北アメリカ星雲とペリカン星雲

夏の天頂を陣取るはくちょう座には赤い散光星雲や暗黒星雲、そして散開星団がひしめいています。
その中でも天文ファンから人気が高いのがこの『北アメリカ星雲』。夏の大三角を担うはくちょう座α星『デネブ』付近にあるとても大きな散光星雲で、NGC7000Sh2-117などとカタログされていますが、一般的には北アメリカ大陸にその形状が似ていることから『北アメリカ星雲』と呼ばれています。

この作品ではフルサイズ換算約450mmでの撮影となり、このくらいの焦点距離ですと縦構図および横構図ともに隣にあるペリカンのように見える赤い星雲『ペリカン星雲』とともに撮影されることが多いです。ペリカン星雲はIC5067とカタログされていますが、北アメリカ星雲よりも淡い部類なので同一写野ですと星雲の表現が意外と難しい対象です。

この領域の赤い散光星雲群は水素由来のHα線の波長で光っているため眼視ではほとんど見えない星雲ですが、写真写りは良好です。天体改造などを施していないノーマルのデジカメでも比較的写ってくれる対象ですし、とても大型の星雲なので短い焦点距離のカメラレンズでも十分撮影を楽しめることからも天体写真初心者にもおすすめの対象です。

この『北アメリカ星雲』と『ペリカン星雲』は実際はひと繋ぎとなっている巨大な星雲で、手前側にある暗黒星雲が光を遮っている(吸収している)ため分離した星雲のように見えています。

撮影データ
カメラ Nikon D7100(IR-custom)
鏡筒 AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ(f/3.2)
フルサイズ換算写野イメージ 約450mm
架台 CELESTRON Advanced VX
ガイド鏡 SVBONY SV165(30mm F4)
ガイドカメラ QHYCCD QHY5L-ⅡM
ガイディングソフト PHD2
ダーク減算 RStacker(7枚)
フラット補正 RStacker(64枚)
現像 ADOBE Camera Raw
コンポジット DSS(180秒×31枚 計1時間33分 ISO1000)
画像処理 ADOBE Photoshop CC
その他
・QHYCCD Polemaster

はくちょう座は『散光星雲の巣窟』と言われるほど赤い星雲が多く点在しています。
もう少し画角を広くとってはくちょう座の中心にあるγ星『サドル』付近の星雲群を絡めて撮影するのもおすすめです。この場合北メリカ星雲側とサドル付近の星雲側との赤の色合いの違いなどがとても興味深く、複数の星雲を一網打尽にできる中望遠~標準レンズでの星野写真の真骨頂と言えるでしょう。

逆に焦点距離を長くとって撮影するのもおすすめで、北アメリカ星雲のコントラストがもっとも高い “メキシコ近辺” は『シグナスウォール』と言われ人気があります。

撮影MEMO
・赤経 20h59m21s(北アメリカ星雲以下同じ)
・赤緯  +44°31′47″
・正中日  6/22(AM03) 8/7(AM00) 9/21(PM21)
・正中高度 約80°
・はくちょう座は北東から昇り、ほぼ天頂を通って北西に沈むため、日本ははくちょう座をもっとも撮影しやすい北緯にあると言えます。光害が強めの撮影地では無理に低空から狙わず天頂付近で撮影するのが良いでしょう。
本作品の撮影記はこちら↓

2022年5月 天体写真遠征(北アメリカ星雲とサドル付近)