2022年1月 天体写真遠征(テスト撮影の日々)

DIARY

2022年も引き続き天体写真遠征を精力的にやっていきたいと思っていますが、さっそく年明けから遠征に行くことが出来ました。今回の遠征の目的はいわゆる『テスト撮影』というものです。

意気揚々と出かけましたが、さすがにそう簡単には事が運びませんでした。

(目次)

  • CELESTRON『Advanced VX』
  • 中判デジタルでの星景・星野写真
  • 天文人生最悪の夜
  • GFX meets NIKKOR & ZEISS
  • 天文人生最高の夜
  • 今後の予定

CELESTRON『Advanced VX』

ついにと言いますか、ようやく重い腰を上げて本格的な赤道儀を導入しました。
天体撮影に関しては今まではとにかく『気軽に、身軽に』をコンセプトにポータブル赤道儀の『SWAT200』で撮影してきました。しかしやはりもっと焦点距離を延ばしたい、野鳥や風景で使用していた “サンニッパ” を天体撮影でも使いたい、とずっと思っていました。そもそもサンニッパを導入していた目的は風景野鳥天体 の3つのためでしたから。

機材が大きく重くなったりシステムが複雑になると億劫になって遠征に行かなくなってしまうことを嫌い、とりあえずは気軽なポタ赤で出来得る天体写真を撮ろうと頑張ってきました。ミルバス135mmを昨年導入し遠征回数は少ないながらも一通り撮ってきましたが、このレンズのおかげもあってもうポタ赤ではこれ以上の向上は無いのでは…というところまで個人的に行き着いたように感じました。(もちろん、ポタ赤だとどうしても写野が広くなってしまい、毎年同じものばかりになってしまうという懸念もありました。)

CELESTRON『Advanced VX』

そういうこともあってこの赤道儀、CELESTRON『Advanced VX』を導入しました。
この赤道儀のレビューや感想と言うのはもっと使い込んでみてから、また別の機会にて記事にするつもりでいます。

詳しい製品情報などは販売元であるVixenの公式HPをご覧ください。
CELESTRON Advanced VX (三脚付き) |Vixen

中判デジタルでの星景・星野写真

フィルム時代は長らく35mm判を使用していましたが、デジタル移行の数年前は中判フィルムも使用していました。圧倒的な解像度、豊かな諧調表現、その中判フォーマット(私は645判)の素晴らしさが忘れられず…。

とは言っても中判デジタルなんておいそれと手が出せるような代物ではなかったし、デジタルになって解像度が飛躍的に上がったことで、フルサイズでも十分素晴らしい写真が撮影できる時代になりました。

そんな折、富士フイルムから『GFX50SⅡ』が新たな軽量で安価なズームレンズ『GF35-70mm』とのキットで50万円を切るという、今までの中判デジタルの概念を打ち破る価格で出てきました。(それでもめちゃくちゃ高いのですが…)

さらにこの機種は中判としては非常にコンパクトにまとめられていて、もはやデジタル一眼レフ並みのサイズ。これであれば山にも担いで登れるし、おまけに富士フイルムのカメラは赤い星雲の写りが良いので天体写真でも赤外改造せずとも使っていけるカメラ。この “ラージフォーマットセンサー” が吐き出す星景・星野写真に期待するな、と言う方が無理というものです。

GFX50SⅡ(富士フイルム公式HPより)

すでに手持ちのニッコールやツァイスを装着してテストしていましたが、今回これを星に向けてみようという遠征にしました。

詳しい製品情報・仕様などは富士フイルムの公式HPをご覧ください。
GFX50SⅡ|FUJIFILM

天文人生最悪の夜

この夜は一生忘れないであろう、
年始にいきなりこれほどの苦行を味わうとは…。

VXの不具合?

先月の天体遠征に引き続きこの日も天文同志の “まささん” とご一緒させていただき、意気揚々といつものもはや “ホーム” となりつつある妙義へ。“大きな機材” の扱いに慣れていらっしゃるまささんに助け舟を出していただきつつ機材を組んで極軸合わせ。もはや恒例となりつつあるポールマスターの不具合(PCに原因か)を何とか切り抜け、

「さァ追尾だ!」

という段階で、赤道儀が動いていないことに気付きました。

「はて…?」

今どきの赤道儀にはほぼ自動導入機能が付いていますが、このVXもご多分に漏れず。しかし今まで私はポタ赤で自動導入なしでずっとやってきていたし、そもそもそれほど長焦点でもないし(300mm)、とにかく面倒な操作や設定が嫌いなので最初から自動導入機能を使うつもりはありませんでした。

と言うことで『取説を読まないほうのタイプ』の私は自宅にモノが届いてからは通電の確認のみ。コントローラーの東西南北ボタンを押すと「ウィン、ウィン」としっかり動いていました。あとは「要するに電源入れれば日周運動を追尾するんでしょ」と、どの赤道儀もそういうものだと思い込んでぶっつけ本番に挑みました。

しかし現地にて電源を入れても追尾していない。
改めてモーターに耳を近づけても “カタカタ” というモーター音が全くしない…。
取説を現場で確認するもコントローラーの説明(自動導入やアライメント)ばかり。
初期不良を疑い、これは “ハズレ” を引いたのかと。
結局VXでの撮影に関してはこの日は早々に諦めました。

しかし…。
『自動導入のアライメントを行った後に恒星時追尾を開始する』という仕様であったことに気付くのは自宅に帰ってからでした…。

しっかりと遠征前に説明書を見ながら、コントローラーを使いながら、自動導入のアライメントを行う練習をしておけばこんなことにはなりませんでした。

ポールマスターよ、お前もか

なんとか気持ちを切り替えて次の『GFX50SⅡ』の天体テストへ。
いつものように『SWAT200』を素早くセッティングし(やはり使い慣れた機材はいい!)、極軸合わせへ。

しかし、今度はポールマスターがまったく言うことを聞かない。
不具合時に行う “おまじない” をやっても一向に機嫌が直りません。
そうこうしているうちに今度はPCのバッテリー系の不具合と思われる症状が…。ポータブル電源に繋いでいるのにも関わらず何故か “LOW BATTERY” 状態。

「何なんだ…いったい」

さらにこの日は気温がかなり低く、加えて西から吹き付ける冷たい強風。
登山とは違い天体撮影は体を動かさないから、ある意味では冬山登山並みに寒い。
手も悴んでくるなか、

「そっちがその気なら徹底的に付き合ってやろうか」

と、もう冷たいコンクリートに胡坐をかいてPCとポールマスターのいじめに必死に耐えつつ我慢比べ状態。しかし一向に正常に動く気配はなく、ついに根負けしてVXに続いてこちらも白旗。

このままではさすがに帰れないと、ポールマスターの導入以前にやっていたテスト撮影を繰り返しながら少しずつ極軸を合わせ込んでいくという、なんとも泥臭い極軸合わせ作業に30分強。粗々でしたがテスト撮影くらいはできるだろうというところまで何とか漕ぎつけました。

GFX meets NIKKOR & ZEISS

GFXの天体での実写

詳しくは以前取り上げた記事をご覧いただきたいのですが、以下がこの日撮影したGFXによる実際のテスト画像(1枚もの撮って出し)です。

GFX50SⅡ+ミルバス135mmの撮って出し画像

GFX50SⅡ+ミルバス135mmの中央と四隅の拡大画像

GFX50SⅡ+AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED の撮って出し画像

GFX50SⅡ+AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED の中央と四隅の拡大画像

今回の組み合わせの狙いとしては、

GFX + ニッコール14-24mm→星景や広い写野の星野写真として
GFX + ミルバス135mm→35㎜判換算108mmの中望遠星野写真として
という感じで使っていくつもりです。

撮像の印象としては14-24mmの方は思ったよりも悪くはない、ミルバスの方はさすが、という感じです。とくにミルバスの方はツァイスの名レンズだけあって “空気をも描写する” と言われる所以を感じました。きっとこれはイメージサークルを広めにとってあることが大きな要因と思いますが、タカハシのFSQの思想に近いものを感じました。

カメラの写りの方ですがやはり富士フイルムのデジカメは “赤” の写りが非常に良い印象です。ノーマル機なのにM42馬頭星雲はもちろん、淡い類のバーナードループエンゼルフィッシュなんかもうっすらと写っています。ニコンの『D810Aやキヤノンの『EOS Raの赤の写りがどれほどなのか実際に使ったことが無いので比較はできないのですが、撮って出しでこれだけ写っていてくれれば個人的には『GFX50SⅡaと思っています。

GFX meets NIKKOR & ZEISS

画像処理の問題

しかし大きな問題にぶち当たりました。
それはこのカメラで撮った画像を読み込める天文ソフトがほとんど無いということ。特にダークとフラットは天体写真において必須の処理ですが、それが出来るソフトが果たして存在するのか良く分かりません。

いままで気に入って使っていた『RStacker』が対応していないのはかなり痛くて、現状では今までコンポジットでしか使ってこなかった『Deep Sky Stacker』が警告ウィザードが出るもののなんとかすべての処理を一括でやってくれそうでした。
ただ出てくる画像が緑色の画像であるところが気持ち悪くて。ひょっとしたらノーマルカメラで撮ったカメラはこのような色で生成されるとも考えられますが、ひとまずはこれをWBを合わせて使っていくしかないようです。

さすがにこのカメラを天文で使おうなんて方はほとんどいないでしょうから今後『ステライメージ』など有名ソフトでも対応してくれるなんて期待はできないでしょう。撮影用のカメラが変わると特に天文系は今までの処理フローがすべて振り出しに戻るような感覚がありますが、こういう新製品はそれを強く感じます。

解決(追記)
いろいろと試行錯誤したのち無事解決しました。ただそれは私の処理フロー内(RSstacker・DSS)での話でして、『ステライメージ』など他の有名ソフトで画像処理が可能かどうかはわかりません。

GFX+Milvus 2/135 での星野写真作例

画像処理が出来るようになりましたので、かなり粗々ですが強調処理してみました。
撮影枚数も『60秒×16枚(16分)』と少ないですし、良好な撮像を得られたわけではありませんので強調はほどほどとしました。無改造ですがバーナードループはしっかりと出てくれます。ただやはりスケアリングエラーのため左上の星がピンボケしているため肥大化しています。

なにぶん私の画像処理技術が貧弱なため、あくまで参考記録的な作例でしかありませんが、とりあえずは今までのフローを使って処理できたので一安心。今後はスケアリングがこのシステムの課題でしょうか。

天文人生最高の夜

HAYATOCHIRI

VXを泣く泣く持ち帰りメーカーに出す前にもう一度動かしてみようと改めて通電し、取説を見ながら自動導入のアライメントをとる練習を行いました。

するとどうでしょう…。
アライメント終了後には恒星時追尾をしていると思われる “カタカタ” というモーター音がするではないですか。

「え?そういうことなの…?」

私は単に電源を入れればその時点で赤道儀と言うのは勝手にモーターが動き続けるものだと思い込んでいました。実際にポタ赤はそうでしたし、多くの赤道儀はきっとそういう仕様がほとんどだと思います。

「なんだ、初期不良じゃないじゃん!」

そうと分かったらどうしてもテスト撮影しておきたくて一昨日の悪夢を振り払うべく再び遠征へ!!

再度の遠征

この日は一昨日と打って変わって気温もそれほど低くなく風も無く、さらに湿気も無く快晴。二度目の設置ともなるとVXにも少し慣れてきて、懸念案件だったポールマスターの不具合も何とか切り抜けて、極軸も精度よく合わせられました。

賑わう撮影地

まずはほぼ天頂に輝く季節外れの『アンドロメダ銀河(M31)』に自動導入を使って導入。もちろんアンドロメダ銀河が写野のど真ん中には来ませんでしたが、今まで手動で導入してきたことが馬鹿らしくなるくらい超便利。構図の微調整も簡単に行え、ピント調整のためにレンズのピントリングを手で回しても赤道儀がしっかりしているのでポタ赤搭載時のようにグラグラと背面液晶の画像が揺れることもありません。この重さからくる安定度はポタ赤を長年使ってきた私のような人間からすると隔世の感があります。

背面液晶に上がってくるサンニッパ開放の撮像も若干星像の歪さこそあれどシャープで色収差も少なく、ようやく “本格的な天文のスタートラインに立てた”という感覚を味わい、ほくそ笑みました。

季節外れのアンドロメダ銀河(テスト撮影)

撮影データ
カメラ Nikon D7100(IR-custom)
鏡筒 AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ(f/2.8)
架台 CELESTRON Advanced VX(ノータッチガイド)
ダーク減算 RStacker(8枚)
フラット補正 RStacker(129枚)
現像 ADOBE Camera Raw
コンポジット DSS(120秒×37枚 計74分 iso1600)
画像処理 ADOBE Photoshop CC
その他
・QHYCCD Polemaster

その後はもう面倒な手動による導入などせず『M45(すばる)』『馬頭星雲』とメジャーどころを撮り進めていきました。

「今までのポタ赤の苦行は一体なんだったのか…」

しっかりとした赤道儀というのはこんなにも楽なのかと心底思いました。快晴で風も無く、寒さも感じず、D7100の背面液晶に上がってくる迫力ある撮像を見ながら天文人生で間違いなく最高の夜を過ごしました。1時過ぎあたりから風が出てきて、3時ころには時たま薄雲の通過があったようですが、テストには十分すぎる夜でした。

M45『すばる』(テスト撮影)

撮影データ
カメラ Nikon D7100(IR-custom)
鏡筒 AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ(f/2.8)
架台 CELESTRON Advanced VX(ノータッチガイド)
ダーク減算 RStacker(8枚)
フラット補正 RStacker(129枚)
現像 ADOBE Camera Raw
コンポジット DSS(120秒×26枚 計52分 iso1600)
画像処理 ADOBE Photoshop CC
その他
・QHYCCD Polemaster

肝心のVXの追尾精度ですが、アンドロメダ銀河の時は成功率6割、すばるは4割ともう少し頑張ってほしいところ。もちろん設置の際のバランス調整の追い込み不足や風などの影響もあるでしょうから、そのあたりは今後の課題となってしまいました。

焦点距離が違うので一概に比較はできないですが、SWATのほうが追尾精度自体は高いように思いますが、やはりVXの重さ・頑丈さ起因による安定度は撮影していてとても安心感があります。

一抹の不安
自動導入のアライメント後に恒星時追尾するということは、このコントローラーが何らかの不具合で壊れたら追尾してくれない、ということでしょうか。そう思うと一抹の不安がよぎります。あまりにコントローラーに主導権を握られている感覚があります

今後の予定

この2回の遠征で天文の “酸いも甘いも” を経験出来ました。
まさに “地獄” “天国”

今回はテスト撮影という目的でしたが、これからはこれをどのくらい引き上げていくかというのが新たな課題となりました。

中判デジタル

こちらは取得できる画像が今まで使用してきたAPS-C機の約4枚モザイクをワンショットで撮影できる、理論値的には4倍の品位の画像を取得できると言えるはずです。
しかしそれに伴う苦労もやはり感じました。

スケアリングエラーによる撮像の傾きをより平坦化させる方法や、そもそもの露光時間や絞りの最適解、撮った後の画像処理、など問題は山積み。いままで私のポリシーであった “イメージサークルに対してセンサーをあえてダウンサイジングする優位性” とは真逆を行くことになりますので、やはりなかなかシビアな対応を迫られるように感じています。

サンニッパによる天体写真

ようやく念願であったサンニッパでの撮影を開始できました。
こちらももちろんピントの追い込み、たわみ対策、露出の最適解、画像処理と問題は多いですが、やはり天体を大きく写せるのはそれだけ撮影する対象も増えることになるので楽しみしかありません。

このハイスピードな “f/2.8” を活かしてしばらくはノータッチで撮影していくつもりですが、やはり追尾成功率を上げるためにはオートガイドの導入も視野に入れておかないといけないかもしれません。私としてはこちらのシステムをメイン、ポタ赤+中判をサブとしていきますが何とか1年を通して手懐けていきたいところ。

2022年の星空

一先ずテスト撮影は何とかこなせたので、あとはこれからやって来るであろうさそり座に向けて準備の日々と言ったところでしょうか。

 

最後までお付き合いいただき、まことにありがとうございました。