厳冬の浅間山外輪山ハイク

PHOTO TOUR

2020年2月 車坂峠~黒斑山~蛇骨岳~仙人岳

厳冬の美しき活火山、浅間山。それを囲うように連なる浅間山外輪山。車坂峠から黒斑山へ美しい浅間山の眺望を求め厳冬期の雪山ハイク。

(目次)

  • 浅間山
  • 黒斑山登山
  • 充足とともに下山(中コース)
  • 冬の黒斑山登山に際して

浅間山

活火山

浅間山は長野県と群馬県を分かつ標高2,568mの成層火山。
浅間山というと私はやはり絶え間ない火山活動があり、常に噴煙を上げているイメージを持っています。美しいと同時に少し怖い印象を持っていますし、おそらく多くの方もそのようなイメージを持っていらっしゃると思います。

地震や火山ガスなどの火山活動は常に監視され浅間山周辺ではいつも警戒されていますが、逆に言うと『もう活動があるのが当たり前』的な部分もあって、そのように思われているといざ噴火があったとしてもしっかりと対策がなされているように思います。

あの木曽御嶽山で噴火による戦後で最も大きな被害が出てしまったのは、もちろん噴火が起きた日にちや時間も最悪のケースでしたが、それと同時に活火山という事実を軽視しすぎて『噴火なんか起きない』という楽観的なイメージが多少なりともあったと思います。

実際にあの噴火が起こるまでヘルメットの装着や噴火が起きたときの対処について考えて登っていた人が何人いただろうか?かく言う私もあの事故が起きた時『まさか、嘘だろ?』と思いました。木曽御嶽山は大好きで、夏や秋を中心に何回か登りましたが、私も活火山ということを軽視していたようなところがありました。

そういう意味では浅間山はある程度『活火山』という認識・リスクをほぼすべての人がもっているというのは安全だとも言えると思います。

噴火警戒レベル

浅間山の噴火警戒レベルは気象庁のHPにて確認することができます。レベルは5段階に区分されて発表されていますが、2020年2月はレベル1。浅間山周辺の山々に登られる際はしっかりと事前の確認が必要です。

またレベル1だから安全というのではなく、つねに『活火山』であることを念頭に入れておかなければなりません。そして立ち入り禁止区域があることにも留意しなくてはなりません。

花の百名山

浅間山はもちろん日本百名山に選定されていますが、実は花の百名山にも選定されています。活火山というと草木が生えず花など咲くようなイメージはありません。もちろん火口付近は全て砂礫が覆うのですが、下部の樹林帯や外輪山などではとても多くの花々が咲き乱れ我々登山者を楽しませてくれます。

噴煙立ち上る浅間山のすぐそばでそのように美しく咲き乱れる花々は美しいと同時に私は逞しさも感じます。

厳冬期の浅間山

浅間山はその噴火の歴史が形成した外輪山に一部囲まれていますが、独立峰の部類です。成層火山で独立峰というのは富士山も同じなのですが、こういう山々は冬になると風が強く気温もたいへん低くなります。なので冬の登山は冬型が強まるような天気図の時は避けて、すこし緩んだ時が狙い目かと思います。

しかし外輪山には冬に数回足を運んでいますが毎回稜線では烈風の洗礼を受けていて、なかなかのんびりと雪山ハイクという感じにはいきませんでした。

今回、積雪後の好天という条件が揃ったので浅間山に会いに行きました。

黒斑山登山

黒斑山は浅間山外輪山を代表する展望の山でとても人気のある山です。
とくに冬季は登山口となる車坂峠から1時間ちょっとで稜線に出ることもあり、雪山初心者から中級者まで楽しめるコースとなっています。

この車坂峠までは公共機関の便も比較的良くて、関東から新幹線やバスを乗り継いで登山する方も多いです。さらに車坂峠には高峰高原ホテルがあり、宿をとればゆったりとした山旅を楽しむこともできます。

車坂峠からの朝の展望

車坂峠~槍ヶ鞘

車坂峠は標高1,973m。早朝の登山口はこの標高の高さも手伝って気温は-10℃。風の通り道でもあり体感的にはかなり寒い朝となりました。

峠からの美しい八ヶ岳や富士山、麓の街並みを楽しみながらまずは天然カラマツの樹林帯を進んでいきます。

雪山の朝の冷え込みはつらいものの、早朝の森は美しい

雪山登山の一番つらいのがこの早朝の出だし15分。まだ身体も寒さに慣れていないのもありますが、なによりこの時期は日の出も遅いため身体もまだ半分眠ったような状態。幸い人気のコースということもあり心細さはないのですが、エンジンがかかるまでしばらくはつらい時間帯です。

本当は日の出前に登り始めて稜線から朝日に照らされる浅間山を撮りたかったのですが、完全に寝坊するという大失態。この時期はなかなか身体が言うことを聞いてくれません。

登りは表コースで

登山口から稜線までは表コースと中コースが主な選択肢となるのですが、一般的には登りに表コース、下山に中コースを選ばれる方が多いように見受けられます。樹林帯とは言ってもこの表コースはところどころ展望の良い開けた箇所が多く、振り返ると登山口の車坂峠を挟んだ反対側の高峰山や水ノ塔山、篭ノ登山がきれいに眺められますし、南西方向に目を向ければ八ヶ岳連峰や中央アルプス、木曽御嶽山が美しく眺められ、飽きのこないコースとなります。

身体が完全に雪山に順応するころに避難シェルターに到達。このシェルターを越えればまもなく稜線となるので、ここで小休止と同時にアイゼンを装着しハードシェルを羽織ります。
私のようなレベルではソフトシェルで十分な雪山ばかりなので、ハードシェルを着込むのは随分と久しぶりな感じ。

黒斑山の美しい樹林帯と浅間山上部

シェルターから少し登れば黒斑山西側に面した樹林帯の美しい雪化粧を仰ぎ見られ、真っ白な浅間山の上部も目に飛び込んできて一気にテンションが上がります。

『槍ヶ鞘』と呼ばれる展望の良い稜線からは目の前に迫る巨大な浅間山の圧倒的な存在感に絶句します。ここまで来ればもう黒斑山はもうすぐそこ、まずは浅間山を眺めながらの稜線歩きを楽しみつつ手前の『トーミの頭』に向かいます。

槍ヶ鞘からの美しい浅間山

槍ヶ鞘~トーミの頭~黒斑山

『槍ヶ鞘』からは東側が切れ落ちた展望の良い稜線歩き。
締まった新雪の踏み心地を楽しみながら急坂を登っていきます。

もちろん稜線から眺める美しくも存在感ある浅間山の景観は本当に素晴らしいものがありますが、眼下に見える浅間山と黒斑山稜線を隔てる『湯の平』と呼ばれる雪原もとても綺麗で、太陽の光を受けた木々の木立が作る『影』が真っ白な雪原を彩り、その光と影のコントラストの美しさにため息…。

稜線からの木曽御嶽山~乗鞍岳~穂高連峰

急坂を登りきると『トーミの頭』と呼ばれるピークに到達。
ここからは北に雄大に連なるカルデラと美しき湯の平、巨大な浅間山、そして南東の荒々しい牙山まで圧巻の大展望が広がっています。

黒斑山と外輪山稜線

ひとしきり展望を楽しんだのち、黒斑山に向かいます。
黒斑山へは一旦樹林帯歩きに。
山頂近くには火山カメラ装置が設置されていて、常に噴煙を上げている浅間山を監視しています。
冬季は黒斑山をこのコースの到達点とする登山者も多いため山頂部は混みあうのでノンストップで稜線をさらに進んでいきます。

黒斑山~蛇骨岳~仙人岳

この黒斑山を過ぎたあたりからほとんど無風に近いことに気が付きました。
本コースは私にとって冬季のマストコースの一つなのですが、冒頭でも書いたようにこの稜線歩きはいつも強風に晒されていました。
この時期の北からの烈風はかなりきつくて、風景を撮影しようとカメラを構えても風に煽られてまともにカメラを構えることさえままならない時もありました。

しかしこの日は時折風が吹くことはあっても基本的には無風。
冬季の浅間山外輪山の稜線でここまで無風のことは珍しく、ポカポカ陽気といっても良いくらいで着ていたハードシェルはすぐに用無しとなってしまいました。

黒斑山の美しい山肌と牙山

実は個人的に本コースのハイライトと思っているのはこの蛇骨岳に向かう稜線からの景観。特に黒斑山方面の稜線を振り返ると目に飛び込んでくる荒々しい斜面に立つ木々の美しさ。雪を被ったモノトーンの美しい木立が、逆光気味に太陽の光を受けて輝いて見えます。

浅間山ののっぺりとした山肌と、この荒々しく立体的な稜線のコントラストが見応え十分。細い稜線の登山道を何度も振り返ってはファインダーを覗き込んでしまいます。

蛇骨岳まで来ると登山者も減ってのんびりしたいところですが、ここからは北側の展望が開けるためさすがに風が強くなってきます。
北側に聳える山は四阿山や草津白根山、谷川連峰などですが残念ながら北側の山々には厚い雪雲がかかって鮮明には見ることができませんでした。
ここからでは北アルプス連峰は少し見えづらいため、さらに先の仙人岳に足を延ばします。

仙人岳へはさらに登山者も減って、日によっては大展望の稜線歩きを“独り占め”することもできます。山頂への最後の短い急登をしのげば後立山連峰をはじめとした北アルプス連峰の屏風のような美しい山並み、そしてさらに目の前に迫る大迫力の浅間山を目にすることができます。

『The Stand』

そして歩いてきたトーミの頭から仙人岳にかけてのカルデラを一望でき、何とも言えない到達感を味わいます。時間的な余裕があればさらに先の鋸岳までと思っていましたが、時間と体力的なことを踏まえてこの日は仙人岳までとしました。

前掛山に登る登山者たち

充足感とともに下山(中コース)

好天に恵まれた登山はとても心満たされるものです。
とくにそれが雪山登山となると、

『本当に来てよかった…』

と充足感に包まれます。

浅間山の展望が良い稜線で風もあまり通らないところで休憩したのち、下山にかかりました。

湯の平の美しい樹林帯と雪原

下山は予定通りの中コースで樹林帯の中をのんびりと下っていきます。

今回の山行では樹林帯でヒガラが寒さにめげずに健気に餌を探す姿をよく見かけました。けっこう人懐っこくて2mくらい近くまで寄ってきてくれましたが、残念ながらレンズ交換の暇もなく撮影はできませんでした。そもそもこの時期の2,000mを超える山で野鳥に会えるとも思っていなかったので嬉しい誤算でした。

中コースの途中には天然カラマツの美しい樹林帯もあり、最後まで被写体に困ることはありませんでした。

西日を受けるカラマツ林

冬の黒斑山登山に際して

久々に冬の黒斑山登山を終えて改めてこの時期のマストコースだと思いましたし、改めてとても人気のある山だと感じました。
稜線からは浅間山本山にもっとも迫ることができる『前掛山』に登っている登山者も多く見られました。
冬の前掛山登山となると浅間山荘からのルートが一般的になると思いますが、私のように山の写真を撮っている方には黒斑山のほうがおススメです。
フォトジェニックなシーンは間違いなく黒斑山のほうが多いです。

ただやはり外輪山とは言っても大きな浅間山が目の前ですので、先にも述べましたが入山の際は必ず噴火警戒レベルを確認する必要はあると思います。
これほど手軽に素晴らしい雪山登山を体験できる黒斑山。
あの痛ましい木曽御嶽山の悲劇を決して忘れてはいけないですし、安全最優先で雪山を楽しみたいものです。

厳冬の浅間山と外輪山