晩秋の松姫峠・鶴寝山散策

PHOTO TOUR

2019年11月 松姫峠~鶴寝山・大マテイ山

山梨県小菅村、自然豊かな松姫峠から鶴寝山・大マテイ山への散策路を紅葉散策。色付きも終盤に差しかかった散策路を、落ち葉を踏みながら、ゆっくりと、のんびりと…。

(目次)

  • 里山の魅力
  • 2019年受難の秋
  • 松姫峠
  • 鶴寝山
  • 紅葉の森の散策

里山の魅力

高山と里山

私は北アルプスを中心とした高山の山岳写真を主に撮影していますが、それと同時に里山散策も大変魅力的に感じています。

高山には高山の魅力が、里山には里山の魅力がそれぞれあります。北アや南ア、八ヶ岳といった3,000m級の高山は非日常的な絶景を求めてそれなりに気合いの入る撮影になりますが、里山散策はのんびりと木々を眺めたり、野鳥の囀りに耳を傾けたり、登山道の柔らかな踏み心地を楽しんだり、山の匂いを嗅いだり、とにかくゆっくりと自然観察をしながらの撮影になります。
高山はワクワクを求めて、里山は癒しを求めて、という感じでしょうか。

自然観察

実はこういった散策、私にはとても貴重な時間です。ネイチャーフォトを撮る上で被写体をしっかり理解することはとても重要と思います。その被写体である“自然”を深く理解するには観察眼を養わなければなりません。木を、葉を、鳥を、昆虫を、花をしっかりと『見る』。

しかしこれが北アルプスとなると登山口あたりは言ってみれば里山なんですが、どうしても『その先へ、雄大な稜線へ』との思いが強くなりすぎて『見ていない』んですね。
その点、里山はじっくりと自然を観察する時間と心の余裕があります。

私は里山散策において目的地は特に決めていないことも多く、とにかく好きなだけ自然観察を楽しむことだけを目的としています。完全に登山や山登りとは違います。時間配分もペース配分も高山のように考える必要もありません。実はこれはとても贅沢な時間と感じています。

心満たされるまで観察しながら歩を進めて、疲れたら少し休んでまた歩く。心満たされたら帰る。高山ではなかなかこうはいきません。

2019年受難の秋

近年の日本の秋は毎年が異常気象と言えるほど天候が思わしくありません。私は天気や気象の専門家ではないのでそれが地球温暖化のせいなのかはわかりませんが、気持ちの良い秋空は最近ではめっぽう少なくなってしまいました。

もちろん夏が終わり気候が秋冬に入れ替わる要素である『台風』は毎年の気象サイクルのひとつである事は理解できるのですが、その雨量たるやもはや異常なレベルとなっています。

台風による被害はどちらかというと西日本で起こることが多いように思っていました。九州や中国地方では川の氾濫や土砂崩れの被害が大変多かったですが、2019年は関東の広い範囲でも大雨による甚大な被害が起きました。

9月は毎年のように台風シーズンですが、2019年は10月以降も台風に悩まされた年になりました。里山も林道の多くで土砂崩れが発生し、散策どころではない日々が続きました。

この場を借りて、台風で被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。と同時に林道や登山道の修復に携われた方々に感謝申し上げます。改めて当たり前に山を歩ける、自然を愛でることができるということは本当にありがたいことなんだと気付かされます。

松姫峠

松姫峠は奥多摩湖に程近い国道139号線、山梨県の小菅村と大月市を結ぶ峠です。標高はおよそ1,200mあります。素敵な名前の峠ですが、その昔戦国時代に武田信玄のむすめ松姫が織田信長の軍勢から逃れるために越えた峠であるとされることが由来となっています。

現在は2014年に完成した『松姫トンネル』を含むバイパス道があり生活道路の通過点としては松姫峠は使われなくなっています。そのため、松姫峠は純粋な自然観察や峠から程近い奈良倉山登山、そして大マテイ山や大菩薩嶺への登山口として使われています。

そのおかげか、この松姫峠はとても素晴らしい自然がそのまま残されているだけでなく、とても静かで野鳥の囀りや風が木々や草花を揺らす音しか聞こえないくらいです。今回のような里山散策にはもってこいの素敵な峠と言えます。

松姫峠は冬季閉鎖期間を除いて土日のみバスも1日に1本ですが運行されています。詳しくは運行している富士急バスの公式HPをご覧ください。
マイカー利用では大月側からは終日通行止めです。いったん松姫トンネルを小菅村側に抜けてから旧道を上がる必要があります。

鶴寝山

晩秋の登山道

前回の山は9月の白馬岳。私は以前に比べて山に行く回数は減りましたが、それでも月に最低1回くらいはコンスタントに山に入っています。しかし今年は白馬岳から下山後は天候不順が続いて、とくに10月はあの台風の影響もあって全く駄目でした。

登山の間隔が空いてしまうと服装に迷ってしまいます。とくに今回は2ヶ月ばかり空いただけでなく、1,000mほどの里山散策ということもあって涼しいのか、寒いのかまったくわかりませんでした。

ブナやミズナラが美しく立ち並ぶ登山道

実際は早朝、霜が降りるほど冷え込んでいましたが、日が差してくるとぽかぽか陽気となりました。登山口の木々も夏に比べてすっかり葉を落としていましたが、色づきもまずまずといったところでした。

ちなみに松姫峠周辺は野鳥も多く生息していますが、今回はコガラやヤマガラ、ゴジュウカラ、アカゲラ、コゲラ、カケスなどが見られました。

登山口近くではコガラが出迎えてくれました

関東の富士見百景

鶴寝山へは峠からわずか30分弱。標高1,368mの山なので峠からの標高差もあまりなく、登山というよりは森の散策という感じです。

松姫峠や鶴寝山付近は『国土交通省関東地方整備局』といういわゆる“お上”が選定した『関東の富士見百景』の“大月市北部からの富士”に選定されています。そのため山頂付近から南方面は富士山がよく見えるように木々が伐採され管理されています。

鶴寝山山頂からの富士山の眺望(関東の富士見百景)

秀麗富嶽十二景

峠を挟んだ反対側の奈良倉山は『秀麗富嶽十二景』の五番山頂に選定されています。山梨県といったらやはり富士山の眺望が素晴らしいですが、大菩薩嶺をはじめとした山梨県北部の山々からの富士山の眺望は下界からの眺めよりもやはり素晴らしく、とくに晩秋、木々が色づき始め富士山も白く雪を纏うこの時期は美しいと感じます。

『秀麗富嶽十二景』は山梨県大月市が定めた12の山頂(山域)からの富士山の眺望ですが、“12”の縁は大月市から富士山方面に向けての眺めですと富士山の裾野が手前の山々(三つ峠山や御坂山)によって隠れて、それがあたかも富士山が十二単を纏っているかのように見えるところからきています。

余談ですが私はいままでに雁ヶ原摺山、牛奥ノ雁ヶ原摺山、奈良倉山の四つ山に登ることができましたが、こういった選定はいろいろな山に登るきっかけになって良いですね。

紅葉の森の散策

鶴寝山山頂で一息入れてから先は完全に“気の向くまま”の散策としました。このあたりの登山道は大菩薩嶺に連なる石丸峠への長大な『牛ノ寝通り』と称される尾根が繋がり、眺望こそ望めませんがたおやかな尾根が美しく延びています。

 

今回はのんびりと野鳥を観察したり、囀りを聞いたり、美しい晩秋の木々の色づきを観察したり、日向ぼっこをしたり。望遠レンズで美しい紅葉のカットを撮ろうと歩き回ってはまた休み、“山沢入りのヌタ”と呼ばれるあたりから大マテイ山山頂間までを散策しました。

本格的な登山、今回ですと例えば石丸峠まで歩くとなると結構な距離にもなりますし、じっくりと自然観察という余裕がなくなってしまいます。

きれいな野鳥の歌声に耳を澄まし、

晩秋の柔らかな斜陽を受けて輝く木々に魅せられ、

足元にはフカフカの落ち葉…。

美しい自然風景を五感すべてを使って愛でる贅沢。

同じ日に散策や登山に訪れている方々もどこかのんびりと歩いているように感じました。

時間を気にせず、気の向くまま、花鳥風月を愛でる里山散策は高山にはない魅力がたくさんあります。
今回のコース、ただ歩くだけならそれこそ2時間もあれば十分ですが、6時間弱もかけて楽しみました。次回はぜひ春の雪解けの時期に楽しませてもらおうと思います。