AF-S TELECONVERTER TC-14E Ⅲ/TC-17E Ⅱ

CAMERA&LENS

今回は私が撮影でよく使用する2つのテレコンバーター(以下テレコン)を取り上げたいと思います。テレコンはご承知の通り焦点距離を伸ばすもので、一般的には遠目のものを撮影対象としているときに威力を発揮するものです。私が主としている山岳撮影は言ってみれば『風景撮影』なわけで、テレコンとは無縁と思われがちですが意外とテレコンは使用頻度が高いです。

(目次)

  • 山岳撮影とテレコンバーター
  • AF-S TELECONVERTER TC-14E Ⅲ
  • AI AF-S TELECONVERTER TC-17E Ⅱ
  • 2倍テレコン
  • テレコンか?DXクロップか?
  • まとめ

山岳撮影とテレコンバーター

撮影対象が多岐にわたる山岳撮影

一言に『山岳撮影』と言っても実は撮影対象は多岐にわたり、美しい山並みはもちろん雷鳥をはじめとした野鳥や登山道を彩る山野草、月や星などの天体、ときには登山者たちのスナップなども人によっては撮影対象となります。

このように撮影対象が多岐にわたるということは、その分それぞれの対象に適したレンズが必要にもなってきます。美しい山並みであれば広角~標準、山並みの一部の切り取りやスナップであれば中望遠が威力を発揮しますし、野生動物なら望遠、山野草ならマクロ、星ならば明るいレンズ、と欲張ればいくらでも欲しいくらいです。

軽量化

しかし山岳、とくに北アルプスのような3,000m級の山々や歩行距離が極端に長くなる撮影地ではあれもこれも担いで行くわけにはいきません。荷物は軽いに越したことはないですし、軽量であればそれだけ体への負担も少なくなるので撮影機会も増えていくはずです。
機材の取捨選択はいまだに難しい問題で日々試行錯誤の毎日ですが、自らの体力と撮影計画(何を撮りたいのか)をしっかり天秤にかけて選択しなければなりません。

そんなときに助けてくれるのがテレコンです。わずか数百グラムでレンズ1本分(とくに望遠系)の価値があります。撮影対象が多岐にわたる山岳撮影ですが、野鳥目的または山野草目的など撮影対象を完全に絞っていれば別ですが、やはりメインは広角から標準、よくて中望遠レンズまでがもっとも使用頻度が高いです。使用頻度があまり多くない望遠系はレンズ一本がかなりの重量になるので、そこをテレコンで賄うことでかなりの軽量化になります。

AF-S TELECONVERTER TC-14E Ⅲ

AF-S TELECONVERTER TC-14E Ⅲ(以下TC14E)は装着した主レンズの焦点距離を1.4倍に拡大するテレコンです。開放f値は1段分暗くなります。

使用可能レンズ
テレコンバーターにはそれぞれ使用可能、装着可能なレンズがあります。詳しくはNikonの公式HPを御覧ください。

常用できるテレコン

いきなりの結論ですがこのTC14E、私は『常用できるテレコン』と思って使っています。テレコンはどちらかというと緊急用的な使い方が一般的かもしれませんが、このTC14Eは付けっぱなしでも良いとさえ思えるほど気に入っています。

他社の1.4倍テレコンや同じTC14EでもⅡ型のものなど、他のテレコンを使ったことがないので比較は出来ませんが、後に取り上げるTC17Eとはやはり画質の劣化度が違います。あちらは1.7倍で倍率が違うので当たり前といえば当たり前ですが、このTC14Eはほとんど画質の劣化を感じません。

安心して常用できるTC-14E Ⅲ

テレコンはテレコン自体の性能だけでなく主レンズの性能も関わってきます。焦点距離が1.4倍になる副作用でf値が1段分暗くなりますし、主レンズの様々な諸収差も1.4倍になると考えれば分かりやすいと思います。私がTC14Eを装着するのは以下の2機種です。

・AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ
・AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ
幸いこの二つのレンズはともに素晴らしい光学性能をもち、たとえTC14Eを装着しても色滲みや解像度の劣化などはほとんどありません。つまり元から解像度が高く諸収差が少ないレンズということです。

AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ

後日、このレンズも取り上げるつもりですが以前取り上げたAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDとともに私の撮影には絶対欠かせない山岳風景の切り取りを担当する中望遠ズームレンズです。

AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ

AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

私が北アルプスに1.5kgもあるこのレンズを担ぐのはTC14Eを付けたいがためと言っても良いかもしれません。TC14E装着時も開放f4、解像度は十分保たれ諸収差も目立ちません。AFの速度も精度もほとんど変わらない印象です。

私のTC14Eの使い方は『レンズキャップ代わり』です。TC14Eはわずか190gと軽量でコンパクトなので70-200のプラ製のリアキャップをこのTC14Eにしています。
いざ24-70から70-200に交換するときに…

TC14Eごと外して交換=70-200mm f/2.8
TC14Eのリアキャップを外して交換=98mm-280mm f/4
と外す部分を変えるだけで2本のレンズを使い分けるようなイメージで選択することが出来ます。f4よりも明るさが欲しいときや100mm以下で撮りたいときなどはTC14Eごと外し、200mm以上の焦点距離で撮りたいときはTC14Eのリアキャップを外して交換するだけです。

そしてもうひとつ。
TC14Eを装着することでこの70-200 VRⅡの弱点である最大撮影倍率の低さを補うことが出来ます。テレコンを使うことで撮影倍率も1.4倍になります。つまり最短撮影距離はテレコンを付けても変わらないということです。70-200 VRⅡの最大撮影倍率は0.11倍、TC14E装着でそれを0.154倍に拡大できます。(それでもまだ低く、後継機種FLの0.21倍には及びませんが…)

AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ

北アルプスのような3,000m超の山岳撮影に2.9kgのこのレンズを担ぐことはありませんが、野鳥撮りや下界での風景撮影では必ず携行するレンズです。このレンズ自体も70-200同様に後日取り上げますが、TC14Eとの相性も抜群に良いです。

私は野鳥撮りや下界での風景撮影など一般的なネイチャーフォトでも一箇所に留まって撮影するのではなく、歩きながら被写体を探すタイプなのでこのレンズよりもさらに大きなレンズは体力的に無理と判断しています。

野鳥撮影は森林の比較的薄暗い環境での撮影が多く、さらに被写体である野鳥は非常に小さいですし、近づいたらすぐに逃げてしまう被写体なのでTC14Eが大活躍します。
野鳥撮影では基本的に以下のセットで撮影します。

Nikon D500 + AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ+ TC14E
これで35mm換算で630mm f/4となります。とくにf/4というのが心強くシャッタースピードやiso感度の観点からこの明るさは重要で、とても助けられています。当然70-200同様、画質もAFもほとんど劣化を感じません。

しかし野鳥を撮られている方ならお分かりかと思いますが、正直600mmでも小さな野鳥ですと不足なことがあります。やはりできることなら800mm前後は欲しいところです。そこで以下で取り上げる1.7倍テレコンの力を借りることになります。

AI AF-S TELECONVERTER TC-17E Ⅱ

TC14Eは70-200mmと組み合わせてもはや常用レンズと化していますが、このAI AF-S TELECONVERTER TC-17E Ⅱ(以下TC17E)はいわゆる『緊急用』的な立場といえます。TC14Eに比べやはり画質やAFの劣化は大きいと思います。

緊急用として限定的に使用するTC-17E Ⅱ

TC17Eは主レンズの焦点距離を1.7倍に拡大するテレコンです。開放f値は1.5段分(実質的には1.7段分)暗くなります。(開放f2.8のレンズならばf4.8となります)

このTC17EもTC14E同様、使用可能なレンズはNikon公式HPで確認してください。さらに純正テレコンの中でも機種によって制限も変わってきますので注意が必要です。

山岳撮影において私はこのTC17Eを使うことはほとんどありません。限定的に残雪の雷鳥沢で雷鳥を撮影する際に70-200に付けて使用しましたが、基本的には持っていきません。軽量とはいえ重量が250gありますし、常用できるほどの画質は保てませんから、そこは割り切って取捨選択します。

残雪の立山連峰、別山から望む岩と雪の殿堂“剱岳”

あくまでどうしても焦点距離をさらに伸ばしたいときに300mm f/2.8に装着するくらいです。それも比較的光がまわっている環境での使用が多いです。やはり解像度の劣化があるのでどうしても少し絞って撮影したいところがあって、開放f4.8からf5、もしくはf5.6まで少し絞って撮るのでどうしても限定的な使い方になってしまいます。

AFもあからさまに速度が落ちるほどではないですが、若干迷いやすい傾向がみられます。
ただ以下のセットでの撮影となりますと…

Nikon D500 + AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ+ TC17E
35mm換算で765mm f4.8となりますのでかなりの望遠となり、環境さえ整っていれば使える『飛び道具』と言えます。ただ見かけ上の焦点距離が800mm近くなると小鳥を見つけてファインダーでその対象をフレーミングするにはかなりの慣れが必要で、慣れるようになるまではドットサイトなどの補助機器があると良いかもしれません。

光量が豊富なら小鳥撮影に威力を発揮

現行品であるTC17Eは製品名の“Ⅱ”が示すとおりいまだⅢ型は出ていません。他の二つのテレコン、1.4倍と2倍のテレコンはⅢ型まで出ています。おそらくNikon的にはこれ以上Fマウントのテレコンは更新しないでしょうから、1.7倍の新型は期待できませんのであまり使用頻度は高くないですがしばらくは使っていくつもりです。

2倍テレコン

私は2倍のテレコン、いわゆる『倍テレ』は持っていません。と言いますか使ったこともありません。Nikonには現行品でAF-S TELECONVERTER TC-20E Ⅲという製品が2倍テレコンとしてありますが、どうなんでしょうか。

個人的にはTC17Eですら使用頻度が低いので、おそらく倍テレはさらに使う場面は少ないと思います。私は機材のコレクターではないので使わない機材はどんどん手放すタイプなので、今後も倍テレの導入は考えていません。

それに倍テレを使うなら素直に焦点距離の長いレンズを揃えたほうが良いような気もします。所詮300mmに付けても600mmです。おそらくヨンニッパを持っていたなら倍テレもありと思いますし、むしろかなり有効な手段と思いますが、私の撮影スタイルにヨンニッパは重すぎですし、あまりに値が張りすぎて考えたこともありません…。

テレコンか?DXクロップか?

さて、これは望遠撮影をする際の機材選びでたびたび挙がる問題提起です。より遠くの被写体を撮影するには単純にテレコンを使って光学的に焦点距離を伸ばすのが良いのか、FX機(フルサイズ機)のDXクロップ機能(またはAPS-C機)を使うのが良いのか。

個人的にはフルサイズ高画素機によるDXクロップ機能を使うくらいならテレコンの方が良いと思っています。やはりフルサイズセンサーは中判センサーほどではないにせよあの大きなセンサーがとても大きなアドバンテージなはずです。それをクロップ(つまりはトリミング)してしまうのは勿体無い、フルサイズセンサーの『ラージフォーマット』という強みがなくなってしまうと考えているからです。

以前、どこか海外の有志の方がテレコンを使用して撮影した撮像とDXクロップで撮影した撮像を細かく比較しているサイトがありましたが、そこではクロップのほうが解像度が高かった印象です。
以前使っていたNikonの当時としては高画素機であったD810を低画素機のD5に変えたのはクロップ機能を使うことは無い(と同時に高画素も必要無い)と判断したからです。これはどちらかと言うと科学的分析というよりは“理念”に近いものかもしれませんし、私の撮影スタイルや写真の最終出力ではそのほうが良いと思ったからです。

しかしテレコンは少なからず画質の劣化を伴うので、主のレンズの光学性能がとても重要になってきます。ただ逆に言うと光学性能が高いレンズならば劣化も少ないので、光学的に焦点距離を伸ばすことで遠くのものの細かいところまでトリミングすることなく綺麗に写すことが出来るようになると思っています。

いっそDXクロップ機能を使うならDX機(APS-C機)を使ったほうが潔いと思い、現在は望遠撮影はNikon D500を主に使っています。さらにそこにテレコンを使用することでさらに望遠に強くなります。しかしDX機にある『1.3倍クロップ機能』は決して使いません。あくまでその機種が持つセンサーをフルに活用したいからです。

この手の話はセンサーの画素ピッチや、光学系の解像度の問題、偽色、アンダーサンプリングやオーバーサンプリングなど、取り上げるべき題材が多すぎでここでは深く書きませんが、いつか機会があれば個人的な考えをまとめたいと思います。

まとめ

今回、私が使用している2つのテレコンを取り上げました。2つとも純正のテレコンですが、やはりこういったアタッチメント系のものは純正のほうが安心して使えます。とくに今のデジタル機器は情報伝達を電気的に行なう部分が多くなっていますので、AFの駆動スピードや正確性、測光など特にスピードを求められるような被写体なら尚のこと純正のアドバンテージは多いように思います。

TC14Eはとくに使い勝手も良く、上記で述べたように70-200mmに付けっぱなしのような状態です。

現在はミラーレスに移行しつつある撮影機材の過渡期ですが、そのぶんレフ機やFマウントの光学系は中古市場も潤っています。以前よりは比較的安価で程度の良いものもありますので、いろいろと模索してみるもの面白いかもしれません。