GFX meets NIKKOR & ZEISS

CAMERA&LENS

今回は中判デジタル、製造販売元の富士フイルム曰く『ラージフォーマットセンサー』を搭載するGFXにマウントアダプターを介し、数本のフルサイズ用ニッコールレンズツァイスレンズを装着してイメージサークルを検証してみました。

本記事がGFXをすでに所有されている方々、購入を検討されている方々、そしてマウントアダプターを検討されている皆様のお役に立てれば幸いです。

※機材による個体差なども当然ありますのでこの組み合わせでは絶対にこうなる、というものではありません。ご参考程度、資料程度としてご覧ください。

(目次)

  • 使用する機材
  • 検証方法
  • AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ
  • AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
  • AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR
  • AI NIKKOR 50mm f/1.4S
  • ZEISS Milvus 2/135 ZF.2
  • ラージフォーマットの強み
  • GFXの可能性



使用する機材

まず今回の検証で使用した機材を簡単に紹介したいと思います。

カメラ

GFX50SⅡ

今回使用したカメラは今後間違いなく中判デジタルの『普及機』という立ち位置になるであろう『GFX50SⅡ』を使用しています。GFX(Gマウント)シリーズは5年ほど前にヨーロッパで開催されたフォトキナ2016にて『初代GFX50S』が発表されました。(販売開始は2017年)
その後より安価でハンドリングの良いコンパクトなレンジファインダー機を模した『GFX50R』が、そして実に1億画素を擁した『GFX100』、さらに『GFX100S』と意欲的にリリースされてきました。

そんな中、2021年後半には軽量で安価な新レンズ『GF35-70mm』と抱き合わせ販売(キットレンズ)でこの『GFX50SⅡ』が50万円を切るという一昔前では考えられなかった中判デジタルとしてはまさにバーゲンプライスでリリースされました。富士フイルムの “中判デジタルをより身近なものに” という意欲的な姿勢をひしひしと感じました。昨今のフルサイズミラーレスの新製品の高価格化を考えれば、十分に検討の余地があると思います。

詳しい製品概要および仕様は富士フイルム公式製品ページをご覧ください。

富士フイルム『GFX50SⅡ』

“More Than Full Frame”

ラージフォーマットがもたらす
更なる高画質の領域へ


レンズ

①AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ

今から約12年前にリリースされたいわゆるニコンの “サンニッパ”
2020年に『D6』とともにリリースされた蛍石の採用やEタイプ(電子絞り)となった現行のFマウントのサンニッパの一世代前のレンズとなります。現行のFマウントのサンニッパは “120-300mm” というサンニッパズームであり、純粋な単焦点大口径望遠レンズとしては(今後のZマウントは除いて)最後のレンズとなっています。

②AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

神レンズと言われたこのレンズも2007年のリリースからもう15年近くになります。このレンズの素晴らしいところは15年経ってもなお通用する光学性能を保っているところ。たしかにその後このレンズよりも高性能な超広角ズームが各社からリリースされていますが、すべて14-24mmをベンチマークとしてこのレンズを『打ち負かす』ために開発しているであろうところです。

AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

③AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR

以前このレンジのレンズは f/2.8通しの『VRⅡ』を使用していましたが、山での使用が多いことを考慮して現在は軽量なこの f/4のものを使用するようになりました。f/2.8が持つ “息を呑むような” 描写には敵わないかもしれませんが、とても安定した写りで個人的にとても素晴らしいレンズだと思っています。ただテレコンとの相性ではやはり f/2.8通しのほうに分がある印象です。

AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR

④AI NIKKOR 50mm f/1.4S

私はいわゆる “オールドレンズ” と言うものは普段使用しないのですが、私が所有するニッコールの中では最も古い部類のレンズ。1981年に販売開始された王道的な単焦点レンズ且つロングセラーなレンズでもありましたが、残念ながら今では旧製品となってしまいました。

Nikon FMに装着したAI NIKKOR 50mm f/1.4S

⑤ZEISS Milvus 2/135 ZF.2 Apo Sonnar T*

前身となった『Apo Sonnar T* 2/135』と光学系は全く同じ現行のミルバスレンズ。コシナ製造のツァイスの銘レンズのひとつではないでしょうか。私は主に天体写真での使用を主目的として導入しましたが、非常にシャープで点像再現性は数あるレンズの中でも抜きん出ていると感じています。ただボケはあまり美しくはないという印象があります。

Zeiss『Milvus 2/135 ZF.2』

マウントアダプター

今回これらのレンズを検証・使用するために用意したマウントアダプターは『Fotodiox』の絞りリング付きのマウントアダプター。(Gタイプ対応)

『Fotodiox』のマウントアダプター(ニコンF→フジG)

今回検証するレンズはどれも電子化された絞りではない(Gタイプ)のでレンズ側もしくはこのアダプターに搭載された絞りリングで絞りを物理的にコントロールすることが出来ます。

この製品には電子接点などは無いためカメラ側で絞りのコントロールは出来ず、残念ながらExif情報も残りません。かの『Metabones』からかなり高価なアダプターですがFマウントレンズのイメージサークルをGFXのイメージサークルまでコンバートするアダプターも出ていて興味がありましたが、f値が暗くなる点、あまりに高価である点などを考えて今回はこの『Fotodiox』の絞りリング付きのものを使用しました。

(※追記)
この製品はすでに廃盤のようで、現在では三脚座が付いたものに仕様変更されているようです。それによってか、価格もさらに上がってしまっています。

その他、絞りリングが付いたタイプですと『SHOTEN』オリジナルのアダプターもあります。

検証方法

今回は単純にケラレ周辺減光の程度の客観的検証といたします。
フルサイズのイメージサークルを越えた部分の画質などは今回の検証では重要視はしていません。画質の良し悪しは撮影者や鑑賞者の主観も入り込む部分なので、今回はあえて無視しています。

撮影は天体写真の画像処理(前処理)などで使われるフラット画像のように、光量の安定した室内で壁に向かってピントを無限遠に合わせて撮影しています。そのため、絞り値やレンズの焦点距離によって壁紙のテクスチャーがうっすらと写っているフレームもありますがご了承ください。

もちろん画像データは明るさを一定にする程度の処理は行っていますが、周辺減光の処理やトリミングなどは一切していません



AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ

風景での切り取りや野鳥撮影などで使用しているこのレンズですが、曲がりなりにも天体写真も撮影していることから天体撮影でも使用してみたいと常々思っていました。しかし手持ちのポータブル赤道儀(SWAT200)ではとても支えきれない重量(約2.9kg)のため天体目的では保留状態。

AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ on GFX

このサンニッパ、ニコンのHP掲載のMTF曲線は開放から凄まじい曲線。
撮像の中央はもちろん、周辺まで見事な光学性能を保っています。

MTF曲線(出典:ニコン公式WEB)

「これ、ひょっとして中判でもイケるのか?」

と今回の検証のなかでもっとも期待したレンズのひとつです。仮にGFXのイメージサークルを満たしていたらとんでもない天体写真が撮れるのでは…と。

f/2.8

f/5.6

f/8

しかし残念ながらご覧のようにケラレてしまいました。
それも右下に偏ったケラレが発生しています。
これはレンズ自体が偏芯している個体のためだと予想されます。

もちろんこのレンズは中判用のレンズではないですしフルサイズでの撮像では全く問題ないのですが、残念ながらあのMTF曲線から想像された期待には応えてはくれませんでした。周辺減光がきつい程度でしたらフラット補正で何とかなると思いますが、さすがにこれだけケラレてしまうと周辺画質がどうこうという以前にラージフォーマットを活用した天体撮影では使えそうにありません。

AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED

やはりフィルム時代から中判の良さと言ったら広角レンズのパースを最大限に活かした解像力と諧調の豊かさが挙げられます。しかし残念ながら純正には明るい広角ズームが不在。GFXシリーズもスタートから4年余り経過しレンズラインナップも少しずつ拡張されていますが、この超広角域だけはいまだに弱点ではないでしょうか。レンズロードマップには『20-35㎜』というスペックが予定されていますのでそれに期待したいところです。

AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED on GFX

とは言えやはりラージフォーマットと言うことで純正レンズであれば f/4通しなら御の字というのが関の山でしょう。そこでこのGFXでの星景写真用にこのニコンの14-24mmに期待したいところ。

①まずは各焦点距離でのケラレの様子

24mm f/2.8

20mm f/2.8

16mm f/2.8

②次に24mmでの絞りによる周辺減光の様子

24mm f/4

24mm f/5.6

24mm f/8

ご覧のように24mmならば周辺減光はかなりきつくはなりますが、フラット補正を行えばじゅうぶん対応可能だと思います。24mmということでGFXに装着すると35mm判換算で約19mmとなりますから、これであれば星景写真では積極的に使える画角になります。
あとは実際に星を撮ってみて最周辺の画質、非点収差や倍率色収差がどのくらいのものなのかが気になるところです。

ケラレは21mmくらいから固定フードのケラレが出てきます。
16mmではもう完全にフードがケラレてしまいます。
16mmというと35㎜判換算で13mm以下になりますから、さすがにそこまでは必要ないだろうと個人的には思っています。実際にフジ純正の広角単焦点レンズで『23mm f/4』というレンズがありますが、それよりも1段分明るい『24mm f/2.8』の単焦点レンズとして使っていける可能性を秘めています。
しかし画質的にはもちろん純正レンズのほうが良いでしょう。

14-24mm(24mm)での作例 (クラシッククローム使用)

風景撮影であれば絞り込むことが多いでしょうから、作例のように周辺減光もさほど気になりませんし、この程度であれば画像編集でフラットにすることは簡単だと思います。

星景・星野写真での撮像性能(追記)

ラージフォーマットの優位性を活かして星景や広い星野写真でも使っていきたいGFXですが、現状では純正ならば『23mm f/4』というレンズくらいしか広角レンズはありませんので、それを補う形でこの14-24mmを装着して星に向けてテスト撮影してみました。

ケラレが無い望遠端24mmで冬の大三角と天の川を撮影した画像です。

GFX50SⅡ+AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED の撮って出し画像

撮像データ
Camera : FUJIFILM GFX50SⅡ
Lens : AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
20秒、f/2.8、ISO10000、ダーク・フラット処理無し、コンポジット無し、三脚固定
Photoshop『明るさ・コントラスト』の明るさのみ+20

極力流れないようにするため20秒露光ということで明らかに露出不足ですがそこは無視していただいて、やはりパッと見では周辺減光が目立ちます。このくらいであればフラット処理で何とかなりそうですが、問題はこの35mm換算で約19mm相当の広い画角のフラット光源を取得すること。

下はこのテスト画像の中央と周辺四隅の拡大画像です。

中央と周辺の拡大画像

さすがに『神レンズ』と言えども、フルサイズのイメージサークルを超える部分の画像はコマ収差や倍率色収差などが見られ悪化していますが、正直「思ったより悪くはない」という印象です。(三脚固定ですので流れていますがそこは無視してください)

四隅の星の流れ方はこのくらい広い画角だとどうしても日周運動の関係でバラバラになりますが、そもそも星景写真は四隅を拡大して鑑賞するジャンルではないですし、引いて鑑賞するならばこのくらいは許容範囲とも言えるかもしれません。

それにしてもさすが富士フイルムのデジカメ、改造しなくても主要な赤い星雲がしっかり写っているのは噂通りです。この短い露出の『1枚もの撮って出し』ですでにオリオン大星雲バラ星雲カリフォルニア星雲もちろん、淡いバーナードループクリスマスツリー星雲、さらにエンゼルフィッシュもうっすらと写っています。



AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR

さすがにこのGFXで “動きモノ” を撮影する方は多くはないと思いますが、やはり遠景の切り取りとして望遠域のレンズも欲しいところ。

AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR on GFX

中判としては規格外の軽量さ・コンパクトさを誇るボディの『GFX50SⅡ』ですが、このニコンの小三元ズームの軽量さと相まって非常に軽快なハンドリングです。
この軽量さは山岳地帯での撮影において重要な要素だと思っています。

①まずは各焦点距離の開放での様子

70mm f/4

105mm f/4

200mm f/4

②次は各焦点距離の f/8での様子

70mm f/8

105mm f/8

200mm f/8

残念ながらご覧の通りどの焦点域においてもケラレてしまいました。
ただ偏芯などなく素直なケラレです。105mm付近においてケラレが最も大きくなるのはおそらくレンズの繰り出しの関係かと思います。

もちろんGFXには “35mm判モード(3,000万画素相当)” という機能が備わっています。
望遠撮影ということで割り切ってこの機能を使えば普通に使えるのですが、このマウントアダプターにはAF機能などありませんし、そもそもクロップしてしまったらラージフォーマットとしての優位性も捨てることになるので、素直にフルサイズのニコン機に装着して使用する方が賢明かなと思います。

AI NIKKOR 50mm f/1.4S

AI NIKKOR 50mm f/1.4S on GFX

こちらも前述の望遠ズームと同じくケラレてしまいます。
ただこのレンズはそれほど古くはないとは言えオールドニッコールテイストの範疇のレンズだと思います。富士フイルムお得意の『フィルムシュミレーション』を使ったノスタルジックな雰囲気、アメリカンニューカラー的なスナップ撮影にはベストマッチだと思います。

f/1.4

f/4

f/8

こういった収差が程よく残った古き良きオールドレンズがミラーレス時代となって復活するのはなんとも感慨深いものがあります。さらにオールドレンズを使ったことが無い若い層の方々にも逆輸入的にこういった雰囲気の写りが新鮮に感じられるという側面もあると思います。

GFXのラージフォーマットが活かせるわけではありませんが、この際35mm判モードを使用することでオールドニッコールで富士フイルムの『フィルムシミュレーション』をフルサイズカメラとして使えるというメリットがあります。富士フイルムにはフルサイズのカメラがありませんから。

AI NIKKOR 50mm での作例(クラシックネガ使用)

ZEISS Milvus 2/135 ZF.2

さて今回の検証において最も期待していたのがこのツァイス(コシナ製造)が誇る素晴らしいレンズシリーズMilvusライン。その中でも群を抜いた光学性能を誇る135mm f/2のこのレンズ。

ZEISS Milvus 2/135 ZF.2 on GFX

いままで検証してきたニッコールレンズではことごとくケラレてしまいましたが、ご覧のようにこのレンズでは開放からケラレずにラージフォーマット全面において使用できました。

f/2

f/4

f/8

もちろん開放においては周辺減光はかなりきつい(そもそもこのレンズはフルサイズにおいても周辺減光がかなり大きい)ですが、2段ほど絞ってやればかなり安定しますし、f/8まで絞るとほぼフラットになります。

さらにこのレンズはもともとMFレンズなので、はっきり言ってニコンのレフ機で使うよりもミラーレスであるGFXのほうがピントの追い込みがやり易いという利点もあります。

35mm判換算で約108mm相当となり、中判であればこのくらいの焦点距離になるとf/4でもかなりのボケの量となります。開放付近でも周辺減光をうまく活かした撮影ならばじゅうぶん使えると思います。このレンズは滑らかにきれいにボケるレンズではない(やや硬い)ので、個人的には f/8まで絞って遠景を切り取るという使い方になると思いますが、5,000万画素でもこのレンズであれば十分解像力のある、説得力のある画が残せると思っています。

後は天体写真でどれだけ使っていけるかということになりますが、こればかりは実際に星に向けてみないとわからないことです。ただやはりアダプターを介していることからスケアリングについての不安はかなりあり、明るさよりも平坦性を重視して実用的には f/4近くまで絞って撮ろうかと思っています。

ミルバス135mmでの作例(クラシックネガ使用)

もちろん手振れ補正機構などないレンズですがGFXには焦点距離別に数本のレンズを登録させておける機能があり、その焦点距離に最適化されたボディ内手振れ補正を使用することができるので、手持ちでも十分撮影できる点はミラーレスの大きな恩恵かと思います。

“空気をも描写する”と言われるツァイスですが、この検証においてそのポテンシャルの大きさの要因を少し垣間見れたように感じました。こうなってくると俄然マクロプラナー100mmを使ってみたくなります。

天体での撮像性能(追記)

14-24mmと同様に後日GFX50SⅡにこのMilvus 2/135 ZF.2も装着して星に向けてみました。
その結果がご覧の通りです。

GFX50SⅡ+ミルバス135mmの撮って出し画像

撮像データ
Camera : FUJIFILM GFX50SⅡ
Lens : ZEISS Milvus 2/135 ZF.2 Apo Sonnar T*
架台 : Unitec SWAT200
60秒、f/2.8、ISO3200、ダーク・フラット処理無し、コンポジット無し
Photoshop『明るさ・コントラスト』の明るさのみ+20
オリオン座にある『M78星雲』を中心にした構図で撮影しましたが、撮影当日はポールマスターとPCの連携が上手くいかず粗々で極軸を合わせたので、そのあたりはご了承ください。
やはりパッと見は周辺減光がかなり大きいです。これは1段絞って f2.8で撮影しましたが、これくらいであればフラット処理で何とかなるでしょうか?

続いて中央と四隅の拡大画像です。

中央と四隅の拡大画像

やはり今までこのレンズに装着していたニコンのD7100(APS-C)での撮像でも左上(横構図ならば左下)がピンボケ傾向でしたが、それがラージフォーマットによってさらに顕著になりました。ただフルサイズのイメージサークルを超える部分の画質は思ったほど悪くはない印象、と言いますか個人的には想像以上の良像でした。さすがに最周辺ではコマ収差や像の流れが出ていますが、かなり少ないレンズの部類ではないでしょうか。

ピンボケは明らかにスケアリングエラーかレンズのクセと思われます。
対策としては、
①スケアリング自体を調整する
②中央で合わせていたピントを左側で合わせて平均化する
③もう1段絞って平均化する
といった対応が私の個体では必要なようです。

ちなみにオリオン大星雲を拡大したものが下の画像です。
ラージフォーマット&5,000万画素、解像力のあるレンズで撮影するとこのように切り出してもそこそこ見れてしまうのはさすがとしか言いようがありません。さらにこれは60秒の『1枚もの』ですから、「しっかり露出をかけてやれば…」と想像するとワクワクする組み合わせです。

オリオン大星雲(M42)

大きな画像でもお分かりいただけるように、こちらも14-24mm同様に “赤” がしっかりと写っています。オリオン大星雲はもちろん、馬頭星雲燃える木、淡い部類のバーナードループがしっかりと写っています。無改造でも十分天体写真で使っていけます。



ラージフォーマットの強み

フィルム時代、それまで使用していたニコンの35mm判から初めてマミヤ645を使って撮影したときの印象は衝撃的でした。そのころはまだ山の撮影ではなく下界の風景撮影をメインとしていましたが、撮影地で『ガチ』で撮影していた方々の多くは中判で撮影していました。それを目の当たりにして私も中判フォーマットの中では比較的コンパクトな645判を知人から借りて撮影しました。

デジタルとは違いアナログであるフィルムではフォーマットサイズの優位性がそのままリニアに上がって行き、解像度の高さ諧調性の豊かさなど中判フォーマットに惚れ込みました。ただ重さや価格の問題で『6×7』や『6×9』と言ったさらなる大きなフォーマットには行かず、やがてデジタルへ移行していきました。

広がるGFXの可能性

このGFXのセンサーはフィルム時代の中判と比べたら少し小ぶりな規格で、約44mm×33mm、フルサイズの約1.7倍の面積比となります。果たしてこれくらいの面積比での優位性と言うのはデジタルにおいて大きなものなのでしょうか?
こればかりは撮影してみないとわからないことではあります。

解像度

デジタルではフィルムよりも編集による比重が大きく作品に投影されますが、ラージフォーマットによる “そもそもの解像度の違い” はぬぐえない優位性のひとつでもあると考えられます。

例えば今回テストした135mmレンズ。
このレンズをGFXで使用すると約108mm相当の画角となります。つまり同じ画角で撮影するにはフルサイズでは108mm、かたやGFXでは135mmの焦点距離が必要と言うことになります。GFXのほうが焦点距離が延びることになり、そこには相対的な解像度の優位性が発生します。

画素ピッチ

さらに画素ピッチの優勢性もあります。
同じ約5,000万画素においてフルサイズセンサーでは画素ピッチ約3.76µmに対しGFXは約5.3µm。ひとつひとつの画素が大きいほうがもちろんそれだけ1画素に対して光を蓄積できるので感度や諧調の面でも優位性が発生します。

もちろんセンサー自体の素養云々のほうがデジタルにおいて重要だという側面もあるかとは思いますが。

フォーマットサイズ比(出典:富士フイルム公式WEB)

拡大率

さらにセンサーが大きいということはモニターで鑑賞するにしても、プリントするにしても、フルサイズセンサーよりも拡大率が小さくて済みます。小さな撮像センサーからのデータをA3サイズに引き伸ばすよりも、大きな撮像センサーからA3に引き伸ばした方がその負担が小さくなるのは相対的にやはり大きな優位性のひとつです。

GFXの可能性

今回の検証でGFXに大きな可能性を感じました。
それはつまり現行の純正レンズ群および今後リリースされるレンズだけでなく、過去の銘レンズ、それも35mm判レンズだけでなく中判レンズをもそのポテンシャルを活かせるということです。

フィルム時代は中判と言ったら重い三脚も担いで、撮影地でじっくりと構図を決めて “ゴットン” とシャッターを切る感覚でした。しかし新たなコンパクトで軽量なキットレンズも相まって本当に気軽に持ち出せる、スナップシューターとしても使っていける中判というシステムに仕上がっているという印象を持ちました。

AI NIKKOR 50mm f/1.4S (ACROS)

もちろんレスポンス性などカメラ自体に欠点も多く感じますし、画質だけが撮影機材の良し悪しを決めるものではないことは重々承知していますが、ボディキャップを外した時に目の当たりにするこの大ぶりなセンサーを見るとその欠点も些細なものに思えるような、そんな可能性を感じます。