『劔岳讃歌』初秋の北アルプス奥剱の秘境、池ノ平 (前編)

PHOTO TOUR

2022年9月 室堂~剱沢野営場~真砂沢~池ノ平
いよいよ山肌が金色に輝く秋へと突入する北アルプス連峰。紅葉が始まった峰々に会いに、奥剱の秘境『池ノ平』へテント泊山行。立山エリアの絶景、美しい星空、圧巻の岩壁や氷河、そして北アルプスの別天地を訪ねる4日間。

前編は池ノ平までの1日目から2日目まで。

(目次)

  • 北アルプスの秘境『奥剱』池ノ平
  • 今回の撮影山行計画
  • 初日は室堂から剱沢野営場へ
  • 剱沢を下る2日目
  • 『奥剱』秘境池ノ平へ



北アルプスの秘境『奥剱』池ノ

遅れ馳せながら9月下旬になってようやく2022年初の北アルプスを歩くことが出来ました。今回歩いたのは前々から是非とも訪れたいと思っていた北アルプスの秘境『池ノ平』

そう、この池ノ平は私がこよなく愛する別天地である『黒部五郎カール』『雲ノ平』とともに北アルプスの最奥にある秘境のひとつと言われ、手つかずの自然がたくさん残る、まさに日本が誇る美しい山岳エリア。

紅葉に燃える黒部五郎カール

北アルプス最奥の秘境、雲ノ平

『奥剱』と称されるその秘境へ至るルートは今まで見慣れた南側からの剱岳の山容だけではなく、剱岳を形成する険しい峰々や雪渓、氷河を間近に眺めながら歩く雄大なルートで、目的地である池ノ平には『平ノ池』という大きな池と高層湿原が広がるという実に美しいロケーション。そしてそこは剱岳の『八ツ峰』の眺望がまた素晴らしいところ。

訪れる登山者も極端に少なく、池ノ平山(2,561m)を越えて日本最高クラスの岩稜ルート(北方稜線)で剱岳を目指す人か、もしくは私のように秘境感溢れる雰囲気を好むマニアックな方くらいで、ここでは静かに北アルプスの山々と対峙することが出来ます。

同じく隣接する仙人池『裏剱』と言われる秘境のひとつですが、テント場が無いということで今回は池ノ平を目指しました。

今回の撮影山行計画

山行計画

今回の山行、元々の発案時は室堂から剱沢雪渓ルートで池ノ平を目指し、その後は仙人池を経て下ノ廊下で黒部ダムへ下りる構想でした。ただ実際にこのロングコースを重荷を背負って果たして私自身が歩けるのか…、それが大きな問題でした。
それに数日前の天気予報では残念ながら山行予定日は好天を期待できないこともありましたし、何より初めて歩くルートということで不安もあって今回は単純に室堂ピストンとしました。

とは言っても、そもそもこの池ノ平へは室堂から標準的には10時間近いコースタイムを要し、立山黒部アルペンルートの運行時刻を考慮すると池ノ平へ行くだけでも最低2日を要すというなかなかに手強いコースです。

ということで今回は最終的にはあまり無理をしない計画を考え、3泊4日(+予備日1日)で下のような日程としました。

①室堂⇒ 雷鳥坂⇒ 剱沢野営場(泊)
②剱沢野営場⇒ 剱沢雪渓⇒ 真砂沢ロッジ⇒ 二股⇒ 仙人新道⇒ 池ノ平(泊)
③池ノ平⇒ 仙人新道⇒ 二股⇒ 真砂沢ロッジ(泊)
④真砂沢ロッジ⇒ 剱沢雪渓⇒ 剱沢野営場⇒ 新室堂乗越⇒ 室堂
予備日を1日取ってあるので天候によって柔軟に対応しようという計画で、幸いこのエリアのテント場は予約は不要。さらに天気次第では別山剱御前山あたりにも登ってみようという計画です。

撮影計画

今回歩くコースを考えると必然的に剱岳をテーマとして撮影する計画です。
このエリアに4日も滞在して剱岳はおろか、立山にも大日連山にも登頂しない計画ですが山岳写真、とくに剱岳のような巨大な岩の塊は格好の撮影対象で “剱岳に登ると剱岳を撮れない” という単純な理由から、最近ではほとんど『登頂』ということに全くこだわらずに山を歩いています。

剱岳には過去に登頂させていただいているので、これからも撮影のために山に入るのならばこのスタンスは変わることはないかと思います。

今回の撮影機材は主に以下の通りです。

カメラ
Nikon D5、FUJIFILM GFX50sⅱ
交換レンズ
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED、AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR、
AF-S TELECONVERTER TC-14E Ⅲ、GF35-70mm F4.5-5.6 WR
三脚
Gizto  マウンテニアGT2542
雲台
Marsace FB-2R

その他レリーズやリモートコントローラー、各種フィルター類

今回は交換レンズのラインナップ的に標準域をGFX、広角域と望遠域をD5で撮影するようなシステムを組んで少しでも軽量化を図りました。本来は歩きながらスナップ撮影するにはD5が適任で、GFXは撮影適地でどっしりと構図を取って撮影する場面のほうが適任ですが、重量の関係から逆になってしまっています。

撮影計画としては剱沢での剱岳の撮影をはじめとして、剱沢雪渓を下りながら剱岳の氷河を、池ノ平での八ツ峰と平ノ池の撮影、月が比較的小さいので幕営地での星景、あとは天気予報が思わしくないので雷鳥を撮影できれば尚好しという計画です。

初日は室堂から剱沢野営場へ

小雨の序盤

今回も室堂には富山側(立山駅)から入りました。
以前の記録でも書きましたが、関東からでは当然長野側である扇沢から入る方が近いですが、黒部ダムに下山しない今回の室堂ピストンという山行計画であれば、やはりいつものようにいくつもの乗り物を乗り換える必要のある扇沢側からではなく、ケーブルカーと高原バスのみでアクセスできる立山駅からのアルペンルートを選択しました。

紅葉が少しずつ始まった室堂

※立山黒部アルペンルートについて詳しくは公式HPをご覧ください ↓
立山黒部アルペンルート

9時半頃に室堂ターミナルをまずは初日の目的地である剱沢野営場に向けてスタート。目の前に広がる室堂平や立山の山肌も少しずつ紅葉し始めているようでした。天気が心配された初日でしたが歩き始めはまだ雨は降っていませんでした。しかしそれも束の間、雷鳥荘を過ぎてから小雨になってきて、がらがらの雷鳥沢野営場を過ぎて雷鳥坂の急坂にかかったあたりからは雨足も時折強くなってきました。

この急坂にはいつも苦しめられますが、見下ろすと室堂平が雄大に広がっていましたし、また強くなっていた雨も登っていくうちに徐々に上がってきて薬師岳も望めて元気をもらいながら登りました。雷鳥坂の最後はペースが一気に落ちましたが、なんとか正午に剣御前小屋の建つ別山乗越に到達。

この別山乗越にて今回の撮影対象のメインである剱岳と対峙。
ここで剱岳と対峙するのは2021年4月以来ですが、やはり何度見ても剱岳はデカイ!

別山乗越付近からの雄大な剱岳

山自体の大きさもさることながら、その存在感は日本の山岳シーンにおいても異様、いや威容…。その昔、立山信仰が隆盛だったころ “針の山” として恐れられ、人を拒んできた剱岳。現世においてもその険しくも威厳ある山容に圧倒されるのは、自らがこの大自然においてあまりにちっぽけな存在だからでしょうか…。

その麓から吹き上げる冷たい秋の稜線の風が頬にあたり、その感覚とただ立ち尽くしている自分のみを感じながら、しばし時間を忘れてしまうのはいつものこと。

「美しい…。」

立山信仰では登れぬ山、登ってはならぬ山。弘法大師が草鞋3,000足を費やしても登れなかったと言われた剱岳。

一旦ここでザックをデポし、撮影機材だけもって剱御前小屋の裏手から別山への登山道を少し登ったところで改めて撮影しました。このポイントが個人的には好みで、2021年4月の時はあまりの強風で身の危険を感じたため、残念ながらこのポイントでは撮れませんでした。

2021年4月の記事 ↓

『残雪の立山連峰に抱かれて』冬毛の雷鳥と劔岳モルゲンロート

撮影後は荷をデポしてある別山乗越まで戻って、改めて剱岳を正面に見ながら剱沢野営場まで緩やかに下って行きました。

稜線から見下ろす地獄谷と雷鳥沢の展望

好天の剱沢野営場

午後になると天気はみるみる回復して、いつの間にか最高のテント泊日和になりました。ここで幕を張るのは剱岳に登った2013年以来(9年前!)でしたが、改めて剱岳の目の前にある素晴らしいロケーションのキャンプ地と感じました。剱岳へ登るための前衛的な好立地なので賑やかなイメージのキャンプ地ですが、この日は20張りも無いくらいでかなり空いていました。

ガスと光が錯綜する剱沢野営場。

テント場の脇に咲くチングルマの綿毛。

ペグダウンも出来そうですが、ここはとにかく幕を固定するに適した石がゴロゴロしているのでペグダウンよりも撤収が楽な石を使って幕を固定。その後はのんびりしていましたが、剱岳には時折ガスが掛かったり引いたりして眺めていてまったく飽きがきませんでしたし、夕刻の光を浴びた剱岳の岩肌の陰影が見事でした。

『紅之禅』(Nikon D5 + AF-S NIKKOR 70-200mm f/4G ED VR)

事前の予報ではここまで好転するとは思ってもみなかった初日でしたので、うれしい誤算でした。

剱沢野営場
・利用料(協力金)は1,000円/1人1泊
・予約は不要
・外トイレおよび水場あり(水場は野営管理所前のみが使用可でした)
・水捌けは良好
・売店はないので必要ならば近接する剱沢小屋まで
・野営管理所には診療所と富山県警察上市警察署剱沢警備派出所(山岳警備隊)も併設し、最新の登山道の情報などを入手可能です
気温は日没後にみるみる下がって2℃に。
今はちょうど新月期ということで、19時過ぎにはキャンプ場の頭上にははくちょう座が居座り、南天には天の川銀河がくっきり。もちろんこれも当初の予報ではまさか星が撮れる天候になるとは思ってもいず、慌てて上下ダウンを着こんで撮影しました。

『天幕に降りそそぐ星粒』(Nikon D5 + AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED)

このテント場から剱岳方面は北天の夜空、南天に立ち上がるように煌めく天の川銀河は別山の尾根筋の頭上に輝いていました。

実は一週間ほど前の天気予報ではこの山行自体をキャンセルしようかと思えるほどに悪い予報でしたので、本当に来て良かったと思える見事な星空を眺めることが出来ました。

撮影後は明日のために早めの休息としました。



剱沢雪渓を下る2日目

屹立する圧巻の岩壁群

翌朝は4時起床で朝食後にテントの撤収作業を行いました。
気温は5℃と逆に日没後よりも暖かく、空気も北アルプスらしく爽やか。まったく夜露の付いていない乾いたフライシートは撤収がとっても楽ちん。おかげで予定どおり5時半にはいよいよこの日の目的地である池ノ平へ歩き始めることが出来ました。

朝の剱岳。(剱沢小屋前)

さて、ここから真砂沢(まさごさわ)方面は私自身初めて歩くことになるコースですが、未知のコースというのは実際に自分の足で歩いてみないと感覚が掴めないというか、登山地図などで予習してみても距離感やコースタイムが実際はどれほどのものか分からないのでいつも不安。

もちろん見る景色が全て新鮮で歩いていてワクワクする部分もあるのですが、私は悲観主義者的な人間なのでどちらかと言うと不安の方が正直多い。

剱沢大雪渓とそそり立つ岩壁。

前もってネットなどで本コースのポイントなどをチェックしていたわけではないので、左手に見えるそそり立つ剱岳の圧巻の岩壁には終始圧倒されました。もはやその存在がデカ過ぎて遠近感や距離感が完全にマヒしてきます。目の前がクラクラしてきそうな、あまりに非日常な景色。

しばらくすると日本三大雪渓のひとつでもある剱沢大雪渓が目の前に広がって来ました。

日本三大雪渓
・白馬岳の白馬大雪渓
・針ノ木岳の針ノ木大雪渓
・剱岳の剱沢大雪渓
いずれも北アルプスの雪渓となります。
秋はコース的にはこの雪渓を直接下るのではなく右岸にある登山道をしばらく歩くのですが、これがそれほど歩きやすい状態ではなくかなり厄介でした。所によっては地盤が緩かったり、浮石が多数あったり、ごく小さな沢を渡渉したりと、ピンクのリボンで道順自体は整備されてはいましたが一歩一歩気を使いながら歩きました。

見事な平蔵谷の雪渓。

やがて左手には美しくも大迫力の平蔵谷の雪渓も目に飛び込んできました。とにかく目の前に広がる景色全て、日本離れしたそのスケール感に圧倒されます。剱岳を形成する岩のひとつひとつが途方もない年月をかけて雨や風、そして雪に磨かれてこの美しさになっているのだと、この剱沢雪渓から見上げて初めて深く理解できました。到底人間が作れるような陳腐なものでは決してない、荘厳で、畏怖の念を感じ得ません。

その岩壁や雪渓に見惚れているとすぐに巨大岩のつるつるした岩盤をロープや鎖、フック等を頼りにトラバースするスラブ状の難所に苦労しました。もちろん滑って滑落したら大きく口を開けた剱沢雪渓に飲み込まれてしまいます。

悪天時は難儀しそうなスラブ岩箇所。

足場は整備されていますがロープを頼りにクライムダウンで。

その後2度ほど短い区間の雪渓歩きをこなした後に今度は雪渓の左岸に渡り、そのまま下るとやがて真砂沢の出合いにある真砂沢ロッジが見えてきました。

そこかしこにスノーブリッジ。

結局、剱沢野営場から真砂沢ロッジまで標準コースタイム2時間半をなんと4時間(撮影時間込み)を要し、天候のこともあったりでこれから先がかなり不安に…。登山マップにあるこの区間のコースタイムは雪渓を歩ける初夏の時期のものらしく、雪渓の崩落の危険があって歩けないこの時期はコースタイムを多めに考えておいたほうが良いでしょう。

真砂沢ロッジから仙人新道へ

真砂沢ロッジで小屋の方に今後の天候を伺うと、なんと次の台風が発生していて3日後に再接近とのこと。さらに登山道についても伺い、ここまで想像以上に苦労した剱沢雪渓コースですが、どうも今時期が最も状態が悪くてどうしてもコースタイムがかかってしまうとのこと。やはりこのコースは雪渓上を歩ける7月中旬からお盆過ぎくらいが歩くには適期とのことでした。この時期はほぼ雪渓の右岸の悪路を歩かねばならず、2度ほどの雪渓歩きは軽アイゼンこそ必要ありませんでしたが雪面が固くつるつるで滑らないようにかなり慎重に歩きました。

また小屋の方曰く、真砂沢から先は登山道も歩きやすくなるとのことで、天気の心配がありましたがこのまま池ノ平まで頑張ってみることに。

本山行時はこの真砂沢ロッジから少し下ったところにある内蔵助平~黒部ダムに至るハシゴ谷乗越(はしごだんのっこし)は崩落のため通行不可でした。
真砂沢ロッジからまずは二股へ向けて剱沢の左岸を下って行くわけですが、それにしても二股への途中にある南股、あの沢のすぐ上を通るように岩にへばりついて通過する鎖と細い丸太の箇所は想定外の難所でした。

最初登山道が途切れたのかと思ったほどで、
「え?ここを通るの?」
というくらいビックリしました。

南股の難所。

とくに増水時は十分注意。

帰宅後に調べましたが、どうもこのコースでは有名な箇所らしく、例えば下ノ廊下はこのクラスの箇所がバンバン出てくるのでしょうか?

その後はそのまま左岸を下り簡易的な吊り橋を渡ればようやく二股。
この二股まで下りてくると剱岳の象徴的な存在でもある氷河認定されている巨大な三ノ窓雪渓を仰ぎ見ることが出来ました。

二股にて。上部に見えるのが氷河である三ノ窓雪渓。

ここでしばし休憩した後に二股から先の仙人峠に至る仙人新道の急坂に苦しみ、なんと最終的には剱沢野営場から池ノ平まで8時間もかかりました。もちろん私は撮影しながら、重荷を背負ってゆっくり歩いているので仕方ない部分ですが、これでは計画の前にもっと根本的なところを改善する必要があると感じました。

剱沢野営場から先のこの区間は登山者も異常に減って、平日ということもありましたがほんの数人の方にお会いしただけでした。途中何度かお会いした女性二人組の方々は仙人池ヒッュテ泊の予定ということで、その後は欅平まで縦走されるとのことでした。

仙人新道から望む雄大な三ノ窓雪渓(氷河)。

仙人新道は序盤は樹林帯の急登、中盤からは痩せ尾根気味の道ですが途中展望の良い箇所からは長大な三ノ窓雪渓や小窓雪渓を眺めることも出来て、いよいよ裏劔エリアの最深部に足を踏み入れたことを実感できました。

二股からの標高差約500mの仙人峠までをこなせば、後立山の山々が仙人池ヒュッテのバックにズラリと望めました。

小窓雪渓。右は池ノ平山。

仙人峠から仙人小屋と後立山連峰の眺望。

しかし残念ながらここまで持っていてくれた天気も、仙人峠に着くころには小雨が降りだしてきました。



『奥剱』秘境池ノ平へ

たどり着いた別天地

仙人峠から30分ほどトラバース道を下るとやがて池ノ平山との鞍部にポツンと建つ、赤い屋根の小さい山小屋が見えてきました。

まさに秘境に建つ池ノ平小屋。池ノ平山が大きい。

ようやくたどり着いた秘境、池ノ平。
長かった…。

そのロケーションはまさに北アルプスの最奥地のひとつ。
人里離れた別天地の様相。
剱岳に抱かれる、まさに『奥剱』

池ノ平小屋に着くと早々に小屋の方に声をかけていただきました。霧雨の中、小屋の方と立ち話している間にいつの間にか雨足が強くなってしまい慌ててテント設営し中に逃げ込むも、その後は本降りとなって残念ながらテントに缶詰め状態。

時折、雨足の弱い時を狙って写真を撮ってみましたが、またすぐに降りだしたりといったふう。折角ここまでやって来ることが出来ましたが、その魅力の半分くらいにしか触れることが出来ませんでした。

ただ、ガスに煙る高層湿原や目の前の剱岳、八ツ峰の威容、雨にしっとり濡れる高山植物は格別に美しいと感じました。

平ノ池と聳え立つ剱岳八ツ峰。

小屋の方曰く数日前まではずっと暖かい日が続いていたと言うことで、今年はこの辺りの紅葉の進み具合はかなり遅いとのことでした。

雨に蕾むミヤマリンドウ。

雨のテント泊

テントは土で盛り上げられた水捌けの良い荷揚げ用のヘリポートに張っても良いとのことで、そこに幕を張りました。この日の小屋の宿泊客はソロの女性の方がお一人のみのようで、テント泊は私のみ。小屋もテント場もこの夜は貸し切り状態でした。

池ノ平小屋。

池ノ平小屋キャンプ場
・予約は不要
・利用料は1,000円/1人1泊
・外トイレおよび水場あり(水場は受付横)
・携帯の電波は繋がりませんでした(docomo)

池ノ平小屋。左奥には五右衛門風呂も見える。

貸し切り状態のテント場。荷揚げ用の盛り土に張らせていただいた。

日没後は昨日と打って変わって暖かく10℃ほど。
テントを叩く雨音が静かになり始めてしばらく、テントから出てみるとなんと薄雲越しではありましたが美しい星空が頭上に輝いていました。剱岳にかかっていた重々しいガスも引いて、ここぞとばかりに機材を用意して小屋から少し上に上がった登山道へ撮影に。

剱沢ではダウンを着込んでの星の撮影でしたがこの晩はその必要はなく快適でしたが、残念ながら1時間弱ほど粘っても薄曇は取れず撤収しました。しかし夕方のあの悪天を考えると上々と考えるべきでしょうか。

『劔岳讃歌 ~The Stardust Hymn~』(Nikon D5 + AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED)

翌3時過ぎに再びテントを叩く雨音で目を覚ましました。
翌朝は小雨の中、5時半過ぎにテント場から15分ほど下りたところにある平ノ池にて撮影。剱岳の八ツ峰はキレイに見えていましたが、撮影にはいまひとつ。徐々に本降りになってきたので撤収しテントに逃げ込んだのち、朝食。

この後の雨中の撤収作業を思うと、
「あぁ、気が重い…。」

池ノ平の魅力

この池ノ平は『奥剱』と言われる秘境感に溢れる、私が最も好む実に雰囲気の良いロケーションです。小屋もシンプルでこじんまりとしていますが、昔ながらの牧歌的な懐かしさがあってこのエリアにとてもマッチしている、なんとも素敵な山小屋です。

素敵なロケーションに建つ池ノ平小屋。

ここまで到達するには最低でも2日はかかりますから、せっかくならのんびりと2泊はしたいところ。その余りある時間を有意義に使って、
平ノ池までのんびりと散策しても良し、
山野草に癒されるも良し、
険しい池ノ平山に登って剱岳を眺めるも良し。
決して雲ノ平のように広くはないエリアですが時間がいくらあっても足りないくらい魅力が詰まっています。1泊だけではあまりにもったいない…。

※詳しくはこの池ノ平の魅力満載の池ノ平小屋のHPをご覧ください ↓
北アルプス『奥剱』池ノ平小屋

実際、天気が良ければ2泊するつもりでしたが、小屋の方にお聞きするとどうもこの後も天気がさらに下り坂と言うことで、帰りのことを考えて今回は1泊のみとしました。

「きっとまた来よう、天気の良い日に、きっと…」

 

後編につづく。