今回はZeissの中望遠MF単焦点レンズ『Milvus 2/135 ZF.2』をいつものように私の主観を中心に取り上げてみたいと思います。このレンズの導入はどちらかと言うと天体写真(星野)用途として導入しましたので、その辺りをメインに進めてまいります。このレンズも今まで取り上げてきたレンズ同様いわゆる廃れ行く(?) Fマウントのレンズと言うことで今後はたして記事的に需要があるかは定かではありませんが、最後までお付き合いいただければ幸いです。
本記事はレンズレビューというよりも “読み物” に近い記事です。本記事がみなさまの何かのお役に立てれば幸いに思います。
- 星野写真とは
- NIKKORズームレンズでの天体撮影の日々
- 星野写真に適したレンズ候補
- Zeiss『Milvus 2/135 ZF.2』の導入
- 『Milvus 2/135 ZF.2』のスペック
- ミルバスの良い点
- ミルバスの欠点
- 新たなライバル機種
- まとめ
『星野写真』とは
さて、冒頭に申し上げました通りこのレンズの導入目的は天体写真を撮影するためと言っても過言ではありません。私は主に山岳写真を多く撮影していますが、山岳写真を撮影するには単焦点レンズと言うのは描写性能は素晴らしくても使い勝手の面で運用が難しく、山ではほぼズームレンズを使用して撮影しています。
以前は登山道に咲く山野草を撮影するためにマクロレンズも携行してましたが、単焦点レンズと言うことでやはり出番がそれほど多くはなく手放しました。
そのため天体写真の撮影においてもこれまで手持ちの望遠ズームレンズを使用していましたが、以前から天体写真に関してはどちらかと言えば構図の取りやすさよりも描写性能を優先したいとの思いがあり、高価でしたが「えいやッ」とこのレンズの導入を決めました。
星野写真の定義
天体写真のジャンル分けは人によっても様々かと思いますが、個人的には以下のように分けて考えております。
星野写真:広角から中望遠域のカメラレンズを使用しての星空だけを写す天体写真。
直焦点撮影による天体写真:天体望遠鏡を使用してのディープスカイの天体写真で、いわゆる星雲や星団、銀河、惑星、彗星、月面などの写真。
いつかは私も天体望遠鏡を使用しての本格的な天体写真の世界に飛び込んでみたいのですが、体力とモチベーションが続く限り今はまだ山岳写真をメインとしたいと思っています。天体写真は時間的にも金銭的にもかなりの努力と負担がかかることからまだまだ私には手に負えないとてもディープな世界と感じています。
星野写真のすすめ
おそらく私のように感じておられる方も多いことと思います。
星雲や星団、銀河の美しさに興味はあるけど…
・いざ機材を揃えるには敷居が高い
・何を揃えて良いのかわからない
・何から始めて良いのかわからない
きっとこのような境遇で悶々とされている方も多いかと思います。このような方々に向けて私なりに『天体写真への誘い』という連載記事で星野写真をざっくりとではありますが解説しております。ご興味のある方はご覧になっていただけると幸いですが、この星野写真と言うジャンルは本格的な天体写真を始めるうえで“橋渡し”的なジャンルになると思っていますので私自身とても興味深いものだと感じています。
そんな星野写真を私なりに突き詰めていきたい、という思いからこのレンズを手にしました。
NIKKORズームレンズでの天体撮影の日々
星野写真を始めるにあたりすぐにポータブル赤道儀(ポタ赤)を導入し、まずは手持ちのニコンのズームレンズを使って撮影していました。星野写真の良いところは少ない初期投資で始められるところですが、光学系に関しては手持ちだった2本のズームレンズを星野写真にも流用していました。
この『撮影機材を流用できる』というところも星野写真をおすすめできるポイントのひとつと言えると思います。
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ
フラット処理とはレンズの周辺減光をカバーする処理のことで、ライトフレームとは別に周辺部の減光のデータのみを撮影し、その画像を演算的にライトフレームから打ち消す(具体的には除算)ことで画面全体の輝度を平坦化させる処理のこと。現像ソフトにあるビネット処理では超強調する天体写真の画像処理では不十分な処理のため、天体写真ではフラット処理は必須の処理と言われています。
画面中央にアンドロメダ大銀河を入れるような撮影ならばその周辺部はカットしてしまえば済む話ですが、星野写真と言うのは作例のように画面全体にいくつもの星雲や星団、銀河が入ってくる広い画角が魅力のひとつとも言えると思います。このズームレンズの描写では中心部は良くとも周辺部は「いまひとつ…」と私自身感じましたし、星野写真の魅力のひとつを諦めざるを得ないと感じていました。
そこでさらなる画質の向上を求めて星に向いた単焦点レンズを探し始めました。
星野写真に適したレンズ候補
新たなレンズを導入するにあたりいくつかの候補がありました。
②シグマ135㎜ f/1.8 (135mm F1.8 DG HSM Art)
③シグマ105mm f/1.4 (105mm F1.4 DG HSM Art)
④ツァイス135mm f/2 (Milvus 2/135 ZF.2)
と言うのは望遠ズームレンズの望遠端200mmくらいになると手持ちのポタ赤にはまさに荷が重いと感じていたためでした。私が天体撮影で使用していたカメラ(フィルター改造済み)はフルサイズではなくAPS-C機だったこともあり、35㎜判換算で300mmとなります。このくらいの焦点距離(正確には写野角)になってくると追尾精度の高さもさることながら、撮影時の風の影響や搭載した機材のたわみの影響をかなり受けることになり、追尾成功率はガクンと落ちました。
オートガイドなどを使わないポタ赤でのシンプルな星野撮影では100㎜前後の焦点距離が妥当だろうと結論付けました。
AF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED
私がなぜニコン機を山で使っているかと申しますと、その堅牢性と信頼性、そしてニッコールレンズの卓越した描写性能を求めてのことです。ニッコールレンズの持つシャープさだけではない立体感からくる表現力、なだらかなアウトフォーカス、ヌケの良さ、純正によるAF精度などに魅力を感じてのことで、実際に手持ちのレンズは全てニッコールです。
その流れがあるので星野写真用にもこのニッコールFマウントの新しい105mmの導入も候補でしたが、こと星を撮る星野写真での用途となるとまた話が変わってきます。ニッコールの魅力はあくまで一般的な撮影での話でして、天体撮影においては立体感やボケ感など抽象的な性能は二の次となることもあって今回はあえて除外しました。
SIGMA 135mm F1.8 DG HSM Art
上記のニッコール105mmと口径比がほぼ一緒であるこのシグマのアートラインの135mm。このレンズも最有力の候補でした。何と言ってもこのレンズはとにかくMTF曲線が凄すぎました。さすがに最周辺ではこの曲線は落ちていきますがその落ち方は非常になだらかですし、APS-C機での使用であればほぼ周辺まで超高画質は十分に担保されているであろうと予想されました。
シグマのアートシリーズレンズはどのレンズもピントリングは適度のトルクがあってMF時に限ってはニッコールよりもはるかに操作しやすいと感じました。しかし、しばらくすると同じシグマから『105mm f/1.4 Art』という中望遠単焦点レンズとしては超ド級の前球を引っ提げた化け物レンズが登場してきました。
SIGMA 105mm F1.4 DG HSM Art
実はこのレンズの導入がもっとも良さそうだと思っていました。
焦点距離もさることながら、アルカスイス互換の三脚座付きでたわみ対策も容易ですし、なによりF1.4というハイスピードでありながら素晴らしいMTF曲線を持っています。開放ですでにこれだけのMTFなら1段絞ってf/2なら一体どんな曲線になるのか、久しぶりにワクワクさせられる素晴らしいレンズの登場でした。
“ボケマスター” という異名を持ってそれこそ鳴り物入りで究極のポートレートレンズとして登場してきましたが、天体写真界隈でも大きな話題となりました。実際にこのレンズを導入されて星野写真を撮影される方々も増え、その結果もとても良好とのことで私も導入寸前まで行きました。
しかし天邪鬼な私の事、次第に他の方々とは何か違うことをしてみたい、違う機材を使ってみたいと思い始めたのでした。
そしてこのレンズにしなかった理由としてもう一つ。
実は以前、シグマの24-35mm f/2という非常にユニークなコンセプトのズームレンズを星景用に短期間ではありますが導入していた時期がありました。折角星野用に新たなレンズを導入するなら、まだ一度も使ったことがないメーカーのものを使ってみたいという好奇心があったからでした。
Zeiss『Milvus 2/135 ZF.2』の導入
天下の “Zeiss” の魅力を体感したい
ニッコール一筋の私。
もちろん一般的な撮影に関してその描写性能にはとくに不満などありませんでしたが、やはりカールツァイスというメーカーには常々何か惹きつけられる魅力を持っていました。
“空気をも描写する” とも言われるその設計思想、徹底した製品管理、ニッコールとは違う唯一無二の存在感を感じ、ある種の憧れを持っていました。
ただ山での撮影がほとんどの私にとってレンズラインナップがMF単焦点がほとんどのツァイスレンズに今まで食指が動くことはありませんでした。しかしこと天体写真においてはAFやズーム機構、手振れ補正機構などはまったく必要なく、もっと言えば邪魔なものとなります。いままでツァイスを使う機会がありませんでしたが、今回だけは「ツァイスを使ってみたい…」と思いました。
『Apo Sonnar T* 2/135』から『Milvus』へ
今となってはツァイスの『Apo Sonnar T* 2/135』は天体写真でも十分に使えるカメラレンズとして広く知れわたり、ある分野では神格化されたレンズとなっています。
しかし残念ながらこの『Apo Sonnar T* 2/135』は『Milvus』シリーズへと移行していき、『Apo Sonnar 2/135』などのラインはクラシックラインとなりました。一時は併売されていましたがすぐに『Apo Sonnar 2/135』も旧製品扱いとなり『Milvus』に一本化されました。新型とは言え実は光学系は全く同じで、外観のデザインが現代的な流線形なものに変更されたくらいで実質的には『Apo Sonnar 2/135』と同じとなります。
『Milvus 2/135 ZF.2』のスペック
それでは簡単ではございますが当レンズのスペックを見ていきます。今回は最後まで迷ったシグマのボケマスターこと105mm F1.4 DG HSM ARTと比較してみます。
Milvus 2/135 ZF.2 | 105mm F1.4 DG HSM | |
発売 | 2017年2月 | 2018年6月 |
レンズ構成 | 8群11枚(特殊レンズ4枚) | 12群17枚(特殊レンズ5枚) |
手振れ補正 | なし | なし |
最短撮影距離 | 0.8m | 1m |
最大撮影倍率 | 1:4 | 1:8.3 |
フィルター径 | 77mm | 105mm |
質量 | 958g | 約1,645g (シグマSAマウント) |
希望小売価格 | ¥226,500(税別) | ¥242,000(税込) |
詳しいスペックはZEISSおよびCOSINAの公式HPでご確認ください。
ZEISS Milvus 2/135(ZEISS)
Milvus 2/135(COSINA)
まず手に持った印象がニッコールのそれとはまるで違います。
ニッコールレンズはとにかく撮影現場での実践的な使用を重視した作りで、描写性能と軽量化をバランス良く持ち合わせた設計思想。“軽くするところは軽くする” という感じでマグネシウム合金と強化プラスティック、そして滑りにくい合成ゴムをバランス良く使っています。
それに対し『Milvus 2/135 ZF.2』(以下ミルバス)はピントリング以外は全面に渡って金属のみで構成されており、持ったときに重厚感と金属由来の冷たさを感じます。それはレンズフードにも言えることで、ニッコールのその多くは強化プラ製で高級感は決して感じませんがミルバスは肉厚な金属製のフードで、内側も植毛紙加工がなされていて非常に高級感を感じます。
対応マウントはキヤノンEFマウント用(ZE)とニコンのFマウント用(ZF.2)が用意されていますが、ニコンFマウント用はCPU内蔵のAi-S互換となっており、ご丁寧に昔ながらの絞り環(デクリック機構搭載)まで搭載しているあたりは非常に好感が持てます。
※フィルター径は77mmサイズが適合します
ミルバスの良い点
見事な描写性能
何と言ってもこれに尽きます。
私はほとんど星野写真でしか使用していませんが、いままで使用してきたズームレンズとは圧倒的な描写性能の違いを痛感しました。残念ながら私はこのフルサイズ用のレンズをAPS-C機でしか使用していないというなんとももったいない使い方しかしていませんが、画面周辺でも画質の破綻は極端に低い印象です。
そもそもの解像度がハンパではなく、なんとズームレンズの望遠端200mmで撮影した画像よりも、焦点距離の短いこのレンズで撮影した画像のほうが星雲などの細部のディティールは圧倒的に上であったことには本当に驚かされました。
「レンズが変わるとここまで天体写真は変わるのか…。」
以下がその比較画像ですが(小さくてたいへん申し訳ありません…)、上がミルバス(135mm)で撮影したアンタレス、下が70-200mm VR Ⅱ(200mm)で撮影したアンタレスです。画像処理の未熟さはこの際置いておいて、その解像度の違いは十分に伝わるかと思います。
星自体の写りもズームレンズではボテッとした写りでしたがミルバスはキリッと、まさに針で突いたような写りです。そして周辺に行っても星が歪になることはほとんどありません(あくまでAPS-Cサイズですが)。一般的な風景などの写真ではなかなかその差は分かりづらいのですが、星の写真ではその差が歴然と確認できます。
これは私の憶測にすぎないのですが、ひょっとしたらこのレンズのイメージサークルはフルサイズをカバーする44㎜以上のイメージサークルを有しているのかもしれません。かのツァイスの最高峰レンズ群『Otusシリーズ』はイメージサークルがフルサイズ以上と言う噂も聞きますので、このミルバスも実は中判サイズくらいのイメージサークルを有しているのかもしれません。今後もしラージフォーマットのカメラを導入することになったら、真っ先にこの辺りの確認をしたいところです。
MFリングの回転角の広さ
もともとGタイプのニッコールレンズはAFレンズなので、そもそもMFの操作性はお世辞にも良いものではありません。世間一般で言われるようにフォーカスリングはいわゆる “スカスカ” ですし、天体写真におけるピント出しについてはたいへん操作しにくい、ジャスピンが出しにくい設計です。こればかりは設計上仕方がありませんが、やはりこのミルバスのMFの操作感は素晴らしいものがあります。
もともとMFのレンズなので当たり前と言えば当たり前なのですが、リング自体の回転角も非常に広く、ジャスピンをじっくり追い込むには素晴らしい操作感・トルク感を備えています。
金属製フードによる熱伝導率の良さ
天体写真撮影において結露対策は非常に大切なものになってきます。
この辺りもこのレンズの優位性は素晴らしく、金属製由来の熱伝導の良さが結露対策に向いていると感じました。このメタルフードに巻き付けたヒーターの熱がしっかりと伝わり、今まで撮影時に結露して困ったということがありません。
ニッコールレンズではヒーターを巻き付けていたとしても、雨後など天候によっては結露で途中から撮影にならなかったこともありました。実際に撮影現場でご一緒させていただいたカメラレンズで撮影されていた方々が結露に悩まされていた時、このミルバスは全く問題がありませんでした。
フォーカスブリージングが自然
このフォーカスブリージングという現象は動画・映像を撮影されている方々には重要なものだと思います。しかし私のようにスチールばかりの人間にとって実際は問題視しないことがほとんどです。スチールを撮影するにあたってこのフォーカスブリージング現象は気にならないものだからです。
以前にフォーカスブリージングについては記事にしましたので、詳しくはそちらを参照していただきたいのですが、このMFのレンズはフォーカスブリージングが抑えられていて、フォーカシングによる映像の歪さは感じません。
寄れるレンズ
そしてこのレンズは寄れるレンズで、最短撮影距離(0.8m)・最大撮影倍率(1:4)ともに必要十分なスペックを備えています。大口径の単焦点レンズの中には寄れないレンズも多く、この辺りの使い勝手も素晴らしいと感じます。
以前の『AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR』の記事の流用になりますが、最大撮影倍率の違いはスペック表を眺めるだけでは気付かないほどの大きな差を感じるものです。
所有欲を満たしてくれる
そしてもう一つの利点がこのレンズの重厚な作り込み、重量感、質感からくる “所有していることの喜び” を感じられるところ。
たしかにレンズなんてものは道具のひとつでしかないので使ってナンボ、写ってナンボのもので、装飾品や貴金属のように鑑賞して所有して楽しむものではないかもしれません。しかし実際にこのレンズを所有してみて手に取ってみて、『すごい写真を撮ってくれるヤツ』というある種の所有欲を感じられます。
間違いなく『モノ自体』に価値がある工業製品と感じます。
【※レンズの清掃】
私はレンズ清掃(前玉)には手軽できれいに清掃できるハクバの『レンズペン』を使用しています。
ミルバスの欠点
軸上色収差が残る
実はこのミルバスを導入する以前から前モデルである『Apo Sonnar 2/135』の頃から軸上色収差が発生するということは知っていました。実際に撮影時にてピント出しの際にこれははっきりと確認できました。ジャスピン付近では恒星の周りに若干赤いハロやパープルフリンジが発生します。ジャスピンの状態からほんの少しだけピントリングを回すとこの色収差は消えるのですが、この消えてゆく様子まで背面モニターではっきりと確認できます。
下の作例画像の軸上色収差が残っている星に〇印をつけてみましたが、意外にも大きく明るい星や微恒星にではなく、中間輝星にだけ残っています。
対策としては、ジャスピンに合わせて撮影しておいて、後から画像処理で色収差の処理をする、もしくはあえてジャスピンを少しだけ外して撮影するという対策を講じることは可能だと思います。後処理でどうやって赤ハロやフリンジを処理するかと言うのはまた別の問題になってくるのですが、何かと対策の仕方はあると思います。
現像ソフトなどにある “フリンジ除去” の処理を行えばたしかにフリンジは消えますが、消した痕跡が残ったり、大切にすべき色彩豊かな “星の色” まで犠牲になってしまうという副作用も考えなくてはいけませんから、そう単純なものではないところが難しいところです。
たわみ対策が別途必要
これだけシャープなレンズですからたわみの影響がモロに撮像に現れます。
前モデルのときはアポゾナー専用の鏡筒バンドというものもあったようですが、新モデルとなって流線形の外観になったためその鏡筒バンドは使えなくなってしまいました。
これには私もかなり試行錯誤しましたが、たまたまネットで見つけたシグマの望遠レンズ用の三脚座『TS-31』がこのミルバスの外径に近いことが分かって、実際に導入してみたところちょうど根元の部分で抑えてあげればピントリングの稼働する部分とも干渉せずに使うことが出来ました。これであればボディ側のL型プレートと、この三脚座とで2点で固定することが出来るため、撮影中のたわみを抑えることが可能になりました。
見てくれは良くはありませんが効果はてきめんで、APS-Cサイズではありますが周辺までシャープな画像を取得できました。
新たなライバル機種
私の天体機材はもはや使い古されたものかもしれません。
時代はどんどん進み、いまや撮影するカメラも改造デジカメから冷却(非冷却)CMOSカメラが主流になりつつあります。大陸からやって来る低コストの新製品にはいつも恐るべきパフォーマンスを見せつけられます。
星野写真においても天体専用設計の中望遠域をカバーする光学系に関して今まではBORGくらいしか無かったというのが実情であったと思います。つまり中望遠のカメラレンズという選択肢が中心でしたが、ここのところ中望遠域~望遠域の安価で性能の良い天体専用設計(アポクロマート)のレンズも出てきているようです。
私はその辺りはあまり詳しくは無いのですが Askar FMA135 やAskar ACL200、Red Cat51 などは口径がそれほど大きくないとは言え安価で写りもたいへん評判が良いようです。このミルバスやシグマのアートラインなどカメラレンズとしてのアドバンテージはその大口径にあるわけなので、それら製品と実際のところ競合関係にはないのかもしれませんが。
まとめ
今までは星野写真のために導入した関係から山や風景ではほとんど使ってこなかったこのミルバスですが、D850という高画素機を導入したことで俄然山や風景でも使っていきたいと思うようになりました。やはりこれだけの描写性能、まさに “空気をも描写する” と言われるこのレンズを星野写真だけに使うのはもったいないことだと思っています。
このレンズは決して万人におすすめできるレンズではないかもしれませんが、唯一無二の描写性能を獲得したい、天体写真にも使っていきたい、という欲張りな撮影者にとっては良い選択肢になり得ると思っています。
さらに今後、レフ機からミラーレス機へと主流が変わっていく新たな時代においても、MFで手振れ補正機構も無いこのレンズが活躍できる場面は減るどころか増えていくようにも思います。たしかに非常に高価なレンズですし、個人的にも出番もそれほど多いレンズではありませんが、今後も手放したくはない一本だと思っています。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。