『春の足音』早春の四阿屋山とセツブンソウの調べ

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2022年3月、一足早い春を探しに埼玉県は小鹿野町にある低山ハイキングのメッカ四阿屋山へ。さらに関東を代表するセツブンソウ自生地へ『春の足音』を訪ねて。

(目次)

  • 低山ハイクのメッカ『四阿屋山』
  • 今回のコース
  • 里山の春を感じながら
  • いよいよ核心部
  • 寂しいフクジュソウ自生地
  • セツブンソウ自生地
  • セツブンソウが奏でる春の足音の調べ
  • 山行記録まとめ



低山ハイクのメッカ『四阿屋山』

埼玉県の『四阿屋山』

四阿屋山は埼玉県秩父郡小鹿野町にある標高約772mの山。
奥秩父山塊に属し、登山口へのアクセスも整備され一年を通してハイカーで賑わうとても人気の山でもあります。

里山然とした低山ハイクが楽しめる山ですが、近隣の山である両神山二子山などと同じ山系と言うことで山頂部はクサリなども設置された急峻なヤセ尾根の岩場。そして中腹にはフクジュソウ自生地もあり、低山ながら様々な表情を見せてくれます。

四阿屋山は「アズマヤサン」と読みますが、同じ読みの山は日本各地に多数あると予想されます。
私が知る中でも長野県と群馬県を分かつ日本百名山として有名な『四阿山』や、さらに字も全く同じ長野県東筑摩郡の『四阿屋山』。山名の歴史に疎い私ですが、この『アズマヤ』という読みは山道などにある『東屋』に山容が似ているからと予想されますが、真意のほどはどうでしょうか?

初めての四阿屋山

私にとって今回が初めての四阿屋山ハイク。
もちろん以前からその存在は知っていました。
私は毎年のように小鹿野町セツブンソウ自生地には足繁く通っていて、四阿屋山はそのすぐそばにある山。今回の目的はやはりあくまでそのセツブンソウを愛でに出かけたわけですが、折角なのでまだ登ってみたことのないこの山にもチャレンジしてみようと計画しました。

前年は某コロナ禍で残念な年だったこともあり、今年はとくに頻繁に山に登って体力維持を心がけるように努めています。

今回のコース

この四阿屋山には前述の通り中腹にフクジュソウ自生地がある関係で、周辺には登山に適した駐車場もいくつか点在しています。今回はいつものトレーニングの意味もあったので最も距離の稼げる道の駅『両神温泉 薬師の湯』を起点とした周回コースとしました。さらにフクジュソウ自生地に日が高くなる時間帯に至るように時計と反対回りとしました。

道の駅『両神温泉 薬師の湯』→ 鳥居山コース → 四阿屋山 → フクジュソウ園 → 道の駅『両神温泉 薬師の湯』
そして下山後は車でほど近いセツブンソウの自生地へ移動する計画です。

四阿屋山ハイキングコース

里山の春を感じながら

ここ数日の暖かさですっかり春めいてきた里山の空気を感じながら、道の駅にほど近い薬師堂の横を通ってまずは緩やかに登って行きます。梅も咲きはじめたまだハイカーも疎らな登山道をグングンと進みました。

四阿屋山法養寺薬師堂

本格的な山道はここから

登り進めると徐々に斜度も増したり、いったん下ったりを繰り返しながら、小さな野鳥の囀りに癒されながらの淡々としたなだらかな登り。

樹林帯は展望もないため黙々と登りますが鉄塔ポイントまで来ると展望が開けて奥秩父が誇る鋭鋒『二子山』『父不見山』も眺められました。

春めいた樹林帯が続く

松ぼっくり

見晴らしの良い鉄塔ポイント

奥秩父を代表する鋭鋒『二子山』は送電線の鉄塔に被ってしまいきれいに眺められなかったのは残念でした。この鉄塔ポイントを過ぎてから徐々に登山道の傾斜もきつくなってきました。

柏沢との分岐の手前は一度トラバース気味のコース取りとなっていますが、日陰部分は凍結していて滑落に注意しながらかなり慎重に歩きました。

階段状に整備された登山道

山頂直下にある両神神社奥社

途中階段状に登山道が整備され、まもなく山頂直下にある『両神神社奥社』へ。ここまでくるとハイカーの方々もチラホラと見かけるようになりました。



いよいよ核心部

急峻な岩場

さて、いよいよここからがこのハイクの核心部。
山頂までクサリ場、ヤセ尾根の岩稜帯の登降となります。

山頂までの核心部の始まり

以前からこの山の核心部の様子はネットの情報などで得てはいましたが、山頂までの短い区間ではありますが想像以上の急峻さでした。里山の低山ハイクとは言え、これはもはや “小さなお子様を連れたのんびりハイク” というレベルはかるく超えているように感じます。

クサリ場が多数

高度感もさることながら、とくにこの時期は落ち葉の下にガチガチに凍った『隠れアイスバーン』もあったりでかなり慎重に登りました。

落ち葉に隠れたガチガチのアイスバーン

時折クサリにつかまりながら岩場の基本姿勢の “3点支持” で登っていき、時間をしっかりかけてようやく狭い山頂へたどり着きました。

四阿屋山山頂

撮影しながらここまでほぼノンストップで登って、約2時間弱で山頂に着きました。想像では360°の大展望とまではいかないまでも展望がけっこう楽しめると期待していましたが、残念ながら山頂からの展望は木が邪魔で両神山方面くらいしか視界が開けていませんでした。

山頂からの両神山方面の眺め

しかしここからの両神山は迫力あって素晴らしい山容が楽しめました。

日本百名山『両神山』

四阿屋山山頂は狭くて、さらに人気の山だけあってハイカーが次から次へとやって来られましたので、しばし休憩した後すぐに下山を開始しました。

こういった急峻な岩場は登りよりも下山時のほうが厄介ですが、慎重に慎重に、ときにクライムダウンも使いながら下りました。

なんとか核心部の岩場をこなし、ほっと一息…。

と思いきや、
「ガラ、ガラガラ、ドスンッ!」
なんとクサリ場を終え両神神社奥社へもどる途中、登山道の後方でソフトボール大の落石に遭遇。さすがにハイカーが落とすには大きすぎる落石。近辺でシカの鳴き声がしたのでひょっとしたら野生動物起因の落石かもしれません。

800mにも満たない低山ですが、こういった山では急峻な岩場だけでもヘルメットの着用があったほうが安全かもしれません。

すこし肝を冷やしました…。

寂しいフクジュソウ自生地

この山のもう一つのハイライトのフクジュソウ自生地。
自生地は柵で囲われ保護されていますが、この日は残念ながら数株しか咲いていませんでした。今年は例年に増して寒い冬でしたが、その影響もあるのでしょうか。比較的下の方に咲いている株が多かったですが、期待していた秩父紅は見つけることが出来ませんでした。

フクジュソウ園に咲くフクジュソウ

すこし寂しいフクジュソウ園でした…。

その後はいつものように転げるように一気に下山。
ぐるりと一周、約3時間半で道の駅『両神温泉 薬師の湯』に戻ってきました。

下山途中の武甲山の眺望

低山とは言え身近な里山感あり、
岩場あり、
フクジュソウあり、
奥秩父山塊の展望ありで、バラエティーに富んだ低山でした。
もう少し季節が進めば様々な花も楽しめるような、そんな山に感じました。

里まで下りてきました。(眼下に道の駅)



セツブンソウ自生地

四阿屋山登山から下山後、
間髪を入れずに小鹿野町両神小森堂上にあるセツブンソウ群生地へ。

下山後はセツブンソウ自生地へ

早い年なら2月下旬には咲き始める春植物『スプリングエフェメラル』ですが、今年はかなり開花が遅れているようで、1週間前までこの自生地にはまだ雪が残っていたようでした。

春の息吹、セツブンソウの群生

ほんの2、3日前から陽気は一気に春めいて、この日はかなり咲き始めてくれていました。ここ近年は某コロナで観賞は控えていましたが、私は以前からこの群生地がとても好きで足繁く通っていました。

一面雪のように真っ白に咲き乱れる、とまではいきませんでしたが久しぶりに可愛らしく咲くセツブンソウを堪能できました。

早春の妖精たち『Spring Ephemeral』

セツブンソウが奏でる春の足音の調べ

セツブンソウの可憐さや健気さは本当に見ていて癒されます。

まだまだ秩父の山間は朝晩冷え込みますが、その寒さにもめげずに一足早く春を告げてくれるセツブンソウ。この群生地ではまるで競うようにその美しい姿で咲き誇ります。

拙い写真ではありますが、この可憐で健気な春の息吹が少しでもお伝えできれば幸いです。

寒さにめげず、懸命に春を告げる。

暖かな陽を浴びて…。

木陰にそっと咲くセツブンソウも

山行記録まとめ

今回の四阿屋山登山、この山は奥秩父山塊に属する山だけあって低山とは言えその特徴が良く現れた山だと思いました。

本山行記録(YAMAPより転載)

やはり注意すべきは山頂直下の急峻な岩場
とくに厳冬期や残雪のある早春は気温が低くなるため登山道は凍結していますから登降には十分注意が必要と感じました。800mにも満たない低山と言えど決して侮れない山と感じました。その急峻さは上の高度グラフを見ていただければよく分かるかと思います。

実はこの四阿屋山山頂直下の核心部、残念ながら2021年1月に滑落死亡事故が発生している山です。さらに先述しましたが今回の山行中、ソフトボール大の落石にも遭遇しましたのでそれ相応の山と捉えて登る必要があると感じました。

この山は人気のある山と言うことで核心部での登降の際は譲り合って慎重に通過したい箇所で、いつにも増して安全登山を心がけて登りたい山です。

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
今年も安全登山をまず第一に、山を楽しんでいきたいと思います。