今回販売を開始させていただく以下の4作品の概要と簡単な解説をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
- 『Magna Gloria』
- 『Benedictio Aurea』
- 『Yin et Yang (陰と陽)』
- 『Sehnsucht』
- ごあいさつ
『Magna Gloria』
まず最初に販売を念頭に手掛けたのがこの新雪纏う槍ヶ岳のモルゲンロートの作品で、2020年11月に燕岳付近で撮影したものです。

『Magna Gloria』
Camera : Nikon D5
Lens : AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VRⅡ w/ AF-S TELECONVERTER TC-14E Ⅲ
D.Developing : Adobe Lightroom Classic & Photoshop CC
Printer : Canon imagePROGRAF PRO-G1 (LUCIA PRO ink)
Paper : Hahnemuhle Photo Rag Baryta
Size : A3+
Edition : 6 (+AP)
三脚に設置しての撮影でしたがこの日は高山特有の風が強く、望遠での撮影のためブレを恐れて感度を上げ目にしてSSをギリギリまで稼ぎました。
撮影も現像も、そしてプリントもすべて奇をてらわず極めてナチュラルに仕上げました。色合わせのためのテストプリント段階において使用するプリント用紙は以下の3つに絞りました。
・ハーネミューレのフォトラグバライタ
・キャンソンのプラチナファイバーラグ
・ピクトランの局紙バライタ
この中から最終的にはハーネミューレのフォトラグバライタを選択しました。これ以降、ハーネミューレのアート紙を中心に制作していこうと決めました。
個人的にはアート紙はマット系のほうが好みなのですが、このような輝かしい煌めくような写真にはマット系ではかなり理想から外れたものが出力され、この半光沢であるバライタ紙が持つ素晴らしい発色、滑らかな諧調、高コントラスト、そして見事な黒の締まりなどが功を奏し理想通りの仕上がりとなりました。

右端下部の拡大
額装は黒系ではなく白系の額装としました。
写真展、とくに山岳系の写真展などでは重厚な仕上がりとなる黒系の額装が好んで使用されることが多いですが、白系の額装は写真を華やかに引き立ててくれ、清楚で荘厳な印象を引き出してくれます。
本作品は「A3ノビ」のみで「エディション6」としました。

作品証明書(サンプル)
『Benedictio Aurea』
次に紹介させていただくのは前穂高岳が朝日を受けて浮かび上がるような印象的な山岳風景で、2020年8月に北穂高岳山頂から撮影したものになります。

『Benedictio Aurea』
Camera : Nikon Z6
Lens : NIKKOR Z 24-70mm f/4S
D.Developing : Adobe Lightroom Classic & Photoshop CC
Printer : Canon imagePROGRAF PRO-G1 (LUCIA PRO ink)
Paper : Hahnemuhle Photo Rag Baryta
Size : A3+
Edition : 6
この日は北穂山頂で星空を堪能して、そのまま朝を迎えました。
夜通し風もなく穏やかな時間が過ぎ美しい朝がやってきました。
美しい雲海、その雲間から覗く柔らかな美しい朝の光が、ゴツゴツとした前穂高岳の岩稜帯の稜線を照らしました。北アルプスの盟主『穂高』の雄大さ、美しさ、険しさ、懐の深さ、そのすべてを目の当たりにできた貴重な朝でした。まさに山の神様がここまで苦労して登ってきた者、そして自然を慈しむ者に祝福を与えてくれているような錯覚を覚え、この美しい柔らかな光に包まれたとき、その思いがより深く心に刻まれました。
プリント用紙にはこちらもハーネミューレのフォトラグバライタを採用。その美しい滑らかな諧調表現と透明感をいかんなく発揮してくれました。この素晴らしい用紙と作品の『祝福』というテーマ性を考慮しオリジナル現像よりも少し暖色系に色調を振って、より温かみを強調しプリント出力しました。

左端上部の拡大
撮影にはニコンのフルサイズミラーレスシステム『Z』を使用。
レフ機である『F』とは個人的にレンズの描写性能の違いをはっきりと感じています。『Z』は解像感は言わずもがな、非常にコントラストが強く、色ノリも良好で、現代的な写りを実現していると感じましたが、プリントにおいてもその傾向がよく表れていると思います。『F』はその点、どちらかというと柔らかなノスタルジックな描写という印象があります。
額装は重厚感を優先して、山岳写真ではオーソドックな黒系の額装としました。
本作品も「A3ノビ」のみで「エディション6」としました。

作品証明書(サンプル)
『Yin et Yang (陰と陽) 』
次に紹介させていただくのは上記の『Benedictio Aurea』と同じ日、2020年8月に北穂高岳山頂から奥穂高岳方面を撮影したものです。

『Yin et Yang (陰と陽) 』
Camera : Nikon Z6
Lens : NIKKOR Z 24-70mm f/4S
D.Developing : Adobe Lightroom Classic & Photoshop CC
Printer : Canon imagePROGRAF PRO-G1 (LUCIA PRO ink)
Paper : Hahnemuhle Photo Rag (308gsm)
Size : A3+
Edition : 6
写真をご覧いただければお分かりかと思いますが、この日の朝は雲が多めでその雲が素晴らしい高山の雰囲気を演出してくれました。その雲間から朝の柔らかな光が穂高連峰のこの世とは思えない険しくも美しい岩肌を優しくライトアップしているようでした。
手前の岩肌は強く光を受け、逆に奥穂高岳からジャンダルムにかけては柔らかな光が注ぎ、そして岩が作り出す強烈な影のコントラストが何とも言えない重厚な山岳風景を作り出していました。これこそが『岩の要塞』とも称される穂高連峰の真骨頂かと個人的には思っています。
プリント用紙には上記2作品同様にハーネミューレのフォトラグバライタを採用するつもりでしたが、この穂高岳の重厚でゴツゴツした雰囲気をもっとも細やかに表現してくれたのはフォトラグ (坪量308gsm) のほうでした。フォトラグバライタは半光沢紙になるのでより透明感や煌びやかさが増すのですが、フォトラグはマット紙なのでこのような岩稜帯をより立体的に表現してくれました。分類的にはフォトラグはスムーズ系のマット紙となるのですが、このハーネミューレのフォトラグには控えめですが表面にテクスチャーがあるので、それがさらに穂高岳の岩稜帯にマッチすると感じ採用しました。

ジャンダルム部の拡大
さらにこのフォトラグの素晴らしいところは、写真左側の大部分を占める奥穂高岳の影の部分の圧倒的な諧調表現で、これほど暗く沈んだ部分でもきめ細やかな解像感や立体感、諧調性に関しては素晴らしい表現力を持っていると感じました。反射が全くないマット系用紙ならではの表現力と言えると思います。
この作品は今回販売させていただく4作品のなかでは個人的にお気に入りで、もっとも良い出来だと感じています。
本作品も「A3ノビ」のみで「エディション6」としました。
使用したアート紙がマット系ということで、ハーネミューレ純正のスプレーコーティング剤を使用し表面の保護処理を3回ほど行ってはいますが、とてもデリケートなため作品保護の観点からプリントのみでの販売は行わず、額装済みでの販売とさせていただきます。

作品証明書(サンプル)
『Sehnsucht』
今回最後に紹介させていただくのは2016年5月、北アルプス燕岳付近の表銀座稜線から撮影した暮れなずむ残雪期の裏銀座の山々を撮影したものになります。

『Sehnsucht』
Camera : Nikon D810
Lens : AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED
D.Developing : Adobe Lightroom Classic & Photoshop CC
Printer : Canon imagePROGRAF PRO-G1 (LUCIA PRO ink)
Paper : Hahnemuhle Photo Rag Baryta
Size : Panorama (210×594mm)
Edition : 5
燕岳付近の稜線からは裏銀座の山々の雄大な連なりを望むことができますが、この日の夕暮れはその雄大さが見事に現れた素晴らしい日となりました。残雪がまだ残る白い稜線に沈みゆく春の夕日。その夕日を受けて染まる空と雲。肌寒さなど忘れて、悴む手でカメラを構えながら撮影したのをよく覚えています。
雄大さを強調するため、若干HDR調に現像を施しました。
さらにこの作品では思い切ってパノラマ風にバッサリと上下を切り落とすトリミングも施しました。普段は基本的には現場ですべて構図をキッチリ決めて撮影し、現像・編集段階では構図に関してはほとんど手を加えない方針ですが、この作品ではあえて雄大な稜線を強調するためにトリミングしました。これだけ大胆にトリミングしてもニコンの当時としては最も高画素のモデルであったD810(約3,600万画素)が威力を発揮してくれ、210×594mmパノラマサイズでプリント出力しても十分な解像度を担保してくれました。

プリント中央、ハイライト部の拡大
プリント用紙にはハーネミューレのフォトラグバライタを採用。
写真プリント中心部、作品のまさにハイライトと言える夕日が輝くハイライト部の煌めき感はやはりこのフォトラグバライタの真骨頂と言えます。
額装にはシンプルな黒系の写真額を使用しました。
そもそも非常に絵画的な写真作品なのでもう少しゴージャスな絵画的額装も考えましたが、そうすると設置する場所を選んでしまう嫌いがあったので、あえてどのシチュエーションにも飾っていただけるシンプルな額装に落ち着きました。
本作品は「210×594mmパノラマサイズ」のみで、「エディション5」としました。

作品証明書(サンプル)
ごあいさつ
ただいまご紹介いたしました以上4作品を『1st Series』として販売開始させていただきました。
販売はオンラインショップ『atelier CielArt』で行っています。
このショップは “Fine Art Archival Print Gallery” というコンセプトで運営しています。写真文化は間違いなくアートであり、その写真プリントを可能な限り良い状態で “残していきたい” という思いを大切にしています。
デジタル全盛、SNS全盛のいま、紙の写真プリントはたしかに時代にそぐわない側面もあるかと思いますが、それでもなお伝統的な写真文化のひとつであり続けるべきだと願っています。
まだまだ拙い部分もあるかと思いますが、ぜひお手に取っていただければ幸いに存じます。
