天文ファンにとても人気のある春から夏にかけての対象であるいて座の『M8』と『M20』です。ご覧のようにこの作品はフルサイズ換算約450mmの画角で撮影していますが、このふたつの星雲をセットで撮られることが多い対象でもあります。
『M8』は画面下の赤い大きな散光星雲です。かなり明るい対象ですのでデジカメで30秒程度の露光でもきれいに写るほどで、視力の良い方であれば肉眼でもその存在は確認できます。別名『干潟星雲』と呼ばれていますが英名である “Lagoon(干潟・珊瑚礁)” からそう呼ばれるようになりました。個人的には星雲の色も含めて “カニの甲羅” のようにも見えます。
『M20』は画面上のいて座にある小さめな散光星雲です。下部が赤く、上部が青い星雲でカラフルなのでこちらも天文ファンから非常に人気のある対象です。手前にある暗黒星雲のため星雲が3つに引き裂かれているように見えるため別名『三裂星雲』と呼ばれています。
カメラ Nikon D7100(IR-custom)
鏡筒 AF-S NIKKOR 300mm f/2.8G ED VR Ⅱ(f/3.2)
フルサイズ換算写野イメージ 約450mm
架台 CELESTRON Advanced VX
ガイド鏡 SVBONY SV165(30mm F4)
ガイドカメラ QHYCCD QHY5L-ⅡM
ガイディングソフト PHD2
ダーク減算 なし
フラット補正 RStacker(64枚)
現像 ADOBE Camera Raw
コンポジット DSS(180秒×27枚 計81分 ISO1250)
画像処理 ADOBE Photoshop CC
その他
・QHYCCD Polemaster
2022年5月 天城高原にて撮影
この作品では縦構図で撮影しましたが、この写野角であれば下のように横構図にして『M8』の左にある『猫の手星雲(IC1274・IC1275・IC4684・IC4685など)』も入れたほうが見応えがある構図で撮影できると思います。
星雲・星団撮影において『M8』や『M20』は非常にメジャーな対象ですが、メジャーなほど実は画像処理も含めて意外と奥が深いのが天体写真の常ですが、アンタレス付近やアンドロメダ大銀河、オリオン大星雲などと同様に毎年挑戦したい撮影対象のひとつと言えるのではないでしょうか?
・赤経 18h04m42 (M8以下同じ)
・赤緯 -24°22′45″
・正中日 5/9(AM03) 6/24(AM00) 8/8(PM09)
・正中高度 約30°
・『M8』や『M20』は南東から上がり正中しても約30°ほど。そのため南側に大きな都市があるような撮影地では光害カブリを覚悟しなくてはいけません。いて座付近の赤い散光星雲群を撮影するならばより高度が上がる『M16』や『M17』を先に撮影し、その後に『M8』や『M20』 を撮影するといった計画がおすすめ。
・『M8』は全天の中でも極めて明るい撮影対象のひとつなので、小口径の光学系でもきれいに写せるのでビギナーには特におすすめの対象です。