冬の赤城山にて2021年山納め

PHOTO TOUR

2021年12月、年の瀬押し迫る赤城山にて2021年の山納め山行。赤城ブルーの空と霧氷を求めて、好天の上毛三山の名峰へ。
激動の2021年を振り返りながら山を想ふアーカイブ。

(目次)

  • 好天の赤城山
  • まずは駒ケ岳へ
  • 2021年の山行
  • 駒ケ岳から黒檜山直下
  • 2021年の天体遠征
  • 黒檜山から展望スポットへ
  • 実り多き2021年
  • 赤城山からの大展望
  • 今後の撮影行



好天の赤城山

霧氷を狙って

冬の赤城山と言ったら澄み切った真っ青な赤城ブルーの空と、その空に映える美しい霧氷。山の上なのに海底から白いサンゴを見るような、そんな美しい山岳風景。
赤城山の霧氷を初めて体験したのがいつだったかはもう思い出せないくらい前のことになるのですが、私はほぼ毎年のようにこの美しい煌めくような風景に会いに行っています。

以前の赤城山の記事(2020年1月登山)でも書きましたが、無雪期に赤城山に登った時は山の歴史などを考えれば確かに名峰なのですが、山自体は結構 “地味” な印象を持っていました。しかし冬になるとその地味な山は見事な霧氷に覆われ、関東随一の雪山ハイクの入門的な山として個人的にとてもお気に入りの山となりました。

『霧氷回廊』煌く冬の赤城山

前回の山からかなり間が空いていまったこともあってこの日はとにかく無理をせず、身体を山仕様に整えるという目的もあって冬型が弱まる好天を狙って入山しました。
冬になると登山口近辺は完全凍結します。自家用車でアプローチする場合スタッドレスやチェーンなど滑り止め対策は必須となります。当方もスタッドレス装着と、念のためのチェーンを積載してアクセスしました。

7ヶ月半ぶりの山行

ここのところ全く山へ撮影には行っていませんでしたが、考えてみれば最後に山に行ったのが5月の残雪の燕岳山行。2020年初頭から続く新型コロナウィルスの影響はまだまだ2021年も続き、夏には大々的に再び『緊急事態宣言』が発令されました。

もう世間的にもこの3度目の『宣言』に慣れきってしまったところがあって、自粛する人、感染対策を講じたうえである程度出かける人、と言う感じで対応が別れた印象もありました。この場において『宣言』に対する持論を展開するつもりはありませんが、私は私で作品制作に没頭したこともあって結果的に『自粛した』形となりました。

結局その後の宣言開けも撮影のために入山するということは無く、引き続き作品制作を続けました。しかしようやくその作業もひと段落と言うタイミングでしたので、鉛のように重い腰が上がって山へ足が向きました。

まずは駒ケ岳へ

登山口にほど近い駐車場に着くとそこは冬のピリリとした空気が張り詰めていました。
外気温は-9℃
幸い風はほとんど無くそれほどの寒さは感じませんでしたが、数日前に降った雪が結構残っているようで赤城にしては雪が多い印象でした。

久しぶりの山すぎてゲイターの左右を間違えるハプニングはありましたが、それ以外は滞りなく準備していつものように予定の30分遅れ、7時半に駒ケ岳登山口から入山しました。夜明け前に入山して朝日に照らされる霧氷も見たかったのですが、今回はとにかく無理のない山行、鈍った体を山に慣らすという山行としました。

鈍った体を慣らしながら入山

赤城山塊の主峰である黒檜山登山の際、私はいつも『駒ケ岳から黒檜山を回るコース』なのですが、半分以上の方は逆に黒檜山から駒ケ岳を回る方々が多い印象です。

早朝はまだまだ登山者も少なく、このコース取りのこともあってかとても静かな登山道をゆっくりと進んでいきました。ただやはりブランクは思った以上にあるようで、すぐに息が上がってしまいました。

眼下には半凍結の大沼と赤城神社

すっかり葉の落ちた木々の間からはワカサギ釣りで有名な大沼(この日は半氷結)と朱色が映える赤城神社が見下ろせました。尾根に上がる頃には太陽もそこそこ上がっていて、風も無く穏やかな新雪降り積もる尾根を駒ケ岳方面へハイクします。

美しい雪面

2021年の山行

2021年は前年2020年と同様に山行回数が稀に見る少なさでした。
その数わずか3回…。

①4月の立山(雷鳥沢)山行
②5月の燕岳山行
③12月の赤城山行(本山行)

4月の雷鳥沢では冬毛の雷鳥撮影や残雪の剱岳撮影を行いましたが、非常に多くのものを得られました。立山の美しさ、剱岳の重厚さ、逞しくも愛らしい雷鳥などはもちろん、北アルプスの厳しさや雄大さも肌で感じられる山行でした。以前から私はもはや『登頂する』ということには全く興味がなくなってしまい、この山行においても立山三山や剱岳、別山、奥大日岳など周辺の名だたる名峰には一切登っていませんが、とても満足できる、非常に充実感に満たされる山行でした。

『残雪の立山連峰に抱かれて』冬毛の雷鳥と劔岳モルゲンロート

こちらも雷鳥沢と同様に毎年の恒例になりつつある5月の燕岳山行。こちらでも美しい残雪の裏銀座の山々や、煌びやかな星空(最高の星空とは言い難かったですが…)、縄張り争いで活発に動き回る雷鳥たち、など天気にも恵まれのんびりできた山行でした。

『春の燕岳』残雪の峰々と雷鳥と星空と…。

この後、夏には後立山山行や西鎌尾根山行、雪倉岳・朝日岳山行などの予定がありましたが、残念ながら緊急事態宣言の影響ですべて流れてしまいました。

下界もそうですが、果たして山も平常に戻る時が来るのでしょうか。
心配でなりません。

駒ケ岳から黒檜山直下

尾根伝いに登りながらあまりの無風、あまりの快適な冬山ハイクに嫌な予感がしていました。前回の冬の赤城山の爆発的霧氷ハイクとなったときとは全く違って快適すぎる…。

冬山とは思えない快適なハイク

案の定、駒ケ岳まで目当てだった霧氷はほぼ見られず、これから向かう黒檜山との鞍部あたりの霧氷群に期待しながら進軍。

『霧氷』と言うのは本当に儚いもので、その日の気温はもちろん、風の強さや向き湿度前日の天候など気象上の条件が揃わないと現れない現象。そんな儚い現象だから美しいとも言えるのですが、こればかりは現地に行って、そして登ってみないとわからないものです。

鞍部から黒檜山を見上げる

霧氷は時間的にも儚いもので、陽が上がって気温が上がるとすぐに溶けてしまうもの。霧氷狙いでしたら早出が原則なのですが、幸い駒ケ岳直下から鞍部まではなんとか霧氷が残っていてくれました。

わずかに残っていてくれた霧氷

特に個人的に見どころ(撮りどころ)だと思っている駒ケ岳北面の霧氷群はびっしりと残っていてくれました。ここは本当に見事な霧氷群で、いつも足が止まるポイントです。

駒ケ岳北面の見事な霧氷群

2021年の天体遠征

ついに今年、天体写真遠征の回数が撮影山行の回数を上回りました。
『コロナ』という外的要因があったにせよ、いつかこういう日が来るだろうとは思っていました。山にしろ、下界にしろ、天体にしろ、野鳥にしろ、とにかく何を撮影するにも一番大切なのはモチベーションの維持

体力低下はモチベーションさえあればいくらでも補えます。
モチベーションさえあればそのためのトレーニングが苦も無く出来ますから。
しかしモチベーションが衰えてくると体力低下に歯止めが利かなくなります。
とくに山岳写真は『体力勝負』の側面が強く影響するのでモチベーションの低下は由々しき問題となります。

幸い天体撮影のモチベーションは下がることなく3月4月に敢行した天城遠征でさそり座やいて座付近を狙いました。天体用途で導入したツァイスのミルバス135mm、このレンズのおかげで天体写真のクオリティーが飛躍的に引き上げられました。その後7月の妙義遠征ではくちょう座を、緊急事態宣言もあって天体遠征も間が空きましたが12月には再び妙義にて2週連続で昨年のリターンマッチ撮影とハート&ソール星雲を狙いました。

『Around The Scorpion’s Heart』

『M8 & M20』

『Sadr Region』

『Barnard’s Loop & M78』

と言うことで振り返ってみれば天体遠征は5回と、私にしてはまずまず天体撮影できた年となりました。



黒檜山から展望スポットへ

本来ならば本コースのクライマックスのひとつと言える黒檜山への急登の霧氷トンネル。しかしこの日は全く霧氷がなく、やはりこの日は残念ながら『ハズレ』を引いたと確信…。

久しぶりの登山ということで今回は撮影はもうあきらめて、のんびりと純粋に山の空気を楽しむことに切り替えることにしました。風もなく陽も暖かく、本当に冬山ハイクかと思えるようななんとも平和な赤城山行。

「これもまたイイじゃないか…」

歩いてきた尾根と小沼、地蔵岳、最奥には富士山も

澄んだ青空、
穏やかな山の空気、
ピリッとした澄んだ大気、
美しい下界の展望。

荷を下ろし、ドッかと銀マットに腰を下ろし、山の空気を吸いながらの軽食。
休憩後は一歩一歩確かめるように鈍った足を山に順応させながら、黒檜山頂、そして展望スポットへ進みました。

実り多き2021年

みなさまにとって2021年はどのような年でしたでしょうか。
やはり後にも先に『コロナ』が付き纏ってしまい、思ったように活動できなかった方々が多かったでしょうか。2020年から世界は一変してしまいました。今まで当たり前と思っていたことが、ことごとく覆されるような激動の昨今。この先、この世界は果たしてどこに向かっていくのでしょうか。

個人的には2020年はコロナの出始めで私も世間と同様に混乱し、予定した山行がことごとく潰されマイってしまいました。しかし2021年は自分の活動の進め方、考え方を今一度見つめ直し、少し変えてみました。

「あァ、山へ遠征に行けない…」

と腐るんじゃなくて、こういう時だからこそ出来ることをしっかりとやろうと。そのおかげか確かに撮影回数自体は極端に減ってしまいましたが、その分得るものが非常に大きい、実りの多い年となりました。

その目に見える結果のひとつが『作品制作』
今までは撮影するばかりで自分の『作品』と言うのもにそれほど時間を割いて対峙してきませんでした。とくにフィルムからデジタルに移行してからはそれが顕著でした。
しかしこの『コロナ自粛』がきっかけで、自分の山岳写真をもう一度見直す、反芻することが出来ました。

Magna Gloria

Benedictio Aurea

いまはSNSが主流となって非常にハイスピードな『ネット社会』
撮っては消え、また撮っては消え、という誤解を恐れずに言うなら写真の『使い捨て』とも感じてしまうところがあります。

そんな時代だからこそアナログの、デジタルではない『リアルの作品』の立ち位置はとても需要なんだと作品制作を通じて自分自身改めて感じました。

『どう撮るか』だけでなく、それを『どう残すか』
この作品を『残す』ということの重要性に気付かされたのは皮肉にも撮影に行か(け)なくなったから。世間の情勢にいつも右往左往する自分としては稀有な経験でした。

赤城山からの大展望

この日の霧氷は残念でしたが、赤城山の名物展望スポットからの素晴らしい風景はこの日でなければ見れなかったかもしれません。関東平野からせり上がる、まさに北側に聳える屏風のような上信越国境の見事な山並み。

真っ白な独立峰の浅間山から苗場山谷川連峰上州武尊山至仏山、そして燧ケ岳会津駒など見事な山容がキラキラに輝いて見えました。

北側に聳える白銀の山並み

たいていこの時期のこれらの山々は分厚い雪雲に覆われていてその山容を拝むことはなかなかできない日が多いです。実はこの駒ケ岳から先に回るルートにしているのはクライマックスをこの展望スポットにするためとも言えるかもしれません。駒ケ岳から回ると様々な山の風景をストーリー仕立てのように楽しめるのです。

上州武尊山

真っ白に雪化粧した浅間山

展望を楽しんだ後は転げるように下山し、昼過ぎ(12時半)に駐車場に戻ってきました。

7か月半ぶりの山でとてつもない体力低下を感じましたが、それでも怪我をすることも無く無事に周回コースを歩けたのは安心できました。駐車場に戻った時に感じる達成感安堵感充実感はやはりこのような比較的入門者向けの山でも強く感じることが出来ます。

目的の霧氷は残念でしたが、来年以降に弾みがつくような快適な冬山ハイクとなりました。

今後の撮影行

今現在はここ日本においては新型コロナウィルスの感染は低く抑えられているようですが、海外では新株の感染が爆発的に増えているようです。2022年は果たしてどのような社会になるのでしょうか。

ただ、どのような情勢になっていようと自らの『芯』がしっかりしていれば自分らしい活動が出来ることが分かりました。今までは山岳写真を中心に据えてきましたが、今後は天体写真のほうも本格的に撮影できればと思っています。

とは言え北アルプス撮影山行もまだまだ撮りたい題材が多くあって、毎年少しずつ撮り進めていますが、撮れば撮るほどまた新たに撮りたい題材が出てきたりで、まさに終わりのない旅と感じています。22年も21年に引き続き作品制作も続けていくので撮影山行回数が増えるということはまず無いとは思いますが、そのぶん貴重な山の時間を大切にしていきたいと思っています。

2022年、世界が、人々が平穏な日々を送れることを切に願ってペンを置くことといたします。
最後までいお付き合いいただき、まことにありがとうございました。

皆様にとって2022年が良い年でありますように。