今年も暑い夏が終わってしまった。
ちょうど一年前にも同じような記事を書きました。
まだ山岳ではない一般的な風景写真ばかり撮影していたころは新緑が美しい春や紅葉でカラフルな秋、そして冬の凛とした寒々しい景色が好みでした。
じゃあ夏は?
夏はただ暑くてジメジメしていて、外へ出向いて撮影することも好きではありませんでした。
「早く夏が終わって涼しくて過ごしやすい季節にならないかな…」
しかし北アルプスをはじめとした山岳写真の撮影を始めてからは夏がとても好きになって、夏山の “お祭り” のような華やかでウキウキした気分になれることが毎年楽しみになりました。
「今夏はどの山に行こうか…」
梅雨明けを待つ6、7月あたりはソワソワした気分になります。ところが今年の夏はいつもとは全く違う夏になってしまいました…。年明けから続いた新型コロナウィルスの世界的な猛威。
このウィルス自体、一体何なのか?
一度ズレてしまった世の中の歯車はそう簡単にはもとには戻らない。
街ではマスクするのが当たり前。
どこに入るにも手の消毒するのが当たり前。
不要不急の外出を控えるのが当たり前。
ソーシャルディスタンスに、レジ前の透明なシールド。
『右向け右、左向け左』の国民性の日本人はどうやらこのウィルスの格好の餌食だったのかもしれない…。
8月下旬にテント泊した涸沢では受付で検温チェック。
上高地からざっと5、6時間も山道を歩いてやっとたどり着く涸沢カール。涸沢までは決してお気楽ではないそんな “完全な登山” となるコース。そもそも熱がある人間には到底たどり着けるわけもなかろうに…。
残雪の時期を含めると毎年最低でも5回、多い年では7,8回くらいは北アルプスで撮影をしていましたが、今年は今のところまさかの2回だけ。数年前に天体写真にハマりすぎて山自体に行かなくなった年がありましたが、それ以外ではここ数年で最も少ない、もっと言うならば山を始めてからこんなに北アルプスから足が遠のいた年はありませんでした。
『山は逃げない』という言葉があります。
しかし私の持論は頑なに『山は逃げる…』。
登山というのはその日の天候ももちろんですが、それよりもその時の気分の高揚感、気持ちの盛り上がりが山行きの大きなモチベーションになります。その『勢い』というのは登山にとってすごく重要です。
よく以前にやった山を振り返った時に、『よくもまぁあの時はこんなに山を歩けたものだ』と自画自賛することは無いでしょうか?
まさにそれこそが『勢い』というものがあったからで、その『勢い』を逃すとモチベーションも下がってしまい、変に冷静になってしまうことがあります。そしてその『勢い』を逃すと下手をするとその山を歩くことが二度と訪れないこともあります。
一寸先は闇…。
まさか今年のこの状況、全世界的なこの状況を誰が予想しただろうか?果たして一年後、自分は何をやっているだろうか?もう山への情熱が冷めているかもしれない。それは誰にもわからないし、自分のことをわかっているようでわかっていないのが人間という生き物。
『山は逃げる…』。
もちろん『山は逃げるからリスクを負ってでもここでピークを踏んでおかなければならない』ということではないことだけは悪しからず。
今年もまたヒガンバナを撮りにお気に入りのところへ。
「夏が終わったんだ…。」
この朱色の秋の輝きを見ると、毎年のように “祭りの後の寂しさ” を感じる。