夏の天の川の天頂を賑わすはくちょう座には『散光星雲の巣窟』という異名がつくほど多くの赤い星雲がひしめき合っています。その中でも『北アメリカ星雲』や『ペリカン星雲』とともに人気があるのがはくちょう座γ星『サドル付近』の散光星雲群。
サドル(Sadr)は十字の形になっているはくちょう座の真ん中の星で、天体導入もたいへんし易い対象です。このサドルは約1800光年の距離にあると言われ、黄色超巨星とされています。
この辺り一帯の赤い領域は『IC1318』(明確な境界は無し)とカタログされていますが、特にサドルの西側の高コントラストな赤い星雲は形が蝶々に似ていることから『バタフライ星雲』とも言われています。さらにご覧のように暗黒星雲や散開星団、反射星雲、そして色とりどりの星々などもとても魅力的な領域でもあります。
この写野では散開星団は『NGC6910』や『M29』などが見てとれますし、赤い領域にあって青白い反射星雲『NGC6914』もアクセントになっています。赤い星雲は残念ながら眼視では見えませんが、この散開星団は眼視でも楽しむことが出来ます。全体的にもちろん “赤” が支配的な領域ですが、撮影してみると意外と “青” の成分も強く感じる領域です。
カメラ Nikon D7100(IR-custom)
鏡筒 AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ(f/3.2)
フルサイズ換算写野イメージ 約450mm
架台 CELESTRON Advanced VX
ガイド鏡 SVBONY SV165(30mm F4)
ガイドカメラ QHYCCD QHY5L-ⅡM
ガイディングソフト PHD2
ダーク減算 RStacker(7枚)
フラット補正 RStacker(64枚)
現像 ADOBE Camera Raw
コンポジット DSS(180秒×23枚 計1時間09分 ISO1000)
画像処理 ADOBE Photoshop CC
その他
・QHYCCD Polemaster
この作品ではフルサイズ換算約450mm相当で撮影していますが、中望遠のカメラレンズなどで画角をもっと広く撮影しても楽しい領域で、さらに多くの散光星雲が写ってきます。
下は換算約200mm相当で撮影しています。
画角を広く撮ることで形状が印象的な『クレセント星雲(三日月星雲・NGC6888)』や、この画角には入ってはいませんがさらに南側には『網状星雲(ベール星雲)』も入ってきます。カメラレンズやポタ赤など手軽で軽量なセットでも楽しむことが出来、さらに天頂付近で撮影出来ることで光害カブリの処理が楽であること、など天体写真の初心者にはとてもおすすめできる領域です。
・赤経 20h22m43s
・赤緯 +40°18′33″
・正中日 6/4(AM03) 7/29(AM00) 9/12(PM09)
・正中高度 84°7’
・はくちょう座は日本においては北東から昇り、天頂付近を通って北西に沈む航路を辿ります。よって低空の光害が強めの撮影地であっても天頂付近を狙って撮影することをおすすめします。
・PC等を使わずデジカメのみで撮影する場合、天頂付近の撮影はカメラが真下を向くことになるので、背面モニターがバリアングルタイプやチルトタイプの機種ですと画像確認しやすいと思います。