『Yokohama Film-Logue』みなとみらい~山下公園

DIARY

前回の街撮りスナップとなった『Tokyo Mono-Logue(月島~有楽町)』から1ヶ月半ほど経ち、その間に北八ヶ岳の天狗岳や北アルプスへ夏山テント泊山行などを3回ほど敢行した。久しぶりに高山の澄み切った空気を吸えて、下界には無い山の美しい風景に出会って「やはり山はいいなぁ」とつくづく思ったのだが、それはそれとして、依然として街へ出てスナップ撮影しながら自由気ままに歩くことも今後も続けていきたいと考えている。

山とは “別腹的に” 楽しいと思えるのだ。

『Tokyo Mono-Logue (東京“ひ”撮り歩き)』月島~有楽町

山岳スナップ

実はその3回のテント泊山行において、今までやってきたいわゆる “ザ山岳写真” 的な撮影よりも山を歩きながら見た風景、出会った景色、そして感じた空気感というものを気負いせずにスナップするかたちで撮影することが多かった。

みなとみらい駅

今までであれば山行前に計画していた、または狙っていたポイントでその時の気象状況を読みながら三脚をどっしり立てて、時にはNDフィルターを併用してスローシャッターで撮ってみたり、ハーフNDを使用して “画的に” 完璧なものを残せるように撮影してきた。もちろん山の写真の定番的なモルゲンロートやアーベントロート、山岳星景は言わずもがな。

しかし最近楽しいと感じる撮影はまるで街をぶらぶら歩いて自由気ままにスナップするみたいに、何気ない山の日常を切り取るような、自らが自然体でいられる撮影だ。

気負いも無く、誇張も無く、何気ない山の風景。
絶景ではない、山を歩けばいつでも目に出来るような山の情景。
そんなものを撮影したいと感じるのだ。
もしかしたら、最近楽しいと感じる今回のような街歩きスナップが良い意味で山の撮影にも多少なりとも影響を与えているのかもしれない。

そして何より、私自身が美しい自然の生命力というものは実は何気ない山の日常にも満ち溢れていると理解したからかもしれない。

ランドマークタワー

YOKOHAMAという街

誤解を恐れずに言えば、横浜という街はその他のあらゆる街に住む我々のような人間にとっては少なからず、ある種の “憧れ” のようなものを感じているかもしれない。歴史も古く、港町ということもあり交易が盛んで、そのためあらゆる異国の文化も入り込み、それが我が日本の文化との化学反応を起こし、実に独創的な街を形づくっているように思える。

ワールドポーターズ

横浜には何の縁も無いまさに部外者のような私にとって、この街はとても興味深い街であり、実にユニークな被写体でもある。かなり以前にやはりこの街を一度撮影したくて訪れたことがあるが、もうずいぶん前のことで、何故かそれから今の今までまったくこの街とは縁が無かった。その時は夜景を撮影しまくっていた時期でもあり、その一環として夕方から夜にかけてこの街を撮り歩いた記憶がある。

そんなことで今回は昼間、それも午前中の早い時間帯を狙って歩いてみた。それはもちろん撮影のこともあるが、なにより今年の夏はお盆を過ぎても異常と言えるほどの酷暑で、とてもお昼過ぎから街を歩くなど考えたくはなかったということである。

カップヌードルミュージアムパーク

それともうひとつ。
今回改めて横浜を訪れようと思ったのは実は知人が横浜のとあるカフェで、個展を開催していることもきっかけとなった。縁というものは不思議なもので、このように改めて横浜を歩く機会を与えてくれたのはその知人のおかげでもあるのだ。

マリンアンドウォークヨコハマ



フィルムカメラだけを抱えて

前回の月島から有楽町にかけての街歩きスナップではコンパクトなデジタルカメラ(OLYMPUS PEN-F)とレンジファインダータイプのフィルムカメラ(OLYMPUS-35SP)の両方を持って撮影したが、あくまでメインはデジタルであった。しかし今回はそのデジタルカメラを自宅に忘れたまま出掛けたため、フィルムカメラのみで撮影することになった。

赤レンガ倉庫①

今回使用したカメラは前回の街撮りスナップからこの日の撮影の間に新たに手に入れたコンパクトなフィルムレンジファインダーカメラ『YASHICA ELECTRO 35CC』である。いぜれこのカメラについても記事にしようとは思っているが、手に入れた理由としては単純にカラーとモノクロでそれぞれコンパクトなレンジファインダーカメラを準備したいということだった。中判のようにフィルムバックのような機構が35mm判にもあったら良いが、昨今のフィルム価格の高騰を考えると1枚1枚丁寧に撮影して、少しでもコマを無駄にしたくないという思いもあり、それならばカラーとモノクロをそれぞれ装填したカメラを両方持っていれば、無理にカメラ内に残った未露光のコマを使い切る必要がないという利点を考えての事である。

赤レンガ倉庫②

デジカメを持っていかず、フィルム機のみという構成は自分にとっては実に久しぶりというか、古き良きフィルム時代のころを思い出した。あの頃はスマホも無かったので、今とはまた違う感覚ではあったが。ちなみに今回がこのカメラで初めて撮影するいわゆる “ファーストロール” というやつである。

今回使用したヤシカ エレクトロ35CC

・YASHICA ELECTRO35CC(1970年12月発売)
・COLOR-YASHINON DX 35mm f1.8
・『ろうそく1本の明かりで撮れる!』(当時のキャッチコピー)
・絞り優先EE機
・二重像合致式レンジファインダー
・8~1/250秒(SS)
・550g
装填したフィルムは無難に定番である『Kodak ColorPlus 200(36枚撮り)』。問題となるのはヤシカ『ELECTRO35CC』のシャッタースピードの最高速は1/250秒で、このISO感度200のフィルムでは最大に絞ったF16でも晴れた日中の屋外ではオーバー気味となってしまうシーンが多かった。

とは言え昨今のフィルム市場を考えるとISO100のネガフィルム自体の品数もかなり限られ、選択の余地がないという部分もあった。ただ現像から上がってきたフィルムを見返してみると、その若干オーバー気味でハイキーな雰囲気が逆にこの日の日差しの強さが表れているなとも感じた。

軽量な機種なので今後は山の撮影でも積極的に使っていきたいが、日中の晴れた山での使用時にはNDフィルターを併用して使用することも検討したい。

みなとみらい~山下公園

今回は奇を衒わず、横浜観光のド定番といえるコースを改めて歩いてみた。もちろん横浜という街はこれだけではない魅力ある街だとは思うが、この日はその後の予定がぎちぎちに詰まっていたので、サクッと横浜らしいカットが撮影できる本コースを選択した。時間がとれたらまた別日にもう少し違った横浜をスナップできるようなコースを是非とも歩いてみたいと考えている。

大さん橋①

今回はまずはみなとみらい線の『みなとみらい駅』で下車して、観覧車で有名な『よこはまコスモワールド』や文字通り横浜のランドマークである『ランドマークタワー』を横目に、国際橋を渡り『カップヌードルミュージアム』『横浜ワールドポーターズ』『赤レンガ倉庫』『象の鼻パーク』、そして豪華客船が停泊していた『大さん橋』から『山下公園』までという、まさに “ザ横浜” という超が付くほどの有名観光ルート。田舎者である私のような人間はまさに “おのぼりさん状態” で、撮影した写真も完全に観光写真と化してしまった。

撮影ペースも被写体だらけということもあって早々に今回用意していた36枚撮りフィルムを使い切り、その後は撮影はせずに『中華街』『横浜スタジアム』をぐるっと歩いて、知人の個展が開かれているカフェへ向かった。

写真とコーヒーとカメラ(カフェにて)

振り返って(フィルム写真のふしぎ)

今回、この記事に掲載した写真はすべてフィルム現像の際に同時にCDにデータ化してもらった画像を使用している。200万画素という低画素のためあくまで本ブログ用の画像ではあるが、それ以前になんの魅力もない写真を量産してしまった。

自分で言うのもあれだが、これは完全にただ撮っただけの “観光写真” である。

大さん橋②

しかしフィルム写真というものは今となっては “マジック” のようなものと言って良いかもしれない。こんなありふれた観光写真然とした写真たちに、どこか懐かしい郷愁のような風合いを感じることが出来る。個人的に “エモい” という言語は好きではないが、そんな感じである。

山下公園

私には一つの法則のようなものが頭の中にある。
それはごくごくありふれた日常を超高精細なデジタルカメラで撮影してもそれはただの記録のようなものと感じ、逆にそのようなシーンにおいてフィルムで撮影するとその日常が非日常に変わるような、ある種の魔法がかかるような気がするのだ。
そう考えると山の撮影、例えば北アルプスのような高山帯ではシーンそのものが非日常であるわけだから、それを余すことなく超高精細に捉えたいからデジタルカメラを優先的に使用したいと思うのだ、と。少なくとも今はそう感じている。

フィルムとデジタル。
デジタル全盛と言われる昨今においても、今なおどちらにもそれぞれ魅力がある。
デジタル世代の若者のごく一部にはこのフィルム写真の質感に独特な魅力を感じ、フィルムで撮影される方々も増えてきていると聞く。さらにペンタックスがこの時代に新たに新作のフィルムカメラをリリースしたことも大きなエポックメイキングと言って良いだろう。
競技人口が増えればフィルムの需要も増え、高騰していくばかりのフィルム価格に歯止めがかかるかもしれない。そんなふうに、思っている。

 

今回の記事は以上になります。
最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。