LOWA タホー プロ Ⅱ GT

GEAR

今回は2020年春に新しくモデルチェンジしたLOWAのタホーを取り上げます。私が長らく履いている登山靴『タホー』は実に多くの登山者に愛されているとても人気のある登山靴。質実剛健なる存在として私の撮影山行を支えてくれているそのタホーが新しく『Ⅱ』として登場したのを機に “2足目” として購入しました。

(目次)

  • 登山の相棒
  • 私の登山靴遍歴
  • LOWAのタホー
  • タホー プロ GT WXL (旧製品) の良いところ
  • タホー プロ Ⅱ GT
  • インソールについて
  • まとめ

登山の相棒

登山というのは人の心を癒してくれる、そして体も健やかにしてくれる素晴らしい文化。苦しい登りや下り、雄大な風景、美しい山野草、可愛らしい動物たち。汗を掻きながらもそんな美しい出会いが待っているから山の魅力にどっぷり浸かってしまうのですが、やはり下界とは違ってリスクも付き纏います。特に怪我などによる『動けなくなるリスク』はとても怖いものです。

最近の遭難事例をみてみると『身の丈に合った計画』をしていないと思われるものももちろんありますが、怪我によって下山できなくなることが非常に多いと思います。怪我によるリスクとなるとどんな山でも起きることになります。

高山病は3,000mを超える山でないとなかなかなりませんし、道迷いもバリエーションルートなどではその可能性も高まりますが、人が多く入る人気の山の一般的なルートなどでは起きにくいと考えられます。しかし『怪我』による行動不能というのは有名な山や無名な山に関係なく、高山だろうが低山だろうが、登山道がしっかり整備された山でも起きてしまうリスクとなります。

そのリスクを少しでも低くしてくれるのが多くの登山装備ということになります。

“三種の神器”ともいわれる登山靴やザック、雨具の進化はもちろん、トレッキングポールや緊急無線、最近ではGPSなんかもあり、昔に比べて遥かに登山リスクが少なくなりました。その登山装備なかでも『登山靴』はもっとも重要な装備となります。登山が成功となるか失敗となるか、登山靴の役割は極めて高いと考えられます。

登山靴はまさに『相棒』

手足で岩や地面に触れたり、トレッキングポールでバランスを取りながら歩いたり、冬季の山ではピッケルで雪面に触れることもありますが、登山道に接するのは90%以上が登山靴と言えます。車などはよく『足まわりが最重要』と言われます。地面に唯一触れているのがタイヤであり、そのタイヤを支えているのがホイールであったりサスペンションであったり、ショックアブソーバーだったりするわけですから。登山も同様に登山靴はまさしく登山装備の中では最も重要で『登山の相棒』と言えると思います。

私の登山靴遍歴

“遍歴”と大層な見出しを付けましたが、私が今まで登山で履いてきた靴はとても少ないです。生まれて初めて登山らしい登山として北アルプスの乗鞍岳に登った時は登山の “と” の字も知らないズブの素人。風景撮影の一環として3,000m超えの高山の風景も撮影してみたいという軽い気持ちで乗鞍岳に登りました。

今考えれば無謀な山行で、畳平から3,000mの山頂までわずか90分で登れることからこの山を選んで、靴はナイキのジョギングシューズに普通のデイバック、服も動きやすい普段着という完全に山を舐め切った装備でした。乗鞍岳は序盤こそその辺の “砂利道” と変わりませんが、登るにつれ岩々な雰囲気となり、山頂近辺は完全な岩山。天気も良く幸いそれほど運動神経も悪いほうではなかったので事故もなく下山しましたが、下山したら足の裏がとても痛かったのを思い出します。その時体験した北アルプスの美しさに圧倒されて、すぐに登山装備を揃えました。

初めて手にした登山靴はキャラバンというメーカーの比較的安価なGKシリーズ。正確に言うとGKシリーズ相当のもの。かなり前に購入したものなので廃盤になっているかもしれませんが、HPで確認したところこのGKシリーズ相当のものではないかと思います。

いかんせんその頃は登山靴メーカーなんてよく知らなかったし、とりあえずアウトドア用品やスポーツ用品を扱っている店で手頃で良さそうなものを適当に購入した感じでした。登山靴らしいいわゆる『ハイカット』と呼ばれる靴を初めて履きましたが、この登山靴はアッパーも柔らかくてハイカットでも足首が痛くならなかったし、軽くて良い靴でした。

今でも森を散策しながら撮影するようなときや500mくらいの岩場のない低山を登るときに履きますが、さすがにヘタってきたし、ソールも擦り減ってきてしまったので本格的登山にはもう履いていません。履き心地は悪くはないものの、靴紐がすぐに緩んでしまがちでその辺りがストレスが溜まりました。

初めての乗鞍岳登山の1、2年後から完全に登山にのめりこんでしまい、ずっとずっと長く履けるもの、テント泊装備でも足がブレない堅牢なもの、そんな登山靴が欲しくなり、様々なメーカーを検討した結果『LOWA』という登山靴メーカーのタホー(TAHOE)を手にしました。

LOWA TAHOE PRO GT WXL

夏山だけでなく雪山にも行くようになってからもこの『LOWA』というメーカーに惚れ込んでいたため、アルパインシューズ(冬靴)も『LOWA』のマウンテンエキスパートというモデルを手にしました。

LOWAのタホー

キャラバンのGKシリーズは軽くて気軽に履ける良いシューズでしたが、悪く言うと柔らかくて足がブレてしまうところがありました。もちろん靴にはそれぞれ適材適所というものがあるので、岩場の多い山やテント泊装備などの重い荷物を背負っての北アルプス縦走などには不向きのシューズでした。

重い荷物に負けない安定性や信頼性、それでいてゴツ過ぎない軽めの靴を探していました。そして登山となると下界とは違いかなり靴を酷使します。様々な環境の登山道に対応しなくてはならず、特に岩や石でゴツゴツした登山道ではアッパーへの擦り傷は日常茶飯事となることから、堅牢な革製の靴であることも条件としました。

最近の軽量でデザイン性に優れた登山靴はアッパーの部分が複雑で、革や合成革、ナイロン素材を縫い合わせて作られているものも多くて、そういうものはあまり長く使えそうにない、手入れも面倒、ということから私は一枚革で作られた登山靴に魅力を感じました。
実はこの条件で探すと今や(10年ほど前ですが)このLOWAのタホーというモデルくらいしかありませんでした。

『LOWA』はドイツが誇るシューズブランドで、90年にわたって整形医学的に足を研究し、世界の登山家から愛される登山靴を作り続けると同時に登山者憧れの登山靴メーカーでもある。妥協なき製品づくりで素材はすべて100%ヨーロッパ生産を続けている。LOWAの登山靴は『登山靴のロールスロイス』とも比喩される。
LOWAのタホー以外でも革製の靴もあることはあったのですが、かなりゴツくて重くてそれなりの脚力が必要そうでした。このタホーは一枚革の靴でありながら850g(UK8)と軽量で取り回しもよく、疲れにくいと思いこの靴を選びました。

タホー プロ GT WXL (旧製品) の良いところ

最高の履き心地

初めてこのタホーに足を入れた時は、

「やっぱり革の靴は固いな…」

という印象でした。

それまで履いていたキャラバンのGKシリーズのアッパーが柔らかかったこともあって余計にそう感じました。たしかに足をがっちりと保護してくれていて安心感はありましたが、足が痛くなるんじゃないかとも思いました。

案の定 “慣らし運転” として初めてこの靴を履いて低山を歩き回った際、足首が痛くなりかなり辛かった思い出があります。しかし安くはない買い物でしたので、このまま下駄箱に眠らせるのはあまりに勿体なく思い、しばらく我慢して履き続けました。そうやって数回履き続けると靴が少し柔らかくなったのか、私の足がこの靴の固さに慣れたのか、痛みは無くなってどんどんこの靴が私の足型にフィットしていくように感じられました。

もうかれこれソールを張り替えつつ10年近くこの靴を履いていますが、すでに私の足の一部のような感覚さえ覚え、絶対に手放したくない靴となりました。

手入れのし易さ

この靴のアッパーは一枚革のヌバックレザーを使用しています。
ヌバックレザーの靴はこのタホーが初めてで、買って2年くらいは購入時に店員に勧められたように栄養分の入ったヌバックレザー専用のスプレーだけで手入れしていました。しかしつま先部分が岩などに当たって擦れて少し痛み始め、全体的にアッパーの革も乾いて “朽ち木” のようになってきたのを機にワックスを薄くかけてブラシによる磨きを入れた手入れを始めました。

それからはヌバックレザーの瑞々しさが出てきて経年による風合いも感じられるようになり、靴の手入れも好きになって、今までよりも小まめに手入れするようになりました。小まめに手入れするようになると靴の状態を常に把握できるようになるだけでなく、なにより靴に対しての愛着が湧いてきます。まさに登山靴が『登山の相棒』となるのです。

ただこのヌバックレザーのワックスがけは賛否あって、あまりにワックスをかけてしまうとソールの張替えが出来なくなるようなこともあるようです。私は今までこのタホーのソールは2回張替えていて張替え後も不具合なく使用できていますが、ワックスによる手入れは最終的には『自己責任で』ということになります。

Xレーシング

このタホーにはベロ部分にシューレースを左右クロスしてかける『X LACING』という機構を持っています。この機構のおかげでベロの部分が外側にずれていくのを防いでくれます。ベロがずれないので靴ひも自体も緩みにくくなります。このタホーにしてから登山中に靴ひもを締めなおすことはほとんどなくなりました。

X LACING

いまだに現役

そしてなんといってもこのタホーの一番の良いところはその堅牢性。ソールを張り替えながらもう10年余り履いていますが、まだバリバリ使えるタフさは本当に買ってよかったと思えます。しっかりと手入れをしてやればこの靴には『履きつぶす』という概念が存在しません。

確かにこのタホーは4万円を超える登山靴としてはかなり高価な部類ですが、ここまで長く使えるのなら逆にコストパフォーマンスは良いくらいだと思います。ソールの交換には1万円ちょっとかかりますが、張替えから戻ってくると真新しい靴のように蘇り、さらに届いた瞬間から慣らし運転せずともすでに自分の足にフィットする『相棒』となっています。低価格のものを履きつぶしながら何足も買い替えるくらいなら、いっそこのタホーにしてソールを張り替えながらずっと使っていたほうが『登山の相棒』としてぜったい有益だと思います。

ただ、今回タホーが2020年春に新しくモデルチェンジしたことから、2足目のタホーを手に入れることとしました。それはソールを張り替えに出すとしばらく戻ってこないのでもう一足欲しいと思っていたことと、さすがに消耗品である内側のゴアテックスがもう限界で、雨天の山行ではつま先付近から少し浸水がみられていたこと、この2点を鑑みて新モデルが出たのをきっかけに手に入れることにしました。

 タホー プロⅡ GT

今回モデルチェンジして新しくタホープロ『Ⅱ』として登場してきました。この靴はロングセラーで、私が初代タホーを手に入れてからもずっと廃盤になることもなく販売されていました。多少ソールの部分が変わったりはあったものの大きなモデルチェンジもなく販売され、登山者に愛され続け、売れ続けているということはある種『もう欠点もなく完成されたモデル』だからに他なりません。

実はタホーの買い替え、買い増しは2,3年前から考えていました。年齢的なものも含めてガツガツした撮影登山は出来てあと10年くらいだろうとの思いがありました。(逆に言うと20年は絶対に無理…)

モデルチェンジを機に2足目となるタホーを購入

だからあと10年はしっかりと私の撮影を支えてくれる『相棒』と考えると、ここまで実際に10年以上私を支えてくれた実績のあるタホーの一択でした。そしてローカットのモデルなどは別として、おそらくこの新しいタホーが私の本格的な登山靴(夏靴)の最後の購入になるでしょう。

一見すると初代と大きく変わらない『Ⅱ』ですが、初代からの主な変更点を紹介します。

ロック機構の採用

某登山用品店で『Ⅱ』の試し履きをしたとき、詳しい老練な店員から大きな変更点として『ロック機構』が採用されたことをすぐに伝えられました。そもそも初代のタホーからシューレースが緩みにくいことがとても気に入っていましたが、『Ⅱ』ではさらに『ロック機構』が採用されたことでさらに緩みにくくなりました。

立たせたときはフリー状態

内側に靴紐を引っ張り倒すとロック状態

この新しい機構の良いところは、登山中というよりはシューレースを結ぶときに “途中で緩まない” ということ。一度ロックをかけてしまえば手を放してもその状態が維持され、とにかく最初に決めた『締め具合』をそのままシューレースを結びきるまで変わらないということ。もちろん登りと下りで締め具合は多少変えるわけですが、そのコントロールがとてもし易いと感じます。

『ロック機構』といってもロックする作業はごくごく簡単で、紐を内側に引っ張りアジャスターを内側に倒すだけ。これで紐はロックされ手を放しても決して緩むことなく、最後の締めあげまで維持されます。

ベアリングの採用

紐を通す金具に新たに『ベアリング』が採用されました。
これによりシューレースの動きがとても滑らかになって、結んだり解きやすくなりました。ただ『ロック機構』ほどの大きな改善や変更は感じにくく、それよりもこのベアリングの部分が壊れやしないか、と勘繰ってしまいます。

新型になってベアリングが採用された

私は撮影機材などは特にそうですが、無くてもよいものは無いほうが良いと考えています。多くの “便利機能” は使う分には便利で助かるのですが、そのぶん耐久性も低くなっていきます。とくに登山など大きな負荷がかかるような使い方ではそれがより一層顕著になります。まだこの『Ⅱ』を履いてガツガツと登山道を歩いたわけではないので、このベアリングがもたらす効果や耐久性は正直言ってまだ分かりません。

日本人の足に合わせた靴型

たしか初代のタホーでもこの『日本人に合わせた云々』という宣伝文言があったように思いますが、『Ⅱ』ではさらに良くなったということでしょうか。老練なる詳しい店員によると初代よりも若干足幅が広くなり、甲が低くなったと聞きました。初めて試し履きをしたときは初代と大きくは変わらず、相変わらずの素晴らしいフィット感でした。

ちなみに日本人の足型の多くは欧米人のそれとは違って甲が低くて、幅が広い傾向があるそうです。ただもちろん個人差はあるでしょうし、日本人でも欧米型の足型の方もおられるでしょうから靴、とくに登山靴はネットではなく実際に履いてみてから買うべきだと思います。

LOWA TAHOE PROⅡ GT
・重量       870g(サイズUK8の片足)
・サイズ   UK6~10.5(ハーフサイズあり)
・アッパー  ヌバックレザー
・ソール   ビブラムMASAIソール
・価格      ¥42,000(税抜き)

※以前は正規輸入代理店はタカダ貿易さんでしたが、現在はイワタニプリムスさんが正規輸入代理店となっているようです。

新型になってロゴが刺繡に

旧型のロゴ。足首部分も若干変更された

インソールについて

初代のタホーを手にしたときに私は同時に “インソール(中敷き)” も購入し、初代タホー同様いままでずっと使用してきました。初めは店員に勧められたので “試し” の意味合いで使用してみました。

私がその時から愛用しているのが『スーパーフィートインソール』。これがとても使用感が素晴らしくて、少なくとも登山においては有益だと思っています。土踏まずの部分をしっかり下からサポートしてくれて、疲労は間違いなく軽減されます。そして何と言っても踵の部分が足にぴったりとフィットしてくれて、靴の中で足がブレたりせず、靴が足に吸い付いているような感覚になります。特に下界のように舗装されたフラットな道を歩くことがほとんどない登山においては、足の左右のブレは驚くほどに改善します。

専用のインソールを使ってしまうと付属の中敷きはもう使えなくて、専用のインソールのサイズを合わせる際にハサミなどでカットするのですが、その『サイズ合わせ』にしか付属の中敷きは使えないとさえ思っています。登山靴は決して安くないですし、さらにそこに値の張るインソールまで入れてしまうと大きな出費になりますが、専用のインソールはその出費に十分見合うものだと思います。

私は今回のタホープロⅡ購入の際もまた『スーパーフィートインソール』が欲しかったのですが、あいにく適切なサイズの在庫が無かったため『SIDAS』というメーカーのインソール “3Feet (LOW)” にしてみました。もちろん『スーパーフィートインソール』と同様に専用の中敷きなので大きな違いはないだろうと思いますが、こちらのほうも実際に山道を歩いてみて追って使用感などをレポートできればと思っています。

今回は『SIDAS』のインソールを選択

踵の底面には衝撃吸収素材が使われている

まとめ

今回は私の撮影山行をまさに下から支えてくれている登山靴について取り上げました。

登山用品店に行くとカラフルで様々な登山靴が飾られています。とくにこれから本格的に登山を始めたい人にとってはどれを選んだらよいか迷われると思います。もちろん詳しい店員と相談しながらだったり、詳しい山友と選んだり、実際に試し履きをして店内を歩き回ったりしながら、自分にフィットする、もっと言うと “自分が登ろうとしている山” にもフィットする靴を選びたいものです。

タホーは所有欲も満たしてくれる存在

このタホーは私にはベストフィットですが、最近の登山靴の中ではアッパーがかなり固い靴の部類と言え、とくに女性には固くて合わない方が多いと店員から聞きました。

数ある登山ギアのなかで登山靴は登山を成功させる肝であり、事故に合わずに無事に下山できること、そして “命を預ける” といってもよいとても大切なギアです。

『自分にとっての最高の相棒』を見つけたいものですし、その選択肢の一つにこのLOWAのタホープロⅡも入れてみてはいかがでしょうか?