今回は新たに導入したニコンのデジタル一眼レフカメラ『D850』をいつものように私の主観を中心に取り上げます。今までは『D5』とともにDX機(APS-C機)である『D500』やフルサイズミラーレス機『Z6』を使用していましたが、その『Z6』を手放しFX機(フルサイズ機)のデジタル一眼レフである『D850 』を手にしました。
時代はすでにレフ機からミラーレス機という流れですが、この記事が何かのご参考になれば幸いです。
(目次)
- メインカメラとサブカメラ
- ニコンの現行フルサイズデジタル一眼レフ
- 『D850』という選択
- 高画素は必要か
- 『D850』のウィークポイント
- 実際の使用感
- +α (天体での使用)
- まとめ
メインカメラとサブカメラ
現在私が山岳写真や風景写真、野鳥写真、山野草写真などで使用している『D5』は、それまで使用していた『D810』からバトンタッチしてからは不動のメインカメラとして活躍してくれています。『D810』をメインとしていた時は『D610』がサブでしたが『D5』を手にするタイミングで2台とも手放し、しばらくは『D5』のみで撮影していました。
山岳や山野草などの写真は撮影できるタイミングというのが自分で決めることができない被写体です。そのため機材に何かのトラブルを抱えてしまうとその1年を棒に振ってしまう可能性もある実に刹那的な被写体です。
『D6』販売に伴い旧製品となってしまったとは言え、ニコンのフラッグシップモデル『D5』の堅牢性は現存するデジタルカメラの中において今でも最も信頼のおけるものだと思っていますし、そもそもこの『D5』を導入した理由がその堅牢性にあるのですが、その『D5』も工業製品である以上壊れるときは壊れるものです。
幸い今まで私の『D5』は何のトラブルもなく使用してきていますがやはり “何か” の時のため、そして少しでもレンズ交換の煩わしさを無くすという意味でもサブのカメラの必要性を感じました。
『D500』
『D500』は実に素晴らしいカメラでした。
『D300(S)』から当時タイの洪水の影響とも噂され幻となってしまった『D400』をすっ飛ばして『D5』とともにセンセーショナルに出てきた『D500』はクロップセンサーを有したレフ機として熟成された名機といっていい出来のカメラでした。
もし私が野鳥やスポーツを撮影する人間ならば手放すことはまずなかったでしょう。しかし朝夕の山岳風景や星空などをメインとして撮影している身からするとどうしてもセンサーサイズの問題がありました。
“可能ならばすべてラージフォーマットで撮影したい…”
という気持ちが強くあって『D500』の出番がどんどん減ってしまいました。今ではデジタル中判が欲しいと思っているくらいですから、暗いシーンでの撮影が極端に多い私にはAPS-C機に手が伸びることは無くなってしまいました。
ただ『D500』の操作性やパッケージング、シャッターフィールなどは今でも素晴らしいと思っていて、ニコンのこの機種への並々ならぬ本気度を垣間見たような気がしました。
“動きモノ” に拘らずとも、光量が豊富な場面など一般的なシーンでは非常にハイレベルな画を残してくれるカメラだと思っています。
『Z6』
『Z6』も素晴らしいカメラでした。
以前の記事でも取り上げましたが、まだまだ発展途上中のニコンのフルサイズミラーレスとして不満点は多々ありましたが、その後のファームアップや後継機種『Z6Ⅱ(Z7Ⅱ)』において完成度はかなり上がったと思います。
初号機の『Z6』ではなく後継の『Z6Ⅱ』を手にしていたならそのままサブとして(将来的にはメインとして)使い続けていたかもしれません。とくにZマウントによる高画質化には目を見張るものがあり、画質だけを考えるのならば今後はミラーレス機以外は選択肢はないとさえ思っています。
しかし実際にフィールドで使ってみるとミラーレス機の弱点、いやレフ機の存在意義というものに私自身が気づきました。画質よりも “写真を撮るという行為そのもの” を重視したほうが私には扱いやすいカメラであることが分かって、再びサブとしてのレフ機を探し始めました。
ニコンの現行フルサイズデジタル一眼レフ
多少悩みましたが『D5』のサブ、そして時には『D850』でしか撮れない画を期待して導入に踏み切りました。ただ実のところ、ニコンはすでに開発のリソースの大部分をレフ機よりもミラーレス機にシフトしていたのでレフ機の選択肢はそう多くはありませんでしたので機種の選択自体はごくあっさりと決まりました。
現行のニコンのフルサイズ一眼レフは『D6』と『D850』、『D780』、そして『Df』(現在は旧製品)しかありませんでした。(2021年10月時点)
『D6』
『D6』は金額的にも重さ的にもすぐに除外しました。
『D4(s)』から『D5』への進化は非常に大きなアップデートに感じ、私自身初めてニコンのフラッグシップを使ってみたいと清水の舞台から飛び降りる思いで『D5』を導入しました。しかし新たに登場した後継機種『D6』にはそれほど大きな進化は感じられませんでした。
もちろん『D5』よりもAF性能が向上したようですし、細かな部分でブラッシュアップされたようですが、少なくとも私の撮影対象を考えると新たに導入するにあたり費用対効果は少ないと思いました。
それよりも『D5』の程度の良い中古を考えました。
しかしこの重い機体を2台も山に担ぎ上げるのはかなり辛い、というか無理と判断しました。
『Df』
『Df』はニコンらしいユニークなカメラですがサブというより『+α』的存在に感じ却下しました。
オールドレンズを着けて古き良き日本の原風景をのんびりと歩きながらスナップする、そんな使い方がしっくりくるような非常に趣味性の高い機種。
D4系と同じ約1,600万画素の低画素センサー(画素ピッチは約7.3μm)には魅力を感じましたが今回の目的にはそぐわないと感じて外しました。
※現在Dfはすでに旧製品扱いとなっています。
『D780』
『D780』と『D850』は悩みましたが以下の理由で『D850』で行こうと決まりました。
ただ『D780』は現在ニコンのフルサイズ一眼レフでは最新の機種なので、個人的にはメインでも良いと思える素晴らしいカメラではないかと思います。
以下で『D850』と比較してみます。
『D850』という選択
『D850』のスペック
今更ですがここで簡単に『D850』のスペックを『D780』と比較しながら再確認していきます。
D850 | D780 | |
発売 | 2017年9月 | 2020年1月 |
有効画素数 | 4,575万画素 | 2,450万画素 |
高速連続撮影速度 | 約7コマ/秒 | 約7コマ/秒 |
常用感度 | ISO64~25600 | ISO100~51200 |
モニター | チルト式3.2型TFT液晶モニター(236万ドット・タッチパネル) | チルト式3.2型TFT液晶モニター(236万ドット・タッチパネル) |
ファインダー倍率 | 約0.75倍(アイポイント17㎜) | 約0.7倍(アイポイント21㎜) |
オートフォーカス(検出範囲) | マルチCAM20K(-4~+20EV) | マルチCAM3500Ⅱ(-7~+19EV/ライブビューローライトAF時) |
本体のみの質量 | 約915g | 約755g |
ND価格 | 380,610円(税込) | 275,000円(税込) |
D850の詳しい概要及びスペックはニコン公式HPをご覧ください。
Nikon D850
最高レベルの光学ファインダー
『D850』を語るうえで世間的にもっとも大きなセールスポイントは当時の “ニコン史上最高画質” であることとよく言われています。しかし私はこの『D850』のもっとも優れた、他の追従を許さないほどの性能は画質面ではなく最高レベルの光学ファインダーにあると思っています。
視野率100%は当然ながら、何と言ってもフルサイズで 『ファインダー倍率0.75倍』 という数値はズバ抜けたスペックです。ファインダー性能だけなら完全に『D5』の上を行っています。(D5及びD6は0.72倍)
そしてカタログ値ではアイポイントが他メーカーより低いと思われがちですが、ニコンは接眼部の保護ガラス面からの高さをカタログ値としているようで眼鏡使用の方でもこの素晴らしいファインダーを覗きやすくなっているはずです。
さらにニコン上級機特有の丸型ファインダー。ここにゴム製のアイカップ『DK-19』を装着すればファインダーには外からの余計な光を完全にカットされた『被写体と覗いている撮影者だけの世界』が広がっています。このファインダーで捉えた世界は完全に脳裏に焼き付けることができます。まさに肉眼で見るより美しい世界がレンズを通して広がっているのです。
このファインダーが欲しくて『D850』を導入したと言っても過言ではありません。
『D5』と同じ操作性
DX機である『D500』をサブとしていた時もそうでしたが、メイン機と全く同じ操作性というのは非常に重要だと思います。『D780』ではなく『D850』にしたもう一つの理由がこの操作性でした。
『D5』や『D500』でこの軍艦部やボタン配置に慣れきっていますので、いまさら『モードダイヤル』には戻れないという部分がありました。『Z6』は良いカメラでしたが、使ってみてこの部分の違いの差を改めて感じました。
ただ逆に言うと『Z7(Ⅱ)』や『Z6(Ⅱ)』と『D780』は同じ操作性なのでサブ・メインとしては親和性は抜群だと思います。
軽量であること
フルサイズのデジタル一眼レフを掴まえて “軽量” とは一体何を言っているのかわからないと言う方もおられるかもしれませんが、『D850』は決して重くはないと思います。
たしかにニコンのZマウントのカメラに比べれば嵩張るし重いかもしれません。しかし写真はカメラだけでは撮ることができません。
そう、交換レンズが必要になります。
Zマウントのレンズの多くは “Zレンズにハズレ無し” とまで言われた描写性能に拘った軽量さよりも画質重視志向の製品ラインナップです。とくに f/2.8通しのいわゆる大三元ズームや f/1.2の単焦点レンズはその圧倒的な描写性能を担保するため非常に重くて大きい機体となっています。事実、14-24㎜の広角ズームは別としてそれほどFマウントのレンズ群とは重量は変わりません。
つまりせっかく軽量ボディのZ7やZ6でも描写性能を求めるとトータル的に重くなってしまうのです。さらにカメラが軽量で小型な分、フロントヘビーとなってカタログスペック以上に重く感じるはずです。私は別にそれはそれで描写性能が上がるのなら構わないと思って好意的に受け止めていますが、それなら『D850』は決して重くは無いだろうと思います。ましてや『D5』のサブ、このバッテリーですら重量級のカメラに比べたら『D850』は極めて軽いのです。
その他の特徴
その他『D850』は上位の機種だけあって様々な面で上質な存在感を感じられます。スペック表をご覧になればお分かりかと思いますが、どちらかというと『D850』は低感度に重点を置き、『D780』は高感度・暗所での撮影に向いているという特徴があります。
常用の最低感度を『ISO64』としているのはその大きな特徴ですし、AFモジュール自体も『D5』と同じモジュールを使用しています。そして夜の撮影時に地味に役立つボタンイルミネーションは上級機ならではの機能と言えます。
高画素は必要か
私はそもそも『高画素 ≠ 高画質』であると考えています。
でなければ低画素、たったの2,000万画素しかない『D5』は使用しません。
話題性のあるカメラが売れる
カメラメーカーは慈善団体ではありません。
自社の製品を売って『ナンボの世界』。
新製品には常に新しい技術を投入して、センセーショナルな話題を引っ提げて市場に送り込まなければなりません。しかもその宣伝文句も分かりやすい “数字” でなければ消費者に訴えることは出来ません。そのわかりやすい “数字” を使いやすいのが “画素数” なのです。
2,000万画素の低画素カメラより『史上最高画素数なんと8,000万画素!』というカメラのほうがエポックメイキングだし、インパクトがあってすごいカメラに思えてしまいます。
私は例えば『14bitではなく16bitRAWが記録可能!』というほうがよほどセンセーショナルなカメラだと思いますが(対応できるデバイス云々は別として)、市場ではインパクトは薄いし一般的な消費者にはウケないでしょう。
つまり新技術を投入しやすくて、市場ウケしやすいのが高画素カメラだと私は思っています。もちろん高画素カメラを否定するつもりはありませんし、高画素カメラでなければ出来ないこともあります。しかしよほど特殊な撮影でないかぎり私はフルサイズであれば2,400万画素もあればもう十分だと思っています。(プリントをしてみてこれくらいあれば十分妥当だ、と言う意味です)
写真本来の“鑑賞”とは
よく大伸ばしプリントするなら高画素機が良いと言われます。
確かに一理あるとは思いますが、私はそれほど気にするほどでもないと考えています。
それはなぜか。
本来プリントは大きくプリントすればするほど、それに比例して鑑賞距離も離れるからです。もちろんその中でも、大きくプリントした写真に目を近づけて「こんな細かいところまで解像している!」というマニアックな楽しみもあるかと思います。しかしそれが『だから良い写真』とはならないわけです。
写真作品を鑑賞するのは機械ではなく、あくまで人間です。
目のコンディションは良くて『1.5』程度でしょう。最近はスマホ多用のせいで視力『1.0』はかなり良いほうかもしれません。その人間が写真作品を適切な距離を保って鑑賞したときに、2,000万画素と5,000万画素の違いが分かるはずもありません。逆に言えば全紙サイズ、巨大ポスターサイズにプリントして目をプリントに近づければ違いは認識可能かもしれません。
一般的には写真サイズの対角線くらい離れることで、写真全体の構図をしっかりと見回せて鑑賞できる距離と言われています。
トリミング耐性の向上と解像を要するもの
では高画素機を活かせる場面はどういった場面でしょうか。
それはトリミング耐性が必要な場面と、学術的分野や防犯的分野の解像度が要求されるものを撮影する場面がそうではないでしょうか。
私が撮影するものでは唯一『天体写真』がそうだと思っています。
その他ではトリミング前提とも言える小鳥の撮影であったり、特殊な医療現場であるとか防犯で使われるものなんかはより高画素のほうが良い分野と言えるのではないでしょうか。
以前『D500』の記事でも書きましたが、トリミングは確かに高画素機のほうがアドバンテージがありますがトリミングしてしまったらフルサイズセンサーを持つ意義がなくなってしまうとも言えるので一長一短かなとも思います(もはや思想の問題)。
もちろん私は高画素機は高画素機で低画素機には出来ない撮影方法もあると思っていますので、高画素機否定派と言うわけではありません。ならば『D850』は導入しませんから。
どうしても高画素が必要であれば、それに応じてセンサーサイズも大きくしたいと私は思っています。つまりデジタル中判となるわけですが、これであれば画素ピッチを担保した上で画素も上がるので純粋な(真の)画質向上と言えると思います。
この “高画素は必要か” というテーマ長くなるので別に記事にするつもりでいます。
『D850』のウィークポイント
この機種を導入する上で悩まされるであろう欠点は初めから理解したうえでした。
それは2点、『膨大なデータ量』と『ブレ』の問題でした。
膨大なデータ量
これに関してはやはりと言うべきか、当然と言えば当然ですがとんでもなく大きな画像データになります。もちろん画像によりけりですが平均して風景写真ならRAW(非圧縮)だと50MB/枚を軽く超えてきます。
この機種にはMサイズのRAW記録(M-RAW)という機能を使ってデータを圧縮する方法もありますが、高画素・高解像度を活かしたカメラなのに画素数が変わらないとは言えデータを圧縮するのはもったいないと個人的には思っていて、この機能は使っていません。
高画素機なので高速連続撮影をする方は少ないと思いますのでバッファ容量はそれほど気にはならないと思いますが、撮影後の現像処理にはハイスペックなマシンを使わないとかなりのストレスを感じますし、実際に作業効率も落ちました。D850を導入する場合、必然的にPCも新たに新調する予算も用意しておく必要があると思います。4,500万画素でそう感じるのですから、他社の6,000万画素クラスの高画素機は言わずもがな、という印象です。
ただデータの『量』だけを考えるのならそれほど私は気にしていません。
私はそもそも日に何千枚と撮影する人間ではないですし、数日間山に入って撮影したとしても風景だけなら1,000枚もいきません。そこに野鳥(ライチョウや小鳥)撮影も入ると別ですが、これくらいならばそれほどの負担は感じませんし、ストレージに関しては年々そのデータ単価は下がる一方なので私程度のデータ量ならHDDやSSDを追加購入して対応可能なレベルだと思っています。
ブレの問題
これも高画素機を使用することによる弊害と言われていますが、実際に撮影してみて私には問題ないレベルと感じました。『D5』の前は『D810』を使っていたわけですし、その時も感じていましたがニコンの高画素機は駆動系起因による機構ブレ(シャッター及びミラー)は非常によく抑えられているほうだと思います。実際、『D5』と『D800系』のシャッター音は同じメーカーとは思えないほどまるで違います。
もちろん微ブレ(機構ブレ)はあることはあります。
三脚に据えてレリーズを使用してシャッターを切って撮影した画像と、ミラーアップと電子先幕シャッターを併用して撮影した画像には違いが見られます。しかしこれもわずかな差であって、モニターで等倍拡大してやっと確認できるようなレベル。もちろんそのわずかな差こそ重要だ、という考えも分かりますが写真の本質はそこには無いと私は思っています。
やはりブレに関して問題になるのは機構ブレよりもあくまで『手ブレ』であって、一概にブレの問題をカメラのせいにはできないと思います。とにかく画面の隅々まで解像力が欲しい、圧倒的なシャープな画像を取得したい、というのであれば私はニコンであれば『D850』よりもZマウントの高画質なレンズ群を活かせる『Z7(Ⅱ)』のほうが良いと思います。
実際の使用感
実はこの『D850』、導入してからそれほど多く使用していません。
如何せん昨今は新型コロナウィルス感染症の影響による緊急事態宣言などで撮影に出かけることが減ってしまって、なかなかこのカメラをじっくりと使い倒すことが出来ていません。
ただ4月の雷鳥沢や5月の燕岳においては実戦投入しております。
その時感じた印象です。
期待しすぎた高感度性能
この『D850』は高画素機として素晴らしい解像感溢れる画を吐き出してくれましたが、それと同時に『裏面照射型センサー』を搭載していることで高感度性能も担保されたカメラとしても期待していました。しかしやはりこのカメラは低感度で撮影してこそ、その真価を発揮する機種だと改めて感じました。
ISO6400ではやはり結構ノイジーだと感じましたし、低感度ではダイナミックレンジはかなり広いと感じましたが、そもそも高感度ではカラーノイズも結構目立つ印象です。この機種であれば極力現場では低感度で撮影しておき、必要に応じて現像時にシャドウを持ち上げるといった運用のほうが良いと感じました。
この点は『D5』と真逆で、『D5』は低感度におけるダイナミックレンジは『D850』に到底及びませんが、その分現場でのISO感度の許容、自由度が高いという個人的印象です。
レフ機2台の良さ
メインとサブ、2台のカメラが両方ともレフ機と言うのやはり扱いやすいです。
どちらか一方がミラーレスとなるとやはり咄嗟のときにワンテンポ遅れますし、なにより操作性全般においてレスポンスが同じように返ってくるのは心地よいです。
さらにファインダーの見え味も同じですし、出てくる画の傾向も似たようなもので違和感が全然ありません。このあたりは『Z6』の吐き出す画がレフ機のそれとかなり違った印象で個人的には戸惑いました。
もちろんミラーレスに慣れている方であれば、例えば『Z7』と『Z6』の2台持ちなら操作系統も全く同じですし、出てくる画も同じ傾向なのでストレスなく使っていけると思います。
カスタマイズの自由度が低い
これは『D850』に限ったことではなくニコンのデジタル一眼レフ全般がそうなのですが、カスタムボタン(ファンクションボタン)の選択に自由度があまりありません。
もちろんニコンの “カメラ屋” として持っている「ユーザーにこう使ってほしい!」という拘りは理解できるのですが、やはりカスタムボタンに割り当てられる項目の種類が乏しいのはいつも「なんで?」と思ってしまいます。
たとえば、右手で押せるボタンのどれかに『ゴミ箱』機能を割り当てられるように出来れば、左手を持ち変えずに不要な画像を瞬時に削除出来て便利だと思うのですが。『画像再生』は割り当てられるのに『ゴミ箱』が割り当てられないので、削除するには結局レンズを持っている左手を持ち変えないといけません。ひょっとしたら右手で押しやすい位置に『ゴミ箱』を割り当ててしまうと間違って削除してしまう恐れがあるから、あえて出来ないようにしているのかもしれませんが。
他メーカーのカスタムボタン設定の自由度がどのくらいのものなのかは私にはよくわからないのですが、みなどこもこんな感じなのでしょうか?
+α (天体での使用)
この『D850』を導入するにあたり実は私にとってもう一つ大きな理由がありました。それはいずれこの『D850』を天体改造して使ってみたいということです。と言うよりは実はこの天体目的が主たる目的と言っても過言ではありません。
高画素こそ星野写真向き
星の撮影で使うカメラと言うと高感度性能に分がある低画素機のほうが向いていると思われがちですが、条件によっては高画素のほうが有利な場面もあると私は思っています。
例えば星景写真などで用いられるいわゆる “一発撮り” のようにワンショット15~30秒くらいの一枚もので勝負するような場合ならば高感度性能に長けた低画素機がモノを言う場合が多いです。しかし赤道儀を使用してカメラレンズで撮影する天体写真、いわゆる 星野写真なんかは高画素機のほうが良い場合もあります。
焦点距離が1,000mmや2,000mmなどの望遠鏡で系外銀河を撮影するような場面では高画素は活きてこないかもしれませんが、広角~中望遠域のカメラレンズでの撮影の場合は写野に文字通り天文学的な数の星(無限遠の点光源)が入ってくるため、どうしてもレンズのシャープさにカメラの画素数が負ける “アンダーサンプリング” が生じます。
実際にはその悪影響は “偽色” として画像に現れてきます。
星野写真くらい広い写野だと低画素機ではどうしても星が1ピクセルの面積内に収束してしまいます。つまりピクセルピッチが大きすぎるため、高画素機を想定した現代の驚くほどシャープで高性能なレンズを活かしきれていないことになります。
星の表現・処理方法に寄与
昨今の高画素デジタルカメラ用に設計されたカメラレンズは凄まじい解像度を持っているので、そのきめ細かい光を受ける側であるカメラもピクセルピッチを細かく刻む必要があると思います。現在のAPS-C機の多くは2,400万画素、このピクセルピッチをフルサイズ機に置き換えたら5,000万画素。マイクロ4/3機の多くは2,000万画素、フルサイズ機に置き換えたら実に8,000万画素相当になります。今現在の高画素のフルサイズカメラはもっと高画素も可能なはずです。
さらに突き詰めるとベイヤーセンサー(カラー)ではないモノクロセンサーならこの問題は解決することになり、天体写真のベテランやハイアマチュアの方々がモノクロ冷却カメラを好んで使って撮影されているのはこのあたりの理由も一つでしょうか。
仮に8,000万画素のフルサイズ機で星野写真を撮影したら低画素機のように星雲が奥に引っ込んでしまうこともなく、星はより細かく表現でき相対的に星雲が前面に出てくるのではないかと思います。画像処理でよくある星を小さく削る処理(PSの明るさの最小値フィルター)など画像品位を損ねることなく星を細かくバックに沈みこませることができると思います。
もちろん高画素機はピクセルピッチが狭くなってしまい感度の面で不利ですが、星野写真の場合はコンポジット枚数を増やすことでトータルの露出時間である程度は補うことが出来ます。
ただ天体改造してしまうとカラーバランスが一般のカメラと変わってしまいます。WBをニュートラルグレーなどを使ってあらかじめプリセットしておけばある程度は使えますが、やはり一部の色域では赤カブリが発生してしまいます。それに改造してしまうとメーカーの保証外、修理対象外となってしまうので今はなかなか踏み出せないところです。
まとめ
今回は私なりに『D850』を取り上げてみました。
このカメラはニコンの100周年イヤーに発表された記念碑的な名機だと思います。以前メインで使っていた『D810』がすでに完成度の高いカメラでしたが、さらに素晴らしいブラッシュアップを達成しています。
圧倒的な信頼性・堅牢性・安定性では『D5』に一歩譲りますが、そう言った場面ではない状況ならば積極的に使っていきたいですし、とくに低感度側に比重を置いているカメラなのでそのあたりの特徴も活かせたらと思っています。
とても長い記事になってしまいましたが、最後までご覧くださりありがとうございました。