【展覧会】テート美術館 ターナー展 ―崇高の絵画、現代美術との対話【国立西洋美術館】

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来たる2026年10月24日(土)から翌2027年2月21日(日)にかけて、東京都は上野公園内にあります国立西洋美術館にて注目の展覧会『テート美術館 ターナー展 ― 崇高の絵画、現代美術との対話』が開催されます。

イギリスの偉大なる風景画家で “光の画家” とも呼ばれるウィリアム・ターナー(1775-1851年)が追求した『崇高』をテーマに、現代美術との対話というコンセプトで展示されるとのことです。世界最大となるターナーコレクションを所蔵するといわれるイギリスのテート美術館から実に80点以上もの作品が来日。上野で開催後は大阪中之島美術館へ巡回 (2027年3月13日~6月27日) される予定となっています。ターナー作品のファンである筆者もとても楽しみにしている展覧会です。

展覧会の詳しい情報は公式サイトのほうでご確認ください。↓
テート美術館 ターナー展 ―崇高の絵画、現代美術との対話公式サイト

本展覧会のメインビジュアルには彼の晩年の作品『捕鯨船エレバス号に万歳!もう一頭獲ったぞ!』(1846年)が用いられていますから、おそらくはこの作品は来日してくれそうです。今回はターナーの作品をはじめとしてテート美術館に所蔵されている80点以上もの作品を一挙に鑑賞できるとても貴重な機会であり、作品を通して彼の足跡を年代順に辿り、いかにして晩年に代表されるようなこのような抽象的な表現へと変貌を遂げたのか、たいへん興味深い展示になることは言うまでもありません。

『捕鯨船エレバス号に万歳! もう一頭獲ったぞ!』所蔵:テート美術館

2023年『テート美術館展 光 ―ターナー、印象派から現代へ』おさらい

『テート美術館』そして『ターナー』となると、2023年に国立新美術館 (東京・六本木) で開催された展覧会『テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ』があったことは記憶に新しいところ。筆者ももちろんこの展覧会には足を運びましたが、彼の代表作のひとつとされる『湖に沈む夕日』(1840年)も間近でじっくりと鑑賞することができました。
テート美術館展 光 ―ターナー、印象派から現代へ|国立新美術館

『湖に沈む夕日』(2023年、国立新美術館にて)

ターナーというと筆者にとっては感じた光をどのようにカンヴァスに落としこもうかと独自に追求している “求道者” のイメージの画家です。そしてそれは追求すればするほどイメージは抽象化され、あのような彼独特のタッチの作風になったのではないかと思うのです。

もともと彼は正統的なロマン主義を代表する画家だったわけですが、後半の彼は完全に制約みたいなものを取り払って、自分の内側に躍動する光のイメージをそのままカンヴァスに叩きつけて描くようになりました。その画風はかの印象派の画家たちが登場するずっと以前のことでした。当時それがいかに独創的であったかは想像に難くないですし、実際にその表現方法は当初理解されなかったと言われています。

『光と色彩(ゲーテの理論)-大洪水の翌朝-創世記を書くモーセ』(2023年、国立新美術館にて)

この2023年の展覧会ではターナーの描いた4点の作品が展示されましたが、それ以外にも実に貴重なものも展示されていました。それは彼がアカデミー (英国のロイヤル・アカデミー附属美術学校) の講師を務めていた時に、その資料として彼自身が描いた投影法の図柄でした。彼の油彩画は以前も、そして今後もいろんな機会で観覧することが出来るかもしれませんが、このような絵画技法の資料、大袈裟に言えば “虎の巻” のようなものが公開されるのは稀ではないかと思いました。もちろんこれらは写真撮影の際もとても参考になるものでしたし、そういう意味でも筆者にとってたいへん有意義な展示でした。

今回の展覧会ではターナーの大回顧展ということで、この2023年の展覧会よりもさらに多くの彼の作品を見ることができると思います。

テート美術館

『テート美術館』はもともと単に『テート (TATE) 』と呼ばれる組織であり、英国政府が所有する美術コレクションを所蔵および管理を行い、英国各地にある美術館を運営しています。

『テート』の始まりはサー・ヘンリー・テートが自身の絵画コレクションをナショナル・ギャラリーに寄贈しようとしたことが発端で、しかし当時ギャラリーにはそのスペースが無いと却下。それが国内でも大きな議論となり、このサー・ヘンリー・テートのコレクションのために新たにナショナル・ギャラリーの分館としてテムズ川の畔に『ナショナル・ギャラリー・オブ・ブリティッシュ・アート』が1897年に開館。その後、1955年に分館ではなく独立した『テート・ギャラリー』となりました。

テート美術館公式HP

光を追い求めたターナー

筆者が個人的に大好きである偉大なる4人の画家については以前にコラムとして記事にしていますので、よろしければそちらを参照いただきたいのですが、なかでもターナーの作品は光の表現がある意味において究極的な領域にまで達していると感じ、彼の残した作品を鑑賞するたびに身震いを覚えるほどの表現力を感じます。その後の印象派の画家たちへと受け継がれるその表現の領域は、視覚を超えた領域に筆者は感じるのです。
過去記事:『写真と絵画』~偉大なる名画たちに学ぶ光の表現と作品作り~

『写真と絵画』~偉大なる名画たちに学ぶ光の表現と作品作り~

前の項でも少し触れましたが、もともとイギリス出身の正統なロマン派の画家であった若き才能を持った彼がヨーロッパ (主にイタリアと言われる) を旅し、そこで見たイギリスには無い眩い光に包まれる劇的な世界。イギリスという国は “雨” のイメージですが、そんな土地で生まれ育った彼がヨーロッパで目の当たりにした光に満ちた世界は衝撃的であったかもしれません。その旅を転機に、彼は実験的に光そのものへの表現を追求することになったわけです。

光とはなんでしょうか?

そもそも光というものが存在しなければ周囲を見ることはできませんし、周囲を見るという発想すら浮かばないかもしれません。光がない世界を経験していない以上、光のない世界を想像すらできません。
光はあって当たり前のもの。
そもそもこの世界が光そのもの。
ではその当たり前のものをいかに描くか…。
これは簡単そうで実はとても困難極まる行為であり、画家それぞれの光に対する哲学が表現されると言っても過言ではありません。絵画はカンバスと絵具を通してそこに画家が根底にもっている哲学が表現され、その表現自体に限界はありません。

崇高とは?

今回の展覧会のサブタイトルにして、本展を象徴するであろうキーワードに “崇高の絵画” とあります。では “崇高” とはそもそもどんなことを意味するのでしょうか。高みにある、であるとか畏怖の念を抱く、または気高いというイメージをもった言葉です。

もともとこの “崇高” というものは弁論術や修辞学の概念であると言われています。始まりは古代ギリシアにおいての言語の概念で、ある言葉が他の言葉よりも目立つ、ということが意識されて “崇高” という概念とされていました。その後17世紀末から18世紀初頭にかけて我々がイメージするような宇宙の無限性を意識させるような自然が多くの人々を魅了し、崇高概念は雄大で深遠な自然に適用されるようになったと言われています。

さらにドイツの哲学者イマヌエル・カントはかつて “崇高” という概念をこう考えました。

「構想力と悟性との調和的活動にもとづく “美しいもの” との対比によって、崇高な自然は美しいもののように “限定” されていないために人間の感性的能力を超え出るが、そのことを介して人間の “内” に超感性的能力の感情を喚起する。それゆえ崇高なのは自然ではなく、超自然的な道徳性である。」
つまり “崇高” とは我々の内にある感性や感情の高みであり、ターナーをはじめとした多くの画家たちの真の意味での絵画を通した内面の吐露と考えても良いのかもしれません。単なる見た風景を忠実に描くのではなく、画家がその風景に出会った瞬間の感情の高み、光の美しさや眩しさを目の当たりにしたときの沸き上がる感性、それ自体がほんとうの “崇高” と言えるものなのかもしれません。

本物との対峙

以前どこかで述べさせてもらいましたが、レプリカや画集ではないこのような画家が残した本物の作品を鑑賞することは大きな意義があると感じています。つまりそれは (もちろん修復されているとは言え) 印刷物等ではないリアルな色彩や立体的な筆のタッチ、カンバスの生地、細かな起伏など、そういったものを自分の目で直接鑑賞できるということです。
それに加えて、筆者にとってその作品の真正面に立って鑑賞すると、その作品を描いた当時の画家もほぼ同じ位置からこの絵を見て筆を走らせていたことが想像できて、それがまるで時代を超えて作者とリンクするように感じられて背筋がゾクゾクするのです。


これほど大規模にターナーの作品を鑑賞できる機会はそうは多くは無いと思われます。筆者自身もまだまだターナーの作品に関しては鑑賞できていなくて、本展覧会をとても楽しみにしています。この貴重な機会を与えてくださった関係各位の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。

東京会場は今年の秋から冬にかけて、そして大阪会場は来年の冬から初夏にかけて、比較的長期にわたって開催されます。この機会にみなさまも本展覧会『テート美術館 ターナー展 ― 崇高の絵画、現代美術との対話』に足を運ばれて、ターナーをはじめとした素晴らしい作品に会いに行かれてはいかがでしょうか?

展覧会開催概要
◆場所 (東京会場)
国立西洋美術館 企画展示室(東京都台東区上野公園7-7)
◆会期
2026年10月24日(土)ー2027年2月21日(日)
◆開館時間
9:30~17:30(金・土曜日は~20:00)
※入館は閉館の30分まで
◆休館日
月曜日、11月24日、12月28日ー2027年1月1日、1月12日
ただし11月23日(月・祝)、1月11日(月・祝)は開館
◆観覧料
一般2,400円 大学生1,500円 高校生1,100円
(前売券は各々200円引き)
※中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。
◆主催
国立西洋美術館
テート美術館
朝日新聞社
テレビ朝日

その他詳細は展覧会公式HPでご確認ください。