今から楽しみです。

春夏秋冬の星景写真の組み写真。

↓ 大西慧さんの公式ウェブサイト(ポートフォリオ)
心象スケッチ|大西慧 website

大西慧写真展『logos』




3ヵ月ぶりの天体遠征

昨年の10月以来、久しぶりに天体遠征にも行くことが出来ました。

2022年10月 天体写真遠征 (IC1396、ハート星雲、洞窟星雲)

赤道儀(CELESTRON『Advanced VX』)の不具合もあったりで前回の遠征からなかなか天体遠征には前向きにはなれない状況でしたが、冬の対象はいくつか宿題もあったので意を決して遠征しました。しかしやはりトラブル続きで改めて天体撮影の難しさを感じました。

大賑わいの妙義山麓

遠征先はいつもの妙義で新月期の快晴ということもあって今回も大盛況でした。この日はお隣で撮影されていた方々がビクセンの赤道儀を使われていて、使用感などをお聞きすることが出来ました。特に個人的に注目しているAXJ赤道儀には興味深々で、やはり頑丈な印象がありましたし “間違いの無い選択” のひとつと感じました。やはり現場での撮影の良さはこのような貴重な忖度の無い生の意見や情報を入手出来ることで、本当に有意義と感じます。

この日は寒さのためかPCのパフォーマンスが悪く、今回は緊急的に3Dビューワを常時立ち上げておき強制的にPCをハイパフォーマンス状態にしてポールマスターやPHD2を使用しました。こうしておかないとなぜかPCと繋いでいるポータブル電源の消費電力が0W表示となってしまいます。3Dビューワを立ち上げておくと13Wほどの消費電力となりソフトウェアがサクサク動くようです。ちなみに午前2時半時点で車の外気温計はマイナス6℃程度でした。

撮影対象は冬の定番、オリオン座にある『M78』といっかくじゅう座の『かもめ星雲』としました。
『M78』は過去何度かトライしていますがサンニッパで撮影するのは初めてで『かもめ星雲』に関しては今回が初挑戦でした。

『M78 & Barnard’s Loop』

撮影データ
カメラ Nikon D7100(IR-custom)
鏡筒 AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ(f/3.2)
架台 CELESTRON Advanced VX
ガイド鏡 SVBONY SV165(30mm F4)
ガイドカメラ QHYCCD QHY5L-ⅡM
ガイディングソフト PHD2
ダーク減算 RStacker(16枚)
フラット補正 RStacker(64枚)
現像  Camera Raw
コンポジット DSS(150秒×23枚 計57分 ISO1600)
画像処理 StellaImage 9 & Photoshop CC
その他
・QHYCCD Polemaster

しかしやはり赤道儀の調子が悪く、PCも寒さでこんな状況。それに加えてガイド鏡やガイドカメラの不具合もあったりで2対象目の『かもめ星雲』はガイド撮影を諦め露光時間を短めにしてノータッチに切り替えました。

画像処理に関しては特に『かもめ星雲』は彩度がドギツイ感じになってしまって、これはステライメージの色彩強調マスクのSSSによるものかもしれません。依然としてステラのデジタル現像のクセを把握できないでいます。と言うより、そもそも私はCamera Rawで現像していますので、現像処理がダブっている現在のワークフローに問題があるのかもしれません。

『IC2177 ~かもめ星雲~』

撮影データ
カメラ Nikon D7100(IR-custom)
鏡筒 AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ(f/3.2)
架台 CELESTRON Advanced VX
ダーク減算 RStacker(8枚)
フラット補正 RStacker(64枚)
現像 Camera Raw
コンポジット DSS(120秒×22枚 計44分 ISO1600)
画像処理 StellaImage 9 & Photoshop CC
その他
・QHYCCD Polemaster
・ノータッチガイド

そんなこんなでもちろん満足のいく仕上がりにはなりませんでした。天体撮影に関しては完全に打ちのめされた感じで、しばらくは暖かくなるまで天体遠征は控えるつもりで、その間にダメなところを一つ一つ潰していくことになりそうです。ただ、以前に比べてダメなりにも何とかブログネタくらいのものは残せたので、ある程度の進歩は感じられたのは幸いでした。

オリオンを迎撃中

YouTube の活用

私なりの情報発信やネットコミュニティの場は主にこのブログが中心で、そのほかSNSも多少なりとも活用しています。その中でも『YouTube』は全くもって活用できていない状況で、チャンネル開設時は意気揚々と「映像制作もやっていこう!」と思っていましたが、実際にやってみると自らの映像制作センスの無さに落胆し、撮ってはみたけど編集中に「これは人様に見せることが出来ない…」とやめてしまった素材が溜まる一方でした。

それに“スチール”“映像”を現地で両方撮影する大変さ(特に頭の切り替え)も知って、本来やりたいスチール撮影がおろそかになるようにも感じました。私はそもそも器用な部類ではないので両立は無理と判断しました。とは言え、せっかく開設したチャンネルなので何か活用できないか、と模索していました。

いまお読みになられているこのような『ブログ』と言う媒体はいわゆる昔ながらのテキストと画像が組み合わさった媒体で、ネットを介しているとは言え雑誌や新聞などと同じ形式の媒体と言えます。しかし昨今は映像配信が個人で手軽に行えるような時代になりましたし、言ってみれば『個人が放送局を持った』とも言えます。これは実はすごいことで、一昔では考えられなかったことです。なかなかテキストや画像では表現できないことや伝えづらいことでも、映像や音声をシェアすることで今まで出来なかった情報発信が出来ることになります。

さらに『ライブ配信』ではそれまで “一方通行” (情報の押し売りとも言う)であった以前のテレビのアナログ放送などと違い視聴者の方とリアルタイムにコミュニケーションをとることが出来ます。それもインターネット料金や機器以外ではアカウントさえ作ってしまえばほぼタダで配信できるすごい時代です。

実は筆者もこれを活用しようと、本記事を書いている少し前に “テスト配信” と称してライブ配信を行いました。結果は残念ながら当方の回線などの不具合もありほぼ放送事故案件、けっして褒められたものではありませんでしたが(ご参加された方々申し訳ありませんでした…)、今後はそのあたりの改善を行ってライブ配信を不定期ではありますが活用していこうと思っています。本ブログなどでは伝わらないこと、映像を交えたほうが分かりやすいこと、など積極的に利用していこうと思っています。

↓ 当方のYouTubeチャンネル(チャンネル登録はこちら)
Aquila Sky Art | YouTube

今後のブログ運営について

最後に今後のブログ運営についてですが、現在は作品制作(プリント)を優先させたいこともあって今までのように月に数記事というペースは厳しいので更新頻度を減らして、今回のようにいくつかネタがたまったらまとめて記事にするつもりでいます。個人的にも一つ一つの記事が無駄に長いと感じていたこともあって、数記事分を短めに纏めるようにするつもりです。

ただ、今まで通り北アルプス山行を伴うような大規模な撮影行や、機材に関するものなどはしっかりとした記事にするつもりではいます。

 

ちなみに、今回のこの投稿が本ブログにとってのちょうど『100投稿目』となります。これもひとえに読者様のご訪問が大きなモチベーションとなり続けられたのかなと思っております。

今後とも当サイトをどうぞよろしくお願い申し上げます。