ケフェウス座の散光星雲 IC1396

ケフェウス座µ(ミュー)星、褐色に輝く通称『ガーネットスター』とその付近にある巨大な散光星雲『IC1396』。さそり座のアンタレスやオリオン座のベテルギウスと同じ赤色超巨星であるガーネットスターは、光度が変動する脈動変光星に分類されます。発見者である英国(出身はドイツ)の天文学者ウィリアム・ハーシェルがこの赤色を “ガーネット” に例えたことから “ガーネットスター” と呼ばれています。
その大きさは実に太陽の1,200倍とも1,500倍とも言われていますが年老いた星でもあり、近い将来(と言っても天文学的に)には超新星爆発を起こす運命にあります。

『IC1396』は非常に大きな散光星雲(輝線星雲)で、作例ではフルサイズ換算約450mm(若干トリミングあり)で撮影していますがご覧のように画面いっぱいに広がり、実に迫力ある対象です。赤い星雲でとても美しいイメージングですが、非常に淡い星雲で眼視では全く見えませんし、非改造のノーマルデジカメではほとんど写りません。作例では赤外改造したデジカメで撮影していますが、それでも撮って出しでは薄っすらとしか写りません。

【撮影データ】
カメラ Nikon D7100(IR-custom)
鏡筒 AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ(f/3.2)
フルサイズ換算写野イメージ 約450mm
架台 CELESTRON Advanced VX
ガイド鏡 SVBONY SV165(30mm F4)
ガイドカメラ QHYCCD QHY5L-ⅡM
ガイディングソフト PHD2
ダーク減算 RStacker(8枚)
フラット補正 RStacker(64枚)
現像 ADOBE Camera Raw
コンポジット DSS(150秒×59枚 計2時間27分 ISO1600)
画像処理 StellaImage9 & ADOBE Photoshop CC
その他
・QHYCCD Polemaster

2022年10月 妙義にて撮影

ケフェウス座は北天の星座なので日本では1年中観測できますが、撮影するならば高度が上がる晩夏から秋にかけて撮影するのが適期の対象です。

北天の星空(北アルプスにて撮影)

日本ではいて座付近の天の川の中心部やさそり座の美しい散光星雲群があまり高度が上がらず撮影するには好条件とは決して言えませんが、逆に北天のこの『IC1396』やカシオペア座付近の星雲、アンドロメダ大銀河なども撮影できるので1年中楽しめる星空とも言えるでしょう。(晴天率は別として…)

『IC1396』の内部は暗黒星雲が複雑に入り組んでいるため、ここをクローズアップ撮影しても楽しめるでしょう。その中でも通称『象の鼻』と呼ばれる『vdB142』はたいへん人気の対象でもあり、暗黒星雲がうねうねと東西に伸びている様は深淵なる宇宙の神秘を感じられます。

『vdB142』(象の鼻)

赤い散光星雲ですが色彩的にはダークでおどろおどろしいイメージで、同じ赤い星雲である北アメリカ星雲やバラ星雲、干潟星雲などとは一線を画す魅力があります。

撮影MEMO
・赤経 21h39m33
・赤緯 +57°34′25″
・正中日 7/3(AM03) 8/17(AM00) 10/1(PM09)
・正中高度 約67.4°
・IC1396の撮影適期は晩夏から秋にかけて。とくに10月ともなると夜も長く、晴天率も上がるのでじっくりと狙えると思います。
・巨大な散光星雲なので長焦点でない中望遠レンズでも比較的大きく写るのでカメラレンズで天体撮影しておられる方におすすめですし、付近に明るいガーネットスターがあるので導入も容易な対象でもあります。
・ケフェウス座は北天なので北側に大きな都市や街がない撮影地を選ぶと良いでしょう。

本作例の撮影記はコチラ↓

2022年10月 天体写真遠征 (IC1396、ハート星雲、洞窟星雲)