写真プリント販売の概要

COLUMN

この度、私が今まで撮影してきた写真の中から数点を『額装済みの写真プリント』として販売させていただくことになりました。この記事では今回販売させていただく作品の制作概要と、その作品の簡単な解説をさせていただきたいと思います。

私などとくに著名なフォトグラファーと言うわけではありませんからそもそも需要自体があるのかもわからないのですが、とりあえずは期間限定的に販売させていただくという形になりますが何卒よろしくお願い申し上げます。

本項では販売させていただく作品の大まかな概要について、次項では最初に販売開始となる4作品の簡単な解説となります。

写真作品の販売の経緯

“写真プリント”という文化

私は以前からデジタル写真に関して、
「デジタルのままではなく写真プリントで残していきたい…」
という思いがありました。

フィルムの頃は当たり前のようにしていたプリント。
デジタルに移行してからはわざわざ紙にプリントしなくても写真を鑑賞できるようになったこともあり、プリントして写真を鑑賞するという文化が減ってきていると感じ、とても残念に思っていました。

もちろん写真愛好家の方々の中にはデジタル移行後も熱心にプリントを楽しまれている方も多かったのですが、全体的にはやはり減ってきているように思うのです。

もちろんデジタルだからこそ可能な新たな表現も多いのですが、やはり私は透過光(モニター)での鑑賞よりも反射光(紙)での鑑賞のほうが写真鑑賞の奥深さをより感じられると思っていますし、なによりそれこそが『モノ自体』に価値を置くアートの真髄だとも思っています。

プリントは大切にしていきたい写真文化のひとつ

今は何もかもがスピーディに合理的に動く世の中。
ゆっくり写真や絵画、彫刻、建築などの鑑賞をすることも少なくなっています。そして昨今はコロナ禍ということもあり、なかなか大腕を振って山や旅行、アウトドアへ行くことも憚れる世の中でもあります。しかしこのような状況だからこそ少しでも日本の美しい風景、豊かな季節感に溢れた自然の美しさを写真を通して、それも『写真プリント』という媒体に拘って残していきたいと考えていました。

恩返しの思いを込めて

そしてもう一つ。
世界に誇れる日本の素晴らしい自然や山は、今まで私にとても大きな喜びを与えてくれました。自然が魅せてくれる美しい造形美に心癒されたことはもちろん、それによって得た人生哲学や思想、アニミズムとも言っても過言ではない自然崇拝的な考え方など、自然は私に多くのものを与えてくれました。

そんな美しい自然、とくに最も足繁く通った北アルプスの大自然に何か私なりに『恩返し』が出来れば、と常々思っていました。

北アルプスでは昨今の環境の激変のため天然記念物である『ライチョウ』が絶滅の危機に瀕していると言われています。私は “神の使い” とも称されるこのライチョウたちがずっと住み続けることが出来る環境を守り、そして残していくことこそが美しい北アルプスの自然を守る事にも繋がっていると考えています。

絶滅の危機に瀕しているともいわれる神の使いライチョウ

そこで、私の写真プリントで得た売り上げの一部をこのライチョウたちの保護活動をされている団体様に寄付できれば、少しでもその恩返しになるのではと考えました。

制作にあたって

作品制作に専念するために昨年2021年は5月の燕岳山行を最後に山での撮影活動の一切を控え、それこそ全身全霊を込めて事に当たりました。もちろん昨今の『コロナ禍』という社会情勢もそのひとつのきっかけではありましたが、ひとつわかったことは私は一つのことに集中すると他のことには目もくれない性格であったということで、この制作期間は 「山が恋しい…」と思わなかったのは意外にして幸いでした。

私の拙い写真プリント作品ではありますがご自宅での鑑賞はもちろん、インテリアのアクセントのひとつとして、さらには親しい方や大切な方への贈答、そして人生の節目のお祝いなどのひとつとしてお手に取っていただければ幸いに存じます。

写真プリントの概要

今回販売するにあたり、どのような形態で、どのようなプリントで販売しようか、しっかりと時間をかけて煮詰めました。

自家プリントであること

まず考えたのは実際にどのようなプリントにしようか、と言うことでした。

もちろんプリント自体は私のライフワークのひとつとして今までやってきたことではありましたが、販売に際して所謂言うところの『最高級のクリスタルプリント』とするため外注しようかとも思いました。しかし以前から外注による銀塩プリントは作者自身がプリント作業に直接関われないこと、そしてラボやプリントの時期の違いによって色調が微妙に変化したり、そもそも理想の色調とは違うものが出力されたりと、最高級の光沢感は得られたとしても私自身決して納得できる結果は得られていませんでした。

やはり『オリジナルプリント』とするならば作者自身の手によってプリントまで完結しなければならないと思い、販売する作品はすべて『自家プリントによる出力のみ』としました。これであればコストさえ度外視すればいくらでも理想の色調に追い込むことが出来ますし、実際に理想に近い作品に仕上げることが出来ました。

ファインアート紙であること

プリント用紙の選択は実に奥の深い世界ですが、やはり再現性保存性に優れたプリント用紙でなければなりません。そこでプリント用紙はすべてOBA(蛍光増白剤)などを含まないコットンベースの『ファインアート紙』を使用することとしました。

以前から一般的なフォトペーパーだけでなくファインアート紙でもプリントしてはいましたが、これを機に深海とも底なし沼とも言われるファインアート紙の世界に深く潜り込み、その選択に十分な時間とコストを使いました。作品一つ一つに対して最も適したアート紙を選ぶことには多くの時間と労力、そして膨大なコストがかかりますが、ここを蔑ろにしては良い作品は生み出せないと考えました。

美術作品の複製プリント技法として『ジクレーアーカイバル (ジクレープリント)』という印刷技法がありますが、これに限りなく近いものにしようという思いもありました。やはりその作品を良い状態で末永く鑑賞するにはある程度の保存性も確保しなければならないですが、その点においても耐光性の良い顔料インクジェットプリンターとメーカー純正の顔料インク、そしてこのコットンベースのアート紙は必須とも言えると思っています。

エディションを設けること

販売させていただく作品は全てエディション有りの『限定作品』としました。
販売サイズもそれぞれ決められたサイズのみとし、大・中・小などと言った他のサイズ展開は一切しないこととし、さらにナンバリングされた作品証明書の発行もさせていただくこととしました。

私自身まだまだ今後も撮影を続けていくつもりですし、過去に撮影した作品に変に固執したくない、そして作品を大量生産の消耗品にはしたくないと考えました。エディションを設けることは購入者様にも、そして作者自身にもメリットがあると考えます。

本来ならばそれに伴い販売価格も『ステップアップエディション方式』を採用したいところでしたが、今回はあまり複雑なことをすることは避けようとのことで、採用はしませんでした。

額装について

販売するにあたりプリントのみで販売することも出来ましたが、基本的には裏打ち・額装済みでの販売としました。これは作品の保護の観点(とくにマット系アート紙)、そして額装自体にも作者の意向を汲みたいとの考えがあるためです。

半光沢系アート紙で比較的表面が強いものの中にはプリントのみでの販売も可能なものもございますが、販売価格も額装の有無に関わらず同価格なので額装済みをおすすめいたしております。

 

それでは次項の各作品の解説へと続きます。
『販売作品の紹介と解説①』

販売作品の紹介と解説①