2020年11月 谷川岳ロープウェイベースプラザ~一ノ倉沢~幽ノ沢
最終盤に差し掛かった2020年11月の紅葉シーズン。巨大なる天然岩の彫刻芸術『一ノ倉沢』へ晩秋の紅葉狩り。一ノ倉沢のモルゲンロートと幽ノ沢までの万華鏡のような秋色に癒されるアーカイブ。
(目次)
- 2020年の紅葉シーズン
- 一ノ倉沢
- 一ノ倉沢モルゲンロート
- 幽ノ沢までの紅葉散策
- 振り返って
2020年の紅葉シーズン
昨年秋の美しい紅葉シーズンは残念ながら台風による大きな被害があって楽しめるような状況ではありませんでした。登山口の多くはいわゆる “林道” の先にあるわけなのですが、その林道の多くが大雨によって崩落したのは記憶に新しいところ。
今年は今年で台風による被害は少なくて良かったですが、個人的に何かと立て込んでいたためじっくりと紅葉を愛でに行けませんでした。季節はいつの間にか進みに進んで高い山では早くも雪の便りが届き始めた11月初旬、紅葉も最終盤に差し掛かった谷川岳エリアの一ノ倉沢へ撮影に向かいました。
“紅葉の当たり年” というものが何をもって “当たり” というのかは分かりませんが、山岳写真を撮っている私のような人間にとっては葉の “色づき” よりもいわゆる “三段紅葉” というものが垂涎の風景だったりします。
しかし昨今の日本は温暖化なのか周期的な気候変動なのかは分かりませんが、とても小雪の年が多くなりました。三段紅葉は紅葉の時期に高い山に雪が降らないといけませんから、こればかりは強い寒気が日本列島に秋にやってこないことには見れないもの。昨年は特に暖かくて、谷川岳に限って言えば新雪を美しく纏ったのはとっくに紅葉が終わった12月に入ってから。
しかし今年2020年は北アルプスはもちろん、谷川岳でも紅葉シーズンに山が白くなりました。
一ノ倉沢
谷川岳は世界に名だたる『魔の山』、世界で最も死者が多い山と言われています。その多くは実は谷川岳というよりはその東壁である『一ノ倉沢』の登攀によるもの。多くのクライマーが幾度となく挑み、多くの方が亡くなられたある種の人間には “アンタッチャブル” な領域であり、聖域でもあります。
私はクライマーでありませんが、改めて振り返ってみると私に山に対する畏怖の念や恐怖、偉大さ、雄大さを教えてくれたのは一ノ倉沢なのかもしれない…。
まだ本格的に山に登る前、山岳写真を撮り始める前は風景撮影の一環としてこの一ノ倉沢には何度も撮影に行った。一ノ倉沢には自然が造り出す造形美の雄大さ、美しさ、厳しさ、そして物事の本質が体現されている。
一ノ倉沢界隈には多くの石碑が並んでいる。
この山に挑んで亡くなられた多くの方を弔うためのものだ。
人間なんて自然の厳しさのなかでは本当に弱い存在なんだ、と改めて思う。
雄大な自然、圧倒的な自然を見て “美しい” と感じるのはきっと人間が自然のなかではちっぽけな存在だからなのかもしれない。
山を本格的に始めてからは一ノ倉沢に行かなくなった。このエリアに足を運んだら谷川岳や白毛門に登っていたからだ。今年は紅葉シーズンに谷川岳が冠雪したということで15年ぶりくらいに歩いてきました。
一ノ倉沢モルゲンロート
この日はGPV予測で好天が期待されたので朝日に輝く一ノ倉沢を撮影しようと計画。谷川岳ロープウェイのベースプラザ駐車場を5時前に出発。
それにしても今年の谷川岳ロープウェイは不運続きだったようだ。
撮影合間の休憩時にスタッフの方がちょうど来られていたのでお聞きしましたが、春のコロナによる自粛に続いて雷による制御コンピューターのダウン、そして極めつけは大雨による地中の送電線断裂。
3度にわたってロープウェイの運行に支障が出たようで、こんな状況ではロープウェイを維持するのもさぞたいへんだろう。
・利用料金
5月~11月は小型車500円 大型車1,000円
12月~4月は小型車1,000円 大型車1,000円
※12月~4月の平日は駐車無料
・入場
24時間入場可で深夜・早朝駐車の場合は出庫時支払い
・ベースプラザ営業時間
【4月~11月】
平日 8:00~17:00
土日祝 7:00~17:00
【12月~3月】
全日 8:30~16:30
3月からの土日祝 7:00~16:30
一ノ倉沢まではこのベースプラザから約3.5㎞、時間にして歩いて約1時間程度。日の出が6時過ぎなので5時前にスタートで6時前には一ノ倉沢に着きましたが、平日にもかかわらず既に数人の方が日の出を待っていらっしゃった。
気温は2℃ほどで平坦な林道とは言え歩いてきたので寒くはありませんでしたが、撮影準備を始めてから体を動かさなくなると途端に寒さを感じた。
うまい具合に2日ほど前に冠雪した一ノ倉沢に朝日が差し込んで美しいモルゲンロートとなった。
その時間わずか1、2分程度。
本当に短い時間だった。
その後は予測よりも雲が多く出てきてしまい、残念ながら一ノ倉沢にきれいに陽が当たることはありませんでした。
幽ノ沢までの紅葉散策
モルゲンロートの撮影を終えてからは周囲の風景をしばらく撮影。白毛門方面の紅葉も見事で、こんなに美しい紅葉を愛でるのもずいぶんと久しぶりでした。朝焼けを撮影に来られた方々は早々に引き上げていって、この後に日が高くなってから観光の方々が来るまではとても静かな一ノ倉沢となりました。
ここでベンチにどっかと座って遅い朝食をとりつつ休憩にし、その後はさらに先の幽ノ沢あたりまで散策しようと足を向けました。
天候は残念ながら雲が出てきてしまい、終盤とは言え美しい紅葉の散策路が光に満ち溢れているような写真は撮れませんでした。しかしこの終盤の紅葉、まもなく厳しい冬を迎えようとする雰囲気にはこの曇り空はかえってマッチしていて、個人的には好きな情景となりました。
一ノ倉沢までは散策する方は大変多いですが、その先は途端に人が減ってきます。散策路も一ノ倉沢までのような舗装された林道ではなく、土の匂いが立ち込める登山道然とした散策路。そこに落ち葉が堆積してカラフルな絨毯を作り上げていました。
この辺りはクマの目撃情報もたいへん多いのですが、それはつまり自然が深いということ。幽ノ沢から見上げる一ノ倉岳の絶壁も控えめながらとても美しいものがあります。
一ノ倉沢から幽ノ沢までは40分ほどの散策ですが、被写体が多すぎてまったく足が進まず、止まっては撮影、止まっては撮影の連続。
ここに来るのも久しぶりだし、せっかくなので巡視小屋まで足を延ばして沢沿いを戻って来ようかと思っていましたが、かなり時間も経っていたことから幽ノ沢から引き返しました。
振り返って
一ノ倉沢からベースプラザまでの林道も白毛門や大源太山、巻機山方面の山々も綺麗に眺められ心満たされる散策となりました。
振り返ってみれば総行動時間は幽ノ沢までの散策にもかかわらず8時間弱…。幽ノ沢までの散策で8時間もかける人はあまりいないだろう…。
それくらい被写体が多かったし、とにかくのんびりと紅葉を楽しみました。目的の三段紅葉風の一ノ倉沢が見れましたし、何と言っても幽ノ沢への美しすぎる散策路は本当に素晴らしかった。あとひと月もすればこのあたりは深い雪に覆われるだろう。
さぁ、いよいよ雪山の季節到来だ。
・一ノ倉沢までは年間を通じて全面通行止め。
・ただし管理車両はもちろん、自転車は通行可能のため歩行時には注意が必要です。
・林道は舗装路でところどころベンチが設置されのんびりと散策を楽しむことができます。
・秋は特にクマの目撃情報が多くありますので、念のため熊鈴などで対策を。
・ロープウェイプラザから一ノ倉沢まで1時間に1本程度の間隔で電気ガイドバスが運行されています。運賃は無料ですがガイド料金が片道500円かかるそうです。お年寄りや小さいお子さん連れなどご利用されてはいかがでしょうか。時刻表は谷川岳ロープウェイ公式HP参照。