今回は現在メインとして使っているカメラ、Nikon D5と共にもう一つのメイン機とも言ってよいNikon D500を取り上げます。ある時はD5のサブとして、ある時は望遠担当のメインとして、そしてある時はお気軽スナップの相棒として活躍してくれています。
もうすでに発売から4年余り経過しミラーレスが主流になりつつあるこのご時世に参考になるかは定かではありませんが、購入を検討されている方やご興味のある方はご覧ください。いつもの通り私の主観中心の記事ですので、その辺りはご了承ください。
(目次)
- カメラ2台持ち
- 数少ないD5の弱い部分
- D5とD500
- FXとDX
- D500の気に入っているところ
- D500の不満点
- DX機にFX用のレンズを使う面白さ
- D500総論
カメラ2台持ち
まずD500を取り上げる前に、この『カメラ2台持ち』の意義について簡単に触れたいと思います。
どの写真ジャンルでもそうですが、写真はご承知のとおり『一瞬を切り取るもの』です。
その一瞬というのはその言葉通り、その瞬間しか有り得ないものです。
しっかりとしたライティングが施されたスタジオでの『物撮り』などは別として、基本的にはその一瞬を撮り逃すともう二度と撮れないものが多いです。
サブとして
私が主に撮影している山岳写真はその『もう二度と撮れないもの』の最たるものの一つで、その時の天候や時間、光、色彩に関して同じものはもう二度と現われることがありません。
そしてそれは狙って撮れるようなものでもありません。『ここで、この時間に、この方角からならこういう画が絶対に撮れる』というようなものでもありません。
日の出とともに山肌が赤く染まるだろうか…、
ガスが山肌を縫うようにきれいに出てくれるだろうか…、
美しい夕焼けになるだろうか…、
天を埋め尽くすようなきれいな星空が拝めるだろうか…。
これらは期待して撮影はするもののそれが叶うかどうかは分かりませんし、もっと言えば自らの予想を遥かに超える情景に出会うこともあります。私が今まで本サイトにアップしているどの写真も私が『狙って』撮影したというよりは、どちらかと言うと『山が、自然が、私に撮らせてくれた』というものです。
いざその望み、そしてその望み以上の美しい風景に魅せられたとき、機材のトラブルで撮影できない…なんてことはやはり避けたいです。そんな時のために『2台持ち』は精神衛生上的にもとても安心できるものです。(もしそのもう一台もトラブルに見舞われたら諦めますが…)
予備として
これもサブと同じような意味合いです。
山などの屋外で撮影するとどうしても機材に負担がかかることも多いので、メンテナンスをこまめにしてトラブルは未然に防ぎたいものです。そんなときに点検やらメンテナンス、修理でしばらくカメラが使えなくなった時でも『2台持ち』ならそのもう一台の予備機で撮影に行くことができます。
先ほどの天候に関してだけでなく、例えば星の撮影なら月齢も気にしなくてはいけませんし、花や山野草も旬の時期は極端に短い場面も多いです。
そういった様々な撮影の時期に対応するためにも、一部のプロサービスによる代替機の貸し出しは別として、メンテナンスやトラブルでメイン機が無くても予備機で撮影に行くことができます。
機種の選択について
『2台持ち』の2台目(またはそれ以上)の機種選択には主に二通りあると考えています。
①メイン機と同じ機種にする
この方法は最もオーソドックスな選択になりますが、何と言ってもカメラの操作方法が同じなので扱いやすいということです。カメラの操作自体も同じですし、その機種のセンサーのクセみたいなもの、処理エンジン(NikonでいうならEXPEED)による色の出方やノイズ感、機体につけるアタッチメント系もすべて同じ。
ただ注意しなければならないのは、まったく同じ機種だとファイル名なんかも同じになってしまい写真の管理の面でごちゃごちゃになってしまいます。なのでファイル名をあらかじめ分けて記録したほうがどっちのカメラで撮ったものか管理しやすいと思います。
②同メーカーの個性が異なる機種にする
私の選択はこの方法なのですがメイン機とは異なるセンサーや処理エンジン、個体の大きさ(より軽量でコンパクトなど)、機構の違いなどで使い分けができ、場面によってはメインとして使うことにもなります。“同メーカーの”というのが重要で、基本的には操作方法は同じですしソフトウェア面での扱いもほぼ一緒、機種によってはバッテリーやらアクセサリー関係(レリーズなど)も共有できます。同メーカーで統一すれば間違いなく荷物は減ります。
しかしこれが“他メーカー”の機種にしてしまうと余分に荷物が増えるだけでなくレンズも共有できないですし、何より操作系やらUI(ユーザーインターフェース)が全然違うのでかなり使いこなしてからでないと扱いに苦労します。ニコン使いの私がたまにキヤノンのカメラを使うと電源ボタンがどこにあるかも分からず、いきなりカメラを起動する段階ですでにストレスが溜まります。キヤノン使いの方ならキヤノンの、ソニー使いの方ならソニーの、それぞれのメーカーの扱いに慣れた同メーカーの機種を選ぶほうが絶対にストレスは少なくて済みます。
数少ないD5の弱い部分
私はD500を手にするより先にD810からD5に変更し、その後にD500を買い足しました。
D810を使っていたときはその前まで使用していたD610と一時期『2台持ち』をしていましたが、すぐにD610は手放してその後はD810だけで撮っていました。その時に感じたのは1台持ちだとやはり心許なかったということで、なにかと不便に感じることもありました。
幸いD810は最後までノートラブルでしたが、今の私ならD810にもう一台買い足すならD4(またはD4s)の中古、もしくはD810aにするかな、と思います。
D5は今まで私が使ってきたどの機種よりもパフォーマンスの優れたカメラで、これ以上何を望むのか…というくらい出来の良いカメラです。ただやはりどんなものでも弱い部分というものもあります。D5の場合『弱い部分』というより、そこを甘受したからこそのあのパフォーマンスなのですが。
やはりデカくて重い
これは『弱い部分』という表現があっているのか微妙ですが。
もちろん“デカくて重いからこそ”のあの抜群の安定度を誇っているのは使っていて良く分かるのですが、やはり登山を伴うような撮影時は正直言って重たいです。気合の入るような撮影時はそれなりにアドレナリンも出ているのでまだ良いですが、軽快に気軽に持ち出すというカメラではありませんし、そもそもそれを目的としたカメラではありません。
『2台持ち』に関して私にはD5やD4、D3などの一桁機を2台というのは現実的ではないです。もちろん価格に関しても現実的なものではないと思っていたので、2台目はもっと軽量で安価なものが選択肢になります。
背面液晶が固定
これに関してはキヤノンもそうですが『フラッグシップには可動する背面液晶は必要ない』というメーカーの信念を感じますし、ひょっとしたらユーザーの多くもそう思っているのかもしれません。デカくて重いということと合わせて、背面液晶が固定しているからこそのあの安定感・剛性感というものもちろん理解はしています。
しかしチルト、とくにローアングルにおけるチルトモニターはとても使い勝手の良いのもです。D750という機種にフルサイズ機として初めてチルトモニターが搭載されたときは、保守的なニコンながら今後のフラッグシップにも搭載してくれるかと思っていましたが。
もちろんチルトモニターは故障やトラブルになりえる要因の一つではあります。しかしたとえチルトモニターを採用したとしても、可動を必要としないチルト反対派のユーザーのほうでマスキングテープなどで保護・固定してしまえば…なんて私は考えてしまいます。山などで足元に咲く山野草や、カメラを天に向けて星空の撮影することも多い私のような人間にはチルトモニターはとても便利なものです。
以上の2点を補えるような、さらに尚且つD5の操作系統となるべく同じようなものとなるとやはりD500という選択になってきます。
D500とD5
簡単にD500とD5を以下にまとめてみました。
D500 | D5 (旧製品) | |
発売 | 2016年4月 | 2016年3月 |
有効画素数 | 2088万画素 | 2082万画素 |
高速連続撮影速度 | 約10コマ/秒 | 約12コマ/秒 |
感度 | ISO100~51,200 | ISO100~102,400 |
モニター | チルト式3.2型TFT液晶モニター(236万ドット) | 3.2型TFT液晶モニター(236万ドット) |
撮影可能コマ数 | 約1,240コマ | 約3,780コマ |
本体のみの質量 | 約860g | 約1,415g(CF-Type) |
中古市場価格 | 約10 ~13万円前後 | 約32~36万円前後 |
主に違いが大きいところをピックアップしていますが、さすがにD500はD5の弟分的にDX機のフラッグシップとして登場しただけのことはあり、サンサーサイズこそ違えどD5に肉薄する製品です。位相差センサーや画像処理エンジン、ボタンイルミネーションなどはD5と同じで、そのほかD5には無いアプリケーションソフト「SnapBridge」に対応しているなど利便性の良さもポイントです。
実際に使ってみて分かるのですが、D5からD500に持ち替えても同じような感覚で操作できます。出てくる画も系統は同じ画像処理エンジンを積んでいるため、それほど大きな差は感じられません。もちろん暗部のノイズ感やプリントした時の解像感に大きな違いはありますし、撮影可能ならすべてD5で撮りたいですが、それと同時にD500の利点も感じる部分もあります。
『2台持ち』として山にこの2機種なら私は何とか担げますし(今のところは…)、ライブビューを使用してのローアングルでの撮影は逆にD500のほうが良いです。
D500の詳しい概要及び仕様はニコン公式HPをご覧ください。
Nikon D500
FXとDX
ニコンは昔からある種の『ニコンイムズ』的なところを打ち出していましたが、撮像センサーの呼称もニコン独自の呼び方をしています。ニコンで言うところのFXフォーマットはフルサイズセンサー、DXフォーマットはAPS-Cセンサー(海外ではクロップセンサーとも)にそれぞれ相当します。
フルサイズとAPS-C、違いはもちろんセンサーの大きさになりますが、それぞれ利点・欠点があります。
FXフォーマット(フルサイズ)
FXフォーマットはおよそ36mm×24mmで、35ミリ判フィルムの大きさに相当することからフルサイズと言われます。もともと35ミリ判はライカ版に起因するものですが、大判や中判に比べてハンドリングが格段に上がり、野外での撮影の幅が広がりました。
フィルムサイズやセンサーサイズは直接的に画像品位に直結するもので、大きければ大きいほど品位は上がることになります。私は特に解像度の面ではかなりの大きな差として現れると思っています。ある風景を同じ写野(画角)で撮影する場合、センサーが小さければ焦点距離の短いレンズで収まる場面において、より大きなセンサーなら焦点距離を長くしなければなりません。同じ写野なのに大きなセンサーではより長い焦点距離で撮影するわけですから解像度は上がるわけです。(便宜上、カメラの画素数は無視します)
解像度の違いとともにセンサーサイズが大きくなれば、それだけ多くの光を一度に取り込むことができるため微弱な光も捉えることができるためS/Nも向上します。もちろん工業製品としてセンサー性能の向上は無視できません。日進月歩の分野ですから昔の大きなセンサーよりも最新の小さなセンサーのほうがパフォーマンスが高いかもしれませんが、被写界深度の面や先ほど述べた焦点距離の違いもありますし、いまだに『センサーの大きさ』というのは揺るがない大きな違いとして存在しています。しかしセンサーが大きな分、価格も上がりますし、それを収めるカメラの機体やレンズは大きく重くなる傾向があります。
DXフォーマット(APS-C)
DXフォーマットはおよそ24mm×16mmで、FXフォーマットの約半分の面積しかありません。先述しましたがDXフォーマットの写野をFXフォーマットで得ようとするなら、ニコンの場合は焦点距離が約1.5倍のレンズを使うことになります。
センサーが小さければその分カメラ本体も小さくできますし、レンズもイメージサークルが小さくて済むので小型で軽量なものを造ることができます。この『小型で軽量なシステム』というのは登山を伴う撮影時や、長い距離を歩かなければならない撮影時では体力面・精神面において非常に大きなアドバンテージとなります。
FXでシステムを組むとなるとカメラはもちろん、レンズも大きく重くなり、それをしっかり支える必要が出てくる三脚や雲台も、果ては堅牢なつくりのカメラバッグなど持ち物のすべてが連鎖的に重くなっていきます。目的地に担ぐだけで疲れてしまい、いざ撮影を始めるや疲れて集中力もなくなっている…なんてことも出てきます。DXの小型で軽量というのは画像品位こそFXに見劣りしてしまいますが、ハンドリングの良さを生かした『良い写真』を残せる部分でもあります。
D500の気に入っているところ
スペック云々は先述のとおりですが、ここではその中でも個人的に気に入っているところを中心に取り上げます。
ほど良い画素数
D500はおよそ2,000万画素。これはD5とほぼ同じ。
ということはセンサーサイズが異なるので当然画素ピッチは違ってくるのですが、FXとDXとフォーマットが違ってもほぼ同じ画素数というのはファイルサイズもほぼ同じなのでとても扱いやすいです。私は“高画素”というものを追い求める人間ではありませんから、このくらいの画素数が扱いやすくて良いです。
山岳を中心とした風景を撮影していますがD810を手放したのは、少なくとも私には高画素が必要なかったと分かったからでした。個人的にはDXフォーマットなら1,600万画素くらいがちょうどよいと思っています。
チルトモニター
これはD5にはない機構で、とても気に入っているところです。
登山道に可憐に咲く山野草や、景色を煽って撮りたいとき、そして天体撮影において天頂にレンズを向ける際はその恩恵を存分に受けます。
私はモニターが可動(チルト)する機種はこのD500が初めてなのですが、本当に役に立つ機能です。D500がD5の弱い部分を見事にカバーしてくれている部分です。
以前このD500を使ってアンドロメダ大銀河を撮影したとき、このチルト機構があまりに楽すぎて笑ってしまうほどでした。今更ですがなぜ天体モデルのD810aがチルト液晶じゃないのか…と思っています。
小型軽量
D500は世間的にはDX機(APS-C機)の中ではかなり大きい部類です。ニコン機のなかで言うとFXフォーマットのD600(D610)よりも大きいくらいです。しかしD5をメインで使っている人間からすると“メチャクチャ”軽いです。軽すぎて手振れしてしまわないか心配になるくらいに感じますが、グリップが握りやすいので安定感はあります。
この小型軽量なところは「単焦点でもつけてちょっとスナップでも撮りに行こうか…」と気軽に手にしやすい良さがあります。さらにD500の魅力の一つでもある高速連写は、バッテリーグリップやD5などの大容量バッテリー、乾電池の使用などの制限なく素の状態で可能となっているのもポイントです。小型軽量のままD500の性能を充分引き出すことができます。
小気味良いシャッターフィール
センサーがDXフォーマットなのでミラーを含めたシャッターユニットも小さくできます。そのことが功を奏したのか、D500のシャッターフィールは『軽やかで小気味良い』です。手に伝わる感触も柔らかくて音量も含めてD5よりかなりおとなしいですが、これはこれで私はとても気に入っているフィーリングです。『もう一枚、もう一枚…』と写欲が湧いてくる良い感触です。
ローパスフィルターレス
D500はD5と違いローパスフィルターがありません。
モアレの心配は無いわけではないでしょうけれども、少なくとも私の撮影する対象はモアレが出るようなものではないので気にはなりません。むしろこのローパスフィルターが無いことでキリっとした画が出てきますし、なにより星空撮影の際に赤い星雲が比較的写ってくれます。
ノーマルのD810も比較的赤い星雲が写ってくれていたので、ひょっとしたらHα領域の写りはノーマルカメラの中でもこのローパスフィルターの有無が関わっているのかもしれないです。D5はまったく赤い星雲が写ってくれないので…。まあ赤い星雲を撮りたいなら天体専用設計の機種か、もしくは天体改造したカメラを使え、という話ですが。
AFセンサーについて(追記)
D500の大きな魅力の一つにAFセンサーの優秀さが挙げられます。位相差AFには、D5と同じマルチCAM 20Kオートフォーカスセンサーモジュールを採用しているので、DX機のフラッグシップとしての顔もたっています。もちろんこのD500を野鳥やスポーツなど望遠での高速連続撮影を生かせる場面での使用を目的に想定している方は多く、私もそのような側面もあってサブとして導入したのですが、私の個人的な考え方は『どのような機材を使おうが、最終的に操作するのは撮影者』であるということです。
D5にしろD500にしろ、どんなAFモジュールを使うにしろ、撮れる人には撮れるだろうし、撮れない人には撮れないだろうと。もっと言えばD3000番台のエントリー機でも撮れる人には撮れるはずです。機材に助けられた部分というのももちろんありましたが、それよりも何よりも、撮影できるかできないかは、野生動物なら野生動物の生態や動きの癖、スポーツならばその競技のルールはもちろん次にどのような動きをするとか、そういうことの理解や熟知のほうが撮影を成功させる要因となるはずです。これは“撮れない側”の私の率直な感想です。
D500の不満点
とても気に入っているD500ですが、目立った不満点はふたつほど。
バッテリーの持ちがレフ機としては良くない
標準的なデジタル一眼レフよりはバッテリーの持ちが悪いように思います。実際に使ってみると同型のバッテリー(EN-EL15)を使用するD810やD610のほうがバッテリー持ちは良かった印象です。
この点はD5があまりにも持ちが良いので余計にそう思ってしまう部分ではあるのですが。もしD500をメインとして使うなら予備バッテリーを用意しておかないと長時間の撮影時はかなり心許ないと思います。
画質
これはD500単体で考えればAPS-C機としては十分美しい画質を得られます。少しシャープ感に癖があるかなとは感じますが、とてもきれいな画が出てきます。
しかしフルサイズ機とともに使っていると、どうしても画質の面では見劣りしてしまいます。これはもちろん仕方のないことですし、その分軽量で軽快な存在としての意義があるわけですが。
とくに感じるのは暗所でのノイズ感と色再現。輝度ノイズはそこそこに処理されているように感じますが、やはりカラーノイズはフルサイズ機に比べて大きな差を感じます。言葉で表現するのは難しいですが高感度ではいわゆる“塗り絵的”ですし平面的でペタ~っとした印象で、とくにD5の高感度との差は結構あるなと感じます。
画質に関してはもちろん人それぞれ感じ方も違いますし、なにを優先するかにもよると思いますが、こればっかりは自分で撮影してみて、フルサイズ機と比べてみて『実感するしかない』部分です。私は単純に『可能ならば大きなセンサーで撮りたい』と実感しました。
DX機にFX用のレンズを使う面白さ
私はこのD500を導入するに際し、DX用レンズの導入は最初から全く考えていませんでした。D500のためにDX用のレンズを揃えてしまうとただでさえ荷物が多いのに、さらにまた増えてしまいます。なので最初から手持ちのFX用のレンズをこのD500でも使い回そうと思っていました。
実はこれがとても面白くて、荷物を増やさずに手持ちレンズの新しい使い方が増えたような感覚になりました。私の手持ちのレンズの中でこのD500に装着した時に特にそう感じるものを紹介します。
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
言わずと知れたニコンの名レンズ。
この超広角ズームはとにかくワイドで、パースの強烈なかかり方は唯一無二です。さらにズーム全域でf/2.8という明るさで、f8くらいまで絞ると隅々まで素晴らしい画質を得られます。しかしFXで使うとあまりに超広角過ぎて、嵌ったときは素晴らしい存在意義を感じますが使いどころがそれほど多くないのもまた事実。
これがDXで使うと画角的には21-36mmというとても使いやすい広角ズームとなります。このレンジは広角スナップには最適で、昼間のスナップであればD5よりもD500にこのレンズを付けて取り回し良く撮影したほうが楽しいかもしれません。
私がたびたび撮影する北アルプスですと、日中の展望の良い稜線歩きのようなときはこの組み合わせのほうが良いかもしれません。
ちなみにさすがの14-24mmもフルサイズでは最周辺の画質は低下してしまうのですが、DX機ならばレンズのイメージサークルの中心部のみを使うことになるので理にかなっているとも言えます。
AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR Ⅱ
こちらも旧型になってしまったとは言えニコンの名レンズの一つ。
シャープでかつアウトフォーカスの美しさも両立させた素晴らしい光学性能を持っています。DXで使用すると105-300mm f/2.8 となり画角と明るさだけなら疑似的にサンニッパズーム。
ただやはりFXにサンニッパを装着したときのあの圧倒的な画質を見てしまうと改めて“フルサイズ換算”というのはあくまで疑似的なものだと思ってしまうのも事実。やっぱりFXに70-200mmを装着してDXにクロップしているというだけなんですね。
しかしながらこの軽さ、ハンドリングの良さは特筆すべきで、これに1.4テレコンを噛ませれば北アルプスのような高山でも明るい望遠(420mm f/4 相当)が使えることになり選択の幅が大きく広がります。D5と比べてD500だとフロントヘビーになってしまうのはご愛敬程度。
AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
こちらもマイクロレンズ(マクロレンズ)としてはニコンを代表するレンズ。
以前は105mmの方のマイクロレンズを使っていましたが、大きくて重いということで60mmの方を買いなおしました。いまだにZマウントのマイクロレンズが出ていないのでアダプターを介してこのレンズを使っている方も多いでしょう。
ただ私はマクロ撮影自体あまりしません。
山で高山植物を撮影するときもマクロ撮影というよりは風景の一部として撮影したり、望遠で切り取るほうが好みなので、このレンズは荷物に余裕があるときか、もしくは花目的で山を歩く時ぐらいしか携行しません。
しかし私はレンズ自体は105mmマイクロよりハンドリングの良いこちらのレンズのほうが好きですし、写りもさすがの一言。DX機にこのレンズを付けると換算で90mm、中望遠の単焦点として最短撮影距離を気にすることなしに自由にスナップできるのが楽しいレンズとなります。D500の軽量さも相まって気軽に持ち出せる感覚です。
D500総論
後半はなんだかレンズレビューになってしまいましたが、DX機はFX機とは異なった個性があって2台持ちでも私の場合はFX機ばかり使うようなことにはなっていません。さらにD5の数少ない不満点を補ってくれていて、サブ機というよりはもう一つの『メイン機』と言えます。
ただ不満点でも先述しましたが、可能な限りラージセンサーで撮りたいのもまた事実ではあります。
このD500は販売開始から4年余り経過していますが、この後継機種が果たして出て来るのかは分かりません。D5との併用において私の使い方では画質面以外は大きな不満はないですから、かえって後継機種が出ずに現行品のままでいてくれたら修理可能期間もそのまま延びていくわけですから好都合とさえ思っています。
APS-C機としては大きいほうですし、ましてやミラーレス機に比べれば重くて嵩張るカメラですが非常に完成度が高く、質実剛健なニコンらしい機種と思います。販売開始時はAPS-C機としてはかなり高い値付けでしたが、これほどの素晴らしいカメラが現在ではすっかり価格もこなれてコストパフォーマンスも良くなりました。単体でメインとしても行けますし、FX機のサブとしてもたいへん優秀なカメラです。
(※追記)
サブとして使ってきたこのD500。現在は手放していますが、素晴らしいカメラであることは間違いありません。いまだ現行品なので、そのぶんメーカーの修理可能期間も延びていきますのでまだまだ今後も活躍できる名機と言えるでしょう。(09/08/2020)