八ヶ岳ブルー広がる冬の北横岳

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2020年1月 北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅~坪庭~北横岳~三ツ岳

北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅駐車場からピラタスの丘、そして坪庭を経て冬の北横岳へ。八ヶ岳ブルーの青空広がる冬の北八ヶ岳定番の人気コースを美しい森と大展望を求めて。

(目次)

  • 冬の北八ツの定番
  • 麓から坪庭へ
  • ピラタスの丘で見る月
  • 別天地『坪庭自然園』
  • 北横岳の大展望
  • 静けさを求めて…
  • 夕刻の山岳風景

冬の北八ツの定番

北八ヶ岳と南八ヶ岳

八ヶ岳連峰は北アルプスや南アルプス、中央アルプスなどと並んで登山者憧れの山域。長野県と山梨県に跨り、南北30kmにも及ぶ一大火山帯。2,899mの赤岳を主峰に2,000mを超える峰々が連なります。

『八ヶ岳』という名前の山は無く、連峰を形成する山々の総称であり夏沢峠を境に北部を『北八ヶ岳』、南部を『南八ヶ岳』と呼んでいます。

八ヶ岳の主峰『赤岳』有する南八ヶ岳の山容は実にアルペン的で、岩山や岩壁で形成され急峻な鋭鋒や岩稜帯の山々。逆に北八ヶ岳の山容はなだらかで、美しい苔森やコメツガやシラビソなどの樹林帯、そして火山湖が点在する山々。この対照的な山容こそが八ヶ岳連峰の大きな魅力であり、独特の奥深さを感じるところです。

北八ヶ岳の美しい縞枯れの樹林帯

北八ヶ岳の名峰たち

多くの山々で形成される北八ヶ岳ですが、その中でも蓼科山と天狗岳はとても人気のある山です。

蓼科山は別名『諏訪富士』とも呼ばれる日本百名山であり、溶岩が作り出したその美しい円錐形の山容は遠くからでもそれと同定できるまさに名峰。

西と東に二つの山頂を持つ天狗岳は南八ヶ岳方面の眺めが抜群に良くて、八ヶ岳縦走としても単体としても無雪期・積雪期ともに多くの登山者で賑わいます。

その蓼科山と天狗岳に次いで人気のある山が北横岳と言えるのではないでしょうか。

北横岳の名称
もともと一般的に呼ばれているこの“北横岳”は、単に“横岳”というのが正式な山名ですが、南八ヶ岳に同じ“横岳”という名称の山があるため便宜上それと区別するため“北横岳”と呼ばれている。

冬の定番

八ヶ岳連峰は北アルプスや南アルプスほどではないにせよ、とても懐の深い山域であり、冬季は無雪期と比べて飛躍的に登山の難易度が上がります。

風も強く低温で気候も変わりやすく、さらに赤岳や阿弥陀岳、横岳などの南八ヶ岳ともなると山容も急峻で、一つのミスが命取りになりえる山々です。

しかしこれが比較的穏やかな山容の北八ヶ岳となるとかなり難易度は低くなり、雪山初心者でもしっかりと準備すれば安全に楽しめる雪山登山となります。そのなかでももっとも手軽に登れるのが北八ヶ岳ロープウェイを利用できる北横岳です。

さしあたって『まずは北横岳から雪山を始める』という方は非常に多いと思いますし、山雑誌の雪山特集では必ずといって良いほど取り上げられます。

北八ヶ岳ロープウェイ
駐車場から坪庭までの標高差466mをわずか約7分で運んでくれる
・往復1,900円、片道1,000円(大人1人)
・運転間隔は20分間隔(混雑時は10分間隔)
・冬季は朝9:00より運行開始
・駐車場は24時間入出庫可能で無料(トイレも利用可能)
・詳しくは公式HP参照

麓から坪庭へ

北横岳はロープウェイがあるので雪山をこれから始めようとしている方には向いていると述べたばかりですが、私は下りは別として、登りは麓から坪庭まで歩いて登ることをオススメしたいです。

北八ヶ岳ロープウェイはつまるところ『ピラタス蓼科スノーリゾート』という“スキー場”なわけなので、当然利用する方のほとんどがスキーヤーでありボーダーの方々、または子供連れの雪遊び目的の方々。もちろん北横岳や坪庭は雪山登山やスノーシューを楽しまれる方々からも絶大の人気を誇ってはいますが、絶対数はスキーヤーたちが圧倒的に多くロープウェイも混み合います。

さらに近年は雪山登山もかなりポピュラーになってきて、北横岳や坪庭も天気の良い週末は多くの方々で賑わいます。
そこでロープウェイがあることを逆手にとって、ロープウェイの運行開始前に坪庭に着いてしまえば、自分のペースで雪山歩きを楽しみたい方や、静かな山歩きが好きな方には最高のロケーションとなります。(自宅から北八ヶ岳ロープウェイまで公共機関を利用して移動される方には現実的ではないかもしれませんが)

坪庭までのコースタイムは約120分。RWの始発が9:00なので少なくとも7:00前には歩き始めなくてはなりませんが、登山道はなだらかですし、ウォームアップにはちょうど良いと思います。

登山道の途中でゲレンデを横切る箇所が一箇所あります。ゲレンデを整備されているスタッフの方々やスキーヤーたちとぶつからないように注意が必要です。

ピラタスの丘で見る月

ということで、まだ夜が明けきれぬ早朝6時過ぎ。駐車場の脇にある登山口からまずは別天地、坪庭に向けて入山。

ガチガチに凍った足元に注意しながら樹林帯を登っていきますが、すぐ隣のゲレンデではスキー場のスタッフの方々が人工降雪作業に追われていました。今年度はどこも雪不足のようで、八ヶ岳エリアも例年に比べかなり雪が少ないと感じました。

登り始めの樹林帯を抜けてしまえば『ピラタスの丘』と呼ばれる展望の良い平原に出ます。ここからは真っ白な北アルプス連峰や木曽御嶽山の眺望がとても素晴らしく、さらにちょうどこの日は満月期ということで穂高連峰や槍ヶ岳の頭上に沈みゆく美しい月が輝いていました。

『Crown Of The Moon』

ピリリと鋭い早朝の空気、

少しずつ白んでくる空、

時折聞こえてくる野鳥の鳴き声…。

まだ半分眠ったような身体に一気に気力が漲るようなその北アルプスの絶景に、

『今日はきっと良い日になる…』

そんな希望めいた想いに包まれます。

坪庭付近に近づいてくるとようやく木々にも霧氷が少しずつつきはじめ、アニマルトラッキングの雪面を楽しんだり縞枯れの森を見上げながらグングンと登っていきます。

美しい冬の北八ヶ岳の縞枯れの樹林帯

別天地『坪庭自然園』

坪庭自然園

ロープウェイ山頂駅の先に広がるのは国定公園第一種特別保護地域に指定されている10万坪にも及ぶ溶岩台地の『坪庭自然園』。

北横岳と縞枯山に挟まれたその広大な台地に、無雪期には20種類以上もの高山植物が群生し、積雪期には霧氷や樹氷が立ち並び、その美しい雪原には強風が作り出した風紋(シュカブラ)も見ることが出来ます。

『雪山登山はちょっと…』という方でも坪庭散策は一周約1km強なので、気軽に30~40分ほどの雪原歩きを楽しむことが出来ます。

坪庭からの中央アルプスの展望

標高は2,200mを超えているのでもちろん展望も良く、北アルプスや中央アルプス、南アルプスの山々の眺めがとても素晴らしいです。

記録的少雪

温暖化、温暖化、と叫ばれる昨今ですが、2019年から2020年にかけての冬は特に近年稀に見る少雪と感じます。

坪庭から北横岳を見上げる

自分のなかでは『冬の坪庭=雪原』というイメージなのですが、今シーズンばかりはまったくもって雪原感は感じられませんでした。ゴロゴロした溶岩が完全にむき出しのところも多くて、樹氷や霧氷もいつもの年に比べてかなり控えめな感じでした。

『こんな坪庭見たこと無い…』

ちょっぴり残念な気持ちになりましたが空を仰げばそこにはまぎれも無き“八ヶ岳ブルー”。これから向かわんとする北横岳山頂部は真っ白に輝いています。

ギュッギュッという感触の良い雪道の踏み心地とともにまだ人もまばらな坪庭を北横岳のほうへ進んでいきました。

北横岳の大展望

樹氷が美しい登山道

坪庭エリアを過ぎると再び登りが始まり、樹林帯の中を九十九折に稜線まで高度を上げます。ところどころ木々の間隔が空いたところからはさっきまで歩いていた坪庭が一望でき、そしてその木々の寒々しくも美しい樹氷が青空に映えています。

記録的少雪の坪庭と縞枯山(右奥は南アルプス連峰)

坪庭を挟んだ反対側には木立がとても美しい縞枯山が朝の陽光を浴びて輝いています。縞枯山はその名が示す通り縞枯れ現象が発生している山ですが、縞枯れ現象自体がとても貴重で、おそらくもっとも有名なのがこの縞枯山ではないでしょうか。

登山道を登れば登るほど、標高が上がれば上がるほどみるみる木々の樹氷も発達していきます。中にはまるで大きな“カリフラワー”にも似た木もあったりで、八ヶ岳の厳しい冬の寒さを感じることが出来ます。

坪庭から歩くこと約1時間、北横岳ヒュッテが見えてきます。

北横岳ヒュッテ

北横岳山頂の直下、約徒歩10分という北横岳ヒュッテ。私は宿泊したことは無いのですが、宿泊すれば展望の良い北横岳ですから、朝晩は素晴らしい景色を見ることが出来るでしょう。

小屋の方が常駐されていないとのことですが、冬季も小屋に隣接した綺麗なトイレを借りることが出来るので、安心して雪山歩きが出来ます。

小屋前と小屋を挟んだ反対側にはベンチなどもありますので、ここでゆっくり休憩したり、食事したりすることが出来ます。

美しい樹林帯に囲まれる北横岳ヒュッテ

私はここまでツボ足で歩いてきましたが、ここから山頂に向けて斜度が若干上がるので、休憩がてらこの小屋前で荷を降ろしアイゼンを装着しました。

外トイレも含めて小屋の施設内を傷つけないようにアイゼンは必ず外して利用しましょう。

大展望の山頂

山小屋から山頂に向けての急登を登り切れば、そこは大展望の北横岳南峰。南には天狗岳~硫黄岳~横岳~赤岳と続く南八ヶ岳の山並みが美しく、目線をさらに右に向ければ南アルプスの白根三山や甲斐駒・仙丈、中央アルプスと木曽御嶽山が雄大に連なって見えます。

眼前には美しい樹林帯の雪景色と蓼科山の雄姿、そして蓼科山の背後には北アルプス連峰が白銀の屏風のように聳え立っています。

美しい木立と蓼科山と北アルプス連峰

朝の麓では風がほとんど無くて最高の雪山日和と感じましたが、さすがに北横岳山頂ともなると風が強く、カメラを構えるのもやっとという感じ。

南八ヶ岳の眺望

山頂部の木々も厳しい環境を窺わせるような樹氷を形成しており、プチモンスター的な様相を呈しています。

南峰から数十メートルほど稜線を北に進めば北横岳の北峰、2,480mの山頂に到達します。北峰からは北側の眺望も広がり、浅間山や四阿山が連なって見えます。

蓼科山と北アルプス連峰(後立山連峰)

木曽御嶽山

ロープウェイを利用すれば山頂駅からわずか1時間ちょっとでこの大展望なわけですから人気が出ないわけはありませんね。

乗鞍岳

静けさを求めて…

ここまでロープウェイを使わず早出して登ってきましたが、私のように撮影しながらとなるとちょうど山頂に着くころにはロープウェイ組の登山者たちがぞくぞくと山頂に登って来られる時間となります。

彼らと入れ替わるように下山しますが、もう少し北八ヶ岳の美しい雪景色の森を堪能しようと三ッ岳方面へ向かいます。

三ッ岳方面は北横岳への登山道とは打って変わって登山者も少なくとても静か。風も穏やかで、美しい森の中を軽やかな雪の踏み心地を楽しみながら進みます。

三ッ岳へはいくつかの小振りな岩場を越えて行きます。こちらもやはり少雪の影響で氷と岩のミックスでかなり難儀しましたが、展望の良いピーク(Ⅲ峰)から見下ろす美しい樹林帯と北横岳の山容はいかにも『これぞ北八ツ』という山岳風景。

他の登山者の邪魔にならないように登山道の脇のわずかなスペースで風を凌ぎながら休憩。この時期はこんな樹林帯の中で休憩していても鬱陶しい虫などもいなくて良いです。おそらく無雪期であればこんなところでゆっくり休憩できないはず。

その休憩のあと、のんびりとスキーヤーやボーダーで賑やかな坪庭へ下山していきました。山麓への下山はロープウェイを使って数分の乗車で登山終了となりました。

坪庭と縞枯山

夕刻の山岳風景

下山後の楽しみは『温泉』という方も多いかと思いますが、私は走らせていた車を止めて今登ってきた山や周りの山々の夕方の美しい山容を撮影すること。

『つい数時間前まであのてっぺんに居たんだ…』

などと感慨にふけながら、その山々が美しく斜陽を浴びる様は本当に美しいと思います。

今回はこのエリアに来たらたびたび撮影していたお気に入りの場所で八ヶ岳を撮ろうと思っていました。しかしあいにくこの日は週末ということでその道路脇の展望台のような場所は先人たちの車でいっぱい。

しかたなくもう少し先の同じような道路脇の展望台へ移動。残念ながらそこからは八ヶ岳連峰は見えませんが、美しい車山が望めます。遠方からでもそれと認識できる特徴的な気象レーダードームがこの車山のランドマーク。

寒いながらもずっと見ていたい景色

西に沈む夕日に照らされ車山が褐色に染まるその時間。寒さに悴む手でカメラを構えながら、

『暖かくなったらまたあの美しい湿原のニッコウキスゲやレンゲツツジに会いに行こう…』

と、黄色と淡い紅の色を思い浮かべる夕刻となりました。