夏の天の川のハイライト、いて座付近の最も星が密集した『Great Star Cloud』と呼ばれる領域から少し北側に『Small Star Cloud (M24)』と呼ばれる領域があります。暗黒帯に浮かび上がったかのような美しい星のクラスター領域はその形状がバンビ(小鹿)の顔のように見えることから『バンビの横顔』と言われており、天文ファンにとても人気のあるエリアのひとつです。
この画角ではその『バンビの横顔』を挟んで北側にメシエ天体『M16』や『M17』が、南側に『M8』や『M20』がきれいに収まります。撮影で使用したレンズはZEISSの『Milvus 2/135 ZF.2』という焦点距離135mmレンズで撮影していますが、装着したカメラがFUJIFILMの『GFX50sⅡ』というラージフォーマットセンサーを有するカメラのため、フルサイズ換算で約108mm相当の画角となっています。
夏の天の川の中心部付近は、山や真っ暗な撮影地で見上げると肉眼でもまさしく “雲” のように見えますが、カメラを赤道儀に搭載し追尾撮影するとこれほどの無数の星屑が写ってきます。
カメラ FUJIFILM GFX50SⅡ(無改造)
鏡筒 ZEISS Milvus 2/135 ZF.2 Apo-Sonnar T*( f/2.8)
フルサイズ換算写野イメージ 約108mm
架台 UNITEC SWAT200(ノータッチガイド)
ダーク減算 RStacker(12枚)
フラット補正 RStacker(72枚)
現像 ADOBE Camera Raw
コンポジット DSS(120秒×12枚 計24分 ISO2500)
画像処理 ADOBE Photoshop CC
その他
・SS-one ポーラー3
2022年4月 天城高原にて撮影
とくに天体改造など施していないカメラで撮影していますが、写りこんでいる星雲『M16』や『M17』、『M8』などは赤く写っています。赤と言うよりはマゼンタやピンクと言った方が近いかもしれませんし天体改造機だともっと “赤く” 写りますが、FUJIFILMのデジタルカメラは無改造でも天体写真を楽しめると言われています。
バンビの横顔のように見える星の密集領域はメシエ番号『M24』としてカタログされていますが、厳密には星雲でも星団でもありません。まさに『スタークラウド=雲のように見える星々』です。その領域の中に散開星団『NGC6603』が含まれています。
・赤経 18h19m19 (NGC6603以下同じ)
・赤緯 -18°23′48″
・正中日 5/12(AM03) 8/11(AM09)
・正中高度 約36°
・バンビの横顔(M24)は東南東から上がり正中高度が約36°に達しますのでおよそ北極星くらいの高度まで上がることになりますが、やはり南方面の光害の影響を強く受けます。極力、南方面に大きな都市などが無い撮影地で撮りたいところです。
・光害がきつめの撮影地であれば、高度的に有利なバンビの横顔と北側のM16・M17あたりを一緒にフレーミングすることで少しでも光害の影響を回避する手もあります。
・この領域は天の川銀河の中心付近にあたり、まさしく星の密集地帯なのでとてもよく写ります。しかしその分、使用する光学系の非点収差や倍率色収差などが撮像(星像)に直接影響を及ぼすことになるので、多少暗くても収差の少ない光学系を使ってみるのも良いかもしれません。