里山スナップで巡る春の御岳山(御岳山~ロックガーデン~日の出山周回)

PHOTO TOUR

2024年4月 御嶽駅前~御岳山~ロックガーデン~日の出山~高峰山~御嶽駅前

すっかり春めいた奥多摩の山々をスナップで切り取りに、御岳山へ。
霊山として山岳信仰残る巨木の参道、そして東京都下とは思えない自然の宝庫『ロックガーデン』を巡りながら春を体いっぱいで感じる里山ハイク。

(目次)

  • 里山ハイク総仕上げ
  • 御岳山とは
  • 巨木の参道(御岳駅前~御岳山頂)
  • 自然の宝庫(ロックガーデンと2つの滝)
  • 日の出山~高峰山~御嶽駅前
  • 振り返って



里山ハイク総仕上げ

この鈍りきってしまった体を徐々に山仕様に戻すために2024年の2月あたりから標高が高くない里山を集中的に歩いてきました。とくに2週連続となる奥高尾ハイクは春の息吹を感じられるという意味でも意義深い山歩きとなりましたが、そろそろ重い荷を背負って本格的に歩き出しておかないと今後に控えている山行に支障をきたしてしまうと思い、いろいろと山を選択していました。

森スナップで愛でる早春の奥高尾(景信山、小仏城山ほか)

この歳ともなると里山ハイクの魅力にどっぷりと肩まで浸かれるようになっていますが、その分どうしても歩く距離自体も短くなりがちで、いわゆる累積獲得標高などもさほど稼げないことも多く、残念ながら高山へと足を向けられるほどのトレーニングにはなっていませんでした。

そこで今回は春の里山スナップを楽しみながらもコース自体もしっかりとしたトレーニングになるくらいのボリュームにしたく奥多摩の御岳山を歩くことに決め、駅から日の出山までグルっと回って体力をつけることに重きを置いた計画を立てました。

御岳山とは

御岳山は今更ながら説明など不要なくらいに1年を通して実に多くの登山者、自然愛好家の皆様に歩かれている山で、高尾山エリアとともにまさに “都会のオアシス” と言える代表的な山です。私がまずもって驚くことは、あの大都会の中心地から電車を使って気軽に本格的な自然あふれる山歩きへ出かけることが出来ることで、緑あふれる日本の自然の偉大さを感じることが可能なところです。このようなことは世界的には稀ではないだろうかと思うのです。

登山者も週末に限らず高尾山と並んで年間を通じて非常に多く、ケーブルカーも運用されていることから老若男女あらゆる方々から愛され、歩かれています。

御嶽神社の参道入り口

御岳山の概要

御岳山はそんなもはや説明不要の人気の里山ですが、改めて御岳山の簡単なプロフィールを簡単にまとめてみました。

● 東京都青梅市にある標高929mの奥多摩山系の山であり、頂上には武蔵御嶽神社が建立されており山岳信仰の対象となっている。(参道には御師が宿坊を営む御師集落となっている)
● ケーブルカー(御岳登山鉄道)があり滝本駅~御岳山駅間の約1km、標高差約400m強の間を約6分で結んでいる。
● 山の歴史も長く古くは日本書紀にも御岳山は登場し、かの日本武尊が道に迷った際に真っ白なニホンオオカミに導かれ事なきを得たという伝説が残っている。
● 参道には樹齢1,000年を越えると言われる神代ケヤキが立つ。
● ロックガーデンや「七代の滝」「綾広の滝」の2つの滝を擁する。

特筆すべきはやはりこの山の山岳信仰の歴史で、頂上付近の宿坊群はなかなか他のエリアの山では見ることが出来ない規模であり、この山の大きな特徴にもなっています。

なおケーブルカーの運行や運賃などの詳しい情報は御岳登山鉄道の公式サイトをご参照ください。
ケーブルカー|KEIO 御岳登山鉄道

御岳山登山のコース選択

ケーブルカーがあるので普段あまり山を歩く機会が少ない方々でも比較的に気軽に歩ける里山ではありますが、シンプルに山頂を往復するだけではない様々なコースを選択できます。以下は頻繁に歩かれる代表的な4コースの簡単な紹介です。

  1. 大岳山往復コース
    御岳山からさらに足を延ばして、綾広の滝や鍋割山を経由して奥多摩三山である大岳山まで往復するコースです。
  2. ロックガーデン散策コース
    御岳山から渓谷へと下りて行き、滝見物を含めたゴツゴツとした岩石を巡るコースです。沢沿いには様々な山野草をはじめ、野鳥のさえずりが沢のせせらぎの音とともに楽しめるコースとなっています。
  3. 御嶽駅~奥多摩駅縦走コース
    JR青梅線上の2つの駅の間の山を歩いて繋ぐ縦走コース。御岳山や大岳山、鋸山などを結ぶ重厚なコース。
  4. 日の出山周回コース
    JR御嶽駅を起点および終点として御岳山と日の出山、高峰山を周回するコース。
もちろんこの他にもコース設定は可能で、健脚な方でも1日かけてじっくりと歩ける山でもありますし、自分の体力と相談しながらコースを選択することが出来ます。

今回はこの候補の中の②と④を合わせたコースを設定し、里山とは言え歩きごたえのある計画を立てました。さらに2つの滝をめぐることになるのでボッカトレの意味合いも含めて三脚および撮影機器を多めに担いで歩きました。

最近はより軽量化を進めているところで、山行を伴うような撮影時の三脚はそれまでの愛用のジッツオから評判の良い軽量なレオフォトのカーボン三脚にしています。

巨木の参道 (御嶽駅前~御岳山頂)

ここのところ里山や低山のハイクでは公共交通機関を利用してのハイキングということを心がけて歩いていましたが、今回は残念ながら夕刻に用事があったため車を使って登山口へアプローチしました。
しかし可能な限り駅から歩くコースを想定したかったため、今回はJR青梅線御嶽駅にほど近い有料駐車場を利用しました。ケーブルカー滝本駅近くにも有料駐車場は点在していますが、コース的にも下山はまたこのスタート地点(御嶽駅付近)に戻ってくるので、今回のコースの場合はこの駐車場がちょうど良いことになりますし、24時間出入りが可能なので今回のように早めの時間にスタートしたいときは都合のよい駐車場と思います。

御嶽駅にほど近い駐車場を利用

駐車場情報
・御岳渓谷にほど近い時間貸し駐車場を利用
・料金は前払い制で24時間定額制
・平日500円、土日祝1000円、ともに24時間(2024年4月時点)
・24時間出入り自由なので早出山行などでも利用できる
・チケット発券機に車番を入力後に指定利用料金を精算し、発行されたチケットをダッシュボードに提示しておくシステム

圧巻の巨木群

駐車場からしばらくはケーブルカー滝本駅にある参道入り口まで長い舗装路歩き。休日には多くのハイカーや観光客で賑わう御岳山ですが、まだ朝早いこともあって実に静かでした。地味に長い登り基調の道路を歩くと見えてくるのはその滝本駅。まだケーブルカーの営業時間前ということで閑散としていましたが、参道入り口の山門をくぐるとまるで神域にも入ったかのように清らかな心持になってきます。

Snap Shot 1

細い参道で特に目を引くのは樹齢300~400年と言われる幹の太く存在感ある多くの杉の古木(一部ヒノキ含む)。その立ち振る舞いは実に荘厳で、歴史を刻まれたかのような表面は人間で言うなら皺のようなもの。彼らはこの地球上に存在する生き物の中でも最も古い部類の存在なわけで、ここを歩いた多くの人間を見てきたことでしょう。自然の力強さを感じました。

Snap Shot 2

Snap Shot 3

ケーブルカー利用ではなくゆっくり登りながらこの巨木群と対話しながら歩くとまた違った山歩きとなると思いますので、個人的には自らの足で歩いていただきたい区間です。私は前回御岳山に登ったのはもう10年近く前ですが、その時もやはりこの区間は歩きましたし、この参道は御岳山登山では大きな見どころとなると感じています。

Snap Shot 4

舗装はされてはいますがところどころ斜度はきつめなので、私は息を整えながら、ゆっくりとこの見事な巨木たちを撮影しながら登っていきました。

宿坊 (御師集落)

参道を登りきるとちらほらと建物が見え始め、いよいよ御岳山の山頂付近となります。
ビジターセンターを過ぎるとこの山頂部はひとつの集落であることに気づきます。ここは歴史ある宿坊の集落。建屋も100年を優に超える歴史があり、茅葺屋根の実に趣のある風情で、有形文化財の指定を有している建物も多いと言います。

Snap Shot 5

私は残念ながら宿坊には宿泊した経験がありませんが、きっと日常とは違った特別な時間を過ごせると思います。機会があったら東京を見下ろす天空のお宿で、歴史を感じながらの時間を過ごしてみたいと思っています。

Snap Shot 6

武蔵御嶽山神社(御岳山山頂)

山頂に鎮座する武蔵御嶽神社崇神天皇(すじんてんのう)の時代に創建されたという歴史があり、関東地域では筑波山三峰山大山などとともに霊山として崇められてきました。山頂そのものが神社というのも山岳信仰が根付いている我が国らしい文化でもあります。

山からの眺望



自然の宝庫 (ロックガーデンと2つの滝)

山頂を中心とする御師集落から離れ、足を進めると打って変わって人工物のない純度の高い自然の宝庫となります。足を進めれば進めるほど自然の奥深くへと迷い込んでゆくイメージで、やがて耳にするのは風の音や野鳥のさえずり、草木がこすれる音、そして自らの足が踏む土のリズムだけとなり、突如として現れるその深い自然に違和感すら覚えるくらいに唐突に森のシャワーを浴びるような感覚を味わいます。

Snap Shot 7

七代の滝

私は先に『七代の滝』を巡るコースをとりました。
本コースは全体的に危険個所など無いコースですが、唯一危険を感じたのが天狗岩(この大岩がロックガーデンの起点となっている)の脇からこの滝へと下りてゆく登山道で、特に雨天時にはスリップには十分配慮した歩き方が必要になると感じました。
※入り組んだ木の根っこや、斜度のある鉄ハシゴなど山歩きに慣れた方でないとかなり危険なのではないかと感じました。

Snap Shot 8

滝つぼに落ちる滝自体は小振りな滝ですが実際は7段の滝であり、合計落差は50mという構造になっています。滝のそばもウェットで滑りやすい岩場なのでかなり慎重に行動および撮影しました。雨天時は増水も考えられるので行かない方が良いかもしれません。

『七代の滝』

ロックガーデン

天狗岩からは一転、御岳岩石園、俗に言う『ロックガーデン』へ。
そこは岩と苔と沢が織りなす美しい自然美。ここって本当に東京都なのだろうか?と思ってしまうくらいに実に美しい自然庭園の世界。

Snap Shot 9

沢沿いにはネコノメソウやハナネコノメ、各種スミレなどが多く見られ、奥多摩の春の息吹を感じられました。

ハナネコノメ

BGMは水流とミソサザイのけたたましい歌声。
いつも思うのがミソサザイは鳴いているのではなく、本当に歌っているようだな、と。小さな体で首と尾っぽ天に向けて精一杯の力を振り絞って歌っている。その姿を目にすると本当に今にも命を燃え尽きそうとしている、そんな風に見えます。

『岩石庭園』

コース上にはいくつか休憩ポイントもあり、ハイカーたちが気ままに休んだり、補給したり、この自然の中に身を委ねることが出来るスペースが設けられています。このコースは急ぐような歩き方ではなくて、ゆっくりと自然を観察したり、自然の音を聞いたり、緑の匂いを嗅いだり、とにかく五感を動員させて自然を感じる歩き方が似合うような気がします。

『ロックガーデン』

綾広の滝

ロックガーデンとは天狗岩からもうひとつの滝であるこの『綾広の滝』までの区間を言うようです。ロックガーデンの上流に位置するこの滝は落差10mで、古くから武蔵御嶽神社のみそぎの行事に使われていて、別名“修行みそぎの滝”とも言われているそうです。

『綾広の滝』

この後、日の出山方面に縦走するためにもう一度御岳神社へと春の花々を探しながら戻りました。

カタクリ

日の出山~高峰山~御嶽駅前

実はこの時点で予定よりもかなり時間が押していて、よっぽどこのまま登ってきた参道を下りて下山しようかと思いましたが、やはりどうしてもしっかりと歩きたかったので予定通りに日の出山方面へ足を進めました。しかし前半のように撮影にはあまり時間は割かないで、サクサクと歩だけを進めるように歩きました。

Snap Shot 10

日の出山方面の登山道は実は今回が初めてで、どんな感じだろう?と思っていましたが、道幅もかなり広く整備されておりとても歩きやすい登山道でした。

日の出山への登り返しにはここまでの疲労が出てきたようで少し辛いものがありましたが、何とか賑やかな『日の出山』に到達。今回の山行中でもっとも展望の良いスポットで、気持ちの良い山頂と感じました。ここで少しだけ補給休憩し、すぐに先を進むことにしました。

日の出山(902m)の山頂

日の出山頂の後は少し下って『竜のヒゲ』というポイントまで一度登り返して、まもなく『高峰山』、そして急坂を下ってスタート地点である駐車場に無事に戻ってきました。

下山途中の防火帯エリアから見下ろす奥多摩、御岳渓谷。

振り返って

今回はスナップ撮影しながらの1,000m未満の低山ハイクとなりましたが、山行ログを改めて見返してみると歩行距離自体は15km、累積の登りは1,500m弱と低山としてはなかなか歩きごたえのある山行となりました。下山後はもう少し歩けるくらいの余裕を感じましたし、ここ2ヶ月で歩いた里山ハイクが良い糧になっているなと実感しました。

御岳山ログ(YAMAPより転載)

コース上には危険と感じた箇所は先述の通り天狗岩からの『七代の滝』への下降部だけでしたし、そこにさえ気を付ければ比較的安全に楽しめるコースではないかと思っています。特にロックガーデンの散策にはもっと贅沢に時間を使って自然観察しても良さそうですし、御岳神社手前の売店やお食事処に寄っても楽しめる山ではないでしょうか。もちろん宿坊に泊まってゆっくり山の時間を満喫するのもまた良いのではないでしょうか。

先にも述べましたが、高尾エリア含めて都心から気軽にアクセスできる立地にも関わらず、これだけ豊かな自然や植生、文化に触れることが出来るのは世界でも稀ではないでしょうか。「狭い日本、そんなに急いで…」などと言われますが、狭い中にあらゆる要素がギュッと詰まっていると言える我が日本には深い魅力が凝縮されていると改めて感じています。

 

今回の記事は以上になります。
最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。