2021年6月、ほぼ全国的に入梅し鬱陶しい天気が続く毎日。
外に出るのも億劫になる日々ですが、私は意外と嫌いじゃない。
日本の自然風景が持つ美しさの一端は梅雨がもたらすその『湿度感』が担っている部分もあります。
民家の軒先や里山に咲くアジサイはまさに雨が似合う美しい花々。
しっとりと濡れた瑞々しいアジサイの活き活きとした生命感はこの梅雨時期の主役でもあります。
そのアジサイとともにこの時期にこそ愛でたい風景があります。
それが今回訪れた美しい苔の森。
苔の森は大地の力強い生命力の源。
ライフサイクルの体現。
朽ちていくものと新たに宿る生命のクロスオーバー。
私は長い年月をかけて形成されたこの美しい風景が大好きで、たびたび撮影に足を向けます。
今回撮影に向かったのは苔の森としては日本でも有数の規模である北八ヶ岳の白駒池周辺。撮影当日の雨予報を確認してから出かけました。
白駒池周辺の苔森はコメツガやシラビソ、トウヒを中心とした溶岩台地が源にあり、数百種類にも及ぶ苔の美しい風景はまさにここ北八ヶ岳でしか見ることができない風景なのです。
白駒池は標高2,000m以上の湖としては日本最大の天然湖。その周辺には400種類とも500種類とも言われる苔が広がっています。池周辺には10ヶ所の森に名前が付けられています。日本蘚苔類学会より「日本の貴重なコケの森」に選定されています。
詳しくは長野県佐久穂町観光協会公式HP
こんな天気でも駐車場には朝からすでに何台か止まっていて、私と同様に『雨狙い』の方々も多い印象でした。
駐車場180台(バス5台・障害者専用1台)
総合案内施設あり(お土産・簡易な登山案内)
営業時間は4月下旬~11月上旬(24時間駐車可能)
利用料金
・二輪車200円
・普通車600円
・中型車(マイクロバス)1,200円
・大型車1,800円
※営業期間中で係員不在の場合は駐車場入口の管理棟前にある封筒に料金を入れ、車ナンバー記入のうえ、管理棟ポストに入れてくださいとのこと
トイレあり(協力金50円)
しかしその道中は国道299号線から入ってすぐに始まる美しい苔森に圧倒され、なかなか足が進みません。そこにあるのはまさに初夏の活き活きした生命力漲る苔森。
久しぶりとなる森の匂いを楽しみながら、よく整備された木道をスリップに注意しながらゆっくりと撮影しながら歩きました。
今回の撮影はスチールではなく映像が中心。
これがやってみると意外と大変で、なかなか納得いくカットが撮れず何回も何回も撮り直しながら進みました。結局カメラを振る画は諦め、途中からほぼすべてのカットをFIX(三脚固定)で行いました。
カメラ内の電子手振れ補正や、レンズ側の手振れ補正(VR)はスチールでは有用な場面もありますが、映像、とくにゆっくりとジワっとしたカメラワークではカクついてしまってまったく使い物にならず、ささやかな苔や葉の動きをしっかり画として捉えるにはFIXが一番。
しかしどうしても単調な映像になりがちなので、今後はコンパクトなスライダーやシンバルを使ってみたい。
もちろん森の中(木々の傘下)とは言え、時折雨足も強くなる時もあったりで撮影機材はびしょ濡れ。
しかし今まで山でニコンのカメラやレンズで撮影していて雨で濡れて壊れたことが一度も無いので、そのあたりは安心感がありました。
ニコン機は静止画と動画を瞬時にボタン一つで切り替えられるのが良いところで、とくにSSは静止画と動画では全く異なるので、この辺りは使い勝手が良いところです。
国道から離れて行くに従い無機質な人工音から自然が奏でる美しいBGMに変わっていきます。
リズミカルな雨音、
ミソサザイの美しい歌声、
風が木々をくゆらす音、
そして時たまお会いするハイカーたちの足音。
この『森に包まれている感』は最高に贅沢な時間。
池と言うよりはもはや湖に近い白駒池には1時間半ほどかかって到着。
足元から頭までびしょ濡れで、なんとなく青苔荘や白駒荘に入るのがはばかれたので今回は小屋には立ち寄らずに撮影だけを行いました。
こんな雨の日に暖かい小屋でのんびりコーヒーでも頂いたら最高でしょう。
そんなこんなで4時間ほど撮影を行いました。
白駒池からは展望の良い中山や丸山などもほど近いですが、こんな日は展望も期待できません。
しかし雨のシャワーをたっぷりと浴びた苔森だけでも十分おつりがくるほど素晴らしい自然風景に触れることができます。
いつまでもこの美しい苔森が残ってくれること、
そしてこの苔森を美しいと感じる方々が増えること、
自然を愛する方々が増えることを願って。
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YouTubeにて今回の映像クリップを投稿しています。
お時間がよろしければご覧になってみてください。
1920×1080p 24fps(2:53)
【カメラ】
Nikon D5
Nikon D850
【レンズ】
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR
【編集・カラーグレーディング】
DaVinci Resolve 16
【音楽】
YouTube Library (No.5 The Day I Met Her – Esther Abrami)