2020年12月 天体写真群馬追加遠征(備忘録)

DIARY

毎年12月ともなると山は新雪に覆われ、白く輝きだす季節。2,000m級の山々の厳冬期は天気も安定せずなかなか雪山登山は難しくなりますので、雪山を撮影するには私にとって12月と3月の比較的冬型が弱い時期が対象になります。

ということで2020年の天体撮影は前回の11月下旬の群馬への遠征をもって最後の予定としていました。しかしここのところ体調を崩してしまい山へ行く体力が落ちていたこともあり12月の新月期も天体撮影を選択しました。

ズームレンズの限界

前回の遠征で感じた『ズームレンズの限界』
カメラレンズ、とくに大三元とは言えズームレンズはもちろん天体望遠鏡のように星を撮影することに特化したものではありません。そこを承知で『ズームレンズでも天体写真を楽しめる』をモットーにいままで AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱで天体撮影してきました。

もちろん “これから天体写真を始めてみたい” という方に向けて『必ずしも天体望遠鏡が無いと天体写真は撮れないわけではない』という訴求力はあるかもしれません。しかしやはり天体写真に限らず風景写真にしろ野鳥写真にしろ、ポートレイト撮影にしろ、スナップにしろ、どんなジャンルでも誰もが少しずつでもステップアップしていきたいと思うものです。

ということで私自身も天体撮影においてズームレンズの限界を感じたのでさらなる画質の向上を求めて天体用に中望遠の単焦点レンズを導入することにしました。実際の導入はもう少し先なのですが、春のさそり座が上がってくる頃には手中にあるはずです。

そこで今回は新しい光学系の『ファーストライト』ならぬ AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱによる最後の撮影『ラストライト』としました。

無謀なる挑戦

樽口峠や妙義など私にしてはここのところ天体撮影頻度も上がってきて、M45やバーナードループ、オリオン大星雲、馬頭、バラと主要な冬の対象は撮ってしまいました。前回の撮影からさほど間が無かったこともあり最後にどこにレンズを向けようか迷いました。

この時期の主要な対象であるカリフォルニア星雲かもめ星雲(わし星雲)魔女の横顔あたりはまだ今まで撮ったことがありませんでしたので候補でした。しかし今回レンズを向けたのは無謀にもそのカリフォルニア星雲とM45の間にある散開星団IC348反射星雲NGC1333

今まで私は有名で比較的明るい対象を撮影してきましたが、今回『ラストライト』ということで淡い対象の代表格でこのズームレンズには無残に散ってもらおうという趣旨。おそらくこの淡い領域をズームレンズで撮ろうする変わり者は私くらいだろう…。

現場での露出こそ正義

前回の妙義遠征において天体写真は『露出こそ正義』ということが骨身に染みました。私はいままで淡い分子雲、あのモクモクを表現するには画像処理テクニックが肝だと思っていました。しかしそれが間違いであることにようやく気が付きました。

もちろん画像処理による炙り出しも必要不可欠なんですが、それよりもしっかりと露出に時間をかけて撮影したものはその淡い部分がしっかりと情報として残っていました。いくら画像処理テクニックがあろうが『無いものは炙り出せない』。S/Nが良好な画像ならばその淡いところを強調してやればしっかりと立ってくれます。こんな基本中の基本のところがいままで私は分かっていませんでした…。そこで今回は淡い対象ということでとにかく “徹底的に露出する” ということを心がけて3時間以上撮影しました

無残に散る…

しかし最終的には3分が32枚でわずか計96分
ノータッチガイドということで捨てコマもあるでしょうから90枚以上撮影しましたが予想をはるかに超える捨てコマ数…。今までこれほど同じ対象に時間をかけて撮影したことが無かったので、とにかく設置の時から慎重に作業を行いました。

・三脚が沈みこまないように。
・ひとつひとつのノブをしっかりと増し締め。
・極軸合わせもしっかり時間をかけて丁寧に。
・ピントも何度も何度も確認しながら。
・撮影中は極力機材に近づかない。
今の自分に出来得る限りのことをして撮りました。しかし半分以上を捨てることとなってしまいました。

エラーの原因

今まで以上に慎重にセッティングをしましたが、なぜこれほどまでにエラーを量産してしまったのか…。

風の影響

この日は露光中こそ雲のない快晴の一晩でしたが、時折風が強く吹くことがありました。風を大きく受けるような表面積の大きい天体望遠鏡で撮っているわけではありませんが、やはり軽量なポタ赤は  “風にめっぽう弱い” というところを露呈したようでした。

たわみ

今回は写野の左にIC348、右にNGC1333というド定番の構図で撮りたかったので横構図となります。天体写真において横構図で撮影する場合は一般的な撮影とは異なりカメラを90°回転させます(南北縦構図) 。このときに縦構図(通常では横構図の向き)で使用できていたベルボンのレンズサポーターSPT-1は使えなくなってしまいます

よって70-200㎜の三脚座の1点でのみ支えることになるので、このたわみの影響は間違いなくあると考えられます。望遠鏡に比べれば短焦点であるカメラレンズとはいえ、やはり望遠域での撮影では鏡筒バンドに相当する何かしらの2点での支えは必須と感じました。

ノータッチの限界?

私はオートガイドを使わないいわゆる “ノータッチガイド” で撮影していますが、やはり高精度のSWAT200といえども300㎜相当をノータッチで180秒(3分)はそもそも無理があるのかもしれません。

時折カメラに手をかける

私は撮影においてパソコンは使いません。ポールマスターでの極軸合わせの際に使うだけで、撮影に入ってしまえばパソコンは使用していません。撮像確認はカメラ本体の背面液晶による古典的な方法で行っています。

私は8枚ずつ、または16枚ずつセットで撮影していますが、そのセットの間の画像確認のときにカメラの再生ボタンや拡大縮小ボタンに触れることがあります。もちろん露光中に触れることは無いのですが、それもエラーの大きな要因の一つかもしれません。

このような様々な要因が重なったと考えられます。

今回の星果

結局は予定していた半分以下の露出になってしまい、この領域を仕上げるにはとてつもない露出不足。もっとも倍の64枚撮影できていたとしてもそもそも足りないのかもしれませんが…。

RAWデータ(拡張子NEF)をDNG変換(DNGコンバータ)

RStackerでダーク減算・フラット補正

Camera Rawで現像しTIFFに

DSSでコンポジット

PSに取り込んだ画像が下の画像となります(便宜上明るさのみ調整)。

噂通りの星の “点” しか写っていないようなのっぺりとした画像。本当に淡くて、いままで撮影してきたどの対象とも一線を画するTIFF画像です。

そして下が画像処理を施した画像になります。

とてもとても “作品” などと呼べるような画像ではありません。
何度もレベル補正で切りつめても出てこない分子雲、散開星団IC348の右横にある暗黒星雲と褐色の淡い反射星雲はなんとか上がってきますが、画面右側の分子雲のモクモクはなかなかに手ごわい。

強調処理しているうちにいろんな “変なモノ” も一緒に強調されてきて、もはや見るに堪えないノイジーな仕上がりになっていきました…。

この対象に敗れた者の常套句『圧倒的な露出不足だった』としか言えません。

今後の課題(備忘録)

今回の追加遠征をもって3月にさそり座が上がって来るまでしばらく私の天体撮影は休止となります。その頃にはきっと新しい天体撮影用の単焦点レンズを導入しているとは思いますが、その他にもまだまだ改善できる点が多くありました。

①バッテリー問題

まずはバッテリーの問題。
いままではカメラ(ニコンD7100改)のバッテリーは純正のEN-EL15を数個持って行って無くなったら露出と露出の合間で入れ替えていました。

SWAT200のほうはモバイルバッテリー(5V )にSWAT200の推奨電圧9Vに昇圧するケーブルを繋いで動かしていました。そのモバイルバッテリーからは同時にヒーターバンドの電源もとっていたので一晩は持ちませんでした。(途中で交換)

以下でも述べますが、今後はPCも撮影の補助に使っていきたいところがあるのでしっかりとしたポータブル電源が欲しいところです。ポータブル電源は災害時にも活躍させることができるので、持っていて損はないかと思いますのですぐに導入する予定です。

②PCの導入

私は以前にも述べましたが天体撮影においては『さっと設営、さっと撮影、さっと撤収』がモットーです。機材が大型化したり複雑化したりすると撮影に行くのが億劫になってしまいそうだからです。しかし現在はQHYポールマスターを導入したことでPCを現場に持っていかざるを得なくなりました。それならせっかく持って行ったPCにも働いてもらおうと考えています。

まずは画像確認用にカメラと繋いで、カメラの背面液晶ではなくPCでテザー撮影のように確認することで機材に触れることを極力少なくしたいところです。

ニコン純正のソフトでも良いですが画像確認だけでしたらフリーのdigicam controlというソフトで十分だと思っています。

③横構図でも使えるレンズサポーター

今後導入予定の中望遠レンズには三脚座がないので、そのようなレンズでもたわみを抑えるレンズサポートは必要になってきます。そして縦構図でも横構図でもどちらでも使用可能なことが条件となります。

ベルボンのレンズサポーターSPT-1は非常に気に入っているのですが、基本的には三脚座のあるレンズでしか使えませんし、三脚座があったとしても横構図(一般撮影でいうと縦構図)には使えません。

④オートガイダーの導入?

ノータッチガイドの気楽さは捨てがたいのものがありますが、今回のように半分以上捨てコマになるようなら考えなくてはいけません。半分が捨てコマというのはある意味 『f/2.8のレンズがf4になった』のと同じなわけですから本当にもったいないことです。

幸いSWAT200にはST-4互換のガイドポート(別売のコントローラ)がありますし、実際にSWATで1軸のみのオートガイド撮影をされている方々も多くいらっしゃいます。

ただ、今の私の段階はオートガイダーを導入すれば解決するようなことでもないとも思っています。結局ガイド撮影したとしてもたわみや足回りの強度等の根本的な問題があるので、そこをきちんと整えてから最終的に導入に踏み込んでも良いかなと思っています。

それに私は『ポタ赤にオートガイド』というのは基本的にあまり好きではありません。
ポタ赤はやはりその可搬性コンパクト軽量というところに優位性があるはずです。そのポタ赤にオートガイダーをシステムに組み込んでしまってはせっかくの良さを失っていると思います。「それなら小型の2軸仕様の赤道儀でいいじゃん」と思ってしまいます。