軽量山岳テント:アライテント『SLドーム』

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今回は2026年夏の長期北アルプス縦走のために新たに導入したアライテントの軽量な山岳用のテント『SLドーム』を取り上げます。それまで筆者が使用してきた同じくアライテントの定番テント『エアライズ2』との比較を交えて筆者の主観を中心に、2024年6月に登場したこの新しい軽量山岳テントの使用感や詳しい仕様などを取り上げたいと思います。
より軽量な山岳用テントを物色中の方々や、これからテント泊をやってみようとお考えの方々のご参考になれば幸いです。

(目次)

  • より軽量なテントを求めて
  • 1人用か2人用か
  • 軽量テントの候補
  • 『SLドーム』の基本スペック
  • 重量について
  • 素材の薄さについて
  • 強度について
  • その他 (出入口や価格ほか)
  • まとめ

※本サイトはAmazonのアソシエイトとして適格販売による収入を得ています。

より軽量なテントを求めて

小屋泊からテント泊へ

もともと筆者が山でテント泊を始めたきっかけですが、それは山の写真を撮影するにはテント泊のほうが山小屋泊よりも時間的な融通が利きやすいと思ったからにほかなりません。山小屋泊は筆者が山を登り始めたころからすでに基本的には事前予約をして利用するもので、登山当日の天気がどうであれその計画通りに利用することが基本行動でした。

それに対して当時のテント泊はどのテント場も予約というものは不要で、それこそ天気の具合をみながら停滞や延長も含めて自由に張る日を決めることができました。現在の北アルプスでは夏の最盛期や週末、そして連休など特定日ではテント泊でも予約が必要なテント場も増えてきましたが、当時のテント泊にはなにより圧倒的な “自由” がありました。

時間的制約のないテント泊 (2022年9月 奥剱・池ノ平にて)

そのほか、山小屋では朝夕の食事の提供時間というものが小屋ごとに決められていて、その時間に合わせて食事を摂る必要もありました。当然ながら夕食や朝食の時間帯は山岳写真的にはいわゆる “マジックアワー” と言われる時間帯で、筆者はかつてその時間帯に写真を撮るために山に登っていた時期もありましたから、小屋泊スタイルから時間的自由が得られるテント泊スタイルへの移行は当時の筆者にとっては必然の流れでもありました。

もちろん登山を始めた当初、山小屋に泊ったときに小屋の傍にあったテント場で、衣食住すべてを担いで登って来たテント泊登山者たちがすごくかっこよく見えて、その方々に憧れてテント泊をやってみたいとの思いもありました。それに小屋泊には無いテント泊ならではの “山との距離感の近さ” というものを体験をしてみたいという思いも当然ありました。

自然を近くに感じるテント泊 (2018年8月 黒部五郎小舎にて)

軽量化へ向けて

筆者の親世代の方々はテント泊と言ったら重いテントや食料を分担して担ぎ、大きなテントを数人で利用するスタイルが多かったと思いますが、筆者がテント泊を始めようとした時期は “ソロテント” というものがすでにトレンドになっていた時期でした。そのためテントメーカー各社から軽量な山岳用のテントが数多く出揃っていました。筆者が初めて購入したものはエスパースのもので、しばらくしてからアライテントの定番テントである『エアライズ2』に変更して、それをかなり長い期間にわたり補修しながら使用してきました。

しかし山の写真を撮影する目的ということで当然カメラやレンズ、三脚など撮影機材を多く担ぐこともあって、とても重くてきつい登山を経験してきました。やがてカメラはフィルムからデジタル一眼へ、そしてより軽量でコンパクトなミラーレスへと移り変わり、三脚等もアルミからカーボンとなったりで時代とともに軽量なものへと進化していきましたが、残念ながらそれとともに自身の加齢による体力低下などもあって、登山用具に関してもより軽量なものを求めるようになりました。それこそ筆者の親世代の方々からはお叱りを受けるかもしれませんが、楽を覚えるともうあの辛い経験はしたくないと思うものです。

長年使った『エアライズ2』(2022年11月 燕山荘にて)

そんな折、2026年の夏に自身としてはもっとも長距離となる北アルプス縦走を計画。長らく使用してきた『エアライズ2』の経年劣化も重なっていたこともあって、この機にさらに軽量なテントに買い替えようと物色し始めることになりました。

『新穂高から室堂へ、憧れだった53km』夏の北アルプス縦走5泊6日(赤牛岳・読売新道) 前編

1人用か2人用か

まず候補となった各社テントを取り上げる前に、ソロによるテント泊撮影山行にて1人用のものにするか、2人用のものにするかの選択肢があります。もちろん重量的には1人用のほうが小さいわけですから軽くはなりますが、同モデルで比較する分にはスペック的には実は意外と大きな違いはありません。しかし1人用、2人用ともにもちろん各々にメリット・デメリットがあります。

1人用はとにかく極限まで軽くしたいときの選択肢になります。それは当然ながら、実はこの1人用の “狭さ” が役に立つ場面もあったりします。例えばテント場が混み合ったり、サイトの水捌けが悪かったり、大きい石や岩が点在するようなテント場などでにおいて、2人用では無理でもこの小さい1人用のサイズのおかげで張れるという場面もあったりします。筆者は実際に1人用のテントを使ったことはありませんが「もう少し小さかったらここに張れたのに…」ということを何度も経験したことがあります。

そして1人用は当然ながら生地自体の表面積が小さいので収納時もよりコンパクトになります。ですから小さいザックにも収納できることになるので、そのザックの自重分の軽さも総合的に考慮されることになります。
さらに夜露が多い時や雨天時に撤収する場面でも、生地面積が小さいので濡れる表面積も当然少なくて済むので、大きなテントに比べて抱えることになる水分量ぶんは軽くなるはずです。せっかくの軽いテントでも朝露や雨で濡れると重くなるのはテント泊のあるあるなわけですが、その負担がコンパクトなテントほど理論的には少ないはずですから余計に重量差がつくことになります。この辺りはスペック表では現れない実質的な重量メリットと言えると思います。

逆に、当然ながらテント内は狭いので荷物を乱雑に置くと就寝スペースがどんどん削られることになります。撮影機材などが増える撮影行などではとくに狭さを感じるかと思います。先述の通り筆者はテント泊を始めるころ、山へは撮影のために登っていたこともあって、2人用を選びつづけています。しかし昨今の機材のコンパクト化や、あくまで個人的なことですが最近は多くの撮影機材を担ぐことが無くなったので1人用のテントも今後検討してみようかと改めて考えています。

軽量テントの候補

さて『エアライズ2』からの買い替えということで物色する中で、いくつか候補となるテントはありました。もちろん『エアライズ2』は約1,770g (張り綱やペグ含む)なので、当然それよりも軽いテントということを最も重要な条件としてピックアップしました。

フリーライト2(MSR)

フリーライト2(MSR):出典Amazon

MSRの『フリーライト2』は重量1,060gとたいへん軽量で、候補のひとつになりました。フライとフロアは15D(デニール)でインナー本体は10Dという薄いマイクロメッシュが採用されています。MSRはアウトドアメーカーとして古参で、筆者が山を始めたころからすでに様々な山用品のメーカーとして馴染みもあって安心感がありました。
ただこの『フリーライト2』は少し高めな価格設定であり、吊り下げ式テントであることが筆者に合うかどうかの不安がありました。

カミナドーム2(ファイントラック)

カミナドーム2(ファイントラック):出典ファイントラック

国産メーカー、信頼のメイド・イン・ジャパンで知られるファイントラックの『カミナドーム2』は重量1,460gとわずかに『エアライズ2』よりも軽く、長辺側に出入り口があるテントで候補のひとつでした。傷んだ時でもパーツを交換出来たりとアライテント同様に国産メーカーによる細やかなアフターフォローも安心です。筆者好みのスリーブ式ということでしたが、個人的にはちょっと野暮ったくみえる色やデザインが好みではありませんでした。
インナー本体の生地はなんと7Dという極薄ですが重量は『エアライズ2』から大きい軽量化ではなかったことと、9万円弱という価格帯がすこし気になりました。

タニ・オズモ2P(ニーモ)

タニ・オズモ2P(NEMO):出典NEMO

ここ数年は北アルプスのテント場でもかなり多く見かけるようになって、今やメジャーな存在として人気のニーモのテント。なかでもバランス的にこの『タニ・オズモ2P』は候補でした。とくに派手さのないシンプルなデザインや色は筆者の好みで、一度はニーモのテントを使ってみたいとかねてから思っていました。
日本の山岳シーンを考慮して設計されただけあっていろいろな機能が盛り込まれていますが、最小重量1,240gで、ペグなどを含むと重量的にはカミナドーム同様それほど大きな軽量化は見込めませんでした。なによりニーモのテントは価格的にかなり高めの設定で、この『タニ・オズモ2P』は10万円弱で残念ながら予算的に断念しました。

ホーネット・オズモ2P(ニーモ)

ホーネット・オズモ2P(NEMO):出典NEMO

ニーモのテントで上記の『タニ』シリーズよりも軽量な『ホーネット・オズモ2P』。最小重量950gはペグ等を含んでも『エアライズ2』から大きく軽量化できます。ニーモのわりには価格的にも抑えられており有力な候補でした。このテントも近年テント場でよく見かけるようになりましたが、はたして稜線にあるテント場での強風や暴風にどこまで耐えられるのだろうかと若干の不安が残りました。(とくにポールハブの造形を見て)
やはり筆者は風から受けた圧力がインナーテントに平均的に分散されるスリーブ式のテントに安心感をもっており、今回は断念しました。

ヤール2(ゼインアーツ)

ヤール1(ゼインアーツ):出典ゼインアーツ

2018年に長野県松本市で創設された国産新興メーカーであるゼインアーツの『ヤール2』は最有力候補のひとつでした。フライが15D、インナー本体が7D、フロアが20Dとバランスが取れた生地が使われており、ペグはもちろん付属のフットプリントまで含んで1,250gは素晴らしいスペックだと思いました。
デザイン的にも落ち着いたシンプルなデザインは個人的にもとても好感が持てましたし、なにより価格が4万円ちょっととお財布にも優しい価格設定はまさに企業努力以外の何ものでもないと感じました。最後まで迷いましたがやはり吊り下げ式のテントであることがどうしても気になって購入には至りませんでした。

SLドーム(アライテント)

アライテント『SLドーム』:出典アライテント

上記の通りいくつかの候補はありましたが、実はそれはすべてこのアライテントの新しい軽量テント『SLドーム』との比較対象として検討していました。重量と堅牢さのバランスが取れた質実剛健な『エアライズ2』の圧倒的な安心感と、それまで使ってきた筆者自身の経験則が再びアライテント製品への信頼性を求めるようになっていました。
そして『エアライズ』シリーズと違い『トレックライズ』シリーズのような長辺側の出入口ということも検討する際に大きなポイントになりました。つまり『エアライズ』の思想と『トレックライズ』の利便性を融合させて、さらに軽量化へと昇華を遂げた製品と言えると思い、価格面も含めて最終的にこのテントの購入を決断しました。



『SLドーム』の基本スペック

いつものように前置きが長くなりましたが、ここで『SLドーム』の基本スペックを確認してみましょう。今回は今まで筆者が長年使ってきた『エアライズ2』と並べて比較してみたいと思います。

主な仕様 SLドーム

エアライズ2

設営方式 スリーブ式 スリーブ式
重量(本体、フレーム、フライ) 980g 1,550g
重量(ペグ、張り綱含む) 1,380g(専用アンダーシート含む) 1,770g
サイズ(設営時) 間口210×奥行120×高さ95cm 間口130×奥行210×高さ105cm
サイズ(収納時) 27×21×9cm(コンプレッションベルト未使用時)、フレーム38cm 本体30×15Φcm、フレーム38cm
素材 本体:12Dリップストップナイロン
フライ:15DリップストップナイロンPUコーティング
シート:30DリップストップナイロンPUコーティング
専用アンダーシート:40DナイロンタフタPUコーティング
本体:28Dリップストップナイロン
フライ:30DリップストップナイロンPUコーティング
シート:40DナイロンタフタPUコーティング
フレーム:NSL9フェザーライト(DAC社製)
カラー 本体:クリーム
フライ:ライトグレー
シート:ブラウングレー
専用アンダーシート:チャコールグレー
本体:クリーム
フライ:オレンジ、フォレストグリーン
シートおよびスリーブ:チョコレート
出入口 長辺側 短辺側
価格(税込み) 68,200円 (2026年9月現在) 60,500円 (2026年9月現在)

※より詳しいスペックや商品詳細はアライテント公式HPの製品ページをご覧ください。↓
SLドーム|株式会社アライテント

それではこのスペック表を眺めながら以下で少し深堀してみましょう。ちなみに『SLドーム』、『エアライズ2』ともに2人用テントです。『SLドーム』の1人用は『SLソロ』という製品名となっています。

『SLドーム』初張 (2026年7月 三俣山荘にて)

重量について

570g差

まずは今回のテントの買い替えでもっとも重要な要素となる重量についてですが、インナー本体とフライ、フレームのみの基本構成の重量差は570gとなります。およそペットボトル1本分ですね。これに各々張り綱やペグ等が合わさったとしてもこの差はほぼ変わらないと考えてよろしいかと思います。

この『SLドーム』には標準で専用のアンダーシート (いわゆるフットプリントとも言う) が付いているのでトータルの重量差は390gに縮まるのですが、こと筆者に関しては『エアライズ2』を使用していた時も自分で適当なサイズとなるアンダーシートを別途用意して使っていたのでやはり約570gの差はそれほど変わらず、となります。

アンダーシートは必要か

そもそもアンダーシートは必要か、不必要かは意見が分かれるところだとは思いますが、筆者は過度な汚れの防止や、インナー本体底面の保護の観点から使用しています。設営および撤収にひと手間かかりますし、当然ながら基本重量が増えてしまいますのでアンダーシートを毛嫌いする方々も多いでわけで、そのご意見もよく分かります。
例えば筆者は悪天時において素早く撤収する場面では、フレームだけを引き抜いてインナー本体とフライを繋げた状態でパッキングすることもあります。このときにアンダーシートがあるとインナー本体の底面がドロドロになりにくく、汚れたアンダーシートだけ密閉パック等に収納して別管理します。そんなときはアンダーシートが有益に感じます。

重量はトータル的に捉える

さて、この570gの差とはでは如何ほどかと考えるわけですが、重量はトータルで考える必要があります。テントだけ持って山に登るわけではないのですからね。後述もしますが、このスペック表をご覧いただければ一目瞭然ですが、この『SLドーム』は『エアライズ2』に比べて生地がたいへん薄くなっています。そのため収納時に驚くほどコンパクトになります。イメージしやすく言うと、『エアライズ2』の本体のみの収納時の大きさと、『SLドーム』の本体とフライ、アンダーシートをまとめた収納時の大きさが同じくらいです。(いや、コンプレッションベルトで締め上げれば小さいまである。)

『エアライズ2』の本体のみの収納時の大きさ =『SLドーム』の本体・フライ・アンダーシートの収納時の大きさ

ペグを除く基本構成の比較 (左:SLドーム、右:エアライズ2)

上の写真はペグを省いた基本構成の大きさ比較です。
左の『SLドーム』はアンダーシートを含めてこのコンパクトさ。1袋に纏まったインナー本体とフライを、そのアンダーシートごとコンプレッションベルトで圧縮してあります。右の『エアライズ2』は筆者自身で用意したアンダーシートを含めて左から順にフライ、インナー本体、そしてフレーム。その差は一目瞭然です。
これだけ体積の大きさに差があるということは、つまり今までテント泊で使用してきたザックをダウンサイジングすることができるようになります。先述しましたが、それによってザック自重の差も生まれてくるのでその相乗効果でより軽量になるという好循環となり、それがさらなる軽量化へと繋がっていきます。実際にパッキングしてみて筆者はそれを強く感じられました。

素材の薄さについて

この『SLドーム』はスペック表をご覧いただいたとおり本体もフライも『エアライズ2』と比べて生地がとても薄くなっています。

◎インナー 28デニール→ 12デニール
◎フライ 30デニール→ 15デニール
◎フロア 40デニール→ 30デニール
つまり『SLドーム』のインナー本体のフロアが『エアライズ2』のフライと同じ厚さとイメージするとその差が良く分かると思いますが、とくにインナー本体側面は内側が透けて見えるほどの薄さです。最近はメッシュ系の素材をインナー本体に使用している軽量テントも多いですし、そのようなタイプだと内側が透けて見えるのはよくわかりますが、ナイロン系の生地を使ったこの『SLドーム』はメッシュ系と見紛うくらいに内側が透けて見えます。そのくらい薄い素材です。もちろんフライを被せるので設営状態で内側まで透けることはありませんが。

そのため、扱いに非常に気を使います。
例えば設営した後に残った荷物をテント内に格納する際に、ザックやその他荷物を整理するときにテントの内側に立てかけるようにしてしまうと運が悪ければ破損する可能性もありますし、設営時も先端が尖っているフレームを本体に強く押し当ててしまったりするとそれも破損の原因となります。それらのせいかどうなのか、実際に筆者のインナー本体の側面には使用1回目にしてすでに小さな “ほつれ(穴)” が開いてしまいました。

使用1回でインナー側面にほつれ (小さな穴)

実際、アライテントの公式の製品ページにも取り扱いについてデリケートに扱うように注意喚起がされていますし、メーカー自らエントリーユーザーの方々には積極的におすすめできない旨の文言まであります。ご検討されている方はそのあたりをしっかりと留意してください。

強度について

『SLドーム』がとても軽くコンパクトに収納できるテントであることは筆者も強く感じましたが、では山の厳しい環境に耐えられる強度を持っているかという点も山岳テントに求められる大きなポイントになります。いくら軽いテントでも雨風に対して貧弱なテントでは快適なテント泊はできませんし、それこそ強風に煽られて倒壊するようなことになったら死活問題にもなってきます。

結論ですが実際に筆者が使用した環境ではまったく不安は感じませんでした。今回使用した北アルプスのテント場は3か所で、三俣山荘のテント場と奥黒部ヒュッテのテント場、そして五色ヶ原のテント場でした。天候や状況は以下の通りでした。

①三俣山荘 強い風と雨
②奥黒部ヒュッテ 小雨、風無し
③五色ヶ原 土砂降りから曇り
この中で一番テントにストレスがかかったのは実質上の初張となった三俣山荘テント場で、雨と強い風がテントを叩きました。かなり煽られましたがテント内に居てまったく不安を感じることはありませんでした。五色ヶ原では設営時から土砂降りで、その最中で雨で中を濡らしてしまいましたが、設営後は雨漏りや浸水するようなことは全くありませんでした。

耐風性能に関しては『SLドーム』は『エアライズ2』と比べて設営時の高さが10cm低くなっています。この差はテントの中に入っているときはそれほど圧迫感等など感じはしませんが、外からテントを見たときにその違いが良く分かります。『エアライズ2』を長年使っていた筆者からすると『SLドーム』はとても低重心に感じ、地面に張り付いているような印象を受けます。これは『エアライズ2』と比べて低重心にすることで横風が当たる面積を少なくし、若干細くなったフレームの強度の弱さを補うためと思われます。とても理にかなった設計かと感じました。

奥黒部ヒュッテテント場 (中央奥が筆者の『SLドーム』)

ひとつ気になったのは本体とフライの隙間をしっかりと保たないとどうしても濡れたフライのせいでインナー本体の内側も濡れてしまいます。これはこの時の筆者の張り方が不十分だったこともありましたが、基本を忠実に守って、フライを張るときはしっかりとインナー本体と接触しないようにテンションを掛けてペグダウンする必要があります。

総合的な強度に関してはアライテントの公式でもアナウンスされているとおり、より強度を求めるなら無難に『エアライズ2』を選んだ方が良いと思いますが、この軽さでこの強度であれば『SLドーム』でもじゅうぶんな仕事をしてくれると筆者は思っています。

その他 (出入口や価格ほか)

出入口について (短辺側と長辺側の差)

『SLドーム』は長辺側に出入口がありますが、やはり使い勝手だけを考えるなら長辺側の方が使いやすいです。『エアライズ2』の猫の額ほどの前室はそれこそ登山靴を置けるくらいしかスペースはありませんでしたが、それに比べればやはり長辺側だけあって『SLドーム』のほうが広くつかえます。もちろんテントへの出入りも間口が広くて入りやすいです。

ただ、例えばテントを設営する方向と風向き、テントサイトの立地や張るスペースなどを総合的に考えると場合によっては短辺側のほうが良い場合もありますし、強度だけを考えるなら絶対に短辺側に出入口がある方が強いに決まっています。そのあたりはメリットとデメリットが混在している部分と感じています。

短辺側が出入口の『エアライズ2』(2026年7月 赤岳鉱泉にて)

出入口の構造自体も軽量化のためか『エアライズ2』のようなナイロンとメッシュの完全な2重構造ではなく、メッシュ部分が狭く限定的な設計となっていて、通気性は『エアライズ2』の方が良さそうにも感じました。ベンチレーションの構造はどちらも全く同じ設計になっています。

スリーブ式か、吊り下げ式か。

さて、折角の機会なのでここで山岳テントの構造上の永遠のテーマとさえ言われる、スリーブ式と吊り下げ式について考えてみたいと思います。残念ながら筆者は吊り下げ式のテントを使用したことがないのではっきりとした比較はできませんが、そもそも吊り下げ式のテントを使ってこなかったというその事実が、筆者にとってこの問題をどう考えているかお分かりかと思います。

スリーブ式か、吊り下げ式か、これはもはや思想の相違であり、宗教といっても過言ではないかもしれません。
吊り下げ式を好む方々はスリーブ式は設営や撤収が面倒で、吊り下げ式の方が設営が容易で撤収も迅速に行えるし、インナーとフライの間隔もスリーブ式よりも保たれると考えて使用しておられるかと思います。
かたやスリーブ式を好む筆者のような方々はスリーブ式でもそんなに設営のたいへんさは変わらない、むしろ慣れればスリーブ式の方が早いし、なにより構造上、風に煽られたときにテンションがスリーブを伝わって平均的にインナー本体に掛かるから強度や耐久性がある、と考えて使っています。
ようは各々メリットとデメリットがあるということなんだと思います。どっちが優れている、劣っているではなく単純に「好きな方を使え」ということに収束する問題かと思います。みなさまはどちらが好みですか?

価格について

最後に価格ですが、たしかに絶対的な価格は低価格を売りにしているテントに比べれば若干高めと感じますが、それでもアンダーシートも込みでこの価格なら価格相応で及第点と言えるのではないかと筆者は感じます。各種パーツも別売りで対応してくれているところもアフターフォローの良さを感じ、安心して長く使っていける気がします。

まとめ

今回のまとめです。
夏の長期北アルプス縦走を機に『エアライズ2』から『SLドーム』に買い替えたわけですが、筆者は買い替えて良かったと思っています。なによりこの軽量さとコンパクトさには何物にも代えがたいメリットを感じ、耐風性能なども必要にして十分だと思いました。取り扱いは明らかに『エアライズ2』よりも慎重に行う必要性は感じましたが、その他はほぼ同じ感覚で使用できるとも感じました。
デザインやとくにフライの色に関しては『SLドーム』の方が個人的に好みですし、もはや重くて嵩張るとさえ感じる『エアライズ2』にはもう戻れないとも思っています。

実はこれを執筆している現在、『エアライズ』シリーズに新しいラインナップ『ライトエアライズ』シリーズが登場しています。メーカーによると今回取り上げた『SL』シリーズとは設計思想が違い、最軽量を目指したのではなく、あくまで『エアライズ』の信頼性を保ちつつ軽量化を目指した製品とのことです。いずれ1人用のテントを本格的に考えるようになったら、この『SLソロ』と『ライトエアライズ1』とを比較検討してみたいと思っています。

 

今回の記事は以上になります。
最後までお付き合いいただき、まことにありがとうございました。

どうぞ、良き山ライフを!