昨年2022年11月の北アルプス燕岳撮影行以来、多忙であったりプリント制作に没頭していたこともあって、ほとんど撮影に行けませんでした。実のところ “行けなかった” というより “あえて行かなかった” という表現のほうが合っているのですが、相変わらずマイペースの私は一度制作作業に没頭してしまうと集中力やベクトルが外ではなく内に向いてしまう『内にこそ真理在り』という典型的なタイプなので、言わば写真活動に関しては完全に “穴倉生活” “隠遁生活” といった状態になってしまいます。
Keiさんは本ブログでも個展『logos』の開催情報の記事や、実際に2023年1月に行われたその個展へお邪魔したときの記事をアップさせていただいておりますので、本ブログの読者様にもお馴染みの方かもしれませんが、たいへん気さくな方でして私自身もいつかKeiさんとどこかの山でご一緒出来たらと思っていました。そんなこともあってもちろん二つ返事でお誘いをお受けました。さらに顔の広いKeiさんのご人脈で数人の写真家 / 登山家さんもご一緒にという、これまた嬉しい撮影会形式のハイクとなりました。
高尾山登山自体は過去に3回ほど、裏高尾(小下沢)あたりは花や新緑の時期は数回訪れていますが、ここ最近は歩いていなかったので実に久しぶりの高尾山登山となりました。特に登山者数世界一とも言われる高尾山ということで混雑を避けて平日にふらっと歩くことばかりだったので、週末の高尾山はほぼ初めてでした。
5月ともなれば時期的にも暑くも寒くもなく、また新緑がとても美しく、山野草も健気に咲き乱れ生命の息吹を感じられる季節となりますから、高尾山に登るならばこの時期が最も適期とも言えるかもしれません。何より低山とは言えほぼ半年ぶりの登山となるので、高尾山くらいの高低差や山行距離がこの鈍りきった体にはぴったりでした。
今回ご一緒した方々はKeiさんのほかに、
山の撮影のほかにトレランもされる超パワフルな純(カストロ)さん
すでに写真展の実績も多いスナップシューター、紅一点のリーさん
私を含めて以上の4名は実は1月に開かれたKeiさんの写真展『logos』に足を運んだ、つまり “恵比寿山” の登山者という共通点がありました。みなさん常日頃から意欲的かつ積極的に写真活動をされている方々ばかりで、この中では隠遁状態でベクトルを内に向けている私だけが明らかに浮いていましたが、やはりそんな方々と山の空気を吸いながら、新緑を愛でながら深森の高尾を歩くと写真の撮り方を忘れかけていた私にも少しずつ勘が戻ってきて自然に『美』を求めてレンズを向けられるようになってきました。
『その命、尽きるとも』
この小さな命にとって、
天を仰ぎ見る季節は終わり、
花は萎びれ茎は折れ、
いま地に還ろうと首をもたげている。
その様も、
その様こそ、
なお美しく。
登山中こうやって思い思いにレンズを向けている撮影姿を拝見すると、
こんなものにもレンズを向けるんだ、とか
こういう角度からレンズを向けるんだ、とか
自分では気づかない観察眼、自然を観る目、捉える感性、そんなものがとても新鮮で、ご一緒している間中はとても勉強になる事ばかりでした。
とくに私の撮影スタイルの基本は雄大な山景を目の前にして、三脚に撮影機材を据えて構図を追い込みじっくり決めてバシッと撮ることが多いので、こういったスナップ領域の撮影については勉強になりっぱなしでした。
登山ルート的には6号路を登って行きましたがそういうこともあって、撮影やら談義やらでほとんど足が進みませんでした。もちろん週末の高尾山なので登山者が途切れることなく次々と登って来られるので、後続の方々に少しご迷惑をおかけしたかもしれませんが、低山ならではの雨上がりの美しさに溢れていてレンズを向けざるを得ませんでした。
そこはまさに “自然研究路” という名にふさわしい実に撮影しがいのある登山道。
シダ類の青々とした美しさ、
登山道脇にそこかしこに群生しているシャガ、
沢沿いの清々しい空気、
暖かくなって虫たちも躍動的に表に出てきていて、
中盤以降は頭上にセッコクもたくさん見ることが出来ました。
忘れかけていた清々しい山の空気をすっと胸に吸い上げることで、まさに体が山の色に染まってくるような感覚。
6時半過ぎに登り始めて高尾山頂へは10時過ぎ。
距離にしてわずか4キロ弱、標準コースタイムを大きく越えて3時間半かかりましたが、撮影を楽しんでいるといつも亀足になってしまうのが常。実はこれでもかなり早い方。
山頂は『さすが高尾山 ! 』といえるほど多くの登山者で賑わっていました。お昼休憩を挟んだ後、下山は1号路を下りてきました。
下山中ももちろん新緑に包まれる高尾山をじゅうぶん楽しめましたが、何よりご一緒したみなさんと写真談義出来たのが私自身とても有意義に感じて楽しい時間を過ごせました。なにより私とは違ったみなさんの写真活動に対する外向きのベクトルにたいへん大きな刺激を受けました。冒頭でも申し上げましたが、私以外のみなさまは積極的に写真展を開催されていたり今後予定をされていたりということで、あえて “取り残され感” こそ感じませんでしたが、それでも私なりに出来ることがあれば私なりのやり方で何かやってみたいと思うようになりました。
下山後、SNS等(インスタグラムやYAMAP)で今回の撮影会メンバーの皆さんの写真を拝見しましたが、全く同じ時間、同じ行程、同じものを見ていたにも関わらず、こんなにもものの捉え方、表現方法、そして自然を観る目が違うのかと、たいへん興味深いものを感じましたし、大きな学びを得られました。今回の撮影会を企画してくださったKeiさんをはじめ、ご一緒したみなさまに改めてこの場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございました。
Keiさんのウェブサイトはこちらから ↓
image-sketch.com|写真家、大西慧のwebsite
ここまでお付き合いいただいた読者様、ありがとうございました。
今回の記事は以上になります。